引き篭もりアーカイブ   作:有機栽培茶

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逃げてないよという報告。
スランプ気味です…だから余裕あったら書き換えるかも…
そして今日試験があるので投稿です(?)


女子学生の闇

 

「コモリちゃん?コモリちゃんだよね!?」

「っ!?」

『やめろ!』

 

 

 勢いよく覗き込み、距離が一気に近まる黄色の目。ハイライトのないそれはボストンバッグのファスナーに手をかけ、開こうとする。

 そんなことはさせない。そんなことされたら死んでしまうだろ。そう思った私はすぐさまコントローラーを握りやめさせようとするが──

 

 

「邪魔しないで?」

 

 

 熱を感じさせないその声と、画面越しに向けられた視線に思わずコントローラーを落としてしまった。

 

 

「コモリちゃーん…?あれ?」

「っ!」

 

 

 させるか!下に向かって動き出したファスナーを内側から掴み、必死の抵抗をする。

 はいここで対抗ロールの時間です。受動側である私のSTR(筋力)の値は10です。そして黄眼ハイライトオフ女のSTR(筋力)は…180*1ですね。はい対戦ありがとうございました。自動失敗です。

 

 抵抗虚しくファスナーという最後の砦は開かれ、陽光が差し込まれて行き────2本の腕が突っ込まれた。

 

 

「!?!?!?!?!?」

「やっぱりそうだ!久しぶりー!」

 

 

 突然目に飛び込んできた陽光に目が灼かれ、そして体を包む謎の浮遊感。状況が一瞬飲めなかった。

 だがそれも目が周囲に慣れてゆくにつれ理解できるようになってゆく。

 両腰あたりに感じる掴まれるような感触に、普段より高く感じられる生身の視線。そして次の瞬間、目の前いっぱいに広がる白く、柔らかい壁。

 やっぱり状況が理解できなかった。

 だが、これだけはわかる。

 

 

「…く、くる…しぃ…」

 

 

 このままだと自分は窒息死するだろうという事実。

 

 

「あ!ご、ごめんね?大丈夫だった?」

「ぅ………だ、だれ…?」

「えぇ!?覚えてない!?私だよ!?」

「私に…そんな、陽キャの、知り合いはいない……だから、離して。溶ける…」

「溶ける!?」

 

 

 そうだ。陰キャに過度な接触は厳禁。限界を迎えた陰キャの体は溶けるのだ。そして溶け出した汁は大地に染みつきその地は不毛の地となる。

 

 という冗談は置いておき、この女と私が知り合い?ありえない。そもそもこの学園で私に知り合いがいるという事実がありえない。だって入学式後引きこもったし。中学からの知り合いの線もないだろう。だって記憶によれば中学もぼっち飯食ってるし。

 故に脳内検索をかけてもヒット数はゼロ…ん?いや待てよ?なーんか見覚えあるぞこの髪。ああそうだ!思い出した!あれだ!入学式の時唯一私に話しかけてくれた眩しすぎる陽キャ!

 

 

「…あの時の、ピンク色…?」

「そ、その覚え方は予想外だけど覚えてくれてて良かったよ。」

「私のことは忘れてたのに…」

 

 

 あの時のピンク色。誰も私に話しかけてくれない中唯一私に話しかけてくれた聖人。彼女には感謝の念を抱いているし、それと同時に罪悪感も覚えている。

 

 

「えと…ご、ごめん、なさい…」

「え?急にどうしたの?」

「…その……あの時、貴方から、逃げ出して…」

 

 

 そう、逃げだしたのだ私は。みんなの輪の中に混じりたかったのは、誰かと話したかったのは私なのに、手を差し伸べてくれた彼女から逃げ出してしまった。それはあまりにも失礼な行いだったと今でも思ってる。なんなら思い返せば、似たようなことが何回か中学時代にもあったようだ。何度も彼女が私に話しかけ、その度にそそくさと逃げ出していた…らしい……どんだけ陰キャ極めているんだ記憶定着前の私……いや今の私も人のこと言えないけどさ。

 

 

