幼馴染君がぼっちちゃんを甘やかし過ぎた結果…… 作:Miurand
………てかなんで文字数が10000超えてるんだ…?
1週間経ったのにも関わらず、未だに歌詞を全く書けていないらしく、ひとりに助けを求められた。正直作詞なんてしたことないので、俺が加わったところで成果を得られるのか怪しいところではあるが、もしかすると何かしらのきっかけになるかもしれない。だからできる限りのことはしてやろうと思って"いた"。
「…………なあ、ひとりさんよ」
「はい………」
「なにこの『Bocchi☆』ってサイン的なものは?歌詞を考えてたんじゃないの?」
「歌詞が思いつかないあまり気分転換に描きました…………」
「いや、1つや2つなら分かるが、何個作ってるんだよ。最早サイン作る方がメインになってないか?」
にしても、『Bocchi☆』をブランド名か何かにする気だろうか?何種類ものサインがある中で、このBocchiの名を冠するものが異様に多い。余程あの渾名を気に入っているご様子だ。
「取り敢えず好きなように書いてみたらどうよ?まずは難しいことを考えずに書いてみたら、案外すんなりと完成するかもよ?」
「それも考えたんだけど、それをやると暗い歌詞になっちゃって……。ほら、喜多さんが歌うわけだから、もっと明るいウェーイ系の歌詞を書かないとって思っちゃって…………」
「いやお前には無理だろ。青春コンプレックス拗らせているお前には」
「ぐはっ…!!」
「あっ、やべ」
事実を言っただけでなんかダメージ受けちゃったよこの子。正論パンチをしたつもりはないんだが、ひとりにとっては結果的に正論パンチを受けたのと同義となったらしい。
「個人的にはギャップで攻めてみるのもありだと思うけどなぁ。もし喜多さんが中指立ててたらと思うと………ブハッ!やべ、想像しただけで面白いわ」
「そ、そうだ!なら青春コンプレックスを克服すればいいんだ!」
「いや、確かにそれはそうだけど、お前がそう簡単に克服できるのか?」
実際、ひとりの青春コンプレックスは凄まじいものだ。体育祭、海、クリスマス、バレンタインデーなどなど……。あらゆるイベント名やらなんやら、とにかく青春に関する単語を聞くだけでもコンプレックスを発動させてしまうので、克服するのは難しいものと思われる。
「私にいい考えがある。私が青春コンプレックスになっている原因は、青春生活を送れていないからだよ」
「……………」
同年代の子たちとライブ活動してるだけでも青春に入らないのだろうか?やはり彼氏作ってイチャイチャしたり、体育祭や合唱祭で盛り上がったりするのがお望みなのだろうか?学生バンドって青春に入らないの?あれも青春だと思うんだけど………。
「……まあ、それで?どうするんだ?」
「つまり私も青春生活を送ることができれば、きっとこのコンプレックスも克服できる……!だから、優太君、私と………」
「…………あっ」
なーるほど。分かったよ分かりましたよ。脱コンプレックスは表向きの目的で、真の目的は俺にしっかり告白することにあるわけだ。単に『好き』と言われても、家族や親友として好きという意味として捉えることもできる。だから俺はひとりに何度も『好き』と言われても、それとなくやり過ごせてきた。
だが、ここで『付き合ってください』と言われた日にはどうだろうか?間違いなく逃げ場はなくなってしまう。いくらなんでもこの至近距離で聞こえなかったなどという苦しい言い訳は通じるはずもない。ならひとりを振るか?しかしそれも難しい。もし振ってしまったらどうなるか………。まあ、ひとりのことだから人を傷つけるようなことはしないだろうが、自分自身を傷つける可能性もなくはない。
あらゆる可能性を考え、俺が導き出した結論は………。
「つ、つつつ、つき……!つきあ…!」
「…………zzzz」
「……ね、寝てる!?」
悪いな。今の俺にはお前の気持ちを受け入れる勇気も、拒否する勇気もないんだ。だからここは狸寝入りを使わせてもらう。寝てたら告白なんて聞こえるわけないもんね!あたいって天才!!
