転生したらブラッド族だった件   作:仮面大佐

17 / 23
第16話 春の空気と

 豚頭帝(オークロード)戦から暫くが経った。

 目の回るような忙しさだったが、皆のおかげで、ひと段落する事ができた。

 俺は黄歌に、リムルは紫苑に尋ねる。

 

リムル「で、俺の今日の予定は?」

エボル「俺の予定はどうなってるんだ?」

紫苑「本日は、特に急ぎの予定はありません。」

黄歌「エボル様も、急ぎの予定はありません。」

リムル「おお!良いねぇ!」

リグルド「たまには、ゆっくりお休みください。」

エボル「確かに……………休暇とか無かったからな。たまにはのんびり羽を伸ばすか。」

リムル「よ〜し!仕事の事なんかぜ〜んぶ忘れて、ダラダラするぞ〜!」

リグルド「ハハハハハ!どうぞ、気が済むまで。」

 

 そうして、俺とリムルは休む事にした。

 俺は、やる事をやる事にする。

 

エボル『さてと……………エボルドライバー獲得と同時にスキルを得たな。』

全ての知識『是。ユニークスキル、侵略者(オビヤカスモノ)崩壊者(クズスモノ)を獲得しました。』

 

 俺がそう聞くと、全ての知識はそう答える。

 エボルドライバー獲得と同時に、新たなユニークスキルを獲得したのだ。

 侵略者の権能は凶化、完全擬態、学習、適応、抽出、侵入で、崩壊者の権能は分解、腐食、心理崩壊、吸収、異空間となっている。

 色々と使えそうだな。

 すると、リムルが入ってくる。

 

リムル「なあ……………なんかない?」

エボル「ん?」

 

 どうやら、リムルも同じ考えに至ったそうだ。

 その後、俺たちはゴブタと会い、話をする事に。

 

ゴブタ「………………で、結局、リムル様は仕事場に戻ったんすか?」

リムル「何もしなくて良いって言われると、ソワソワしちゃってさ。」

エボル「確かに。これまで、仕事が多かったからな。」

 

 俺とリムルがそう言うと、ゴブタが口を開く。

 

ゴブタ「た〜っ!折角の休み、楽しまないとダメっす!」

リムル「お………………おう。」

ゴブタ「最近は、面白い店も増えたんすよ。」

エボル「へぇ。」

ゴブタ「頼れる自分が案内するっす。」

 

 こうして、ゴブタの案内の元、俺たちは暇を潰す事にした。

 ゴブイチの店に寄り、焼き串を食べる。

 

ゴブイチ「へい、お待ち。」

 

 ゴブイチに金を払って、俺たちは焼き串を食べる。

 ちなみに、俺とリムルは、フルーツの盛り合わせを持っている。

 

ゴブタ「どうっすか?この辺の屋台、美味いっすよね。」

リムル「んもう〜。」

エボル「美味いな。」

ゴブタ「あっちには!土産物屋もあるっすよ。」

エボル「へぇ……………。」

ゴブタ「ここだけの話、早くお姉ちゃんの店とかも欲しいっすねえ。」

リムル「お〜お〜!」

 

 いや、その店は、どうだろう……………。

 紫苑や朱菜にキレられて、終わりな気がするな。

 というより、リムルには、シズさんという運命の人が居るんだから、あんまりそういう事はしない方が良いんじゃ……………。

 すると、後ろからリグルの声が聞こえてくる。

 

リグル「あいつ、どこ行った?」

ゴブタ「お……………?ハッ!?」

 

 後ろを向くと、リグルと白老が誰かを探していた。

 それで、ゴブタのこの反応。

 どうやら、サボりの様だな。

 すると、ゴブタが叫ぶ。

 

ゴブタ「やばい!リグル隊長と師匠っす!」

リムル「おおお〜!?」

エボル「おい待て!」

 

 ゴブタが走り出したのを見て、俺とリムルも追いかける。

 ちなみに、リムルは果物を落としたが、俺は落とさずに追いかける。

 それで、ある建物の陰に隠れる。

 