「いいんだよ。緊張してたんでしょ?仕方ないよ。」

 

 

 天使か?羽生えてるし天使か。

 

 

「あ…あり、がとぅ…ござい、ます…」

「なぜか私の時とはすごく態度に差があるような…」

 

 

 ったりまえだろクソ陽キャロールケーキぶち込みお嬢様。私をこんな地獄に呼び出した上に脅しつけて不当な契約を結ばせて?そーんなやつと、こんな私に何度も懸命に諦めず手を差し伸べて陽キャ街道へと導かせようとしてくれたこのおピンク様が同等なわけないだろうがばーか!

 

 

「それよりも…ごめんね?」

「え…?」

「コモリちゃんが不登校になったのってさ、ゲヘナの生徒にいじめられたからだよね?」

「…そ、そう…です、けど…」

「だから、あの時もし私が助けてあげれたら、こんなことにはなってなかったんじゃないかなって…」

「そ、そんなことない…」

 

 

 そんなことないんだよな、本当。だってあの頃私と同じ1年だったピンクちゃんがあの先輩達に勝てるとは思えないし、それにどーせ私があのまま通学できたとしても、目の前のロールケーキお嬢様が言うにはティーパーティーに入れられていた可能性すらあったらしいし、そんなものに入れられたらストレスでどっちにしろ不登校になる。

 

 そもそも私がこんな闇の深そうなお嬢様学校で生きて行けるとお思いで?あまりにも私の生息域との環境が違いすぎる。カカポ*2をサバンナにぶち込むような行いだ。

 

 

「でももう大丈夫だよ!これからは私がちゃんと守ってあげるからね!悪い人は全部私がやっつけてあげる!」

「え……あ、あの…大丈…」

 

 

 ん?なんか雰囲気が変わったような…

 

 

「例えば…貴方をこんなところに閉じ込めてたこの人とか。」

「え…ちょ、まっ!?」

 

 

 止める間もなかった。胸元に抱きしめられたまま、髪ピンクさんは目にも止まらぬ速さで棒立ちしていた掃除屋の首を掴み上げた。

 いや力強!?あの機体結構重量あったはずだよ!?それを、え?片手で?え?怖。てかなんかミシミシなってるんだけど?え?今ベコってなんか凹んだ音したんだけど?怖…

 じゃないくて!

 

 

「ま、まって…!」

「大丈夫だよコモリちゃん。今度こそ私が守ってあげるからね。」

「そう…いう、ことじゃ…!」

 

「いい加減にしてくださいミカさん。ちゃんとコモリさんの話を聞いてあげてください。」

 

「ナギちゃん…?」

「…!」

 

 

 よくやったナギサぁぁぁ!!いやナギサ様と呼ばせてくれ!な!私たちはもう親友だ!愛してる!ちゅっちゅ!(下手な投げキッス)

 

 

「あ、コモリちゃ──」

「ご、ごめんなさい!」

 

 

 それじゃ!私逃げるから!そう心の中で私は叫び、ポカンとしているピンク髪──ミカさんの隙をついて、にゅるりと拘束から抜け出し、コントローラを拾い上げ、再度ボストンバッグの中に引きこもった。

 この間わずか数秒。あまりにも手慣れた手つきで私はマイハウスの中に滑り込んだのだった。

 

 

『桐藤ナギサ。依頼の件は承った。そして貴方に深い感謝を。便利屋68の名にかけて貴殿を守り通そうではないか。では、今日はこれにて失礼する。』

 

 

 そして私の行動に注目が移った隙を狙って掃除屋を動かし、首を掴む手を叩いて抜け出した。そしてものすごい早口でそう読み上げさせた音声を放ち、掃除屋は大扉の向こうに走り去っていった。

 

 

「っ!待て!」

 

 

 すごい声色でピンク髪───ミカは私を追いかけようと声を荒らげるが、それに待ったをかける者がいた。

 

 

「待つのは貴方ですミカさん。…はぁ、今日は誰が来る日だったのか忘れたのですか?」

 

 

