引き篭もりアーカイブ   作:有機栽培茶

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勉強とあとお絵描きにハマってしまって時間が取れない。


時には逃げる選択も重要

 

「コモリ!!」

「ぅきゃ!?」

 

 

 黒くそこの見えない“穴”から伸ばされた機械的な、見覚えのある手。掴まれる、と思ったそれはアル様が後ろから私の服を掴んで引っ張ったことによって回避された。

 そして彼女はその勢いのまま穴に向かってスナイパーライフルを発砲。そして爆発が穴ごと腕を飲み込んだ。

 

 

「大丈夫コモリ!?」

「っ……だい、じょうぶ…です…でも、あれは…アレは!」

 

 

『任務、実行。指令、遂行』

 

 

 爆炎を薙ぎ払うようにして出てきたそれは鋼鉄の鎧を纏った機械人形。苦楽を共にしてきた自分の相棒であり半身であり、向こうの私にとっての息子同然の、『掃除屋』であった。

 

 

「掃除屋!?……もしかしてコモリを助ける為に自力で脱出してきたのかしら!?さすが!まさに映画で見るような“相棒”って感じじゃない!」

「っ!アル、様!!」

「きゃぁ!?」

 

 

 何を勘違いしたのか掃除屋を指差しながら目を煌めかせるアル様。そんな彼女を思いっきりこちらに引っ張るというさっきとは真逆のシチュエーションが起こったと同時に鳴る発砲音。

 硝煙が上がるのは掃除屋の、なくなっていたはずの左腕。そこにはこの船によって修理されたのか新品の腕と強く握られた一本の長銃。

 

 具体的に言えばウィンチェスターM1873。

 

 並行世界の私の墓に刺さっていた物と同種であろうそれは、しかし神秘的な、宇宙のような色合いをした謎の物質で構成されていた。

 

 

「な、なんでよ!?味方じゃないの!?」

「違い、ます…!あれは、敵!私の、“記憶”が正しければ、間違いなく…!」

 

『……敵対勢力。スキャン、完了』

 

 

 あの一瞬で流れ込んで来た数多の記憶。全てが明らかになった。あちらの世界で何があったのか。私は何をしようとしたのか。そして、私は何をあの子に遺してしまったのか。

 

 なんとまあ残酷で愚かなことをしてしまったのか。死体に指を刺して罵ってやりたいくらいだ。支配して依存させていきなり不法投棄とか毒親か貴様は。

 

 

『尾刃カンナ、黒服、伊草ハルカ、浅黄ムツキ、鬼方カヨコ、陸八魔アル、カイザーPMC理事、カイザーPMC製オートマタA型14機。そして、偽りの先生(先生)及び、レプリカ(贋作)

 

「っ!認証して!私は、新戸コモリ!貴方のマスター!」

 

『否定。当機のマスターハ既に死亡済み。故に当機にマスターは存在しない。当機への命令権限を持つ者はいない。質の悪い贋作など、もってのほかである』

 

 

 かっちーん。

 

 贋作?贋作だと?

 言ってくれるじゃないか人形風情が。

 

 確かに私はお前の制作者に比べたら根性も戦闘技術も何もないかもしれないがな、私はまだ進化してない、又は進化先が違うだけなんだよ!あっちが戦闘特化の血みどろな進化先だとしたらこっちは友達たくさんみんなで頑張ろうな支援特化型なんだよ!

 

 …言うて友達いないけど、あっちの私は友達って言ってくれたアイムに足舐めさせたりほぼゼロだったしな。有と無は大きな差なんだよ。

 

 ゔぁーか!

 

 

『制御AI“マステマ”に命令。当機以外のアクセス権限を再度、全て剥奪せよ。』

『了解。命令を実行します』

 

「ほらな!言っただろ!俺は何もしてないって!」

「うるさい。少し、だまれ!」

 

 

 何かに異議申し立てしようとしたのか騒ぎ出した元理事を黙らせ掃除屋の行動を観察する。

 制御AIとの会話を見るにどうやら権限は掃除屋の方が上であり、そして私のアクセス権限を削除したのも彼の仕業のようだ。

 

 

『…命令復唱。マスター新戸コモリの悲願の達成。世界の白紙化。方法。サンクトゥムタワーへアクセス、及びシステム『テセウスの方舟』を実行……想定外の損害発生。戦艦マステマに甚大な被害。サンクトゥムタワーへのアクセス────不可能。』

