山田弟は、初恋を砕けない   作:しやぶ

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幼少期編
プロローグ:私の弟と超能力


 

 ──弟が超能力に目覚めた。

 

 いきなり何を言ってるんだと思われるだろうが、本当だ。

 

 事の始まりは、昨日。一歳(ひとつ)下の弟が、5歳になった日の朝──弟の寝室で、悲鳴が上がったのだ。

 何事かと、家族総出で様子を見に行くと……弟が虚空を指差し『何かいる! 何か変なのがいる!!』と泣き叫んでいた。

 

 当然、即精密検査である。

 幸いウチは両親が医者で、病院のトップでもあった。土曜日だったので本来病院は休みだったが、脳神経内科の人を呼び出して検査してもらうことになった。

 

 結果は……

 

『当初懸念されていた脳炎などは確認されませんでした。軽い質疑応答をしてみても、正常な受け答えができていましたので……しばらくは様子を見ましょう』

 

『幻覚についてはおそらくですが、イマジナリーコンパニオンかと』

 

 別名『イマジナリーフレンド』

 主に人型で現れる、空想上の友人。

 弟くらいの歳で発生するのは珍しくない症例で、危険性も大してないとのこと。

 

 弟は納得していない様子だったが、両親は『命に別状がないなら良かった』と言って済ませたし、私も『そんなに友達が欲しかったの?』と少しからかう程度にしておいた。

 

 ──と、これで本当に終わればよかったのだが。

 

 

『〝クレイジーダイヤモンド〟』

 

『お姉ちゃんの怪我と、ケーキを治して』

 

 

 検査で一日が潰れ、改めて『誕生日パーティー』が開かれることになった今日。

 ケーキを食卓に運ぶ途中で、私は転んでしまった。

 皿は割れ、ケーキは飛び散り、私は顔を床に打ち付けた。その、すぐ後。

 

 弟の声と共に、私の身体から痛みが消えた。

 そして同時に、皿の破片はひとりでに集まって元通りに。グチャグチャだったケーキは綺麗な形に戻って皿の上へ乗っかった。

 

『うそ……超能力……?』

 

 明らかな怪奇現象。映画の中にしかないと思っていた、異能の力。その発露だった。

 普通であれば研究機関に送られたり、そうでなくとも不気味がられて腫れ物扱いになるところだろうが……

 

『うん、クレイジーダイヤモンドは〝破壊されたものを治す超能力〟を持ってるんだって。凄いよね!』

『それは凄いな! 是非ともウチで雇いたい!』

『そうね! 履歴書取ってくるわ!』

 

 ……あいにくウチの両親は幼稚園児の私でさえ分かるほどの『お花畑』なので、何を血迷ったか息子のイマジナリーフレンドを職場に迎えようと言い始めた。そして本当に履歴書を持ってきた。

 ペンが宙に浮いて、文字を綴っていく。なんだこの状況。

 

『えぇっとどれどれ……? 〝私は息子さんの半径2m圏内でしか能力を使用できません。なので勧誘するなら彼を通してください〟か……』

『キョウちゃん、ウチで働かない?』

『ぼくはいいけど、クレイジーダイヤモンドが〝法的に無理があるのでは〟って』

 

 名前に『狂気(クレイジー)』って付いてる奴が一番マトモってどういうことなの?

 

 頭が痛くなってきた私は、ケーキを頬張って現実逃避した。

 ……口の中でとろけるショコラは上品過ぎて、正直私の好みではなかった。

 

「友達に貰った板チョコの方が甘くて好き」

 

「「そんなっ!?」」

 

「お姉ちゃん、舌大丈夫?」

 

 解せぬ。




 
 Q:園児山田、語彙力高くね? クレイジーの意味とかなんで知ってるん?
 A:本作のリョウさんは海外の映画を字幕で観る派。そして原作設定で彼女がベースを始めた年齢は10歳と判明しているので、まだ記憶容量が楽器に埋め尽くされていません。(ヴァイオリン? 知らない子ですね)つまり映画で語彙力が高められている、という設定。

 …………ところで虹夏ちゃんとリョウさん、何歳の時出会ったん?? 分からないので本作では捏造するゾ☆
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