引き篭もりアーカイブ   作:有機栽培茶

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前話のコメ欄。みんなのガチャ結果の暴力によってボコボコにされた件。
あとなんかTwitterで性癖呟いたらプチバズした件。
やっぱみんな統括Pのことが好きなんですよねって。


艦橋

 

 艦橋。

 

 それは艦船において将校や高級船員が配置される区画であり、船全体の指揮や操縦を行う場所である。

 

 

「それで?これからどうするのかしら。船がキヴォトスに着くまで潜伏?」

「かくかくしかじか」

「船を止めないと世界がやばい、ですってぇ!?」

「説明、感謝…」

 

 

 つまりその場所を攻めることこそ、エンジンを物理的に破壊しにいくことを除けば船を停止させるには最良の選択であり、占領することさえできて仕舞えば制御権を奪取することだってできる。エンジンを船の心臓とするならばそこは船の脳みそと呼ばれるべき区画なのだ。

 

 

「ふ〜ん?とりあえず元理事をぶっ殺して船も止めればいいんだね?」

「…物騒だけど…そう。船の停止が、目的。」

 

 

 そしてそれは当然この飛行戦艦にも存在し、PMC元理事が待ち受けているであろう私たちの最終目標地点。

 

 

「あ、見えてきたよ。」

「ですね。みなさん戦闘準備!ドアを蹴破ります!」

 

 

 そこを取り返し、船の制御権を奪うことが私たちの目標である。

 

 そのはずだった。

 

 

「動くな!抵抗は無駄だと、し…れ……え?」

 

 

 扉を蹴破ると同時に銃を構えたカンナさんが見たその光景は───

 

 

 

「亀甲縛りだ、これ…!!」

 

 

「ムグーーーー!!」

 

 

 ──機械的な触手に体を拘束される元理事とPMCの面々であった。

 

 

「…ふっ、これがAIの反乱、ってね…」

『──アクセス権限、確認できず。侵入者。対応プログラムを開始します。』

「っ!変な光景だけど、油断しないで!」

 

 

 そしてその中央に天井から吊るされるようにして浮かぶ、触手の主人であろう球状のロボット。飛行戦艦の管理AIはその姿を表して赤くモノアイを光らせ私たちに敵対行動を取ろうとしていた。

 

 

「個体名、新戸コモリ…アクセス確認再要請…!戦闘体制を解除し、船の制御権を譲渡せよ…!」

『確認、失敗。個体名新戸コモリにアクセス権は許可されていません。』

「…!?そんなはず…まさか、」

『履歴確認。1時間32分前に変更あり。新戸コモリのアクセス権は削除されています。」

 

 

 くそっ!やっぱりか。元理事、狡い真似をする。その末路がこれじゃ世話ないがな。

 私は歯噛みをする思いで制御AIを睨みつけるがそれは無機質な赤い眼光を向けるばかりで変わらない。どうやら戦闘は避けられないらしい。

 

 

「ごめん、みんな…!機械は壊さない程度に、おねがい…!」

「了解よ!コモリは下がって、私たち便利屋68の先輩たちの活躍を目に焼き付けなさい!!」

『排除、開始。』

「わわ!?もう撃ってきた!」

「せせせ、先生!指揮をお願いするわ!!」

「りょーかい!」

 

 

 そこからは先生の指揮による戦闘が開始された。

 ハルカさんと睦月さんが前線を張り、攻撃範囲のでかい爆弾や散弾を機械が壊れないように使って先生の指揮のもと敵を撹乱し、すり抜けてきた敵をカンナさんとカヨコさんが撃ち落とす。それを幾度か繰り返し、こちらを貫かんとする触手共をあらかた処理したところでアル社長のトドメの一撃があからさまに弱点ですと主張している制御AIの赤い目玉部分にクリーンヒット。

 蠢いていた触手共は動きを止め、天井から吊るされていた制御AIの本体は地に落ちた。

 

 圧倒的、圧倒的で完璧な制圧だった。

 

 

 そんな光景を私と黒服は二人部屋の隅で仲良く体育座りで鑑賞していたのであった。

 

 

「…私たち、あんなの、を、昔敵に回したんだね…」

「…お互いよく生き残れましたね。」

 

 