 

 

『計画を変更します。』

 

 

「っ!」

 

 

 様子の変わった掃除屋に皆が一斉に銃を構えた。

 そんなことなど一切気にしないが如く掃除屋はマステマの制御盤に手を置き…貫いた。

 

 

『マステマに命令。システム”テセウスの方舟“の譲渡』

『ジ、ヂジ…ニニニ、認証。”マステマ“ヨリ”ソウジヤ“ヘ、”テセウスの方舟“システムノジョウト、カイシ』

 

 

 制御盤を貫いた腕をつたるようにして光り輝く何かが掃除屋に移動して行った。

 

 

『…計画変更。これより戦艦マステマに変わり、当機が直接サンクトゥムタワーへアクセス。システムを実行する。……エラー発生。エラー発生。”テセウスの方舟“システム起動不可状態。神秘量の不足。補給行動に移行。』

 

「…先生…!」

「わかったよ」

 

『行動目標。“レプリカ”の殺害及び対象の神秘の確保。次点で計画の障害となり得る”偽りの先生“の殺害及び敵対勢力の殲滅。そして』

 

「さささ、殺害!?レプリカってコモリのことよね!?不味くない!?」

「……やっぱり、そうくるか。狙うなら、全くの同じ神秘とも言える私のものを狙うよね…」

「なんでそんな冷静なのよ!?み、みんな!コモリを守るわよ!」

「…待って社長。まだ何か言おうとしてる。」

「え?」

 

 

『──最優先目標。最大の障害、陸八魔アルの殺害』

 

 

「………」

 

 

「…ななな、なんですってぇぇぇ!?!?!?」

 

『行動開始』

「みんな戦闘を開始するよ!」

 

 

 白目を剥くアル様を置いて戦闘は開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『目標補足。【hostile gaze】、一斉掃射。』

 

「きゃああああああああ!?!?!?」

 

 

 場面は変わって艦内の廊下。

 あんなにもカッコをつけながら切り落とされた戦闘の火蓋だが、私たちが選択したのは恥を捨てた逃走であった。闘争ではなく、逃走。

 掃除屋一体に対してPMC兵14機を含む戦闘員19名。非戦闘員が私を含めて4人いるとは言え戦力差は圧倒的。すぐに制圧できると思っていたのだ。いたのだが───

 

 

「理事長!我々も加勢します!」

「ま、まて!来るな!!」

 

『──ハッキング、開始』

 

 

 掃除屋が天井に向けて銃を掲げると同時に走る微かな静電気。逃げる我々を見つけて加勢に来てくれたPMC兵は一瞬の硬直の後、銃口を我々に向け、火を放つ。

 

 瞬間的なハッキング能力。今の私でもできないその高度で反則的な技術によって元理事以外のPMC兵は全てあっち側の戦力とされてしまった。

 

 結果起こったのが1対19からの15+α対5という大逆転。

 

 それに合わせるように、これまた今の私には再現不可能な空中から彼が持つものと同型の、ウィンチェスター型ドローンを生成する謎技術。なんでその形状で浮くのかもわからないしそれを構成する材質すらわからない。

 

 そして当然のように起き上がってくるあっちのコモリ製戦艦マステマ守衛部隊。所々欠損していたりオンボロながらもその性能はPMC兵以上。厄介極まりない。

 

 以上3つの要因によって倒した側から補充されていく敵の軍隊と、普通に強い掃除屋本体。神秘が黒く染まった影響か以前以上の性能を発揮するベネディクトゥスシステム…否、並行世界の私のヘイローによって銃弾は通らないわで無理ゲー状態になってしまった。

 

 結果選ばざるをえない地の利もクソもないクソみたいな撤退戦である。

 

 

『…チャージ完了』

「っ!避けて!」

「うへぁ!?」

 

 先生の合図で掃除屋がいつの間にか持っていたピースメーカー型の拳銃から放たれた真っ黒な、明らかに当たったら不味そうな弾丸を避けながら走る。

 

 

「死んで死んで!死んでください!!」

「流石に…数が多い…!」

「アルちゃん!ちょっとキツくなってきたよー!」

 

「どうしよどうしよ!どうするのよ先生!?」

「先生!甲板、甲板へ出ましょう!」

「カンナちゃん!?」

 

 

 いつのまにか艦橋からかどこからか持ち出したのか、小さな片手サイズの端末を持つカンナさんが先生に叫ぶようにそう言った。

 

