引き篭もりアーカイブ   作:有機栽培茶

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正月便利屋が当たりません。そう、全員です。
ちょっと風邪気味でクオリティが(言い訳
誤字報告してくださっている方、毎度本当にありがとうございます。
…できる限り出さないよう気をつけます…


お手紙

 

 その日、便利屋68の事務所のポストに一通の手紙が届いた。

 

 

『拝啓 便利屋68の皆様。

 小難しい挨拶は抜きにしましょう。

 この度私がわざわざこのような手紙を出させていただいたのは他でもありません。この面倒な事態に、そろそろケリをつけようと考えたからです。

 21日(今日)の15時ちょうどに、付属の地図へ記した座標にお越しください。

 

 万が一の場合を考えまして、あなた方の“お友達”を人質とさせていただきます。

 

 掃除屋より』

 

 

 妙に達筆に描かれた手紙。

 瞬間、それはくしゃりと握りつぶされた。

 

 

「やってくれたじゃない。掃除屋。」

 

 

 珍しく彼女たちの事務所は静寂に包まれ、そして熱を感じさせる声が響く。先生が顔を向けるとそこには、声とは対照的に恐ろしく冷めた顔をしたアルが立っていた。

 

 

「アウトローの至高、私の目指すべき背中だと思っていたけど、どうやら見込み違いだったようね。あんなか弱い子を人質に取るなんて…本当に見損なったわ。」

「アル、落ち着いて。」

「落ち着いてるわ先生。私は冷静よ。」

 

 

 そう言いながらも、なお彼女は紙を握る手には力を入れ続ける。完全にブチギレていた。

 

 

「いいわ。掃除屋。私たち便利屋68が貴方を倒して、コモリを助けだす。貴方みたいな卑怯な手を使う小物なんて怖くない!今行くわ!首を洗って待ってなさい!準備するのよ貴方たち!」

「は、はいアル様!」

「この辺全部持ってっていいよね?」

「いいわ。ぶちかましてあげなさい!」

「……」

「……」

「…どうしたのカヨコ?それに先生も。早く行かないといけないのよ?」

「…アル、そのことなんだけど……いや、わかった。まずは打倒掃除屋だね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 掃除屋の示した場所。それはゲヘナ学園領にギリギリ入るか入らないくらいの場所で、キヴォトスにおいて1、2を争うマンモス校であるゲヘナ学園にも少ないが確かに存在するスラム街と呼ばれる場所だった。

 人気もなく、あっても薄暗い背景を持つ者しかいない。風紀委員や警察などの邪魔者も滅多に来ないような、まさに決戦に相応しい場所だった。

 

 だが唯一の欠点を挙げるとするならば遠いという点だ。

 

 

「わざとこんな遠い場所にしたんじゃないでしょうね…」

 

 

 彼女たちは今フル武装の状態で、電車に揺られていた。

 便利屋68の事務所と、その指定された場所は遠い。とにかく遠いのだ。指定された時間に間に合うためには必ずこの電車などを使わないと間に合わないほどに。

 

 

「全部終わったら慰謝料と交通費も支払ってもらうわよ!覚悟しておきなさい!」

 

 

 彼女はそう叫んだ。

 しかし他のメンバーは緊張からかいつも以上に口数が少ない。こんな時でもいつもの自分を保つことができるのは彼女の才能の一つと言えるだろう。単に怒りに飲まれ事の重大さに気づいていないだけかもしれないが。

 

 

「…社長、落ち着いて。」

「落ち着いてるわ!」

「じゃあ何か気づいたことはない?」

「ないわ!」

「……はぁ」

 

 

 彼女の隣に座っていたカヨコはため息をつき、そしてあたりを指さした。

 

 

「あの乗客たち、社長があんなにも騒いだのに特に反応しなかったよね。」

「?単に気づかなかっただけじゃないの?」

「……じゃあさ、この電車が向かう先にあるのはスラム街だらけの場所だよね。」

「そうね。」

「なら少し人が多すぎないかと思わない?」

「そう…ね?確かに言われてみれば…」

「…それに、少し──────

 

 

 

    ───静かすぎない?

 

 

「!?」

 

 

 ガタン。

 彼女が言葉を発した瞬間に車体が大きく揺れ動いた。そして、気のせいか窓の外を流れる景色も早くなった気がする。

 

 

「先生!」

「うん。」

 

 

 状況の異常さにいち早く気づいたカヨコが先生に叫び、彼はすぐにタブレット──シッテムの箱を取り出した。

 続いて他のメンバーたちも混乱しながらも戦闘態勢に入ってゆく。

 

 しかし、おかしなことに他の乗客たちは何事もなかったように座っている。そう、彼女たちが銃を構え、警戒し出したにも関わらず、彼らは気づいていないように、静かに椅子に座っている。座り続けている。

 

 