「ゆ、優太君。おーい……」
ふふふ。今の俺は眠っている設定なのだ。どれだけ声をかけられようとも、それに応えてはならない。もし応えてしまったら、もう二度と狸寝入りという技は使えなくなってしまう。
「………ね、寝ちゃったの?それとも、寝たふり?」
ぎくっ…!いや待て、あの鈍感なひとりのことだ。きっとなんとなく出てきた言葉に違いない。徹底して寝たふりをすればいい。動揺は許されないぞ。
「…………お、起きないと悪戯しちゃうよ〜?ゆ、優太君の体を好き勝手にしちゃうからね……?」
「………」
あれ?ひょっとして更にまずい展開になった?これ起きた方がいいやつ?
「お、起きない……?本当に寝ているの……?ゴクリ………」
な、なんか嫌な音が聞こえた気がするんだけど。心なしか荒い息が聞こえるような気がするようなしないような…。
「起きない優太君が悪いんだよ…?私、忠告したからね……」
そんな台詞が聞こえたかと思ったら、息の音が段々と近くなってくるのを感じた。恐らくひとりが俺に顔を近づけているんだと思う。
やばい、詰んだ。起きても起きなくてもこれ詰みだわ。もうやだこのクソゲー。さてと、前回のセーブポイントはどこだったかなぁ…(現実逃避)
………バサッ
………ん?『バサッ』……?俺の体に何か乗っかったような感覚だ。暖かいし、この匂いに身に覚えがある。多分これはひとりがいつも使っている掛け布団だ。
「ふふっ…。そのまま寝たらまた風邪引いちゃうよ?」
………えっ?何この聖母?目は閉じてるから見えないけど、それでもひとりの見た目をした聖母が目の前にいるような気がする。あなた本当にヤンデレ属性の方ですか?
「ぐへへへ……。これでしばらくは優太君の匂いを堪能できる………」
上げて落とすとはまさにこのことである。むっちゃいい子やんって思った俺の気持ちを返してほしい。
そう思っていた時、俺の頭に何かが乗った。恐らくこの感じは手。俺の近くにはひとりしかいないため、この手の持ち主はひとりということになる。その手は規則的に頭の上でゆっくり動いていた。
そう。俺は幼馴染に頭をなでなされているのである。何この状況……。ひとりさん、母性力高すぎない…?これからは金沢八景のママって呼ぼうかな…。
「歌詞は私一人で考えてみるよ。おやすみ」
とはいえ、ひとりの行動には善意が含まれているのも事実。これで実は狸寝入りでしたなんて言ったら不穏な空気になってしまいそうで怖いので、このまま狸寝入りを遂行することにした。
…………あれ?いつの間にか本当に寝てしまったらしい。少し怠い体を起こして目を開けると…………。
「…………んっ?なにこれ?(ゴ○リ)」
部屋中に塩が撒かれていたり、お札を貼られまくったりと散々である。さてはまた何か奇行をしたのだろうな。でも普段から奇行に見慣れている後藤家でもこれほどの対応をするということは、相当な奇行をしたに違いない……。
「あっ、優太君起きたんだ」
「すまん。いつの間にか寝てたわ……」
「それはいいよ。いいんだけど……」
「けど?」
まさか狸寝入りしていたことバレた?
「………私、調子に乗ったのに歌詞書き上げてこないから吊し上げられるかも……?」
「…………えっ?」
そんなこんなで翌日。ひとりと共に下北沢までやってきた。
ひとりが突然土下座するから何事かと思いきや、虹夏さんたちに向けて謝罪し始めた。だが、虹夏さんがひとりを呼び出したのは、アー写を撮る為なんだよな。えっ?知ってたなら何故教えなかったかって?なんかそのままにした方が面白そうだからである(ゲス顔)
「いや〜、優太君もわざわざ来てもらって悪いね」
「今日は特に用事がなかったので大丈夫ですよ」
「ところでさ、首あたりに付いている跡は何?虫刺されにしては多くない?」
「……………えっ?」
虫刺され……?確かに虫が出てくる時期になってきたけど、刺された記憶なんてないぞ…………?気になったのでスマホをインカメにして自身の首を映し出すと…………。
「………な、なんじゃこりゃ…!?」
首付近にとんでもない量の跡があった。いや、これ間違いなくキスマークだろ。多分狸寝入りの時にやられたな。ちくしょう……!!乙女の告白を粗末にするなという神様のお達しか!?
