引き篭もりアーカイブ   作:有機栽培茶

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前回は私の性癖がご迷惑をおかけしました。
私だって先生を虐めたかった!愉悦したかっ((((殴

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Vol.? 掃除屋小話編
小銭稼ぎ1


 

 それは突然のことだった。

 

 

「…くくく…よーくもさっきは煽ってくれやがりましたねぇ…?えぇ?……窮鼠猫を噛む…油断大敵…煽るのは、煽られる覚悟があるもののみ…!」

「……コモリもさっき煽ってたよね…?」

「ぅ……で、でも相手が先に屈伸してきた…!」

「でもその後コモリも死体撃ちしてたよね。」

「ぅぐ…っ!?……あ、あの程度、煽りには、含まれない…」

 

 

 壁にかけられた二丁の銃火器と、謎の絵画に、『一日一悪』と筆で書かれた、うちの社長の書道の残骸。そして今私が寝転がっている縫い目や補修跡の目立つ、以前は立派だったであろうソファー。

 

 『理想のアウトローなオフィス』を目指してうちの社長がデザインした豪華?……それなりに整ったオフィスは────

 

 

「…!はいワンダウン〜……なんで負けたか明日までに考えて………へぁ?」

 

 

 ───ブチンと音を立てて暗闇に包まれた。

 

 

「…っ!?」

「コモリ!」

「了解…!」

 

 

 腰のガンホルダーから拳銃を構えドアと窓を警戒するカヨコさん……と、滑り込むように手慣れた手つきで机の下に潜り込む私。

 

 そしてそのまま他のメンバーにメッセージを送る。

 

 

 かちり、かちりと時を刻む時計の音が嫌に響く。

 

 

 ただの日常の一幕であったはずのこの時間は瞬間的に戦場という非日常と変貌した。

 

 

 早くなる鼓動に、浅くなる呼吸。

 

 

 襲撃犯はいつくるのかと、今か今かと待ち構え…

 

 

「……これ、多分ブレーカーが落ちただけかも。」

 

「…でも、そこまで、電気は使ってない…はず…」

「んー…あ。そういえばこの前()が届いてたっけ。」

「紙…?……ん、あー…そう言う…」

 

 

 いつまで経っても訪れない襲撃に聞こえない銃声。これは襲撃ではなくただの停電だと言う判断をしたカヨコさんと私は警戒をとき、机の下から這い出る。

 

 ドライヤーに電子レンジに洗濯機とかそう言うブレーカー落としコンボは叩き込んでいないはずなのだが……と考えて、カヨコさんの「紙」と言う言葉で一つの可能性に辿り着く。

 

 そのときだった。慌ただしい音を立てて隣の部屋と繋がっていたドアが開かれる。

 

 

「一体何事!?襲撃!?襲撃なの!?」

「もうアルちゃん慌てすぎだって〜」

「て、敵はどこですか!?全部吹き飛ばします!!」

 

 

 ……騒がしい。

 

 

「社長、これ襲撃じゃないよ多分。」

「じゃ、じゃあ一体なんだってのよ!?そんなに電気使ってないわよ!?」

 

「んー…あ、った……」

「?な、なんですかこれ?」

 

 

 私は完全武装状態の彼女たちに向けて、散らかった書類の中から掘り出した一枚の紙切れを例の紋所のように見せびらかす。

 

 

「この、請求書が目に入らぬか〜…」

 

「……へ?」

 

「電気代の、請求書…?」

 

 

 そこに書かれていたのは…紛れもない、滞納された電気代の請求書であった。

 

 

「うん…そう…詰まるところ…電気を止められた。」

 

「…!だ、誰ですかそんなことをする人は!アル様!私が撃ち殺して…!」

「だ、だめよ!?!?」

 

「そして〜……これだけじゃ、ない。」

 

 

 そう言って私は同じく書類の山の中から発掘したもう2枚の紙を取り出した。

 

 

「…私の記憶通りだったら…って思って、探したけど、案の定…」

 

 

 私の手に握られた紙に書かれているのは『水道代』と『ガス代』という文字。

 

 もちろん請求書だ。

 

 

「たぶん、もうすぐこれも…」

 

「アルちゃーん!水道でないーー!」

「なんですってぇぇぇ!?!?」

 

 

 ……手遅れだったみたいだ。

 

 

「ちなみに、私の記憶が正しかったら…家賃も、そろそろ収めないと、やばめ。」

 