 多分あれでも最後の砦である艦橋を守るためにあっちの私が作ったそれなりに強力なロボットだったんだろうけどなー…

 というか先生あの端末なしなのにその指揮能力はなんだ。タブレットがないとゲームでいうところの”スキル“が使えないのかそういうのは使ってなかったけど……てかその状態で倒されるなよあっちの私のロボット。

 

 

「終わったよコモリちゃん。」

「ん…ありがとう。完璧な、仕事…」

「当たり前よ!何たって私たちにできない仕事はないのですもの!」

 

 

 さて、と。私は壊れた触手の残骸と共に倒れていた元理事のハゲ頭(機械なのでハゲているかは不明)をぶっ叩き、起こす。

 

 

「ぐぅ…貴様らに助けられるなど…ぐえ!?」

「…貴方が、なんで私たちを裏切ったのかは、見当がつくからいい……でも、ここで何があったかは、わからない。話せ。」

「誰が貴様なんかに…ぐへ!?」

「友達の相棒を殴り殺しそうになった私の血に濡れた拳…あなたは何発耐えれるのかな…?」

「わ、わかった!話す!話すからやめろ!」

 

 

 

 三発目を振り下ろそうとした私に向かって元理事が慌てて語ったのは船の制御AIが突然自分たちの命令を無視するようになりカイザー本社からキヴォトスのサンクトゥムタワーへ進路を強制変更。その直後あのタコの化け物が現れ自分達を拘束したとのこと。どうやらアル様たちを迎撃したのもこの船の防衛システムらしくなにも知らないらしい。

 

 

「だから、俺たちは()()()していない!だからやめろ!」

「何も、じゃないでしょ…ふん!」

「そういうことじゃ…ぐへ!?」

 

 

 裏切ってんだから何もじゃないだろーがよぉ?

 

 

「…あと、私たちの持ち物…どこ?牢屋も探したけど、なかった。」

「こ、ここだ!万が一に備えて俺が持ってたんだ!」

「そう…じゃあ…」

「返す!返すから殴らないでく…うぎゃ!?」

 

 

 ふざけたことを抜かす元理事の顔面に最後の一発をぶち込み、彼の手から一丁の拳銃と一枚のタブレットを受け取る。拳銃の名前は『アンジェロ』。掃除屋が使っているアサルトライフルSIG MCX『カドゥート』とは違う私自身の相棒である。正式名称はH&K usp。

 

 …なに?厨二病?違う違う。この世界じゃ銃に名前をつけたりデコったりするのは普通なんだと。私は今まで友達がいなかったし無駄に金をかけたくなくてデコらなかったり名前をつけることすら知らなかったが……あとかっこいいじゃん?

 

 

「はぁ…まあ、いい。とりあえず、まずは船を止めない、と。」

 

 

 私は元理事から取り返したタブレットを先生に渡し、少々銃痕が残る艦長席であろう場所に座って端末を開く。

 

 

「…やっぱり、こっちも制御権は剥奪されてる…」

「どう?」

「先生…んー…頑張れば、いけるかも…私の作ったシステムだ…突破するのも…容易…」

 

 

 ──ビー不正なアクセスを感知。

 

 

「……」

 

 

 ──ビー不正なアクセスを感知。

 

 

「……」

 

 

 ──ビー不正なアクセスを感知。

 

 

「このクソが!!」

「コモリちゃん!?」

 

 

 なんだこのクソみたいなセキュリティシステムは!!!どんだけあっちの私はこのセキュリティに私の知らない技術を詰め込んだんだ!!いい加減にしろ!!

 

 

『ビビ…警告。当機は優秀。安易なハッキングは非推奨。防衛システムもマスターにきちんとした修理を受け、正常な状態であったのならあなた方の殲滅も容易であったと報告。故にアクセスしたいのなら正規の手順を踏むことを推奨。』

 

 

 そう機械が言葉を発したと同時に画面がパスワードの入力画面へと強制的に切り替えられた。

 くそが、この機械、機械のくせに負け惜しみしてやがる。

 

 

「顔認証がダメなら、パスワード……iPhoneかっての…」

「パスワードはわかるの?」

「いいえ…アル様の誕生日…はないですね…あっちの私はむしろアル様を敵視したままでした……」

「ええ!?!?」

「先生の誕生日…も、ないな。あまり接点もなかったようだし……とういうか、そもそも”英数字“入力だから、数字だけじゃダメ…」

 