ゴブタ「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……………。」

白老「気のせいかのう?」

リグル「上手く撒かれましたね。」

ゴブタ「フ……………いやあ、休日を楽しむのも、一苦労っすね。」

リムル「いや。」

エボル「お前、さてはサボりだな?」

 

 ゴブタがそう言う中、俺とリムルはそう突っ込む。

 その後、俺はゴブタをリグルと白老の元に連れて行った。

 そして、ゴブタは俺に対して『裏切り者ォォォォォッ!?』と叫びながら、リグルと白老に連行されて行った。

 ていうか、サボってる奴が言うな。

 一方、紅丸は、玄関の方で刀の手入れをしていた。

 朱菜は、紅丸に話しかける。

 

朱菜「あら?お兄様、今日は控えの日なんですか?なら……………。」

紅丸「いや。例え休日でも、心身の鍛錬と武具の手入れは欠かせない物だ。穏やかな日だからこそ、守りの剣は磨かれなければならない。リムル様やエボル様、お前や街の皆の為にな。」

 

 紅丸はそう言う。

 すると、鹿おどしの音が響く。

 

朱菜(お兄様……………。)

 

 朱菜がそう思う中、紅丸は刀を納刀する。

 朱菜は、紅丸の背中を摩り、頬を紅丸の背中にくっつける。

 すると。

 

朱菜「でも……………!」

紅丸「おっ!?」

 

 朱菜は紅丸を立たせて、外に出す。

 

朱菜「お掃除しますので、外でやってくださいね。」

紅丸「……………………。」

 

 朱菜はそう言いながら扉を閉めて、紅丸は呆気に取られる。

 一方、俺たちは、ゲルドの元に向かっていた。

 どうやら、ゲルドも、休みを貰ったそうだ。

 

リムル「何だかんだ、俺たちも仕事中毒だったみたいでさ。」

エボル「ああ。ゲルドの事、言えないよな。」

ゲルド「リムル様とエボル様は、何事も楽しんでおられますから。う〜ん……………。」

リムル「うん?」

ゲルド「俺たちは、ただ無心に働く事のみで……………。いざ、休みを頂いても戸惑うだけでして……………。何も手につかず、街の皆から浮いてしまっている感じで……………。」

エボル「ん………………。」

 

 ゲルドがそう言う中、ゲルドの周囲には、ホブゴブリンの子供達が集まっていた。

 

リムル「子供…………好きなのか?」

ゲルド「いや……………ああ………………その……………。」

 

 リムルの質問に、ゲルドがどう答えようかと悩む中、ゲルドによじ登ろうとしていた子供が落ちる。

 すると、ゲルドはキャッチする。

 

ココブ「うっ…………ああっ!」

ゲルド「おっと。危ないぞ。」

ココブ「アッハハ!アハハハハ…………!」

ゲルド「好きと言うよりは……………座っていると、なぜかこうなるんですが……………。」

エボル「慕われてるね。」

 

 なるほどな。

 一方、蒼翼は、蒼華達と共に、蒼影の指示を受けていた。

 

蒼影「いざという時、動けないのでは意味がない。休める時に、交代で休みを取る様に。」

一同「ハッ!」

 

 蒼影の指示を聞いて、蒼華達は休む事に。

 無論、交代で。

 そんな中、蒼翼は蒼華に話しかける。

 

蒼華「はぁ………………。」

蒼翼「どうしたんだい?」

蒼華「蒼翼か。蒼影様は、ああ仰っているのに、蒼影様自身は、決して休まれない。このままでは、お体を壊しそうで……………。」

蒼翼「ああ……………蒼影様なら大丈夫だよ。ほら。」

 

 蒼華がそう言う中、蒼翼は後ろの方を指差す。

 そこには、蒼影がもう一人いた。

 分身を使って、休んでいたそうだ。

 

蒼華「交代で……………!?」

蒼翼「みたいだね。」

 

 蒼華が驚く中、蒼翼はそう言う。

 一方、俺たちは、執務室に向かっていた。

 リムルが分身などをして、朱菜に気づかれるかどうかという感じのをやって、朱菜に気づかれていた。

 俺は、紅茶を淹れていた。

 