「どどどど、どうしよう…」

「随分、困ってるみたい…」

「コモリ!!なにか!何か解決策はないの!?もう今月の食費も限界なのよ!?」

「……依頼は?」

「きてないわ!!!!」

「自信満々に言うことじゃ、ない…」

「だって来ないんですもの!」

「はぁ……ちょっとまって…」

 

 

 アル様にゆすられながら私は自分のスマホを取り出す。

 モモトークを開いて一通り目を通してみる。上から先生に始まり少し交流のある生徒たち。かつての傭兵仲間に企業。あと怪しい大人たち。

 

 先生……は、なしだ。先日依頼という名のお手伝いをさせていただいたばかり。これ以上は迷惑をかけられない。彼が過労死してしまう。

 

 んで、次に交流のある生徒達……もないな。依頼なんてあったとしてもお使い程度。生活費の足しにはならない。

 

 怪しい大人達……は論外。アレほど信用という言葉が似合わない者たちはいないだろう。見た目からして胡散臭すぎる。

 

 そんで傭兵。傭兵ねぇ……うん。旧友もいるんだけど、悪友というか……信用ができない、というか……関わりたくないタイプ…

 

 

「Prrrrrrr…」

 

 

 ……

 

 

「ん?電話見たいね?」

「……嫌な、予感がする…」

 

 

 私は変声機を口元に当て、電話をとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、久しぶりですね、掃除屋。お元気そうで何より!」

「………。」

『………チッ』

 

「え、え、な、何よこの空気。」

 

 

 電話で伝えられた廃ビルの一角で待っていたのは藍色の髪をした犬耳の生徒と、同じくトリニティ生の様な翼を生やした赤髪の生徒だった。

 

 

「いやぁ。まさか!“高給取り”で有名な掃除屋さんが?こんな端金な依頼に飛びつくだなんて思ってもいませんでしたよ。」

 

『運の良いことに今はセール中でな。それにしても良く回る舌だ。弱い犬ほど良く吠えるとはよく言ったものだが、事実だったらしい。』

 

「っ!何度言ったらわかるんですか!?私は犬じゃなくて!狼だと!」

『似た様なものだろ。というか突っ込むところそこか。』

「弱いのは事実ですからね!」

 

 

 謎に自信ありげにペッタンコな胸を張る少女を画面越しに見つめ、ため息を吐き出す。

 そう、こいつらが私の傭兵仲間であり、旧友であり、悪友であり、商売敵でもある────

 

 

「さて、と。ほったらかしにしてすみませんね。まさかあなた方ほどの…この馬鹿をわからせられるだけの力を持つ実力集団。彼の便利屋68に来ていただけるなんて思ってもいま───

 

「長い。俺は赤鳥ホムラ。戦闘は得意だ。短い間だがよろしく頼む。」

 

────……はぁ。黒晶アイムです。まったく。挨拶くらいちゃんとさせて欲しいものです。」

 

 

 通称『情報屋』の二人組である。

 

 

「あ、よろしくお願いするわ。私は陸八魔…」

『アル様。まともに相手する必要ない。どうせ偽名。前聞いた時とは違う。』

「ええ!?ぎ、偽名ですって!?…アウトローだわ…。」

 

 

 あーいけません。いけませんアル様。アレは参考にしてはいけないタイプのアウトローです。

 

 

「聞きましたホムラ?アル様ですって。あの天下の掃除屋様の謙り様。もう語尾に“W”がついちゃいますよ。ぷーくすくすw」

「……うるさい。」

 

 

 ……ムカつく野郎だが、仕事相手としては心強い奴らでもある。情報戦特化のアイムこと『黒狼』に戦闘特化の『赤鳥』。

 ブラックマーケットでもなかなかに名を轟かせた、()()()()()()優秀な傭兵達だ。私も一度敵として戦ったことがあるが手強い…というよりめんどくささが勝る二人組だった。

 

 とにかく、そんな二人となぜこんな廃ビルで落ち合ってるのか。

 

 

「こほんっ。そろそろ本題に入りましょう。皆さん、此処にお集まりということはこの依頼…いえ、イベントにご参加いただけるということで宜しいですね?」

 

 

 それはこいつらの誘いに乗ったからだ。

 

 

「依頼内容の振り返りといきましょうか。」

 

 

 そう言って彼女は端末を取り出し、ホログラムを展開する。

 

 

「ミレニアムの『廃墟』…みなさんご存知の通り、トリニティの『カタコンベ』、ゲヘナの『アビス』に並ぶ特異地点。そこからとある信号をキャッチしました。」

 

 