 

 何かないかと頭をひらねせる。よくあるような意味のない数字と英語の混ざった強強パスワードじゃないはず。私は私。ああいうパスワードは覚えられないのだ。だからパスワードは多分あっちの私なら忘れもしないような単語なのだろう。キヴォトス?ブルーアーカイブ?掃除屋?神秘?色々考えてみるがピンとくるものはない。

 

 

「…こういう時に、記憶が流れ込んでくれれば───

 

 

 その時だった。

 

 

「──っが!?」

「コモリ!?」

「コモリちゃん!?」

 

 

 突然頭に響く頭痛。頭の割れそうなほどの痛みと共に流れ込んでくる私の知らない光景。実に、実にタイミングがいい。だが、くるのなら事前に教えて欲しかった!

 

 

「パス、ワード…!重要な単語、は…!」

「コモリちゃん鼻血が!」

 

 

 探せ。記憶の濁流の中から私の欲しい情報を抜き出せ。初めてタバコを吸った記憶?違う。遠目に先生と目が合ったと同時にいつの間にか追加されていた先生のモモトークの連絡先に恐怖を覚えた記憶?違う。先生が風紀委員会の褐色娘の足を舐めていた記憶?違う、こっちでもやってた。情報屋だってイキってたアイムたちをボコってうちの社畜にした記憶?違う、てか何、あいつ何故か私の足舐めてるんだけど!?

 雑音のように混ざっている不要すぎる情報群を掻き分け、重要そうなものを探す。

 

 そして、暗い深海に差し込む一筋の光の如く。

 私は見つけた。

 

 

『本気でやるつもりですか?』

『…危険すぎる。』

 

 

 赤く染まった天井。それを見上げながら、二人の少女の少し後ろに立ち、一緒にその先にいる一人の小さな少女を見つめる視線の主。

 

 

『成功率3%。危険な賭けです。本当に実行しますか?』

 

 

 視線の主もまた、問いかける。

 3人の問いかけ。それに対する少女は、笑っていた。

 顔は靄がかかって見えないものの、確かに笑っていた。

 

 

『ああそうだ。危険すぎる?成功率3%?そんなものは関係ない。危険ならばそれに見合ったリターンがあるということ。成功率がいくら少なかろうと存在するのならそれは成し得るということ。』

 

 

 楽しそうに笑う少女はこう言い切った。

 

 

『ならば私はやるべきことをやり切るのみだ。』

 

 

 そして両手を広げ、まるで無邪気な子供が夢を語るが如くこういうのだ。

 

 

『神秘も恐怖も、邪魔なもの全てを掃除した向こうにそれはある!』

 

 

 ───さあ行こう!

 

 

 

「────…シャンバラへ…」

 

 

 ───これだ。

 

 

「見つけた!」

 

 

 心配して覗き込んできたいたみんなを無視して私は再び端末に向き直り、キーボードに指を滑らせる。

 

 打ち込むは理想郷の名。

 

 あちらの私が目指して届かなかった理想郷の名。

 その言葉が意味する幸福は維持されず、理想郷を目指した王は破壊神に打ち滅ぼされ、その願いは叶わなかった。だが、その願いが存在した事実は変わらず、その方法も手段もその意思も、確かにそこに存在した。

 

 それこそがこの方舟、マステマなのだから。

 

 

 ─── Shambalah

 

 

『アクセス権限取得、成功』

 

 

 …船を動かすのなら、ちゃんと目的地を入力しないとな。

 

 

「せい、こう…!」

 

「お、おお!やったじゃない!!」

「…お疲れ様。コモリちゃん。」

「ふぅ…ありがとう…」

「それで?これでこの船は止められるようになったのよね?」

「…そう、ですね…うん。ちゃんと停止まで命令できるようになってる。」

「じゃあ早速しましょ。もうキヴォトスまで近いみたいだしギリギリだったわね!」

 

 

 端末の横に表示された地図を見ながらそういうアル様。確かにギリギリだった。あとちょっとで手遅れになっていたと思うとヒヤヒヤするな。

 

 

「…よし。じゃあ、停止ボタンを───

 

 

 ボタンを押せば船は運行を停止して自動的に着陸地点を探して停止する。この辺りは高低差も少ない雪原で停泊場所はどこにでもある。

 

 だから、私の指があと数センチ下りれば、この船は動きを止める。そのはずだった。

 

 

 

 ───ドカンッ!!!