「でへへ……」
「ぼっちちゃん急にどうした!?」
案の定、ひとりの方を見てみたらニヤけていた。せめてキスマークを付けたという報告だけでもしてくれんかね?そうすればそれなりに対処できるんだけどなぁ…。
「………優太って虫にモテるの?」
「ぜんっぜん嬉しくねえ……………」
どうやら虹夏さんやリョウさんはこの跡の正体には気づいてないご様子だ。いや〜良かったよかった。バレてないようで一安心……………。
「そ、それって、まさか………」
なんか喜多さんが俺とひとりを交互に見ては「キャー‼︎」って黄色い声をあげているんですけれども………。もしかしてバレてる?察した?私にはお見通しよ!(キターン‼︎)ってか?やはりザ陽キャな喜多さんはそういったことにも敏感なのだろうか……。まあ、時間が経てばそのうち忘れるだろ。
だがよく考えてみれば、キスマークなんて数分で消えるものではないため、例え忘れたとしても俺の首を見れば思い出してしまうのだ。故に、喜多さんは未だに俺とひとりを交互に見てくる。あのさぁ、そういうことに興味があるのは分かるけど、今はアー写に使えそうな場所探しに協力しようよ……。
「近藤君……」
妙にニヤニヤした顔で近づいてくる喜多さん。要件は恐らくひとり絡みに違いない。
「……随分後藤さんに愛されてるのね。でもせめて見えないところにやってもらった方がいいと思うわよ?伊地知先輩とリョウ先輩は気付いてないみたいだけど」
「つけられたくてついてるわけじゃないんだよ」
「でもそんな跡を沢山つけられたってことは、どこかに2人きりで長時間いたってことよね?」
「そりゃあ、俺たちは幼馴染だから、お互いの家を行き来することなんて珍しくもないけど………」
「………も、もしかして、後藤さんが普段からジャージなのは、近藤君につけられたマークを隠すためなの!!?」
わお。もしそうだとしたら、ひとりが一気にマトモな人間になるな。普通は学校にジャージとスカートで登校する人などいない。ひとりがあの格好になってる要因は俺にもよく分からないが、単にジャージが好きなだけだと思う。
「変な深読みやめような?俺からは一切つけてないし、つけようとも思わないからな?」
「えっ?後藤さんと一夜を共にしたって…………」
「未だにひとりの妄言を信じてんのか…………」
「えっ、あれ嘘だったの………!?」
信じてたのかよ。マセてるのかピュアなのか分からんなこれ。まあ一緒に寝たという意味では合ってるけど、寝ただけであんなことやこんなことはヤっていない。
「…………本当に付き合ってないのよね?」
「だからそう言ってるじゃん」
「信じられないわ…………」
「…………優太君」
「うぉ!?ビックリした…!!」
いきなり後ろから声が聞こえたかと思いきや、ひとりが後ろから話しかけてきただけだった。でもいきなり肩に手を置くのはやめような。この裏路地でそれをやられたら普通に怖い。
「随分喜多さんと仲良さげだね?喜多さんって可愛いもんね〜。私と違ってオシャレに気を使ってるし、スタイルいいし………」
「大丈夫よ後藤さん!」
ひとりが絶賛ネガティブモードになっているところに、喜多さんが何やらひとりに耳打ちをしている様子。一動作を終えると、ひとりは癖毛を犬の尻尾のように揺らして喜ぶ仕草を見せていた。………えっ?喜多さん何したの?