朱菜「エボル様、私が淹れますよ。」

エボル「大丈夫だ。せっかくだから、飲んでみ?」

朱菜「はぁ……………。」

 

 朱菜がそう言う中、俺はそう言い、朱菜は紅茶を飲む。

 すると。

 

朱菜「お、おいしいです!」

エボル「そうかい。」

 

 朱菜はそんな風に叫ぶ。

 前世では、親戚の人が喫茶店をしていたのだが、そこでバイトをした事があり、その為、紅茶やコーヒーを淹れるのが上手くなったのだ。

 

朱菜「これは……………自信を無くしてしまいますね……………。」

エボル「大丈夫だ。朱菜のも美味しいって。」

 

 朱菜が落ち込んでしまったので、慰める。

 その直後、ドアがノックされる。

 

リリナ「失礼します。」

リムル「おっ!リリナさん、珍しいね。」

 

 そう言って入ってきたのは、リリナ。

 俺とリムルがドワルゴンから帰ってくるまでの間に、やって来た、ゴブリンの村のリーダーの一人であり、リグルドとは旧知の仲だそうだ。

 

エボル「どうしたんですか?」

リリナ「季節柄、畑の準備の頃合いですが、如何しましょう?」

エボル「おお。」

リムル「それだ!早速、明日の朝、皆を集めてくれ!」

リリナ「はい!それでは、皆に声を掛けますね。」

エボル「頼む。」

 

 そう言って、リリナは執務室を後にする。

 畑か………………。

 そういうのも、アリかもな。

 そう思う中、リムルは俺に話しかけてくる。

 

リムル「エボル。」

エボル「うん?」

リムル「折角だし、シズさんも連れて行くか?」

エボル「だな。」

 

 俺たちは、シズさんも連れて行く事にした。

 畑作をやる理由は、人口増加に伴う、街の自給率向上の為だ。

 ちなみに、シズさんは、作業をしやすい様に、もんぺ姿になっていた。

 

リムル「古来より、飯の美味い土地は、良い土地だと言う。うちもぜひそうありたい。」

エボル「という訳で、今日は皆も力を貸して欲しい。」

一同「分かりました!」

 

 俺たちがそう言うと、皆が返事を返す。

 ちなみに、リムルはスライム状態、俺は人間状態で麦わら帽子を被っている。

 流石に、ブラッドスタークの姿でやるのはどうかと思ったので。

 そして、話し出す。

 

村人「街で売ってる様な野菜も、俺たちで作れるのかなあ。」

少年「お手伝い楽しそう!」

村人「いっちょ皆で頑張ろうぜ!」

白老「腹が減っては何とやらと言いますからな。」

ゲルド「子供達を、飢えさせたくはないですな。」

リムル「そうだろ、そうだろ!アッハハハハ〜!」

 

 皆がそう話して、リムルは笑う。

 すると。

 

紫苑「分かります!美味しい物を、食べたいですよね!」

エボル「よし!植え付け開始だ!」

一同「お〜!」

シズ「アハハハハ………………。」

 

 紫苑が鍋を持ちながらそう言うので、俺はそう叫ぶ。

 それを聞いて、シズさんは苦笑する。

 シズさんも、紫苑の料理は恐ろしく感じたそうで、曰く。

 

シズ「………………料理を見て、命の危険を感じたのは、初めてかも。」

 

 との事だ。

 シズさんは、戦時中の日本から来たという事もあり、食べれる物は食べれる時に食べておくという主義だが、流石に紫苑の料理は無理だそうだ。

 俺たちが分担を決めてる中、ゴブタ達は。

 

ゴブタ「オイラ達もいっちょやるっす!」

 

 ゴブタ達は、畑を耕し始める。

 そんな中、ゴブトとゴブツが話し始める。

 

ゴブト「だりーよなぁ……………。」

ゴブタ「だよなぁ。」

ゴブト「は〜……………サボりてえ。」

ゴブゾウ「おらは結構面白いだす。」

ゴブツ「た〜!つまんねえ事言ってるし。」

ゴブト「お〜い、ゴブタ、聞いてんのか〜?」

 

