引き篭もりアーカイブ   作:有機栽培茶

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特に何も考えずに描いてるのでお手柔らかに


お仕事

 

 さて、またあったな観測者諸君。

 

 前回は中途半端なところで記録を終了してしまったことを謝罪しよう。自己紹介もせずに終わるのは、よくなかったと思っている。……少しトラウマが蘇っただけだ。うん、大丈夫。

 ……ちょっと待ってくれ、今震えを治めるから。

 

 よし。まずは自己紹介だったな。

 私の名前は新戸(あらと)コモリ、と言うらしい。もちろん今世での名前だ。前世での名前は個人情報だからな。それに需要もないだろう。

 そしてぇ?皆さんが気になっているであろうバストサイズはぁ〜???

 

 …………すごく、小さいとだけ言っておこう。

 うん、あるにはあるんだ。存在は、するんだよ。

 

 うん!自己紹介はこの辺りでいいだろう。他に気になるであろう外見情報は前回出したし別に良いだろう?これ以上の自傷行為はしたくない。

 

 

 

 さてさて、そんなお外が怖い超絶美少女引き篭もりニートの私だが、もちろんこのままではいけないということくらいわかっている。今はなぜか前世では考えられない程のお金が入っている私の口座もいつかは底をつく。それにいざというときに助けを出せそうな両親もなぜか記憶に存在しない。

 これは困った。とても困った。容易く餓死する未来が見えた。

 痛いのが嫌だと引きこもった先が餓死だなんて嫌すぎる。

 

 

 故に私は一週間かけて外に出る決意をし、三日かけて重い鉄製の扉を開け世界に飛び立ったのである。

 

 そして命懸けの求職活動を行った結果。手に入れた仕事はなんと…驚くべきことに0だ。ここまでくると逆に凄いのではないだろうか。

 いや、一応私に仕事を紹介してくれた人はいた。可哀想な子を見るような目でな。

 

 でも、その仕事を私ができるかどうかは別なのだ。肉体労働?無理。傭兵?不可能。接客業?無理難題。驚くべきことに私はなーんにもできなかったようだ。そう、なにも。

 

 いやぁ……私の社会不適合さに驚いたよ。ははは。

 

 だが得たものもあった。緊張と疲労で瀕死状態に至っていた私は一つのガラクタ同然の代物を持って帰ってきた。そうガラクタだ。普通の人が見たらそう見えるのだろう。だが私の目は真実を映し出していた。

 

 そう、私のオタクアイがこれは『ロボット』であると言っている。

 

 ロボット、ロボットだぞ!?男のロマン!ビーム兵器でも搭載しているのだろうか!?これはもう求職なんざしてる暇はねぇ!

 

 

 そう意気込んで少しいじってみたもののうんともすんともしない。完全なガラクタだということと、ビーム兵器などというロマン兵器を搭載していないことがわかってしまった。またまた数週間の時間を消費して得たものはそんな夢のない事実と、神様から与えられたチートなのかは知らないが今世の私が前世以上に機械に関する知識を持ち合わせていたということだけだ。

 

 割に合わない。こうしている間にも貯金は減っていく。あとどうせならチートは痛覚無効やら片手で戦車を吹っ飛ばせる身体能力とかそういったものがよかった。

 

 

 

 だがその考えは数日後に180度回転することとなった。

 

 

『これ使えば私が外に出なくても金稼げるんじゃね?』

 

 

 あまりに天才的な発想。自分の頭の良さに驚きながら私は早速ロボットの修理と改造に取り掛かった。

 何をする気だったのか?それはもちろん自分の分身を作る、ロボットのラジコン化だ。この世界ではこのロボットのような姿をした銀行マンや可愛いいっぬの姿をしたラーメン屋さんがいるほどだ。このラジコンロボットが動いていても目立ちはしないだろう。

 

 それに一介のゲーマーでもあった私はFPSが得意で、陰の者特有の画面越しならば強く出れるという特性を持ち合わせていた。

 

 つまりこのロボットさえあれば私はこの過酷な世界でもまともに生きて行けると考えたわけだ。天才か?天才だったわ。

 

 

 

 こうして作り上げたロボットを使い、私は今を生き抜くために仕事をしているというわけだ。

 

 

 

『目標確認』

 

 

 

 手慣れた手つきで長い鉄の棒(スナイパーライフル)を構え、ヒビの入ったレンズ越しに茶色い毛の上にさらにファーコートを羽織った羽振りの良さそうな犬っころの頭部に狙いを定める。

 

 風は微風。障害物もなし。護衛は取るに足らない傭兵が6人に…事前情報によれば便利屋68という部活に所属する生徒たちが4人。問題ない。

 

 ん?何をしているのかって?言っただろう?仕事だよ。見ての通り工事員でもないし接客業でもない。もっと血生臭いものだ。傭兵や護衛という仕事が存在するように、私みたいな職につく人物がいても何ら不思議じゃないだろう?