「心配しないで。『近藤君はあなたにゾッコンよ』って教えてあげただけだから!」
「………………さいですか」
どうやら喜多さんも後藤家陣営に加わる気満々らしい。ただでさえうちの両親と後藤家がひとりのバックについてるだけでも厄介だったのに、本人を除く結束バンドメンバーもそこに加わるとなると相当厄介である。
悩み事が増えて頭を抱えている間にも様々な新情報が手に入った。金欠バンドマンのアー写には、階段、フェンス、植物、公園、良さげな壁なんかが定番らしい。
「あっ!ここなんてどうですか?よくないですか?写真とか沢山あって!」
「………そこ、前までよく行ったCDショップだ。もうやってないけど」
「えっ……?」
「レコードショップもライブハウスもどんどんなくなるね〜」
「昔ながらの店がどんどん消えていく………」
「あっ、あの……なんだかごめんなさい…………」
今の時代、音楽もストリーミングサービスが普及しているからな。わざわざCDを買わなくても、サブスクで音楽を沢山聴けるようになったのが大きな要因だと思う。
「リョウ、この前新しい本屋できて喜んでたじゃん。喜多ちゃん、リョウはその場で言ってることが9割だから、気にしなくていいよ〜。いちいち気にしてると振り回されちゃうから」
「でも先輩になら、むしろ振り回されたい!!」
「えぇ……………」
人と関わっていくうちに意外な一面というものが見つかることが多いが、喜多さんの意外な一面はなかなかにインパクトがある。クラスでしか接していなかった時は、運動も勉強もでき、人当たりもいいし容姿もいい完璧超人かと思っていたが、なかなかにポンコツなのではないだろうか…?先日の歌詞制作の時に、ひとりから喜多さんがベースとギターを買い間違えていたことも聞いている。そもそもみんなが想像するダメな人の具現化とも言えるリョウさんに憧れている時点で心配になってしまう。いや、正確には憧れるだけならいいんだけど、貢ごうとするのは流石に心配になる。もしリョウさんが男だったら色々大変なことになってたんだろうな……………。
「えぇ……………」
ほら、虹夏さんも引いてるじゃないか。結束バンドはなかなかの曲者揃いだと思っていたが、喜多さんが一番個性が強い子かもしれない。…………と思ったけど、ヤンデレな上に人外化するひとりには負けるな、うん。
「…………って、優太君どうしたの?なんかニヤけてるけど」
「あ〜。それは多分、喜多さんが実は面白えやつだと気づいてしまったんだと思います」
「優太君って地味に性格悪いんだね……。ってうお!?」
突然虹夏さんが驚いたから何事かと思いきや、ひとりが先程俺にやったように虹夏さんの肩に手を置いたらしい。いや、それ怖いから普通に声かけようよ。肩に手を置くよりはやりやすいと思うんだけどな。ひとりのコミュニケーションは長年一緒にいる俺でも理解できていない部分がある。
「あ、あの…!あっちに良さげな壁が…!」
「おお!でかしたぼっちちゃん!」
なんだよそのジェスチャー。バリ○ードかよ。ただただ可愛いな。これだからひとりに対して辛辣になりきれないのである。
ひとりが良さげな壁を見つけたということでアー写撮影をすることになった。アー写を撮ることは予め聞かされていたので、俺が愛用するカメラ(父親からプレゼントされたので詳細はよく知らない)で撮影してみることにした。
「うわっ!一眼レフなんて持ってるの!?」
「優太、結束バンドのためにそこまで…………」
「いや、元から持ってるやつです」
何故カメラをもらったかというと、俺は出かけることが大好きで、特に旅行にはよく行く。そして気に入った景色を見つけてはスマホに収めるということを繰り返していたが、スマホだけではどうも限界がある。そんなことを両親にボヤいたら、翌日に父親がこのカメラをくれたのだ。
俺はカメラに詳しくないが、夜の暗い景色でもはっきり撮影できたり、レンズを変えれば望遠から広角にできたりと色々と高性能なんだと。なんならSDカードにも拘りがあるらしい。
「それじゃ、撮りますよ〜」
