引き篭もりアーカイブ   作:有機栽培茶

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メンテやばいですね……気長に待ちましょう。今頃アロナとプラナちゃんが頑張ってくれてます。多分。

※この話の先生とコモリは限界状態で会話しています。
※多分こんな話を書く作者も限界です。


夏は海

 

 カタカタ。カリカリ。

 

 外では蝉の鳴く音が夏の到来を告げ、炎天下の中有り余った元気を発散するため子供達は外で水鉄砲片手に遊びに更けている。

 

 そんな中、明るい外とは真逆の、少し暗い雰囲気を帯びた室内ではひたすらに紙に何かを書き留める音とキーボードを叩いて文字を打ち込む音。そして時折ズズズという、エナジードリンクを啜る音が響く。

 

 

「……あ、もう直ぐ昼だね。」

「…そう……これで、実に、ほぼ不眠不休の3日連続労働…たっせー…」

 

 

 …社畜の庭からこんにちは。観測者諸君。私だ。

 

 どういう状況か。それはこれを見ればわかるだろう。積み上げられた書類の山。散乱するエナドリの残骸。そして目の下に深いクマを…私はいつもより増して深い隈を携えた我々の姿を。

 

 そう、これこそ私と先生の現状である。

 

 

 ことの発端は…極端に言って仕舞えばキヴォトスが夏に突入したことだろう。

 

 そう、夏である。

 昼が長くなり、夜が短くなる。体育祭や文化祭。プールやら山へ虫取りだとか。部屋に引き篭もる陰キャな私には一切関係ない…むしろ耳障りな季節である。

 

 だが、どうやら多くのキヴォトス民にとっては違ったらしく、年相応にはしゃぎ、報告される数多くの問題行動の数々。そして積み上がる書類の山。

 

 その全ての結末が、コレである。

 

 

「こもりちゃーん……先生つかれた…よしよしして…」

「はいはい…よしよし……ほら、あとちょっと……がんばろ…?」

「うん!せんせいがんばる!」

 

 

 そろそろ先生も精神的に不味くなってきた頃合いである。

 

 

「…そう言えばコモリちゃんは海とかいかないの?」

 

 

 ほら、狂い出した。

 

 

「……いくわけ、ないじゃん。私だよ…?海とか、言った瞬間、溶ける…」

「えぇ…」

「それに…海に行くのは、冬じゃない…?」

「…え?」

 

 

 …え?

 

 

「だって…ほら、私のやってるソシャゲ…大抵冬に水着イベ、来る……今は雪国に行くみたい…」

「それはそのソシャゲだけだよ…」

 

 

 ……あー、そっか。そうだった。不味いな。ゲームと現実が混在し始めてる。私も精神的に不味い状況かも。

 

 

「それで?コモリちゃんは海行くの?」

「だから、行かないって……大体、水着を持ってない…」

「…じゃ、じゃあ裸で泳ぐの?」

「……そうかも。そうかもねー…」

 

 

 そっかー私は裸で泳ぐのかー…

 

 

「よし!コモリちゃん!一旦休憩にして、水着を着よう!」

「む…」

 

 

 っとと…急に立ち上がらないでくださいよ先生。ショルイタワーが崩れちまう。

 

 

「水着…ね……別に、私海に行く予定は…」

「流石に生徒に裸で泳がせるわけには行かないからね。」

「あ、聞いてない…」

 

 

 しかし、水着か。興味がないと言えば、嘘になる。私がこのキヴォトスで目覚めて、この超絶美少女ロリッ子ぼでーになって数年が経過したが……なんとまあ、驚くべきことにまともに女の子らしい可愛い服というものを着たことがないのだ。強いてあげるのなら流石にパーカー一枚は恥ずかしいと思ってはいたレギンスとか、寒かったから履いたタイツあたりだろうか。

 

 うん、オシャレに無頓着すぎたな。

 でもしょうがないじゃないか。前今オール陰キャな私にファッションなんてわかるわけないのだ。

 

 

「…まあ、そう言うなら、先生が選んでよ……私、水着とかよくわからない、から…」

 