 

「先ほど艦橋の通信設備を使用してヴァルキューレの者と連絡が取れました!万が一があるかもと考えてのことですが…なんとか船の墜落までには救助隊が来れるかもしれません!」

「なるほど!一か八かの……でも甲板に出てどうするの?」

「ヘリで来るとのことですので、そこで拾ってもらいます!」

「墜落する中で!?」

「……信じましょう!!」

 

「…ねえ、それなら脱出ポッドとか使ったほうがいいんじゃないの?映画とかで見たけど、この船にもあるんじゃないかしら」

「そんなこと、掃除屋と制御AIが許すはずが、ない。アル様、バカ?」

「まあ、そうよね………バカ!?!?」

 

 

 確かにそれはナイスアイデアだ。と言うよりこれがゲームだったら『ナイス!』やら『尊すぎる』やら褒め称えるチャットを連呼したくなるほどの行動。狂犬、なんて呼ばれてるくせに理性的だと思ったんだよ天才か?

 

 

「というか…はぁ!はぁ!疲れた!死ぬ!」

「ふん、情けないなコモリ。掃除屋の名が泣くぞ?」

「うるさいデブ!貴方も、はぁ!関節から音なってるの、はぁ!聞こえてる!重量級が、すぎるんじゃない!?」

 

「頑張ってコモリちゃん!甲板までは…多分もうすぐだよ!」

「頑張ってくださいコモリさん。貴方とはまだまだ話したいことがあるんですから。」

「いいよね先生は!黒服に、背負ってもらえて…!普通逆じゃない!?というかなんで背負ってるの!?」

「先生は体力がないですから。」

 

 

 疲れを誤魔化そうと大声で銃弾の鳴り止まない中叫ぶように話してみるが、逆に体力が消耗するばかり。疲れを紛らわそうと無駄なことをするのは逆効果だって持久走で学んだだろバカ。あ、今世ではそう言うの休んだんだった…

 

 …なんて考えていたら当然のようにハプニングは訪れる。

 

 

 ミシリとすぐ真横の壁にヒビが入ったのを目にした次の瞬間。轟音と共に破壊される壁と、拳を突き出すようにして出てくる巨体。

 

 

『侵入者、排除…!!』

「ゴリアテ!?」

 

 

 当然か。こんな壮大な計画を練っていたあちらの私がゴリアテのような強力な戦力をあの時の一体だけにするはずがないし、そこらへんの守護ロボットが起き上がるのだから、このゴリアテもまた再起動されていてもおかしくはなかった。

 単純な計算ミス。ゴリアテにような小ボス枠は一体だろうと言う先入観と、制御AIがきちんと機能している今ゴリアテのような巨大兵器がいても壁を突き破るような暴挙はしないだろうという根拠もない思い込み。

 

 それがこの結果を引き起こした。

 

 

 しかし、それは相手側も同じだったようだ。

 

 

『ア゛』

「え…?」

 

 

 まずこの船が長年整備されていなかったせいで脆くなっていたこと。そして、今私たちが走っている廊下が船の最外部を走る廊下だと言うこと。

 

 

『ゴ、ゴリィィィィィィ……』

「なんだその鳴き声!?」

 

 

 ゴリアテは壁を突き破った勢いのまま、反対側の壁をも突き破り、そのまま壁に巨大な穴を開けて飛行戦艦外部へと…スカイダイビングして行ったのだった。

 

 何がしたかったんだあのポンコツロボット、と突っ込みたくなったのも一瞬。あのロボもバカなりの仕事をして行ったことに気づく。

 

 

「コモリちゃん!!」

 

 

 気圧差によって勢いよく流れ出す空気。その勢いによって自分の体もまた宙を浮いたのだ。

 

 

「あ」

 

 

 手を伸ばすももう遅い。宙に浮いた私の掌が船の一部を掴むことはなく空を切り、そのまま私の体は外へと投げ出され─────

 

 

 

 ぱしっ!

 

 

 

「……ぇ?」

 

 

 

 

「まに、あったぁ!!」

 

 

 

 揺れる黒髪とピコンと跳ねる狼耳。

 いないはずの“友達”の手が私を強く掴んで離さなかった。




多分ステージ編成的にはアタッカーに便利屋68が入ってスペシャルの枠にカンナとコモリ(掃除屋無しのバフ特化)的な編成。ちょうどよく6人なのは偶然。

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