引き篭もりアーカイブ   作:有機栽培茶

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英検大爆死した作者です。
助けて…誰か、私に英語を教えて…
後ついでに数学と化学と物理と地理と古典もお願いします!!(うちの子と比べ随分低スペな作者)


小銭稼ぎ2

 

 マークスマンの銃身を掴み───思いっきり振り下ろす。

 

 振り下ろされた先はべコンと気持ちの良い音を立てて凹みを作り、今の衝撃で、どこか回路が破壊されたのか“ソレ”はスパークを上げながら沈黙した。

 

 

「……相変わらず乱暴な戦い方ですねぇ…それでよく銃が壊れないものです。」

『なんだ?貴様もこれで殴られたいのか?』

「どう解釈したらそうなるのですか!?」

 

 

 物陰に隠れながら敵との戦闘を最低限にし、その戦闘も銃は使わず近接戦闘のみに限りながら私たちは荒れ果てた廃墟の中を進んでいく。 

 

 なぜ銃を使わないのか。

 キヴォトス人の相棒であると言っても過言ではないと言える銃。それは確かに凄まじい破壊力と少ない時間と手間で敵を処理することができると言う近接武器を遥かに超える利点を持っているのは間違いない。

 デメリットは音がでかいことや、マズルフラッシュが明るいことくらい。メリットの方が明らかに優っているだろう。

 

 だがこの状況に限っていえば、その少ないデメリットは多くのメリットを打ち消す致命的な欠点になり変わってしまった。

 

 そう、敵がバカ多いのである。もし少しでも物音を立ててしまえば、気づかれ、警告音、または戦闘音が鳴り響いた瞬間にでもゴキブリのように廃墟の隙間から増援が現れ、私たちを排除しにかかるだろう。そうなったら流石の便利屋68でも先生のいないこの状況ではきつい。

 

 

 そこで抜擢されたのが、近接戦闘も難なくこなす私……とついでにホムラであった。

 

 

「よくやったわコモ…ん゛ん゛!掃除屋!!そしてホムラ!」

「………ふん。」

『あ、あ、アル様に褒めて……わぁ……!』

 

「……ホムラさん。」

「ん?なんだ?」

「これが掃除屋って本当なんですかね…前会った時の威厳が全然…」

 

『騒がしいぞ駄犬。その耳引きちぎってやろうか。』

 

「なんで私にだけそんな当たりが強いのですか!?」

 

 

 駄犬は黙っていろ。

 

 しかし…本当に面倒な。

 確かに廃墟として捨てられたこの地は瓦礫やら何やら、身を隠す障害物は五万とある。だが、その分あたりを徘徊する機械兵が多いのもまた事実。雑魚戦が多発して進めない見たいな感じで、正直言うと非常にめんどくさい。その上少しでもミスしたら全滅の可能性が浮上すると言う精神すり減らしセット付き。お得だね、じゃねーんだよ。

 

 

「よいっしょ…っと。」

『む、すまない。見逃していた。』

「構わない。今は仕事仲間だ。助け合うのは当たり前だ。」

『感謝する。』

 

「……なーんでホムラには普通に接するんですか…」

『うるさいぞ駄犬。』

「なんでぇ!!??」

 

 

 良い加減飽きてきた。赤熱した刃を機械兵から引き抜くホムラを横目にそう思い始めた────ので、ちょっとした悪戯をしてみることに。

 

 

『アル様〜』

「え?なに…」

 

 

 振り返ったアル様に、先ほど壊した機械兵を向け───

 

 

『バンッ!!』

「きゃあ!?」

「ぅわ!?」

「む…」

「なになにー?」

 

 

 ちょっとした掛け声と共にソレが彼女たちに向けて光を放った。

 

 

「な、何するのよ!?」

『いや、ちょっと飽き…興味深いものがありまして。』

「興味深いもの?」

『はい。これ。写真です。』

「へぇ!」

 

 

 そう、写真である。

 ちょうどびっくりしたハルカさんと目を瞑っているカヨコさん。なぜか楽しそうなムツキさんに……

 

 

「私白目向いてるじゃない!?」

 

 

 なぜか白目を剥いているアル様。

 

 

「け、消してちょうだい!」

『いーやーでーすー。もうアーカイブに保存しましたー。』

「し、社長命令よ!」

『パワハラ反対ー。私はもうこの可愛らしい写真を手放しませんー。』

 