 

 

 

「はぇ!?」

 

 

 戦隊を大きく揺らすほどの爆発音。

途端に赤く警告音を出しはじめる画面の数々が事態の緊急さを物語っていた。

 

 

「なになになに!?何が起こってるの!?」

「っ!アル様、みんなは、どこかに捕まって…!」

 

 

 机にしがみつきながら赤い緊急メッセージを発する画面を覗き込む。攻撃か!?そう頭によぎった考えは、画面を目にした瞬間吹き飛んだ。

 

 

『左エンジン及び左翼、艦橋下層部に損傷発生。左エンジン機能停止。高度維持不可。原因は何かしらの爆発物によるものだと推測。』

 

 

 

 ─── とまあ、こんなことがあったのよ!

 

 ドヤ顔で胸を張るアル様。この人はあの時なんと言っていた?飛行戦艦に乗ってきたオンボロ飛行装置を突艦させて乗り込んできた?それも()()()()()()()()()に????

 

 

「どうなってるの!?」

 

 

 この人のせいじゃねーーーか!!!!

 

 

「…アル様。左エンジン付近にて、何かしらの爆発が、起きた。それによってエンジン損傷。機能停止…船の高度が現在進行形で下がってる。」

「あ……へ、へーーー?大変ねー」

 

 

 目を逸らすな目を。無駄だぞ?みんなもうわかってるのか縛られていた元理事以外みーんなあんたを見つめてる。

 

 

「そ、それよりどうするのこれ!」

 

 

 話をずらしたな。

 

 

「…とりあえず、不時着を試みる。成功するかは、わからないから、みんなは、何かにつかまって───っあ!?」

 

 

 

 そう言い切ろうとした瞬間だった。

 再び遅いくる頭痛。今までの頻度で考えればありえないほどの。そして今までに類を見ないほど強力な頭痛に頭を抑えうずくまる。

 

 なんだなんだ何が起こった?

 

 痛みで意識が朦朧とする中、先生に支えられながら船の端末に手を伸ばす。あっちの私が作った船に異常が起こったからとか色々憶測は痛みの中飛び交うが、まずは不時着させなければならない。痛みでどうにかなりそうだがそれをしなければみんな死ぬ。その一心で手を伸ばす。

 

 だからこそ、すぐには気づけなかった。

 

 この頭痛の原因。

 

 牢屋から脱出した時は勘づいていたはずの答え。

 

 

 

「コモリ!!!!」

 

 

 

 辿り着いた時にはもう遅い。

 

 叫び声に振り向いた私の目に映るは、黒く奥の見えない不自然に宙に浮かぶ”穴“。そしてそこから私に向けて伸びる機械の腕に。

 

 

「…そう、じや…?」

 

 

 黒く欠けた光輪を持つ天使に気付いた時には、全てが遅すぎた。

 




掃除屋Mastema

【挿絵表示】

【愛銃】
Mastema's gaze(敵意の視線)
ウィンチェスターM1873


装甲:神秘装甲
攻撃タイプ:通常及び神秘
地形:屋内

所持スキル
クリエイト【hostile gaze】
種類:EX 10体の軽装備タイプの【敵意の視線】を召喚。【敵意の視線】は一定時間毎に射線上の敵に対して500%の確定会心ダメージ。タイプ:通常

広域ハッキング
種類:ノーマル 場面上に【PMC兵】がいる状態で【傀儡兵】が一定数を下回った場合発動。範囲内の【PMC兵】を軽装備タイプの【傀儡兵】にする。

殺意の弾丸
種類:EX 射線上の敵一体に1000%の確定会心ダメージ。神秘タイプ。

受難者の憎悪
種類:EX 場面上に【敵意の視線】が6体以上、【傀儡兵】が8体以上いる状態で一定時間以上経過した場合発動。敵全体に攻撃力の999999%分のダメージ。(この攻撃は不死属性を解除する。)

悲願のために
種類:バッシブ 全ての敵に対して命中率を30%、安定率を50%減少。自身の攻撃力を50%上昇。

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