山田弟は、初恋を砕けない   作:しやぶ

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 付き合う前のすったもんだもイイものですが、付き合ってからの合法的で駆け引きやら苦悩やらが無い糖度100%なイチャつきも私は好きです。
 低評価覚悟。虹夏ちゃんはアクセルとツインペダルを踏み間違えて暴走しました。ブレーキを壊した山田のせいです。
 


転':上から下まで/今日は何も無かった。イイね?

 

 ──愛は真心。恋は下心。

 この言葉が、私は嫌いだ。同じ『好き』という心に貴賤を付ける、この言葉が嫌いだ。

 

 ──顔と性格、どっちが大事か。

 この問いが、オレは嫌いだ。『顔の良い人間を好きになってはいけない』とでも言いたげな風潮を作った、この問いが嫌いだ。

 

 私は恭助くんに恋をしている。付き合って、えっちなことをしたいとも思っている。所謂『劣情』というものを、私は抱いている。──だって、『愛』だけじゃ足りないから。

 彼の真心が好きだ。私の母にそうしてくれたように、無償で人を救ってみせる彼の、尊い心が好きだ。好きで好きで、心が(あふ)れて(こぼ)れたら、下に溜まっていくのが道理だろう。この膨大な好意が、上品に着飾った真心だけで伝えきれるものか。

 

 オレは虹夏ちゃんの髪が好きだ。明るい色が、柔らかな感触が、手入れを欠かしていないことが分かる匂いが好きだ。

 感情豊かな目と頬が好きだ。笑った時に見える白い歯が好きだ。

 声も、腕も、脚も、端的に言って頭の先から爪先まで全部好きだ。ぶっちゃけ自分でもキモいと思うけど、好きなんだからしょうがない。

 

 

  あぁ、でも──

 

 

「──ったく、姉貴め……変な空気にするだけして出ていきやがって」

 

「……えっと、でも、ごめんね? 実際、その……正直、やりづらかった……でしょ」

 

「あー、まぁ、正直に言うと『オレじゃなきゃ襲ってるぞバーロー!!』って感じの反応で戦慄はしてた」

 

「──()()()、ごめん」

 

 

 (おど)けてそう言う彼に、恥じらいは見られなかった。代わりにあったのは純粋な心配と、それに由来する怒気。……それはそうだ。

 15cm差。それが、一般的に『恋人との身長差』で理想とされる数値。

 対し私達は──24cm差。私は中学生の平均身長よりも小さくて、彼は成人と比べても長身である。

 

 キミになら、襲われてもいいのに。キミ以外に、こんな無防備な姿は晒さないのに。

 やっぱり私なんかじゃ、彼に『女性』として意識して貰えない。

 

 

 ──ギタ男くんに言われて、気付いたことがある。

 どうやらオレは、精神エネルギーの感受性が強いせいで……()()()()()()()()()()。無論、全部ではないけれど。

 オレに見えるのは、一部の人の()()()()だけだ。

 例えばそれは、喜多さんの『光』だったり──虹夏ちゃんの、『羽』だったり。

 

 初めて会った時から、彼女が好きだった。人を包み込んで癒してくれる、天使のような心に惹かれていたのだ。

 だが今彼女は、その羽を黒く染めて──彼女自身の首を、絞めていた。

 

 

「……えっと、さ。コレはあくまで変な空気に当てられて口走った妄言だから聞き流してほしいんだけど……」

 

「……?」

 

「──虹夏ちゃんはさ、オレを聖人か何かと勘違いしてる節があると思うんだ」

 

「……え?」

 

 ……割と、聖人に近い存在だと思ってはいるけれど。突然どうしたのだろう。

 

「オレだってね、ラッキースケベをラッキーと思うくらいには健全な男子高校生なんですよ」

「!?」

 

 あっ、羽が緩んだ。よしいいぞ……!

 

「だからね、虹夏ちゃんが何に謝ってるのかサッパリ分からない。むしろご褒美でしたが?」

「な、な……」

 

 何を言い出すんだ、本当に。

 それじゃあ、え? 待って? てことは……え、いや、そんな……え?

 

「という訳で虹夏ちゃんが謝ることは何も無いけど、『以後気を付ける』って言葉は欲しかったかな。オレも理性が大分ギリギリだったからね。いやホントに。

 だって声とか息遣いとかもそうだけど、視覚効果も男からしたらエグい威力なのよ。くすぐったそうに身をよじるだけでもさ、上気したほっぺとか、汗ばんだ首筋とか、間近で目に映ってる身としてはね? クるものがあるんですよ。あんまりうるさくしないように、動かないようにって努めてくれてたのは伝わって来たけど……ぶっちゃけそれも逆効果。ギュッと目を瞑って、声も動きも耐えてる時の虹夏ちゃんね……表情が完全に『誘ってる』人のそれなの。お分かり?」

「……ぁ、はい。いごきをつけます

 

 …………うん。羽は引っ込んだな、ヨシ!

 でもこのセクハラ発言で、たぶんオレの好感度は地に堕ちたな! アシ!!!

 くっそう、姉から『下手を打つな』と言われていたのにやってしまった……!

 ……でも、しょうがないだろう。あんな姿、見ていられなかったんだ。

 だからコレは、必要経費……必要、うぅ……! サヨウナラ、オレの初こ──

 

 

「…………私のコレも、空気に当てられただけだから聞き流してほしいんだけど……」

 

「──ん?」

 

「ぃ、言われなくても私、恭助くん以外にこんなこと頼まないし……そもそも今日は、リョウに聞いて親御さんが居ない日を選んでて……だから、その……察して

 

「……え?」

 

 

 ああああぁぁもうコレほとんど告白だぁぁぁ……コレで失敗したら一生恨むからねリョウ……!?

 

 

「……ぇ、っと。()()()。悪いけど、今日はもう解散にしよう」

 

 

 ────ぁ。

 

 

「あぁいや違くて、違わないけどそうじゃなくって……! オレ達には冷静になる時間が必要だと思うんだ!!

 今虹夏ちゃんに手を出したら、たぶんオレ、我慢できなくなって酷いことするから……! こういうのはしっかり手順を踏まないと! ね!?」

 

「…………リョウからも許可は貰ってるのに」

 

「その姉貴が出した指示を守れそうにないから言ってるんですー!! ちゃんと家の前までは送るから! ほら行くよ!?」

 

「……いくじなし」

 

「──あぁもう! バンドはどうすんのさ!? 虹夏ちゃん的にも今身重になるのは困るでしょ!?」

 

「……それは、ぅん。ごめん、ちょっと冷静になった」

 

「ならヨシ。じゃ今度こそ、行くよ?」

 

「……ね、手順を踏めば……いいんだよね?」

 

「……ん、そだね。だけど今日はもう何も言わないし言わせない」

 

「……充分」

 

 

 ────このあと帰ってから、無事2人で悶絶してましたとさ。

 

ぶっちゃけ今回の話は

  • 展開が急
  • 急とは言わぬが交際前のイチャつきが少量
  • その他の不快感アリ
  • これでいい
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