パシャリとシャッターを押してまずは一枚目を記録。喜多さんはいつもの笑顔。リョウさんは何故か目のハイライトをオフにしている。虹夏さんはリョウさんと仲良さげだ。肩に腕を乗せるのって女子でもやるんだな。あれって男子特有のノリだと思ってた。まあ、今の時代は女子にもネットスラングを使う人がいるくらいだし、別になんともないことなのかもしれない。
「どれどれ、どんな感じ〜?」
「………」
なんだろう。みんなの個性が出てていいと思うんだが、ひとりはなんで離れてるの?しかも俯いてるから顔もよく写ってないし………。
「うーん………。なんかいまいちだね」
「バンドマンのお手本こと、私の表情を真似してみて」
「どこから湧き出るのその自信」
「でも先輩の言う通りにすれば間違いなんてないですよ。ねっ、後藤さん!」
「あっ、はい」
「YESマンが2人………。優太君はどう思う?」
えっ……?みんなハイライトをオフにしろってこと?そういう雰囲気のバンドを目指しているなら悪くないと思うけど………。
「まっ、物は試しですよ。一回それで撮ってみましょう」
それで撮った結果………
「………なんかお通夜みたい…」
お通夜というか、不良バンドっぽさが出ているような気がする。つーかこうしてみるとみんなヤンデレみたいに見えなくもないから無茶苦茶怖いです。そしてひとりは目が見えないせいでさっきと変わらないのですがそれは……。
「それにしても、喜多ちゃんはどの写真も可愛いよね〜」
「え〜?そんなことないですよ〜」
………確かに可愛い。というよりいい写真の写り方を知っていそうではある。以前イソスタをよくやると聞いたことがあるし、多分自撮りもバンバン撮る系の女子だろう。タピオカドリンクもご賞味済みとみた。
「あるある!なんか写真慣れしてるっていうか〜」
「あー、それは多分イソスタに写真をよくあげてるからですよ、ほら」
流れるようにスマホを操作した喜多さんは、自身のアカウントに投稿されている画像を公開した。わお、全部可愛く写ってるじゃあねえか……。これは立派な勝ち組ですわ。
………あれ?その写真写りのいい喜多さんを俺のカメラで撮影してるの?これ大丈夫?俺逮捕されたりしない?パンチラとか撮っていないけど、陽キャ不当撮影罪とかに問われない?中川辺りに言ったら絶対騒ぎそうだから黙っとこっと。
「ゔっ…!!!!」
「えっ!?後藤さん!!?」
あっ。ひとりが喜多さんの圧倒的陽キャオーラに倒れた………わけじゃないなこれ。多分友達と写真を撮ってるのを見て、自分は家族写真と集合写真しかないから云々カンヌンとか考えているんだろうな。
「ぼっちちゃん大丈夫?優太君、これは何が原因?」
「多分友達が少ない自分に嫌気がさしてるんだと思います」
ざっくり言うとこんな感じだろうな。さて、ひとりがなんか奇行やらかす前に何か手を……「ぼっちちゃん顔やばいって」
………うん。確かにこの顔は女子高生がしていいものではない。なんなら普通の人間がしていい顔ではないと思う。なんというか、ラリってる感半端ない顔と言えば分かりやすいかな?
「私が下北沢のツチノコです。ノコノコ」
「後藤さんが変になった!?」
「大丈夫だよ喜多ちゃん。いつもこんなんだから」
段々虹夏さんがひとりの奇行に対してドライになってきたな。ひとりの奇行に慣れてる俺が言うのもなんだが、人間の慣れって怖いねほんと。人間の感覚ほどあてにならないものはないと思う。
「優太君。これどうやったら治る?」
「まあ時間が経てば治るでしょう」
「まさかの放置!?」
下手なことを言って悪化させかねないので、こうなってしまった以上は放置することが最適だ。
「あっ、そうだ!友達増やしたいなら後藤さんもイソスタやってみたらどうかしら?」
「あっ、ちょ、それはまずい」
「えっ?何が?」
喜多さんはあくまで善意でこの提案をひとりにしたのだろう。だがそんなことしたら…………。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
「ぼ、ぼっちちゃん!!?」
「えっ、ちょ、はっ?なにこれ?」
なんか急に機械音っぽい奇妙な声を出しながら体が常時変形し続けてるんだが!!?何この機械的な壊れ方!!?今まで見た奇行の中でもかなりやべぇ部類に入るぞこれ!!?