「…まずいね。」

「もしかして罠に嵌められた〜?」

「そうみたい。」

「え!?どどど、どうしますか!?全部吹き飛ばしますか!?」

「お、おおおお落ち着きなさい!まずは冷静になって状況の把握に努めるのよ!あの卑怯者の罠なんて怖くないわ!」

 

 

 周囲を警戒しながら、緊迫した雰囲気が数十秒流れた。いや、もしくは数秒だったのかもしれない。だが、変化は唐突に訪れる。

 

 “ザザ、ザー”と砂嵐が壁に設置された放送器具から流れ出す。

 そして、

 

 

『この電車は、●●線内回り■■方面行きです。』

 

 

 普通の車内放送だった。

 

 

「…ふぅ、なによ。ただの車内放送じゃない。」

「……いや、待って。」

 

 

『次は、▲、が#%、つ、Tu、ヅ、ツ───』

 

 

「ひぃ!?ホ、ホラー!?」

 

 

 突然車内放送に変化が訪れる。落ち着いた喋り口調の放送は、バグったように同じ音を繰り返し、そしてついには音が鳴り止んだ。

 そんな異常事態にも乗客たちは興味を示さない。それどころか、ぴくりとも動かない。まるで寝ているかのように。いや───まるで糸の繋がれていない人形かのように────

 

 

 

『ザザ、ザ、ザ──あ、あー、えー…ご乗車くださったお客様──便利屋68の皆様。』

「!!」

 

 

 声が変わった。

 それは聞く者全てに恐怖を与えるような平坦な声で、唯一先生のみが直接聞いたことのある声。

 

 

『ようこそ。私の丹精込めて用意した決戦の場所へ。私の名前は───

 

「掃除屋、だよね?」

『…名乗りを上げる前にバラすのはやめて欲しいのだが?先生。』

 

 

 ガタン、ゴトンと、先ほどより明らかに早いテンポでその音が流れる。

 

 

「貴方が掃除屋!」

『ああそうだとも。私が掃除屋。君たちが泥を塗った看板の持ち主だ。』

「…なんであの子を巻き込んだのかしら。」

『あの子…?ああ、いやなに。ちょうどいい囮がいたのでな。使わせてもらった。君たちに逃げられたら困るのでな。』

「そんなことしないでも逃げないわよ!」

『それは君たちの都合だろう?私はどんな小さな不確定要素でも潰しておきたいのだよ。』

「なら、すでに私たちを罠にかけた今ならもう人質の必要はないんじゃないのか?」

「先生!」

『…そうだな。だが、それじゃあつまらないだろ?せっかくだ。彼女は君たちが私を見事打ち倒した際の報酬としよう。まあそんなことは万が一にもないのだが。』

「……」

『さて、ではいい加減始めようか。』

 

 

 その時だった。

 

 

「ひっ!?う、動き出したわ!?」

「…うわ」

「何これ〜気持ち悪〜い。」

「全部殺せばいいですか!?」

「ダダダ、ダメよ!?生きているのよ!?」

「うわ、撃ってきた。」

 

 

 今まで微動だにしなかった乗客たちが、幽鬼のような動作をしながら立ち上がった。そしてどこからか取り出したのか、手に持ったアサルトライフルや拳銃で便利屋たちを狙い撃ってきた。

 

 

「…掃除屋。」

『ん?ああ。安心したまえ先生。これらは私が作り上げた命なき人形だ。安心して壊すといい。』

「なら安心ね!ぶちかましてあげなさい!」

「は、はい!」

『ははは!威勢がいいな!だが私の作りあげた可愛い子たちをそう簡単に打ち倒せると────

 

 

 ドガガガガ

 

 

 

 ────────な、なかなかやるな。』

「行くわよ!」

 

 

 次々とショットガンや爆弾で破壊されていく乗客人形。戸惑う声が放送器から流れる中、順調に彼女たちは順調に足を進めていく。

 

 ──が、

 

 

「っ!先生!」

「!?」

 

 

 足をかけられて転んだ先生の、先ほどまで頭があった場所を何かが高速で抜けていく。いや、光速で、と言うべきだろう。光の線を引くそれが通過した場所は高熱の何かが触れたように溶解し、穴が空いていた。

 

 

「…レーザー?」

『大正解だ。だが、まさか避けられるとは、な!』

「うわっ!?また撃ってきたわ!」

「敵味方関係なしに撃ってきてるね〜!」

「うわあああ!?」

『当たったら流石の君たちでも痛いだろうな。さあ、頑張って避けるといい。避けれるものならな。』

 

 

 三度目の狙撃。

 敵を巻き込みながらも確実に当たったらまずいだろう被害を周りに与えてゆく。このまま狙撃を許していれば当たらずとも乗車している車両は破壊され、無事では済まないことになるだろう。

 

 

「──っ!アロナ!」

【はい先生!私が射線を表示します!頑張って避けてください!】

 

 

 

 

「さあみんな。指揮を始めるよ。」

 

 

 反撃の時間だ。




オリキャラ以外の目線は書くのが難しいのです

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