ふむ……意外と急とは捉えられていなくて驚いています。いや、ここまで生き残った読者様が功夫を積んだ熟練の戦士ということか……
──だが、両片想い状態がコレで終わりと誰が言った? まだだ、まだ終わらんよ。
(……まぁそれはそれとして、これで作者が暴走しても大丈夫そうだということが判明したので嬉しい限りです。皆さんアンケートの回答ありがとうございました)
──
一世一代の大勝負。場合によっては人生の明暗を分ける一幕だ。
その手法は多岐に渡るが、必勝法など存在しない。やり直しも不可能。故にコレは、綿密な計画を立てた上で行われなければならない。
まず
……だって、オレの場合……
変えようのない事実として、オレは人型の凶器である。しかも
破壊したものを治す能力──かつて彼女は『怖くない』と、その力を『優しい人である証拠』と言ってくれたけれど……コレは間違いなく恐ろしい力だ。
コレが『治す』だけだったなら、また違うのだけど。クレイジーダイヤモンドは、人体なんて豆腐みたいに叩き潰せる。そしてその後で、潰れた豆腐を元通りにできる。──そうすれば、『外傷が無い遺体』の完成だ。何なら、もっと
実行に移すかどうかなんて関係ない。それが『可能である』という時点で問題なのだ。喉元に刃物を突きつけられた状態で、誰が相手の要求を蹴れるというのか。
だからまぁ、オレは直接顔を合わせない形で告白を行おうと思っていたのだけれど。姉貴にそれを言ったら、突然抱き着いてきて──
『私がいるよ』
──と言われてしまい、思わず泣きそうになった。
まぁその直後に『ハイエンドベース買いたいからお金貸して』と続いて涙は引っ込んだけど。
『その前に今ある借金返せよクソ姉貴』
『だが断る。──ほら、何も起きない』
……ともかくそういう訳で、手紙はナシになった。
でもやっぱり、『完全な二人きり』は駄目だと思う。どんだけ信頼し合ってても、怖いモンは怖いだろうし。*2
じゃあ逆に、衆人環視の中でならイイのかと言うと……それはそれで別種の断り辛さがあるだろう。フラッシュモブも同様。
──という訳でオレの事前計画だと、海の別荘に結束バンドのメンバー全員を招待して、そこで告白をする予定だった。
貸し切り状態(というか私有地)だから他人は居ないし、近くに身内が居れば比較的安心だろう……と思ったからだ。それと単純に景色が良いから
……で、こんなことを長々と語った訳はと言うと。
「なぁ、姉貴」
「どうした、弟」
「オレさ、
休日以外でオレと虹夏ちゃんが顔を合わせられる時間は、実のところあまり多くない。
学校が同じとはいえ学年は違うから、平日は登下校の時と昼休み、後は放課後に、タイミングがあったら話すという感じだ。
そして現在、7月20日水曜日。夜。
「……ロインは普通に返ってくるんでしょ?」
「まぁ、うん。そうなんだけどさ……やっぱ『あの時』ホントは
「…………」
時間が経てば経つほど、あの時の対処が正しかったのか……分からなくなる。
あの『黒い羽』は、『自己嫌悪』に見えたけど……その解釈が合っていたのか、自信が無くなる。
たとえばそう、実は『恐怖』だった……とか。
過度なストレスは気管収縮の原因になる。充分にあり得る話だ。
じゃあその後の誘うような言動は何だったんだよって話だけど、そうなると今避けられてる理由が解らない。
だって額面通りに受け取ったら殆ど告白だったじゃんお互い! 本来結婚した後にすることをしそうな勢いだったじゃん!! 落ち着いて仕切り直しても、今頃付き合ってキスくらいしててもおかしくない感じだったじゃん!?
しかし現実は、距離を置かれて声すら聞けていないという……受験の時ですらここまで疎遠にはならなかったのに……
「……しょうがない。サポートは終わりのつもりだったけど……もう一回だけ、場を整えてあげる。今回のは私にも責任があるし」
「──!! 助かる!」
「さて、恭助には──」
*
昨日は帰ってから正気に戻って、一晩悶絶していたワケだが……寝て起きて、今度こそ冷静になったいま……私は恐ろしいことに気付いてしまった。
──恭助くん、別に一度も『
冷静に思い返すと、あの時は私が勝手に自信を無くして、『謝らなくていい』って言われて、それで勝手に盛り上がって、告白紛いのことを言っちゃったけど……うん、異性として見てくれてるのはイイとして『だから付き合いたい』とは言われてないよね。私だってクラスの男子を『異性』って認識はしてるけど、『付き合いたい』とは微塵も思わないし。
だから結局アレも『女の子なんだから警戒心を持て』って側面が強い。
その後の言動だって、なんだかんだで彼はずっと、私の暴走を宥める方向に話を持っていってたし……『手順を踏めばいい』って言質は取ったけど、
──結論から言って、コレ私が痴態を晒しただけで何も進展してないのでは? むしろ、もうやんわりとフラれてたまである……? 『まさか虹夏ちゃんがあんな破廉恥娘だっただなんて……幻滅した』とか思われているんじゃ……!?
いや、待て。落ち着け。また暴走が始まっているぞ
まだ『そう』と決まってはいない。まだ正式にフラれたワケじゃあない。だから、チャンスはある。
…………ただそれはそれとして、一旦距離を取ろう。今はちょっと、次どんな顔して会えばいいのか分かんないし……
──それで彼を避けるようになってしまってから、もう10日。
状況は、当然悪化していた。露骨に避け過ぎたせいで、最近はもうロインのやり取りすら最低限だ。
正直、マズイ。ものすごくリョウに頼りたい。
というか、流石に頼ってもいいだろう。こうなったの、半分アレのせいなんだし──
と思って、ロインを開いたその時だった。ちょうど結束バンドのグループロインに、通知が届いた。ぼっちちゃんからだ。
『こんばんは。夜分遅くにすみません』
『チケットノルマの件で、相談があるのですが』
『皆さんの場合どのように捌いていらっしゃるか、参考にさせて頂きたく……』
……ふむ。私と喜多ちゃんはクラスの友達に売れたけど、ぼっちちゃんは『ぼっちちゃん』だからなぁ……あんまり参考にならないだろう。後はリョウだけど……
『ぼっちよ。バンドマンの見本こと、私を参考にするといい』
……お、返信早いな。リョウにしては珍しい。
『──路上ライブを演るのだ』
『ぼっちはソロなら最強だし、とりま不特定多数に聞かせれば五枚くらい余裕』
…………うん、真面目な時のサポートはホントに的確なんだよね……真面目な時は……
『なるほど!!!』
『やってみます』
……さて、一件落着かな。
じゃあリョウには悪いけど、もうひと仕事してもらおう──と思った時に、またしても通知。
『──虹夏』
……ん、リョウ?
『路上ライブには、面倒な申請やら何やらの手続きがある』
『きっとぼっち一人じゃ挫折する。MCやらチケットの受け渡しやらもあるし』
『だから今、
『虹夏は当日ぼっちが心配になって様子を見に来た体で、合流すること』
『どうせ復縁のタイミング逃して困ってた頃でしょ?』
『(ちなみにぼっちはグルです)』
「リョウ……」
『お礼はいらないので、マジで避妊だけしっかりしてください』
「やかましいわッ!!」
わかってるよもう。反省したよ……未遂とはいえギリギリだったから、心配されるのもわかるけど……
たまには素直にお礼くらい、言わせてほしいものだ。