「やばい。優太でも想定できないほどのバグが発生してるっぽい」
「ええ!!?近藤君でも想定できないバグって相当まずいんじゃ…!!?」
「俺の反応を基準にしないで?」
いや、幼馴染である俺を基準にするのは賢いと思うよ。逆の立場なら多分俺もそうしてるし。でもさ…、俺がひとりのものさしになるのはなんか複雑な気分なんだよ…………。
「さて、いい加減戻ってきてもらいましょうかね」
「えっ?ぼっちちゃんのこのバグを直せるの!!?」
「ん〜…。まあ俺なら直せるかと」
「さ、流石後藤さんの夫…!頼もしいわ……!!!」
「夫じゃなくて幼馴染な?」
ナチュラルに俺とひとりを夫婦に仕立て上げるのはやめていただきたい。それ以上俺のこといじるなら、喜多さんの弱点見つけ出して画像を送りつけてやるんだから!(何故か嫌がらせが画像の送りつけ限定)
じゃけん、いきましょうかね〜
「ひとりちゃ〜ん、今正気に戻ってくれたらハグしてあげるぞ〜」
「あっ、もう元に戻ったからお願いします!」
「はっっや!!!!」
「流石優太。私達にはできないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れる……!!」
「はーいこっちおいで〜」
「えへへ♪」
「って、ちゃんとハグしてあげるんだ優太君…………」
「…………伊地知先輩。あの二人は本当に付き合ってないんですか?」
「うん。仲良さげだし実は付き合ってますって言われても全く驚かないくらいだけど、それでも付き合ってないよ」
「優太がヘタレだから付き合えてないだけだと思うよ。だから私達は優太の背中を押してあげようと模索中」
「流石リョウ先輩!私にも協力させてください!!」
「あっ、へへ…。ぜひお願いします…」
「おいてめぇら聞こえんぞ、余計なお節介だ」
まあトラブルはあったが、このままグダグダしてたら日が暮れてしまうので撮影を再開。
「……そうだ。ジャンプなんてどうですか?なんか神アニメのオープニングでは大体ジャンプしている気がするので、ジャンプした写真をアー写にしたら縁起がいいかも……?」
ちなみにそのオープニングのアニメはけい○んである。一昔前に流行ったあのアニメだ。まあ俺個人としてはオープニングで走っている描写があるアニメの方が個人的には神アニメ率が高いように感じているが、走っている様子を写真で表現するのは難しそうなので、無難にジャンプを提案した。
「なるほど。私も有識者から聞いたことがある。つまり、ジャンプをすれば神バンドになれるのでは…!?」
「いやそこまで言ってないっすよリョウさん。縁起が良さそうだなって思っただけですよ」
「ん〜。いいんじゃないかな?試してみよっか?」
虹夏さんや喜多さんも乗り気の中で、ひとりだけなんか乗り気じゃない様子だ。いや、ジャンプの1回や2回は別にしたっていいじゃないか。持久走をやるのとはわけが違うんだぞ。
「はーい、チーズ」
4人が手を繋ぎつつ一斉にジャンプしたタイミングを狙ってシャッターを切った。ほほう。なかなかいい感じに仕上がったんじゃないだろうか?青春っぽさがなんとも言えない味を引き出していていい。………約1名はどんよりとした顔をしているけど。
「どれどれ〜……。おお!いい感じじゃない?…………って、あっ、これはダメだ」
「えっ?なんで?」
「あっ、ダメ!」
なんで虹夏さんがNGを出したのか不思議に思って写真を再度確認してみると………。
「あっ…………」
あ〜。なるほど。不可抗力とはいえ、まさか中川の願いを聞き入れることになるとは思いもしなかった。マジで撮れちまったよ、ひとりのパンチラ。
「ご、ごめんぼっちちゃん…!」
「あら、とんでもないものが撮れてしまいましたな」
「こ、近藤君は見ちゃダメよ!」
「残念ながら手遅れだぞ」