 ナギサ様だ。本当愛してる。あとは頼んだ。

 

 

「え!?…えっと…掃除屋…だよね?さっきのコモリちゃんを連れ去った…」

「はい。その掃除屋がどんな人かも話しましたよね?」

「…ロボットを操る()()()()便()()()6()8()()()のなんでも屋………え?じゃ、じゃあ、アレはコモリちゃんが…」

「…やっと気づきましたか?」

 

 

 そう言ってナギサは深いため息をつく。少しの呆れと、流石のミカもあのロボットがコモリ本人で、彼女が想像しているようなことにはなっていないと理解したのだろうと言う安心から。

 

 

「そっか…じゃあ、コモリちゃんはまだ…」

 

 

 だが彼女は見落としていた。いや、気づけなかった。彼女の本性に。そして彼女の怒りの矛先がどこへ向くのか。

 

 

「ミカさん?何か言いました?」

「ううん?何でもないよ☆」

 

 

 ミカは天使のような笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 正気度を一気に失い、一時的な狂気を発症しかけた陰キャ。そう、私だ。

 いやぁ、恐ろしい。やはり学園は魔境だ。到底私のような陰の者が生息できるような環境ではない。

 

 それと…また彼女から逃げ出してしまったが、これは仕方がないのではないか?前の件は謝れたし私としては上出来ではないか?なあそうだろ?そう言ってくれ罪悪感がやばい。

 

 …いや、うん。悪いとは思ってるよ。でもさぁ、言い訳させて?本当に怖かったんだって。アレだよ。自分じゃ逆立ちしても敵わないような圧倒的強者を前にしたような潜在的な恐怖感を覚えたね。完全に捕食者の顔してたって。あのままだったら間違いなく食われてた。

 

 

「……って、ことが、ありました……はい。」

「………へぁ?」

 

 

 そういえば例の容疑者さん達を見に行くの忘れていたな。まあいいか。今じゃなくても。何せ生き残るのが先だ。明日護衛ついでに観に行けばいいだけの話だから。

 

 

「ちょ、ちょーっと待ってちょうだい?」

「はい…?」

「え、エデン条約に?ティーパーティーのナギサ?」

「あ…あと、ミカって人も、会いました…」

 

 

 なんか目の前で報告したアル様がめちゃくちゃすごい顔しているけど……

 

 

「……し、失礼なこととかしなかった?」

「ロールケーキぶち込まれそうになりました。」

「ミ、ミカって人には?」

「掃除屋の首絞められました。」

「わーーーーー!!??!!??」

 

 

 うわっ!?急に奇声を上げないでくださいよ。

 

「どうしよどうしよどうしよう…絶対目をつけられたわよね!?と言うかコモリ貴方それ大丈夫だったの!?」

「だ、大丈夫…ですけど…どうしました?アル様…?」

「コモリ!」

「ひゃ、ひゃい!?」

 

 

 って近い!急に顔を近づけるな心臓に悪い!貴方のイケメン顔で昇天したらどうするつもりですか!?ご褒美ですか!?

 

 

「いいこと?絶対にこの依頼、成功させなさいよ!?」

「わ…わかってます。受けた依頼…絶対達成……便利屋68の顔には、泥は塗りません…!」

「ぜ、絶対よ!?」

「絶対…です…!」

 

 

 そう言って私はガチ恋距離でアル様に誓ったのだった。

 

 もう、手遅れであったとも知らないで。

*1
STR参照値。〜15貧弱、141〜異界の生物などの怪物的な筋力。(クトゥルフ神話TRPG7版)

*2
周囲に外敵がいなかったがために警戒心も抵抗手段も持たない虹色に光って求愛行動ダンスを踊る鳥。一時期ネットのおもちゃだった。




というかこんだけ描いてると私自身コモリちゃんに愛着湧いちゃって逃げるに逃げ出せなくなってきてます。

(戦闘力)
ミカ>>>>>>>>>>越えられない壁3>>>>>>>>掃除屋>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>越えられない壁2>>>>>>>>>>>>>>>>>越えられない壁1>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>コモリ

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