 ゴブトがそう言いながらゴブタに話しかけるが、ゴブタは横には居らず、木陰でサボっていた。

 

ゴブツ「って、あ〜!あいつ、やってるふりしてサボってやがる!」

ゴブト「ゴブタ!何サボってんだよ!」

 

 それを見たゴブトとゴブツは、ゴブタに近寄りながらそう言うが、ゴブタは口を開く。

 

ゴブタ「違うっすよ。瞑想の修行をしてたんすよ。」

ゴブト「瞑想!」

ゴブツ「そうか!瞑想!」

 

 そう言って、ゴブトとゴブツもサボる。

 ゴブゾウが一人で畑を耕す中、黒兵衛がやって来る。

 

黒兵衛「お〜い!ゴブタ君!」

ゴブタ「うわっ……………黒兵衛さん!」

 

 黒兵衛が声を掛けた事に驚いて、起き上がるゴブタ。

 

黒兵衛「リムル様とエボル様から頼まれていた物が出来ただよ。」

ゴブタ「マジっすか!やったー!待ち侘びたっすよ!」

 

 黒兵衛が言う物とは、以前、ガビルがやって来た際に、ゴブタがガビルを倒した事で、ご褒美として作らせたのだ。

 

ゴブタ「あん時のすっね!いやぁ死ぬかと思ったっすよ。」

黒兵衛「フッ……………ゴブタ君。そいつは一振りで大地を砕き切り裂く…………オラの会心の業物だべ。」

ゴブタ「す……………すげえっす!これさえあれば、まさに鬼に金棒………………金棒………………っす?」

 

 ゴブタがそれの布を取ると、そこにあったのは、金棒ではなく、鍬だった。

 

ゴブタ「うおおおおおおお!」

 

 ゴブタがその鍬を使って、畑を耕すと、凄い速度で耕されて行く。

 

ゴブト「すげえぞ、ゴブタ!」

ゴブツ「硬い地面があっという間に!」

ゴブト「耕されて、耕されて!」

「「まるで鍬が体の一部みてえだ!」」

 

 ゴブトとゴブツは、それを見て、ゴブタを褒める。

 だが、当のゴブタは。

 

ゴブタ「うぉぉぉん!自分には、これがお似合いって事っすかーーーっ!」

 

 そんな風に泣いていた。

 それを見ていた俺たちに、黒兵衛が話しかける。

 

黒兵衛「なんか、間違ってただか?」

リムル「………………。」

エボル「渡すタイミングと、言い方を間違えたな……………。」

シズ「アハハハハ…………………。」

 

 まあ、大地を砕き切り裂くのは、間違ってないな。

 シズさんも、それを見て苦笑する。

 一方、紫苑と黄歌は、沢山の大豆を前にして、見ていた。

 

紫苑「何ですか?この豆。」

黄歌「随分とたくさん蒔きますね。」

リムル「それは大豆。」

紫苑「へぇ……………。」

エボル「上手くいけば、色んな物に加工できるよ。」

シズ「そうね。味噌や醤油、納豆とかも良い感じね!」

 

 そういえば、シズさんは戦時中の日本の出身だから、納豆は好きなのかもな。

 ちなみに、俺は納豆が大好きだ。

 だから、楽しみだ。

 そんな中、紫苑と水華は首を傾げる。

 

紫苑「なっとー?」

黄歌「それは、何ですか?」

エボル「ああ。納豆というのはな、保存が効いて、長く食べる事が出来るんだ。」

黄歌「ほう。それは良いですね!」

リムル「あと、簡単に言えば、腐った豆!」

黄歌「腐った……………?」

エボル「黄歌。腐ったというよりは、発酵食品でな。結構美味いぞ。」

 

 俺は、黄歌に納豆がどういう物かを伝えた。

 黄歌はそれを聞いて、納得していた。

 すると、紫苑が叫ぶ。

 