喜多さんが俺の目を抑えるけど、時既に遅し。今日のひとりのパンティの色をしっかり覚えてしまった。いくら幼馴染で長い期間一緒にいると言えども、こういうのには興味を持ってしまうのが男という生態なのだ。……いや、変態紳士と訂正しておこう。誠実な男子諸君には失礼だったね。
「あっ、大丈夫です。優太君には下着姿も見られてますから………。むしろ優太君には私の生まれたままの姿を見せてもいい………。そして我慢できなくなった優太君は………。うへ、ウヘヘへ、グヘヘへへ………」
「何言ってるのあなた!!!?」
「えっ?なんだ優太君。やっぱりぼっちちゃんと付き合ってたんだ」
「いや納得すんなよ!?」
「でも、そんなに恥じらいがないってなんか熟年夫婦みたい」
「熟年どころか交際経験もありませんて」
「近藤君。いい加減素直になってもいいんじゃないかしら?」
「あっ、これが新手のイジメか………。もうバイトやめよ………」
「ああ!ごめんね!ちょっとからかい過ぎちゃったよ〜!!」
誤解はなんとか解いてtake2。今度はいい感じに写真を撮ることに成功した。
「つっかれた…………」
「優太、ジャンプもしてないくせにそれは流石に運動不足にも程がある」
「これは精神的な疲れなんですわ」
ひとりとだけ、虹夏さん達とだけならまだいいんだけど、結束バンドメンバーが勢揃いになると急に疲れるな。なんでこんなに恋人なり夫婦いじりされるんだろうか。そんなに俺ってひとりのこと好き好きオーラ出してんの?そのつもりは全くないんだけど。やはり幼馴染ってのが大きいのかねぇ…。
「うん、バンドらしくなってきた。人気バンドへの夢にまた一歩近づいたね!」
「結束バンド本格始動ですね!」
「よーし!夏にライブ(未定)とデモCD(未定)して、冬にファーストアルバム(未定)、下北沢発祥のエモエモなエモロックバンドになるぞ〜!!」
「確定情報が何一つないですね!」
「確かに…。まだ曲もできてないもんね……」
「あっ…」
あっ、ひとりのやつ、作詞のこと完全に忘れてやがったな。
「まあここはリョウとぼっちちゃんに任せて………ってあれ?リョウは?」
「気づいたらもう………」
「ホント自由だな〜。今日はありがとね!あっ、そうだ優太君。後で写真のデータ送ってね!」
「あっ、私にもお願い!」
「了解。グループに貼っときますね〜」
ということで流れ的に解散となった。俺とひとりは帰る方向が同じなので、これから一緒に帰ろうとするところである。
「ど、どうしよう…。作詞のこと完全に忘れてた…………」
「いっそのことバンドメンバーの誰かに相談してみたらどうだ?それこそ作曲も担当するリョウさんとか」
悪いが俺では力になれそうにない。ここは作曲するリョウさんと相談するのが手っ取り早いと思う。
「…………確かに、リョウさんなら変に遠慮しなさそう…。分かった。ちょっと相談してみる……」
そう言うとひとりはお得意のフリップ入力で即座に入力し、メッセージを送信。リョウさんはすぐに既読を付けた上に、集合場所の位置情報を送ってきた。なんだ。昼ご飯食いに行ってたのか。
「お、おしゃれカフェだ……!」
「だな……。じゃあ俺は先に帰ってるわ」
「…………えっ?」
だからその小動物みたいな目で見るのやめてくれないか?ついつい甘やかしたくなっちゃうでしょうが……。
「分かったよ。でも俺は飯食ってるだけだからな」
「ううん。一緒にいてくれるだけでも安心するから」
ということで、俺も同行することになった。
優太君が起きた時に塩が撒かれてたり、お札を貼られていたりしたことを考えると、優太君が寝てるすぐ横でぼっちちゃんが喜多ちゃんムーブしたりパリピ化したりしてるシュールな光景があったという事実。
評価や感想、誤字脱字報告ありがとうございます。これ評価の方は他のぼざろ二次創作者みたいに一人一人のユーザー名あげてお礼言った方がいいんですかね…?私は今までそういうスタイルではなかったんですけど……。