 ……『廃墟』。ミレニアム領内に存在する軍事工場跡を含むある一定地域の通称であり、私の『掃除屋』や『散し屋』に使用するオーパーツ集めにお世話になった場所でもある。

 

 まあ連邦生徒会長によって出入りの制限される場所だから一般生徒は出入りできないがな。私は良いんだ。バレてないから。

 

 

「そしてその正体は、とある巨大なオーパーツ。スキャンしてみたところ、その周辺にはまるでオーパーツの集積場とでもいうかの様に、様々な種類のオーパーツが積まれていることも確認済みです。」

 

「…てことは!」

 

「そう……つまるところ、そこはオーパーツの山!宝の山!金目のものがたっぷりというわけです!!!」

 

 

 大袈裟に両手を広げてアル様の質問に返すアイム。だが、彼女の言っていることは事実。彼女の情報が正しいのなら、そこに置かれているオーパーツだけで、ちょっとした財産ができるほどのもの。

 生活費を賄うどころか、生活の質を大幅に向上することも可能。より大きなオフィスに住むことだって可能なのだ。

 

 

「と、取り分はどうするわけ!?」

「そうですねぇ…んー……七対三でどうです?そっちが七で。」

「ななたいさん…………七対三!?!?!?」

 

 

 アイムに提示した配分率。それに驚きを隠せずアル様が悲鳴にも歓喜にも近い声を上げる。

 

 

「あ、やっぱこの情報持ってきたの自分なんで六対四で勘弁してくれませんか?」

「ほ、ほんと?ほんとに六対四でいいの!?こっちが六なのよね!?」

「勿論。」

「あ、あ、あ……」

 

 

「やったぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 アル様はそんな可愛らしい歓声をあげて他のメンバーの元へすっ飛んでいった。実に尊い…

 

 ……だからこそそんなアル様を危険な目に遭わせないために、アル様の至らないところを私が補填するのだ。

 

 

『……何のつもりだ?』

「…何のつもり、とは?」

 

 

 惚けるつもりか?

 

 

『お前はさっき私のことを“高給取り”呼ばわりしたが、お前もそこそこな額を依頼人に請求してたこと忘れたとは言わせないぞ?』

「っ!」

「……赤鳥、下がってください。掃除屋さんも。いきなり銃を向けないでくださいよ。驚いちゃうじゃないですか。」

 

 

 銃のハンマーを押し込んだ。

 

 

「……はぁ。そんなに信用ないですかね?私。」

『ああ。』

「…そんなはっきりいうんだ。傷つくなぁ。」

『さっさと言え。』

「わかりましたよ。」

 

 

 こうさんこうさん、とでもいう様に彼女は両手を上げた。

 

 

「量が量なので、六対四でも十分ってのもありますが……その廃墟。私たちでは手に負えないのです。」

 

 

 彼女は語る。

 かつて軍事工場だったそこには、何者かによって今なお戦闘用オートマタや護衛ロボが闊歩する、いわば高難易度ダンジョンと化しており、自分達だけじゃその目標のブツをもって帰るどころか、目標の地点まで辿り着くことすら難しいのだと。

 

 

「そこで、戦闘を極力避けるスタイルだったとは言え、単騎で廃墟に出入りしていた貴方に白羽の矢が立った、というわけですよ。」

『…なるほどな。なぜ私の行動を把握していたのかなどは疑問に残るが…まあいい。わかった。』

「おお、では…」

 

『だが』

 

 

 おろしかけた銃口を再びアイムに向け、トリガーに指をかける。殺意を含んだ目で、念を押す様に、相手を威圧する様に私ははっきりと言葉にする。

 

 

『少しでも怪しいそぶりをして見ろ。殺すぞ?』

 

 

 

 

「……ははは、怖い怖い。」

 

 

 苦笑いを浮かべる彼女に背を向け、私も皆のもとに向かう。

 

 

「…でも、契約成立ですね。」

 

 

 ちょっとした小遣い稼ぎのイベントが始まった。

 

 




特に考えず下手にオリキャラをぶち込むのはカオスの原因。でもちょっと出すだけならいいよね。ということでこの話だけの限定メンバー。

黒晶アイム&赤鳥ホムラ
『情報屋』という名の二人組傭兵。身長的にはアイムが160ちょいでホムラが150ちょい。情報担当と戦闘担当。本当にこの一二話しか出さない予定だから覚えなくてもいいちょいキャラ。
(前作の主人公と脇役をもとに作られてるけど名残程度。ストーリーには関係ない。作者の自己満。)

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