 

 故に、この機に女の子のファッションというのを学ぶのも一理あるかも知れない。

 

 

「大丈夫。そう思っておすすめのものを用意してるよ。」

「おおー…流石先生…」

 

 

 流石先生だな。日頃から生徒たちのことを考えているだけある。

 

 

「ふっふっふ……えーっと、たしか、この辺りに…お、あった。」

 

 

 そう言って先生は散乱したエナドリの亡骸を避けて、隅っこに置かれた先生の私物が詰め込められた棚を漁り、一枚の布切れを取り出した。そしてそれを、漁る途中で外に出したピンク色の本とか色んなものをほったらかしにしながら持ってきた。

 

 

「ほぅ…?それは…」

「覚えてる?エデン条約の時の…」

「うん…あれでしょ…?無限湧き叡智叡智性徒会の制服。」

「ユスティナ聖徒会ね。」

「そう、それだ。」

「うん…先生ね、あれ見た時衝撃的すぎてね…クラフトチャンバーでソレっぽいの作れないかなーって思ったらね。水着だけど、できちゃった。」

「“できちゃった”て…」

 

 

 ……しかしこれは…ほうほう、なるほど。先生もなかなかいい趣味をしていらっしゃる。どうりで気が合うわけだ。

 

 

「…どうするコモリちゃん。これを着るには覚悟が必要なようだ。」

 

 

 …くくく。そんなもの…

 

 

「着るに決まってるじゃ、ないか…!」

 

 

 私は勢いよく先生の手からその水着を掴み取る。

 

 なるほど……確かに、この脅威的な布面積。確かに、常人は着るのを躊躇するほどだ。だが、私にとってこのようなことはFPSをしながら掃除屋を操作して傭兵相手に一戦事構えるのと同じように容易い事。

 

 なぜなら!今の私は、【女子力】に目覚めたすーぱーみらくるてんさいびしょうじょコモリちゃんだからだ!!!!

 

 

「んしょ……ん…?先生、私のサイズ、知ってたの…?」

「いや、それオーパーツみたいでさ。体型に合わせて変わるみたい。」

「何その無駄機能」

 

 

 まあいい。とりあえず、私は書類の陰に申し訳程度に体を隠しながら服を脱ぎその水着を着用する。

 

 …むむ…やっぱり、思った通りに露出がやばいな。公共の場で着れるようなものではないだろう。だが、私が着るなら別だ。こんなロリ体型に欲情するようなアホはいないだろうし、そもそもキヴォトスには先生を除いて人間の男がいないしな。流石に機械頭や某敦盛な住民たちが生徒に欲情するとは思えない。

 

 それに、私は自分の体の“可愛さ”にはそれなりに自信があるんだ。なぜなら私は超絶美少女だから。ロリ体型ではあるが、ロリにはロリの良さがあるものだ。

 

 可愛らしさだけで言えばトップレベルだろう。うん。そうに違いない。

 

 

「…よし。ふふん。先生、どうだ…似合ってる、でしょ。」

「お、おお。似合ってるよ。」

「……でしょ!」

 

 

 そうだろうそうだろう!

 

 

「これが…私の覚悟…」

 

 

 ……ここで、私は思いついてしまった。

 

 ────私が覚悟を見せたのなら、先生も見せるべきでは?────と。

 

 

「よし…先生も着よう…先生も、覚悟を見せるべき…」

「え、ええ?」

「私だけは、不公平……私、先生の覚悟、みたい…!」

「ほ、本気で言ってる?」

「ちょっと待ってて…今脱ぐから…」

 

 

 さあ、私にあなたの覚悟を示してくれ…!