「………あまり騒がないでくださいよ。見つかっちゃいますよ?」

『黙れ駄犬。』

「流石にこれは酷くありません!?」

 

 

 アル様と壊れたロボットを巡る小さな小競り合いをしている。そんな時だった。

 

 

「…ねえ。黒晶。あれは?」

「はいはいなんですカヨコさ………お?」

 

 

 カヨコさんの指差した場所。渡り廊下的な場所を挟んだその向こうに何やら点滅する機械的な物体と、その辺りに散乱する見たことのない形状の物体が目に入った。

 

 

「そう…ですね。反応もちょうどそこから出ています。」

 

 

 …つまり。

 

 

「目標物、発見ですね。」

 

 

 あれが、ガラクタの山のようにも見えるあれが宝の山というわけだ。

 

 ……データ適合。確かに、既存のオーパーツのデータと一致するものがいくつか確認できた。確かにアレが宝の山なことには間違いないだろう。実際ちゃんとしたところで売りに出せばかなりの高額になることには間違いない。特に中央に置かれた巨大なオーパーツ。今なお起動しているアレがなんの役割を果たすのかは不明だが、価値があるものなのは事実だ。

 

 だが……

 

 

(何か違和感を感じる。)

 

 

 なんていえば良いのだろう。例えば……そうだな。自然豊かな森の中。木々の生い茂り、わずかな文明の残りはあるものの、そのほとんどは自然に飲まれ、レンガなどは苔に包まれている。そんな中たった一つ、コケの一つも付いておらず、蔦も絡まっていない。そんな真新しいレンガがそこに混ざっていたとする。

 

 どうだ?違和感を感じるだろう?

 

 そう、それだ。私が今感じているのは。アレは、明らかに…とはいかないが、私のようにちゃんと知識を持って観察している者からしたら違和感を感じるのだ。

 

 つまり、どう言うことかと言うと

 

 

『アル様、無闇に近づくのは危険──

 

「行くわよみんな!早く持って帰ってみんなで一人一つの柴関ラーメンを食べるのよ!!」

「お、おおーーー!」

「いえーい♫」

 

 ──────……へ?』

「……はぁ。」

 

 

 私が忠告した時には、彼女たちの背は遠く、遠く、渡り廊下を走っていっていた。

 

 

『勘弁してくれ…っ!』

「…こうなったら行くしかないね。」

 

 

 ため息混じりに呟くカヨコさんと一緒に私も駆け出した。もう罠とかどうとか言ってる場合じゃない。いざとなったら彼女たちを守れるように近くにいなければ。

 

 本当に……便利屋68、いや、陸八魔アルという人物は非常にカリスマ性があり、人を惹きつける素晴らしい魅力があるのは私──掃除屋としても私から見ても事実だ。……だが、彼女に救われ、憧れを抱いている『新戸コモリ』としての目線を抜きにして仕舞えば、なんというか…放って置けない…非常に失礼なのだが、“ポンコツ”と言う言葉が似合うような御人だ。

 

 だからこそ私や、カヨコさんが彼女を全力でサポートする必要があるのだが……

 

 

『警告する間も無く突っ走られたらどうしろと…!』

 

 

 どうしようもない。諸君もそう思うだろう?

 ……あ?妄信的に信仰してるように思ってたから意外?……別に妄信してるわけじゃないけど、彼女のことは先生と同じくらい尊敬してるし、信じている。けれどそれとこれとは話が別だろ?信じすぎた結果その人を失ってしまった、では元も子もない。

 

 

「……不味い、かもね。」

『っ!アレは…!』

 

 

 走りながら横…いや、渡り廊下の下を見る。そこにいたのは今までの雑魚敵どもではなく、一体の巨大な多脚型戦車。

 

 ───通称:KETHER───

 

 かつて私が部品集めの際に遭遇したことのある“脅威”の一つであり、最もきらびやかに輝く至高の王冠。セフィロトが一つ、ケテルの名を冠するデカグラマトン、第一の預言者。

 

 私も詳しい情報を持っているわけではなく、デカグラマトンという聞きなれない単語の意味も、昔依頼で関わったことのあるカイザーPMCから得た情報のみで認知の浅い状態。

 

 だが、ソレが持つ高度なAIと多様な兵装。地形、敵戦力に合わせた戦術。ケテルという存在がいかに脅威であるかは十分に理解している。

 

 

(私一人なら、最悪対処可能ではある。が、皆と共に戦うとなると厳しいかもしれない。皆が足手纏いというわけではないが、相手の情報が全くない状態で戦うのはできるだけ避けたい相手だからだ。)

 

 

 奴を撃退するにはちゃんとした準備をする必要がある。ソレほどまでの“脅威”。

 

 故に───無策で突っ込むなど論外なのである!!

