プロローグ:私の弟と超能力
──弟が超能力に目覚めた。
いきなり何を言ってるんだと思われるだろうが、本当だ。
事の始まりは、昨日。
何事かと、家族総出で様子を見に行くと……弟が虚空を指差し『何かいる! 何か変なのがいる!!』と泣き叫んでいた。
当然、即精密検査である。
幸いウチは両親が医者で、病院のトップでもあった。土曜日だったので本来病院は休みだったが、脳神経内科の人を呼び出して検査してもらうことになった。
結果は……
『当初懸念されていた脳炎などは確認されませんでした。軽い質疑応答をしてみても、正常な受け答えができていましたので……しばらくは様子を見ましょう』
『幻覚についてはおそらくですが、イマジナリーコンパニオンかと』
別名『イマジナリーフレンド』
主に人型で現れる、空想上の友人。
弟くらいの歳で発生するのは珍しくない症例で、危険性も大してないとのこと。
弟は納得していない様子だったが、両親は『命に別状がないなら良かった』と言って済ませたし、私も『そんなに友達が欲しかったの?』と少しからかう程度にしておいた。
──と、これで本当に終わればよかったのだが。
『〝クレイジーダイヤモンド〟』
『お姉ちゃんの怪我と、ケーキを治して』
検査で一日が潰れ、改めて『誕生日パーティー』が開かれることになった今日。
ケーキを食卓に運ぶ途中で、私は転んでしまった。
皿は割れ、ケーキは飛び散り、私は顔を床に打ち付けた。その、すぐ後。
弟の声と共に、私の身体から痛みが消えた。
そして同時に、皿の破片はひとりでに集まって元通りに。グチャグチャだったケーキは綺麗な形に戻って皿の上へ乗っかった。
『うそ……超能力……?』
明らかな怪奇現象。映画の中にしかないと思っていた、異能の力。その発露だった。
普通であれば研究機関に送られたり、そうでなくとも不気味がられて腫れ物扱いになるところだろうが……
『うん、クレイジーダイヤモンドは〝破壊されたものを治す超能力〟を持ってるんだって。凄いよね!』
『それは凄いな! 是非ともウチで雇いたい!』
『そうね! 履歴書取ってくるわ!』
……あいにくウチの両親は幼稚園児の私でさえ分かるほどの『お花畑』なので、何を血迷ったか息子のイマジナリーフレンドを職場に迎えようと言い始めた。そして本当に履歴書を持ってきた。
ペンが宙に浮いて、文字を綴っていく。なんだこの状況。
『えぇっとどれどれ……? 〝私は息子さんの半径2m圏内でしか能力を使用できません。なので勧誘するなら彼を通してください〟か……』
『キョウちゃん、ウチで働かない?』
『ぼくはいいけど、クレイジーダイヤモンドが〝法的に無理があるのでは〟って』
名前に『
頭が痛くなってきた私は、ケーキを頬張って現実逃避した。
……口の中でとろけるショコラは上品過ぎて、正直私の好みではなかった。
「友達に貰った板チョコの方が甘くて好き」
「「そんなっ!?」」
「お姉ちゃん、舌大丈夫?」
解せぬ。
Q:園児山田、語彙力高くね? クレイジーの意味とかなんで知ってるん?
A:本作のリョウさんは海外の映画を字幕で観る派。そして原作設定で彼女がベースを始めた年齢は10歳と判明しているので、まだ記憶容量が楽器に埋め尽くされていません。(ヴァイオリン? 知らない子ですね)つまり映画で語彙力が高められている、という設定。
…………ところで虹夏ちゃんとリョウさん、何歳の時出会ったん?? 分からないので本作では捏造するゾ☆