 

 

「…そうだね。コモリちゃんの覚悟を見せてもらって、私のは見せないなんて不公平だね。」

 

 

 そう言って先生は立ち上がり、タンスを漁って“2枚目”を取り出した。

 

 

「安心してコモリちゃん。そう思って2枚買ってあるから…!」

「おお…!!」

「ちょっと待っててね。先生着替えてくるから。」

 

 

 先生は水着片手にトイレのドアを開け、替えに行ってしまった。

 くくく…さあ見せてもらおうか先生の覚悟とやらを。そして、普段その服の下に隠された肉体美を…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふふーん♫」

 

 

 陸八魔アルはアウトローに憧れるゲヘナ学園所属の16歳の少女だ。

 

 アウトローとは、すなわち映画で見られるようなかっこいい悪役である。綿密に練られた策略でヒーローを翻弄し、巧みな話術を持って人々を惹きつける。物語の主役である主人公を引き立たせるだけの安っぽい悪役ではなく、主人公と対等に渡り合い、主人公すらも出し抜くようなヒール。

 

 そんなヴィランに憧れた少女は、今日も便利屋68の仲間たちと共に『一日一悪』を掲げ立派な悪党を目指す。

 

 

「今日は何しようかしら?依頼も入ってないし…」

 

 

 しかしやる事がないなら仕方がない。目標に向け走り続けることは良いことだが、時には一度己を見つめ直すこともまた重要なのだ。

 

 

「…そうね。先生の手伝いに行きましょうか。なんかコモリからも変なメッセージが送られてきてるし……」

 

 

 そう言って彼女は先生のいるシャーレに向けて歩き出す。

 

 話は変わるが、彼女には憧れのアウトローというものがいる。基本治安の良いとは言えないキヴォトスにおいて、彼女が憧れという感情を抱くほどのアウトローな人物たち。

 

 

 アビドスの一件で出会った覆面水着団や、最近世を騒がせている七囚人。そして────『掃除屋』

 

 

 少し前に先生と共に対峙することとなった裏社会の傭兵。便利屋68と同じく金さえ払えばなんでもやる。だが、その依頼達成率は驚異の100%であり、連邦生徒会やゲヘナの風紀委員、ヴェルキューレなどに目をつけられながらも長年その正体は不明のままであった伝説級の傭兵。

 

 先生と共に打ち倒し、その正体が明かされ仲間になった今でも、── 自分を尊敬してくれている彼女の手前表には出さないが──その憧れは健在だ。

 

 なんなら強敵が仲間になった時のような胸熱さを感じているほどだ。

 

 

「……あの子ちゃんとご飯食べてるかしら…」

 

 

 ……たとえその正体が引き篭もり社会不適合者ロリだったとしても、憧れは健在ったら健在なのだ。

 

 

 そんなことを考えながら辿り着いたシャーレのビル。彼女は扉を開けて、エレベーターに乗る。

 

 チンッという軽快な音と共に開かれたエレベーターを出て、廊下をしばらく歩く。モモトークでも教えていない突然の訪問に先生はどんな反応をするのだとか、またコモリの部屋はゴミ屋敷になってるんだろうかとか、色々なことを考えながら歩みを進め、一枚の扉の前で歩みを止める。

 

 

 ノックを三度。

 

 彼女は勢いよく扉を開け──────

 

「先生!私が来たわ……」

 

 

「23、24…25…いいよ…筋肉…唸ってるよ…!」

「ふん!ふん!ふん!…うおおお!!!」

 

「先生の覚悟は…こんなものじゃ…あ、アル様。」

「え?」

 

 

 

 限界ギリギリなハイレグを着ながら腹筋をする成人男性と、その足の上に座ってカウントをする同じく限界ギリギリなハイレグを身につけたロリっ子。

 

 

「   」

 

 

 見覚えのある二人の奇怪な姿に、彼女は気を失ってしまった。

 

 

 




先生が!そんなことするわけないだろ!!!(解釈違い)
…いややっぱするかも…

お知らせです。ネタが思いついたので次回からおそらく一章と同様のオリジナルストーリーを垂れ流すことになります。どうか引き続きご愛読いただけると作者が喜びます。
またこんな作品に栞を挟んでくださってる方々へ。一章の続きとして読めるようにするため次回は11話として投稿します。把握お願いします。

なお作者が「あーめんどくせやっぱやーめた」となったら引き続き短編を描き続けます。

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