一週間お待たせしましたすみません……
にも関わらず文字数が少なくて更に申し訳ないです……ただ例の如く分割なので次は早めに仕上げられるかと……
──5月27日金曜日。
喜多さんのベースを買い取ると約束したあの日から、4日後のこと。
部活無所属のオレは、いつものように放課後即帰宅し、日課の予習復習に励んでいたのだが……スマホの着信音を聞き、シャーペンを置いた。
手帳型のケースを開いて、画面を見る。……ふむ、相手はどうやら喜多さんらしい。
昨日は早くも『一曲通しで弾けるようになったわ!』という報告を受け、そのままスピーカー越しに演奏を聴かせてもらったワケだが。果たして今日は、どのような報告が聞けるのだろうか──
『山田くんっ、受かったわよ!!』
……ん??
『ギターボーカルのテスト、受かったの!! これで私、晴れて結束バンドの一員よ! それで、真っ先に報告しなくっちゃって!』
「お、おぅ。それは良かった。めでたい。めでたいんだけど……早くない??」
『まぁ正直なところ、私もそう思うんだけど……その、山田くんは後藤さんの
……これも早いな。もう知らされてるなんて。
「顔のパーツが崩れたり、全身フニャフニャになったりするらしいってのは、聞いてるよ。まだ直接確認はできてないけど」
『そう……私は後藤さんと学校同じだから、昼休みとか放課後とか、
「間近で『
『うん。私の場合、リョウ先輩から
「溶けるのはまだギリギリ分かるけど『
いや溶けるのも分からんけど。『爆ぜる』ってどういうこと? 爆発だよね?? え、まさか後藤さん死んだ???
『身体が一瞬膨れた後に風船みたいな音を出して、ペラペラのシオシオになるわ』
「ナニソレ怖っ」
『血とかは出ないから私はまだ耐えれたけど、人によってはトラウマになるんじゃないかしら?』
「だろうね……」
『後藤さん、日常会話の途中に脈絡なくそういう発作が起きるから……〝学校からSTARRYに移動するまでの間に死んじゃってもおかしくない〟っていうのが、先輩達と私の共通認識なのよ』
「……具体的に言うと、喜多さんの腕が育つまで待ってられないくらい本気で危なっかしい……ってワケか」
『うん』
即答である。
あの子、そんな調子で今までどうやって生きてきたんだ……?
『──まぁそういう裏の事情はさておき、受かったのは本当よ?
それで私……受かったら、山田くんに言おうって決めてたことがあって……』
「……何?」
なんだ? 嫌な予感がする……
『私、山田くんのこと──ッ』
「!?」
オイオイオイ待てよ待ってくれ!
『
「ぶち転がすぞテメェ!?」
一瞬本気で喧嘩を売られているのかと思った。『冷静になれ』と自分に言い聞かせつつ発言の意図を問うと、『
やっぱりオレ、コイツ、キライ。
*
……何はともあれ、結束バンドに必要なパートが揃ったのは事実。という訳で──
『アー写を撮ろう!』
……と、なったはいいのだが。
「大変申し訳ございませんでしたぁ!!!」
日曜日。下北沢駅前にて。
爽やかな日差しの下、後藤さんは何故か合流早々スライディング土下座を敢行した。
「何事!?」
「どうしたの後藤さん!?」
「…………」
「オイコラ姉貴、何撮ろうとしてんだ止まれ」
とりあえず、擦れたであろう手や膝の治療を……と思ったが、コイツ
「こっ、この通りです……!」
そう言って彼女は頭を下げたまま、フリップをこちらに向けた。
「何々……? 『私は約束通り歌詞を書き上げられませんでした』ね……なるほど。〆切過ぎちゃったのか」
「いや〆切なんて無いよ!?」
「「え?」」
「じゃ、じゃあ今日の集まりは、調子に乗ったくせに歌詞を書き上げられなかった私を吊るし上げる会ではない……?」
「後藤さん、私達を鬼か悪魔と勘違いしてないかしら……?」
「いっ、いえ! そんなことは……!」
「……虹夏ちゃん、ちなみに今日写真撮影ってことは伝えたんだよね?」
「そりゃ勿論」
「そう……
あー、後藤さん? 一応確認なんだけど、
「あっ、はいダイジョウブです!! 一応一番良いのを着てきましたのでッッ」
「お、おう。そっか」
(((え、いつものと何が違うの???)))
尚後に判明する彼女のファッションセンスを考慮すると、本当にこのジャージは『一番良いの』に分類される。ただ、ピンクジャージコレクションの違いはオレも知らん。
「
「良いんじゃないかな? ぼっちちゃん、バイトの時もその格好だからさ。写真見てSTARRY来てくれたお客さんなら一発で『あっ、あの人だ!』って分かりやすいし」
「あーね。分かりやすいのは大事」
「!!!」
(ア゛ッ、それはイヤかもしれない……!!)
「それで、場所はどうするんですか?」
「まだ決めてないから、歩きながら良さげなところを探そうと思ってるよ! 候補は『階段』『公園』『フェンス』『各種壁』ってところかな」
「あっ、外で撮るんですか……?」
「
「別に出してもいいけどその前に借金返せや」
「ケチ」
「カメラマンとしての時給取ってもいいんだぞ?」
「ごめんなさい」
「──じゃあそういうワケで、『第一回結束バンドアー写撮影の旅』にぃ〜、れっつらごー!」
「おー!」「オーゥ」「「……」」
虹夏ちゃんが先頭を切って歩きだし、喜多さんが真っ先に追従。後藤さんが後を追い、オレと姉貴はポカンとしててちょっと遅れた。
すると虹夏ちゃんがクルリと振り返って、こちらを見遣る。……サイドテールと手首のリボン、ハイウエストのミディスカートが、彼女の動きに合わせてフワリと揺れた。背丈の小さい彼女だが、快活な動きは大きな存在感となって、人の目を釘付けにする魅力に溢れている。
「──はいそこの
……見惚れている場合ではなかった。それと……
「虹夏、今は令和だよ? 『レッツラ■ン』ネタはたぶん現代人には通じない」
「ごめん虹夏ちゃん。今回ばかりは姉貴に同意だわ」
「現代っ子代表こと喜多ちゃんはノってくれたんですけど!?」
「勢いでノリはしましたけど、レッツラ■ンは知らないですね」
「後ろから刺された!? ぼ、ぼっちちゃんは……」
「す、すみません……」
「プッ」
「笑うなぁ!!!」
大体そもそも虹夏ちゃんがレッツラ■ン知ってるのって、何かと古参ぶりたい姉貴が昔の漫画を集めて、それを虹夏ちゃんの部屋に持ち込むからだよなぁ……これは酷い。
──そして真っ赤になった虹夏ちゃんがひとしきり姉貴にドラムスティックを叩き込んだ後、ようやくアー写撮影の旅が始まった。相変わらずのグダグダである。
「イタタ……虹夏め……容赦のカケラもない……」
「姉貴が煽るからだろ? ったく……」
──〝クレイジーダイヤモンド〟
「──ッッッ!?」
「……ん、どうしたの後藤さん?」
「きっ、喜多さッ、アレ……!」
「リョウ先輩と山田くんがどうしたの?」
「え、いやお二人じゃなくて……あれ?」
「???」
「きっ、消えた……? あっ、たぶん錯覚ですお騒がせしましたすみませんすみません」
「……もう、変な後藤さん」