 

 もちろん好きでやってるわけじゃない。あの頃は金に困っていたからな。この義体で街を駆け回ってやっとこさ見つけた仕事がこれ系のものだったんだ。それ以来、腕前を買われたのか何度も依頼を頼まれて、それ以外に金を稼ぐ方法もなかった私は断れず、ズブズブとこの業界に巻き込まれていき、以来ずっとこの仕事だ。金払がいいからとか、ゲーム感覚でやれて楽という理由もあるが…

 

 いやぁ、この世界の大人はみんな人間の姿をしていないから助かるよ。罪悪感を感じなくて済む。

 

 

『おっと、お喋りはこの辺りにしようか。目標が行ってしまう。』

 

 

 再度狙いを定め、トリガーに指をかける。

 悪いな可愛いわんこちゃん。あんたがどんな人間だったのかは知らないが、私の食費になってくれ。

 

 

『こっちだって生きるのに必死なんだからさ、恨まないでくれよ?』

 

 

 トリガーを引くと同時に、ズドンという爆音が鳴り、銃口から硝煙が立ち上る。

 

 やったか。

 

 そう思い、画面越しの景色にガッツポーズを決めかけたその時だった。

 

 

「……は…?」

 

 

 あり得ない光景を、観測者として隣に設置していたカメラが映し出しているのを目撃してしまった。

 

 

「…なに、が…おこ…った?」

 

 

 バレていなかったはずなのだ。

 奴らは私の気配すら感じ取れていないはずだった。だというのに、なんだこれは。

 

 

 なぜ…なぜあの生徒は銃弾を受け止めている!?

 

 

『馬、馬鹿な』

 

 

 カメラが映し出すのはピンク髪の学生が、頭を下げることで銃弾からその身を挺して雇い主を守っている光景だった。

 あり得ない。どんな反射神経だ。どんな視力だ。

 

 しかもなかなかの口径の銃弾が当たったというのに奴は頭を押さえ呻くのみ。ヘイローの破壊にすら至っていない。

 …生徒たちの頑丈さは身をもって知っていたはずだが計算外。ここはプランを組み直す必要が──────

 

 

『──────ッッッ!!??』

 

 

 視線があった。それと同時に義体越しだというのに感じ取ったはっきりとした殺気。くそっ!リーダーが化け物なら部下もまた化け物か!

 

 

『撤退するっ!』

『なっ!?おい“掃除屋”!奴はやれたのか!?』

『依頼は失敗だ。前金と違約金を貴様の口座に送っておく!この番号にはかけてくるな!』

『な────』

 

 

 依頼主からの返答を聞く前にぶっちぎる。あんな化け物集団のことだ。逆探知もありえる。

 依頼達成率100%という看板が崩れる?そんなことを考えていられるほど余裕はない。今すぐ撤退し、奴らのことを調べなければ。

 

 

 

「…便利屋68……お前、たちの顔は…ちゃんと、覚えた。」

 

 

 

 これが、私がこの仕事について初めて知った敗北の味であった。

 

 

 

 

 

 

 

「いいわ!その依頼!私たち便利屋68に任せなさい!」

 

 

 あの時、その場の流れでこの依頼を請け負ってしまったことを少女はひどく後悔していた。

 

 

「社長?大丈夫?」

「ダダダだ、大丈夫よ!平気平気!」

「その割には冷や汗すごいけど〜?」

「き、気のせいじゃないかしら!?」

「さ、さすがですアル様!」

 

 

 本音を言えば今すぐにでも帰りたかった。

 今回の依頼は簡単な要人警護。ヘルメット団や不良たち。敵組織の送りつけてきた刺客から依頼主を守るという単純かつ高収入な依頼…のはずだった。

 

『奴らが“掃除屋”を雇ったという情報がきたのじゃ。お主らはかなりのやり手と聞く!どうか、どうかこの依頼を受けてくれ!』

 

 依頼主が発した単語。掃除屋。その言葉を思い出すたびに恐怖が湧き上がってくる。

 自称アウトローの彼女でも知識にある伝説の存在。ブラックマーケットである条件を満たした時出会うことができると言われている伝説の傭兵。依頼達成率は100%。どんなものでも金さえ積めば“掃除”してくれるという噂だ。