紫苑「リムル様は腐った物が好き…………!リムル様は腐った物が好き…………!」

リムル「訂正する!発酵な、発酵!」

紫苑「今後のお食事にご期待下さい!腐った物を食卓一杯漁ってきますので!」

リムル「やめろ紫苑!メモを取って、何を作る気だ!?紫苑〜〜〜っ!!」

 

 リムルの叫びが響く。

 言い方が悪かったな。

 俺たちはそれを見て、苦笑していた。

 その後、ガビル達に水田を案内していた。

 稲を育ててもらう為だ。

 

リムル「という訳で、ガビル達には、稲を植えてもらう。」

ガビル「お〜!ありがたき幸せ!では、歓喜の歌を〜!」

リムル「それは良い。」

エボル「湿地に生息しているお前達にはピッタリだろ?」

ガビル「はっ!ここなら如何なる戦いでも……………負けませんなあ!何なら、技のキレを水渦槍(ボルテックススピア)の演武で……………!」

リムル「それも良い。」

 

 というより、ここは水田だぞ。

 ここで戦う訳じゃないからな。

 俺は念の為に、釘を刺しておく。

 

エボル「言っとくが、米の改良と栽培は割と本気で取り組んでるからな。浮かれたりなんてしていると……………。」

ガビル「何と失礼しました。」

 

 分かってくれたか。

 俺たちとしても、たまには白米を食べたい。

 

ガビル「我ら一同。その気持ちに応えるべく……………神聖な舞を〜!」

 

 ガビル達はそう言って、ざるをどこからともかく出してきて、踊りだす。

 どじょう掬いじゃねぇか。

 

ガビル達「あ、びっちゃばっちゃ!びっちゃばっちゃ!よいよいよいよい!」

リムル「良いから早く始めてくれませんかねぇ。」

シズ「賑やかだね………………。」

エボル「ガビル達はこういう奴らだったよな………………。」

 

 そうだ、こういう奴らだった。

 ダメだこりゃ。

 何とか作業を始めたのを見て、俺たちは移動する。

 すると、ゴブタが話しかけて来る。

 

ゴブタ「リムル様とエボル様だ!リムル様〜!エボル様〜!」

リムル「おお、ゴブタ!」

ゴブタ「どこ行くんすか?」

エボル「ああ。リリナさんに先に作ってもらってた春野菜の畑があるんだ。一緒に見にいくか?」

ゴブタ「行くっす!」

リムル「よし、じゃあ頼む。」

 

 俺たちは、春野菜のエリアに向かう。

 

「「「「おお〜!」」」」

 

 それを見て、俺たちは感嘆の声を出す。

 

ゴブタ「すげーっすね!もう出来てるじゃないっすか!」

リリナ「今日は賑やかで、何だか嬉しいですね。」

リムル「だろ?今年は畑も大きく作るんだ。皆、初めての奴も多いけど、面倒見てやってくれ。」

リリナ「はい!私はこの街の農業担当ですから!任せて下さい!」

 

 頼もしいな。

 すると、ゴブタは案山子に気づく。

 

ゴブタ「あ?何で畑の真ん中に人形があるんすか?」

エボル「案山子だよ。カラスよけの。」

リリナ「でも、あまり効果が無いんですよ。折角の春野菜も、こんな有様です。」

 

 リリナはそう言って、一つの春キャベツを取り出す。

 その春キャベツは、齧られていた。

 

リムル「げ!俺の好きな春キャベツ!」

シズ「齧られてるね………………。」

ゴブタ「あいつら、頭良いんすよ!こんなチャチなんじゃダメっす!自分に任せて下さい!」

 

 ゴブタはそう言うと、作業を始める。

 

ゴブタ「おりゃあああ!出来た。どうっすか?この逞しい肉体。そして、精悍な顔立ち。これでもう安心すよ!ちょっと隠れて見てみましょう!」

エボル「精悍……………?」

シズ「どうかな……………?」

 

 その案山子は、ゴブタに似た様なデザインとなった。

 ある種の不安を抱きながら、俺たちは隠れる。

 

ゴブタ「これならあいつらもビビって、絶対に大丈夫っす。」

 