 

 

『黒晶!私はアル様を連れ戻す!お前はもし見つかった時の援護として────』

 

 

 そして気づいた。

 

 

「………」

 

 

 奴らがその場から一歩も動いていないことに。

 

 そして──分析しても拭いきれなかった違和感の正体。それはあのあからさまな宝の山……()()ではなく。

 

 

『───しまっ』

 

 

 今この瞬間に私たちが立っている渡り廊下の、作り物感に。

 

 そして、黒晶が顔に張り付けた笑みを深めながら、手に持った銃口を地面に向けていることに。

 

 

「パァァァンッ!!」

 

 

 嘲笑うような、銃声を真似た声と鳴り響く発砲音。そして銃痕を起点に走る亀裂と、爆発しながら崩れゆく足場。

 

 そこでようやく私は、奴らの罠に嵌められたことに気づき、そして同時に手遅れでありことも悟る。

 

 

『───っ!くそ、っ!』

「悪く思うな。これも、仕事だ。」

 

 

 右腕から放たれたワイヤーはホムラの短剣によって弾かれ、足場を掴むことなく宙を舞う。

 

 

『カヨコさん!捕まって!』

「っ!わかった…!」

 

 

 遠くから聞こえる聞き慣れた悲鳴とハルカの社長を呼ぶ声と笑い声。ほら言わんこっちゃないという気持ちと、“ムツキさんわかってたなら止めてくれ!”、という気持ちを抱きながらカヨコさんを抱き抱え重力に身を託す。

 

 

『ベネディクトゥスシステム展開!ショック体勢!落下まであと5、4、3、2、1────っ!』

「けほっけほっ」

 

 

 画面がブレるほどの衝撃と地面と衝突することで生じた衝撃音。

 

 機体状況の確認。問題なし。カヨコさんのバイタルチェック。異常なし。

 

 

『怪我はない?』

「大丈夫。そっちは?」

『問題なし。アル様たちは……

 

「いったぁぁぁあい!?」

「だ、大丈夫ですか!?」

「まんまと嵌められちゃったね〜…」

「嵌められたってどういうこと!?」

 

 ……大丈夫そうだな。』

 

 

 というかまだ気づいていなかったのか…

 

 

「あっははははは!!く、くひ、わ、笑い死ぬ…!」

「……はぁ。」

『なんの、つもりだ“情報屋”。』

「はははは。怖いなぁ。もう。そんなに睨まないでくださいよぉ?」

 

 

 今は見上げる形になった渡り廊下の縁に立ってこちらを見下ろす黒晶と赤鳥を睨みつける。

 

 

「私達も依頼を受けてるんですよぉ?」

『依頼?』

「ええ。今は地に落ちたとはいえ、かつて裏社会でブイブイ言わせていた“掃除屋”。よく勘違いする馬鹿がいますが、貴方はその信用が地に落ちただけであって、別に貴方の腕が鈍ったわけではない。その実力は未だ健在だ。」

『……』

「そして……そんな貴方を邪魔に思う馬鹿どもはたくさんいる……そういうわけです。」

 

 

 ……つまり、私が便利屋68に敗北したことでその信用は地に落ち、『掃除屋』に対する需要は下り坂。だが、その危険性を把握している者や、今ならやれると勘違いした馬鹿、かつて私が恨みを買った奴らなどからの依頼で情報屋は私を消しに来たというわけだ。

 

 

「いやあ、便利屋68の皆さんを巻き込んだことは申し訳ないですが……まあ、どうせ商売敵には変わりない。今のうちに処理できるのは運がいいと言えるでしょう。」

『……貴様如きが私たちを殺すことができると?』

「いえいえいえ!まったく?そのようなことは思っていませんよ?だからこそ、こうして罠に嵌めさせていただいたのです。」

 

 

 そう言って彼女は私の後ろ。ケテルと、ソレから逃げるようにしてこちらに走ってくる彼女たちを指差した。

 