 

 便利屋68のリーダーである彼女──陸八魔アルもまた、アウトローを目指す者として彼に憧れを抱いていた。

 

 それ故に事の重大さを理解していた。

 

 自分達が掃除される側になってしまったという事態の深刻さを。

 ああ、今すぐにでも帰りたい。

 

 

「こんな小娘がいても意味ないでしょうよ会長。」

「な、なんですって?!」

「は!お前らなんかいても意味ないって言ってんだよ。会長の護衛は俺らだけで十分だってな。」

「き、聞き捨てならないわね!そういうあなた達こそいざという時に私たちの足を引っ張るんじゃないわよ!」

「なっ!?てめっ!」

「さ、さすがアル様!」

 

 

 こうして挑発する彼女だが、内心はビビりまくりだ。例の掃除屋もそうだが、目の前の大人たちも裏社会に通じる猛者達なのだろう。顔からしてもう怖いのだから。

 

 

「テメェわかってんのか?俺たちに喧嘩売るってことの意味をよぉ。」

「あ、アル様。どうしますか?やっちゃいますか?」

「…やめときなよ。今は争ってる場合じゃないでしょ?」

 

 

 売り言葉に買い言葉。顔に当たる部分のモニターを激しく点滅させながら怒鳴り散らす大男と、それに応えるように散弾銃を構え出す平社員──ハルカとそれを諌める課長──カヨコを尻目に、社長である彼女はそれどころではなかった。

 

 

 くしゃみが出そうなのだ。

 

 

「おい無視してんじゃねぇぞ!」

 

 

 真のアウトローたるもの常にカッコ良くなければならない。故に、こんなところで『ぶえっくしょん』とくしゃみをするわけにはいかないのだ。なんとかしてこの衝動を治めなければ。たとえ抑えられなかったにしても、できる限り小さく、目立たないように。

 

 

「─────」

 

 

 あと少し。あと少しで抑え込むことが───

 

 

「おい聞いてんのか!!」

「ぴっ!?」

 

 

 あ、だめだ───

 

 

「ーーーーっぁ」

 

 

 しかし、くしゃみの波が決壊するその瞬間。

 

 鼓膜を破るほどの爆発音、いや発砲音が鳴り響く。と、同時に炸裂するくしゃみ。

 

 

「───くちゅん!

 

 

 音はなんとかなった。しかし動きはどうにもならない。大きく前のめりになった動きはもはやごまかすことができない。

 しかし、またもや予想外のことが起こった。

 

 

「──きゃ!?」

 

 

 右側頭部に何かがものすごい勢いでぶつかったような衝撃が生じる。頭が割れるかと思った。吐き気がするし目が回って上下がわからなくなっている。

 あまりの急展開に追いつかない頭と理不尽な痛みに涙が出てきた。

 

 

(あ、やばいもう無理───)

「っとと」

 

 

 これ以上立つこともできなくなり、倒れそうになったところを行動隊長──ムツキが支えた。

 

 

「な、なにが……」

「敵襲!狙撃だ!会長を守れ!」

「いや、大丈夫。逃げたみたいだよ。不意打ちを防がれたから警戒したのかな。」

「な!じゃ、じゃあ…」

 

「……へぁ?」

 

 

 なぜかみんな一斉にこちらを向いてきた。

 

 

「よくやった嬢ちゃん!」

「やるじゃねぇか!さっきは悪かったな!」

「え、え?」

「ありがとう!ありがとう!これも全て君達のおかげだ!報酬は弾む!本当にありがとう!」

「すご〜い!さすがアルちゃん!」

「す、すごいです!」

「うん、本当にすごいよ。本当。」

 

 

 なぜ褒められているのかはわからない。

 だが、たった一つわかることがある。

 

 

「……ふ、ふふふ!そうよ!私はすごいの!掃除屋なんて戦うまでもないのよ!」

 

 

 自分は凄い。ただそれだけが確かなことなのだ。




新戸コモリ⭐︎⭐︎
役職:SPECIAL
ポジション:BACK
クラス:T.S
武器種:HG
攻撃タイプ:貫通
防御タイプ:軽装甲
学園:トリニティ総合学園3年生(不登校)
部活:帰宅部
17歳
誕生日6月20日
身長146cm
趣味:ゲーム
トリニティ総合学園所属。不登校の少女。
傭兵「掃除屋」の中身であり、凄腕のゲーマーでもある。
トリニティ内の政治的争いには関与せず、どの派閥にも属していない。(入学式後不登校になったため)
便利屋68とは何やら因縁があるようだ。

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