引き篭もりアーカイブ   作:有機栽培茶

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止まらない爆撃に加速する胃痛。
というかちゃんとプロットを立てて書いた私の過去作をあっさり追い抜かないで…
がんばりゅ

うちの子

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計略

 

 さて、さてさてさて。

 私は前回切り札と呼べるもの──正確にはその材料を手に入れたわけだが……もちろん、あんなものは使わないに越したことはない。切り札は他に切る札がなくなったときにこそ切るべきだ。

 

 つまり、これから私がやるべきことは、彼女らをいかに無力化、または私の脅威から除外するのかを考えなければならない。

 

 

 同盟?ああ、確かに協力関係や不可侵の約束を取り付けるのも、まあ手の一つだろうな。だがそううまくいかないのがこの業界だ。

 

 貴方がたもしっているだろうが、裏社会では評判が命に関わる。ヤーさんのドラマとかでよく聞くだろ?舐められたらしまいだーって。あれは評判がそのまま商売に直結するからだな。もちろん、表社会でも同じなんだろうけど、こっちだと評判が落ち目になったからって同業者から狙われ出すなんてあったりするんだ。そうなったらめんどくさいし、最悪廃業だ。

 

 ん?それがどうして彼女達と協力関係を持てない理由になるのかって?そりゃあれだ。私、掃除屋が便利屋68に下ったって印象を他の奴らに持たれかねないからだ。だってそうだろ?一方的にやられて同盟を持ちかけるなんて負けを認めているようなものだ。しかも相手はわざわざ情報操作までして客層を絞るような奴らだ。

 全体的な評判は、情報収集は怠っていなかったはずの私が注目できなかったほどであったし、なんなら以前までは名前すら知らない者が大多数を占めていたような会社だ。

 そんな所と、自分で言うのもなんだが、名の知れた掃除屋が手を組んだとなればどうなると思う?予想できる答えは3つ。便利屋68が高く評価されるか、掃除屋がその程度だと思われるか…もしくはその両方か。

 

 もちろん、便利屋68の評判が上がるだけならいい…と言うわけでもない。先ほども言ったように彼女達は情報操作を行なってまで客層を絞っているのだ。彼女達にとっては注目を集めている今の現状も好ましいものではないだろう。そして、これ以上注目されるとなれば、彼女達にとって同盟を組むメリットはほぼないと言える。戦力も同等かそれ以上。情報などはおそらくあちらが上手。デメリットの方が勝るだろう。

 

 故に、私が彼女達と手を組むことは不可能だ。

 

 

 つまり平和的な解決策は存在しないと言うわけだ。

 

 

「…めんどくさい」

 

 

 ああ、実にめんどくさい。

 

 

「やらないと…なのかな…」

 

 

 正直に言えば、やりやくない。

 我彼との戦力差は、奥の手を使用して同等程度…先生が指揮に加われば此方が不利…勝てたとしても被害は甚大となり機体の修理が完了するまでは休業…自分の身を守る手段も極端に減ってしまう。だから私としても……

 

 

「……はぁ…」

 

 

 素直になろう。私は彼女らを殺したくない。傷つけることも、できれば避けたい。

 ああくそ。だから外には行きたくなかったんだ。だから人と話すなんてことしたくなかったんだ。誰だよ直接依頼出しに行くなんて考えたやつ。私だよ。

 くそが。ああもう。なんで話しちゃったかなぁ?こちとら元現代日本人だぞ。倫理観はそのまんまなんだぞ。ただでさえ人型なんだ。情が湧いちゃうだろちくしょう。

 

 

 …どうする?諦めちゃうか?ぜーんぶ投げ出して逃げ出すか?