 俺たちが見ている中、その案山子は、動物達に攻撃されまくり、壊れてしまった。

 ゴブタが、ムンクの叫びみたいな顔になった後、壊された事実に撃沈していた。

 

ゴブタ「あう……………あう……………あう……………。」

リムル「これ吊るしてみ。」

リリナ「何です?これ。」

シズ「これは何なの?」

エボル「目玉君って言ってな。カラスよけのアイテムだよ。」

 

 まあ、案山子よりもそっちの方が良いかもな。

 その後、俺、リムル、シズさん、紅丸の4人で、稲を植えていく。

 

リムル「ふぅ……………。」

エボル「良い感じじゃないか?」

シズ「うん。」

 

 俺とリムルがそう話す中、蒼影は、別の場所で、クナイを地面に刺していた。

 それも、等間隔に。

 

蒼華「凄い……………。」

蒼翼「確かに……………。」

蒼影「フッ。巡回警備の時間だ。行くぞ。」

蒼翼達「はっ!」

 

 蒼影はそう言って移動する。

 そんな中、蒼華と蒼翼は、地面に突き刺さったクナイを一本ずつ取って、つぶやく。

 

蒼華「種まき…………したかったのかな…………。」

蒼翼「そうかな……………?あっ。」

 

 そう呟く中、蒼影が二人が持っていたクナイを糸で回収する。

 

蒼影「遅れるな。」

蒼華「はっ、はい!」

蒼翼「分かりました!」

 

 二人はそう返して、蒼影に向かう。

 一方、朱菜達は、炊き出しの準備をしていた。

 

ハルナ「朱菜様!鍋の準備ができました!」

朱菜「ありがとう。」

「「ただいま。」」

 

 ハルナと朱菜がそう話す中、ガルムとドルドの二人が帰って来る。

 

ハルナ「ガルムさん!ドルドさん!お帰りなさい!」

ドルド「おや、朱菜ちゃん達も畑に行くのかい?」

ハルナ「ええ。仕事がひと段落したので、炊き出しに。」

朱菜「頑張る皆さんの為に、お昼には温かな物を食べていただこうと思いまして。」

ガルム「おお。そりゃ良い。」

ドルド「あとは任せて行ってきな。」

ハルナ「ありがとうございます!」

朱菜「では、行ってきます!」

 

 ハルナと朱菜は、畑の方に向かう。

 それを見ていたガルムとドルドは。

 

ガルム「良い娘だなぁ。兄弟。」

ドルド「そうだなぁ。兄弟。」

「「んっ!」」

 

 そう話すと、猛然と作業を始める。

 

ガルム「お尻と足首がキュッと!」

 

 ガルムは板にデザインを書いて、それを積み重ねていき、ドルドはミシンを使う。

 

ドルド「いける!いけてる!」

 

 二人が作業をする事しばらくして、作業は終わり、もんぺ服が出来上がった。

 それを見ていた二人は。

 

ガルム「もんぺ姿いいなあ、兄弟。」

ドルド「そうだな、兄弟。流行らそう。」

 

 二人は満足していた。

 周囲は、布やら糸や裁縫道具で散乱する中、それを見ていたカイジンは。

 

カイジン「…………………お前ら、仕事熱心だな。」

 

 そう言うと、上から梁が落ちてきた。

 一方、畑の方では、ゲルドは色んな人たちに呼ばれていた。

 

女性「ゲルドさ〜ん!」

ゲルド「おう。」

男性「ゲルドさ〜ん!」

ゲルド「待ってろ。すぐに行く。」

 

 ゲルドは、物を運搬していた。

 そんな中、俺とリムルは、ゲルドに話しかける。

 

リムル「お〜い、ゲルド。」

ゲルド「ああ……………。」

エボル「折角だし、ゲルドも植えてみろよ。」

ゲルド「いや……………俺たちは運搬役で………………。」

リムル「良いから、良いから。」

ゲルド「はっ、はぁ……………。」

 

 ゲルドは、俺たちの言葉に折れて、苗を植える事に。

 

リムル「そうそう。等間隔に。」

エボル「苗を潰すなよ。」

ゲルド「ん…………う〜ん……………。」

ゲルド「これで良いですか?」

エボル「ああ。これで、夏には実が一杯食べれるぞ。」

ゲルド「実が………………。」

 