 

『……ぶち殺すぞクソガキが。』

「きゃーこわーい!助けて、ケテル様〜!」

「っ!」

「コ、コモリ!やばいわ!どどど!どうしたら!」

『……』

 

 

 ドスン、ドスンと大きな足音を立ててこちらに向かってくる巨大多脚型戦車ケセド。

 

 

「あ、アル様!私がぶっ壊して…!」

『待て。』

「ど、どうしてですか!?」

「…ふ〜ん?何か策がある感じ?」

『…ああ。』

 

 

 痺れを切らしたハルカさんが散弾銃を構えてたのを片手で制し、ただひたすらにソレを睨みつける。コントローラーを握る手が手汗で気持ち悪い。嫌な汗が頬をつたる。緊張感が体を支配する一方で、しかし確かな自信を私は抱いていた。

 

 

『……』

 

 

 あと一歩、奴がその前足を前に踏み込めば私たちを潰すことができる。そんな距離で、奴の複数のセンサーがこちらを舐め回すかのように見つめてくるのを感じた。

 

 

『……』

「ひぃぃぃぃ…」

 

 

 1秒、2秒、3秒…そして10秒が経過した時。ソレはようやく私たちから視線を外し──────まるで興味を失ったかのように上を向いた。

 

 

「───は?」

 

 

 結果として、デカグラマトンの第一の預言者。廃墟の守護者。セフィロトが一つ、KETHERは我々を敵とみなさなかった。

 

 

「っ!なんで…!」

『く、くくく。くはははは!!』

 

 

 ────計画通り。

 

 

『…知ってるか?この廃墟の機械兵どもは個体間の情報のやり取りをするためのちょっとした回線を持っているんだ。』

「…は?」

『その一つに敵と味方の識別に関する情報のやり取りがある。』

 

 

 当たり前だな。味方機に誤射するようなことがあったら目も当てられないからな。

 

 

『そしてその情報の判別に使われる物は、今現在私が偽装して流している個体識別番号のほかに()()()()()()()()がある。』

「画像認識システム…?」

『そう……そ〜し〜て〜?これ、なーんだ?』

 

 

 そう言って取り出したのは一枚の写真。掃除屋に仕込まれた機械の一つ、現像機によって印刷された写真。

 

 

『便利屋68の皆さんの集合写真だ。』

「なっ!?」

「あ!それさっきの!!」

 

 

 アル様が白目を向いているあの写真。行動不能にした機械兵のカメラ機能を使って撮影したものだ。コレをちょっとした細工を施した上で機械兵間のネットワークに流し込めば…ご覧の通り。

 だからアル様の命令を断ってでも保持しておく必要があったんですね。まあこれが終わった後も永久保存するつもりだが。

 

 

『そして………銃声を派手に鳴らして、偽装識別番号も、画像認証もできないのは……一体どこの誰だろうな?』

「…っ!貴方──っ!」

「アイム!掴まれ!」

 

【キュイィィィィィィィィン】

 

 

 電子音と共にモーターが駆動する音が鳴り響く。巨大な砲塔の先端から漏れ出る膨大なエネルギー反応と、見上げることになった渡り廊下の、そこから見下ろしていた二人の影に向けて動かされた銃口。

 

 

「こんのっ!クソがァァァァァァ!!!」

 

 

 圧縮されたエネルギーの塊が、射出された。

 

 

『よし!逃げよう!』

「え!?いいの!?あれ!?」

『どーせ生きてますよ。ほら行きますよ。相手は高性能AIだ。偽装だってそう長くは持ちません。』

「そ、そうね!みんな!帰るまでがミッションよ!」

 

「「「『おー!』」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ん?私たち何しにここまで来たんだっけ?




「くそっ…!掃除屋め…!なんでっ!この私が…!」
「はぁ…はぁ…うる、さい。後始末したのは俺なんだ。黙って歩け。」
「次こそは!次こそは絶対────

「こんにちは。ちょっといいかな?」

 ────あ?」

「ヴァルキューレの者です。侵入禁止区域に入った人たちがいるって通報を受けたんですが……貴方たちのことですよね?」
「だからどうしたって…!」
「現行犯逮捕です。」
「は?ちょっ、ホムラ!?助け…もうあんな遠くに…!?うそ…見捨てる判断早すぎ…!?」

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