 

 無理だな。裏社会の奴らが弱った獲物をみすみす逃すわけがない。それも、“掃除屋”なんて極上の獲物をな。私は恨みを買いすぎた。

 機体を置いて逃げれば…運が良ければ逃げられるかもしれないが、その後が詰んでいる。私がこの身一つで生き延びられるわけがない。他の防衛手段も、この部屋の荷物を丸々持ち出さなければ使えない。

 

 詰みだ詰み。考えてみればみるほど不味い状況だ。生き延びるには、便利屋68を打ち倒すほかないのだ。

 

 

「…はぁ…ほんと、なんでこんなことに……」

 

 

 せっかくの転生だぞ?しかも青春を自称するゲーム世界への転生だ。もっと青春させろや。私まだ一度もしてないぞ。てか機会があっても私じゃあできないわ。ははは。はーーーーーー……

 

 

「アルさん……」

 

 

 手元に置いてあった新品のスマホを手にとる。そこに入っているアプリはモモトークだけ。それとカメラに写真が数枚。登録されている連絡先も5つのみ。それも私に似合わないような連絡先だ。

 

 アル、カヨコ、ムツキ、ハルカ。そして先生。

 

 思い返せばあれも青春の一つとして考えてもいいのかなぁ。…楽しかったのは否定しないけど。

 

 

『今日は楽しかったわね!貴方がくれたペロロ様ぬいぐるみ?も気に入ったわ!これがキモ可愛いってやつかしら?また何か困ったことがあったら私たち便利屋68に相談するのよ!いいわね!』

 

 

「……ふふ」

 

 

 なーに笑ってんだ私。

 …まあ、正しい選択は今ここでこのスマホを捨てることなんだろうな。

 

 できるか?…無理だな。

 はい閉廷。この話は終わり。

 

 

 

 あれだ。彼女達には私の思い出の中で生きていただくことにしてもらおう。そうしよう。この携帯はその思い出のひとつだ。

 

 

 だって私死にたくないし。あー。考えてみたら馬鹿らしい。たった一回依頼をしただけの関係だ。確かに情は湧いたけど、自分の命を天秤にかけるほどじゃあない。もしそんな選択ができんならそれが馬鹿か呆れるほどの善人か、全部解決するだけの力がある超人だ。

 

 あー馬鹿らしい馬鹿らしい。本当、馬鹿らしい…

 

 

「…ん!」

 

 

 パシンッ

 頬を叩く。

 湿っぽいのは終わりだ!似合わないしめんどくさい。私は仕事人だからな。感情なんて関係ない。後悔するのは後ででいい。今は、生き残るため、自分の身を守ることに専念すべきなのだ。

 

 

『親父、いつものを。』

「あいよ」

 

 

 故に、今は物資の補給が最優先なのだ。

 銃火器、弾丸、仕込みのための資源、オーパーツ。

 

 そして──────

 

 

「柴関ラーメン一人前お待ち!」

『…おお。流石の出来だ店主。』

 

 

 そう、柴関ラーメンだ。

 

 おい鼻で笑ったな?これだから素人は。この柴関ラーメンはな、たった580円だというのに栄養満点満足度千万点。私のモチベーションを保つ必需品だ。私が掃除屋と呼ばれる以前からお世話になっていた名店……あの頃の死にかけだった私を救ったこのお店は掃除屋の生みの親と言ってもいいだろう…そういう意味ではここも伝説のラーメン屋だな。うん、そうに違いない。今は私含め2人しか客がいないがいつもの時間だったらもっと混んでいるしな。

 

 

『では、いただきます。』

 

 

 そういって私(掃除屋)は手を合わせ───自身の腹を開いてラーメンの器ごと突っ込んだ。

 

 

『店主、いつもの通り器代を含めた1600円だ。』

「おう。…毎度のこと思うが結局次来る時器は返してくれるんだから金はいらねぇんだが…」

『誠意というやつだ。受け取っておけ。』

「ま、そういうなら受け取るが」

『……それと、あの時の恩返しだ。』

「なんか言ったか?」

『いや。では、失礼する。』

 

 

 そう言って私は店の引き戸を開け、外に出る。なぜか最後に店主が微笑ましく笑っていた気がするが気にしない。

 