 俺がそう言うと、ボアとゲルドはその苗を見ていた。

 しばらくの静寂の末、口を開く。

 

ゲルド「……………見にきても良いでしょうか?時々……………。」

リムル「おう。」

エボル「皆で見に行こう。」

シズ「ええ。」

 

 俺たちはそう話す。

 その後、昼飯になった。

 おにぎりと味噌汁が配られた。

 

白老「ずっと中腰は流石に堪えるのう…………。」

黒兵衛「何言ってるだ。誰よりも正確で速かっただ。」

白老「ヌホホホホ。年の功よ。」

 

 白老と黒兵衛は、そう話す。

 そんな中、ゴブタは鍬を持ちながら言う。

 

ゴブタ「自分のご褒美って、本当にこれなんすかね?」

 

 ゴブタは、若干不安になっていた。

 一方、朱菜は皆にお昼ご飯を配っていた。

 

朱菜「はい!」

子供「ありがとうございます!」

朱菜「お兄様もお昼いかがですか?」

紅丸「うん。」

 

 朱菜の受け取った昼食を持ちながら、子供が移動するのを見ながら、朱菜は紅丸に尋ねる。

 すると、子供達が紅丸に質問をする。

 

子供「紅丸様!」

紅丸「うん?」

子供「どうしたら、紅丸様みたいに強くなれるんですか?」

子供達「うんうん!」

紅丸「そうだな……………。」

 

 子供達の質問に、紅丸は子供達に視線を合わせる。

 

紅丸「好き嫌いなんかせず、何でもよく食べる事かな。そして……………まずは…………。」

子供達「わっ!」

 

 紅丸はそう言いながら、石を握り潰す。

 

紅丸「強い体を作るんだ。」

子供達「うわ〜!分かりました!紅丸様!ありがとう!」

紅丸「おう!午後も頑張ろうな!」

子供達「は〜い!」

紅丸「しっかり食って、強くなれよ!ちびっ子ども!」

 

 子供達は駆け出して、紅丸はそう言う。

 そんな中、朱菜が話しかける。

 

朱菜「お兄様もどうぞ。」

紅丸「ああ。」

 

 朱菜はそう言って、お盆を渡す。

 そんな中、味噌汁の中に人参が入っている事に気づいて、紅丸は朱菜に言う。

 

紅丸「いや……………だからちょっと、人参避けてくれって……………!」

朱菜「あら?強くなれませんよ。はい。」

 

 朱菜は、紅丸に有無をいわせずに、お盆を渡す。

 俺たちはおにぎりを食べながら周辺を見る。

 春の空気がガツンとくる。

 土の匂いは意外と強い。

 空気を胸に、飯を腹に。

 ただそれだけで、満たされる。

 ただそれだけで、実感できる。

 そんな中、シズさんが口を開く。

 

シズ「懐かしいな……………。」

リムル「シズさん?」

シズ「子供の頃、よくお母さんと一緒に、畑で作物を育ててたのを思い出すよ。」

エボル「そっか………………。」

 

 シズさんは思い出していた。

 かつて、魔王レオン・クロムウェルによって召喚される前、よくお母さんと一緒に、作物を育ててた事を。

 

リムル「寂しくないのか?」

シズ「………………確かに、もうお母さんと会えないのは寂しい。でも、新しく出来た第二の故郷で、こんなにも楽しい。だから、寂しくないよ。」

エボル「そっか。じゃあ、俺たちも手伝わないとな!」

リムル「ああ!」

シズ「一緒に頑張ろう。」

 

 俺たちは、作業を再開する。

 そんな感じで作業をしたら、夕方になっていた。

 俺たちは、口を開く。

 

リムル「じゃあ、無事、植え付けの終了を祝って、乾杯!」

エボル「お疲れさん!」

 

 俺たちは、食事をする事にした。

 