 そして私はそのまま歩き、歩き、何もない袋小路に辿りついた。

 

 

『さて、ラーメン屋からわざわざ。私に何の用かな?先生。』

「流石にバレてたか。」

 

 

 振り返るとそこには青いマフラーをつけた生徒と、いつぞやの先生がたっていた。ラーメン屋からつけられていたというわけだ。

 

 

『店主に迷惑はかけられないからな。少し移動させてもらったが…それで?何の用だ先生。私は今忙しいんだ。手短に頼むぞ。』

「わかった。えーっと、“掃除屋”さん、でいいのかな?」

『……』

「沈黙は肯定と捉えるよ。」

 

 

 まあ、バレてるよな。あのとき便利屋のカヨコさんにしっかり睨みつけられていたからな。あの暗闇でバレるわけがないと思っていたがよほど目がいいらしい。

 

 

「じゃあ早速だけど、便利屋68のみんなに手を出すの、やめてもらうことってできるかな?」

『無理だな』

「わお、即答。」

『こちらだって傭兵としての職がかかっている。失われた信頼は取り戻さねばなるまい。』

「どうしても?」

 

 

 かちゃり、と音が鳴った。

 

 

『…私に銃を向けるか。』

「……」

『そうか、そうか。…それがどういう意味を持つのか、理解していないわけではあるまいな?』

「…!」

「…シロコ、下げて。」

「…ん」

『賢明な判断だ。』

「…じゃあ、別のお願いをしようか。」

『言ってみろ。手短にな。』

 

 

 すると彼は懐から携帯を出して、一枚の写真を見せてきた。

 

 

「この生徒に見覚えは?」

『…知らんな。』

「嘘はつかないでほしい。新戸コモリ。トリニティ総合学園の3年生だ。」

『……ああ、そういう名前だったか。』

「っ!…本題に入るけど、今すぐこの子から手を引け。」

『……』

 

 

 ……………………?

 

 ん??

 んんん?

 

 

『何を言っている?なんのことだ。』

「しらを切るな。貴方があるヘルメット団を脅して『新戸コモリを虐め、そして襲え。邪魔するものがいればそれも排除しろ。』と命令していたという目撃情報が入った。」

『……』

「何が目的かは知らないけど、今すぐあの子から手を引け。」

 

 

 あー、なるほど。そこから。ちっ、あの時の人払いは完璧だった。つまりあいつらの誰かがチクったってわけか。口止めしておけばよかったな。コモリと掃除屋の関係を疑われるのは、めんどくさい。

 …いや、だが、使えるのか?コレ…

 

 

『断る、と言ったら?』

「やめさせる。どんな手を使ってでも。」

『たとえ奴が非道な犯罪に手を染めていてもか?』

「ああ、あの子は私の生徒だ。どんな子だとしても、私が先生である限り、必ず助け出す。」

『……そうか。』

 

 

『だが、断る。』

 

 

 その言葉と同時に生徒──シロコが私に銃を構え直す。

 

 

『私から見て右の2個目のビル、2階に一人。1階に一人。左斜め向こうの室外機の後ろに盾持ちが一人。そして目の前に一人。なるほど。アビドス生か。よっぽど慕われているように見える。』

 

「──っ!」

 

『先生、貴様の生徒が引き金を引く前に言っておくが、私は人の命を奪うことに躊躇しないタイプの人間だぞ?』

 

「………」

 

『貴様が失うことを嫌うのなら、ここで引くべきだと助言しよう。』

 

「………わかった。ここは引こう。」

「先生!?」

「…でも、掃除屋。忘れるな。私は必ず自分の生徒を助け出す。便利屋のみんなも守り通す。」

 

 

 そう言って、彼は砂の積もった街の中に消えていった。

 

 

 

 

 

『…かっこいいな。』

 

 

 

 

 

 あ!そうだ。柴関ラーメンが冷める前に帰らないと!

 

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