紫苑「んぐ、んぐ……………プハーッ!美味しい〜!」

黄歌「お疲れ様。いつもより美味しく感じるわね。」

村人「おっ!ロールキャベツ!」

村人「秋には無事に稲がなると良いなぁ。」

紅丸「お疲れ。良い働きぶりだったな。」

ゲルド「貴殿もな。」

ガビル「我輩の水田の舞はいかがでしたかな?」

リグルド「ヤッハハ…………失敬。見ておりませんで。」

村人「うーわっ!美味そうな匂い!たまんねぇ!」

ゴブタ「鍬さばきなら、自分に任せて欲しいっすね!」

ゴブツ「よっ!ゴブタ!」

 

 そんな風に、皆が作業の疲れを労い、ご飯を食べていく。

 そんな中、俺、リムル、シズさんは、トレイニーさんと一緒にいた。

 

トレイニー「皆さん、お疲れ様でしたね。」

リムル「まあ、本当に大変なのは、これからだろうな。」

トレイニー「そうですね。収穫までは色々……………でも、今年はきっと良い作物が取れますよ。」

シズ「うん。きっと、良い作物が出来るよ。」

エボル「おお。お墨付き!トレイニーさんは植物の専門家だしね。」

トレイニー「ええ。ですから……………。」

「「うん?」」

トレイニー「待っていたんですよ、私。お、さ、そ、い……………。」

 

 トレイニーさんはそう言って、リムルの麦わら帽子を自分に被せながら、そう言う。

 あ、やべ。

 この人誘うのを忘れてた。

 すると、トレイニーさんは涙を浮かべながら、スコップでその辺の土を掘る。

 

トレイニー「樹妖精(ドライアド)なのに……………管理者なのに……………。ずっとずーっと、そこの木の陰から……………。」

エボル「ごめんなさい!収穫時にはちゃんと声をかけますので………………!」

 

 俺が泣きながらスコップでその辺の土を掘るトレイニーさんを宥めると、ゴブタがやってきて、揶揄う。

 

ゴブタ「あー。泣かせた、泣かせた。」

リムル「機嫌なおして下さい。ほら、ポテチありますよ!」

トレイニー「…………………ぐすん。」

シズ「アハハハハ…………………。」

 

 こうして、俺たちはトレイニーさんを宥めるのに、苦労した。

 その後、トレイニーさんの事を知ってか知らずか、梅雨が始まった。

 異世界にも、梅雨はあったのだ。

 それを、俺、リムル、シズさん、ゴブタは外から見つめていた。

 

ゴブタ「今日も雨っすか。毎日これじゃあ、気が滅入るっすね。」

エボル「まあ、梅雨だしな。」

トレイニー「あらあら。そんな事を言わないで下さい。雨は必要なんです。天からの恵みを大地がたっぷりと受け止めて、緑は茂り、虫たちが増え、小動物が繁殖し、またそれが土に……………。」

 

 トレイニーさんはそう言うと、ポテチを食べて、口を開く。

 

トレイニー「あら、新味。そうして、森は着々と大きくなっていくのですから。」

シズ「そうなんですね。」

ゴブタ「へぇ……………だからちょっと太ったんすね。」

リムル「おっ……………!?」

エボル「ちょっ……………!?」

シズ「あ。」

 

 すると、雷鳴が響き、雨足が強くなる。

 俺はゴブタに言う。

 

エボル「おい!早く窓を閉めろ!」

ゴブタ「はいっす!」

 

 トレイニーさんを怒らせると、自然環境に影響を与えかねんな。

 というより、ゴブタ、それはあまりにも失言だろ!

 こうして、外は嵐となったのだった。

 そして、中も。

 シズさんは、黒笑を浮かべながら、ゴブタに近寄る。

 

シズ「ゴブタ君。前にも言ったよね?そういうのは言っちゃいけないって。」

ゴブタ「は、はいっす………………。」

 

 シズさんは、ゴブタに対して、説教をおこなった。

 ゴブタは、白くなって撃沈した。




今回はここまでです。
今回は、畑仕事の話です。
畑仕事を頑張っていきました。
エボルは、本家エボルトとは違い、コーヒーなどは美味しいです。
次回は、夏の話になります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。