山田弟は、初恋を砕けない   作:しやぶ

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 尚、その酔っ払いは外伝主人公とする。

きくりん(泥酔)「イェーイピースピースぅ〜」

原典主人公ぼっち(人外)「えぇ……」
特別編主人公星歌さん(魔王)「ないわぁ……」
夢系主人公恭助くん(半人外)「マジか……」

きくりん(素面)「解せぬ」
 


第六話(1):やせい の よっぱらい が あらわれた!!!

 ──ぼっちです。クラスに『友達』と呼べる人はいません。

 

 ぼっちです。買い物は圧倒的に通販派。服を買いに行く服がありません。ぼっちです。

 

 ──そんな私ですが、なんと最近バンドを組みました!

 

 それからバイトを始めて、ちょっとだけ人の目が見れるようになりました。

 バンドメンバーとお出かけして、写真を撮りました。

 オシャレな喫茶店で、お茶会をしました。初めて異性の友人ができました。

 

 コレはもう、陰キャ卒業なのでは?

 いや、分かっている。初バイトの後、風邪から復帰した時も、同じことを思って撃沈したワケだが……今回は一味違う。

 

 何故かって? だって、今日の私は『キューピッド』なのだから!!!

 

 私をバンドに引き入れてくれた恩人と、件の男友達。私にとって大切な存在である二人はなんと、『両片想い』であるらしい。

 しかしある日を境にギクシャクしているため、なんとか仲直りしてほしい。そのための場をセッティングし、機を見計らってクールに去る──それが、私に課せられたミッション。

 依頼主はリョウさん。件の恩人にとっては親友であり、彼にとっては実姉である人物。そしてバンドの作曲担当でもある彼女は、作詞担当である私とも関わりが深い。

 

 クフっ、ふふふ。デュフフふふ。家族以外から『お願い』をされるなんて初めてで、正直高揚している。

 それに、知らない人同士がイチャラブしててもコンプレックスを刺激されるだけだけど……あの2人なら別だ。是非とも幸せになってもらいたい。そして許される限り、その様を特等席で見ていたい。

 

 本来こういった色恋沙汰なら、最後のバンドメンバーである喜多ちゃんの方が適任だとは思うし、実際私が選ばれた理由はあまり誇れたものじゃないけれど……それでも、選ばれたのは私なのだ。選ばれたからにはしっかりやらなければ。

 

 ……と、意気込んでやって参りました。金沢八景!

 まずは駅で件の彼と合流。機材の準備等に使う時間含め、ライブ開始予定時刻に余裕を持って、意気揚々と出発し──

 

「ぅ……だ、ぇか……」

 

「「!!!」」

 

 道中で早速、緊急事態が発生した。路上に女性が倒れている。

 

「きゅっ、救急車──」

「待って。その前にオレが()()

 

 そして彼の側に、人型の(ヴィジョン)が現れる。

 クレイジーダイヤモンド……彼が持つ、破壊と治癒を司る超能力だ。彼を呼んでいて良かった。これで──

 

 

「──ごめん()()()、この人はオレじゃ治せない」

 

「えっ」

 

 背筋に氷を入れられたような感覚。

 そんなバカな。じゃあどうすれば……

 

「あっ、じゃあ今度こそ救急車……!」

「あぁいや、たぶん呼ばなくて大丈夫じゃないかな」

「え……?」

 

「だってこの人、()()()()()()()だし」

 

「──み、水……」

 

「……え?」

 

 よ、酔っ払い? 今お昼なのに?

 

「悪いんだけど後藤さん、そこのコンビニでお水買ってきてくれない? オレはこの人見とくから」*1

「あっ、はい!」

「ぁ、あと酔い止めに、しじみのお味噌汁、それとお粥も……」

 

「『お構いなく』だって。先を急ごう後藤さん」

 

「ひぇっ」

「ごめんなさい水だけでいいです……」

 

「はぁ……後藤さん、お願い」

 

「は、はい!!」

 

 喜多さんと会った時も思ったけど、やっぱり山田くんは怒ると怖い……!

 

 

 

 *

 

 

 

「う゛〜……う゛ぅ……アタマい゛ダぃ……」

「ったく……コレだから()()()()()はって言われるんだよな……」

 

 酔っ払いの呻き声をBGMに、小さくなっていく後藤さんの背中を見送って……溜め息を一つ。

 

「──顔に触りますよ」

「ぅ゛エ?」

「痛み止めのマッサージ。嫌ならやりませんけど、どうします?」

「このいだみがマシになるなら……」

「よしきた」

 

 許可を得たので、軽く頭や頬を『それっぽく』揉みながら──スタンドを使う。

 

「──お? おぉぉ!? 凄いナニコレ!? 一気に痛いの無くなった!」

「根本的な治療にはなってないので、そこんとこは勘違いしないでくださいね?」

「分かった! じゃあ──」

 

「どうしてその流れで追加の酒を飲もうと……?」

 

「……? 二日酔いには迎え酒が一番だよ?」

 

「度し難い……」

 

 とりま酒はすぐさま没収して、投げ捨てた。ポイ捨てはダメだから、後藤さんが戻ってきたら回収するけど。

 

 ……耳かきの時と同じで、クレイジーダイヤモンドが治せるのは基本ダメージだけだ。体内のアルコールや頭痛の原因物質(アセトアルデヒド)を消し飛ばすことはできないので、能力を解除すればすぐに痛みが復活する。*2

 そういう意味で迎え酒は、今オレがやってることとそう変わらないように見えるけれど……迎え酒の方は当然後々悪化する。シンプルに救いようがない。

 

「ぅああ、わたしのおにころ……しょうがないから瓶を──」

「させるか」

 

 当然こちらも没収。そして中身を地面にぶちまける。

 

「!?」

「悪く思わないでくださいね。流石に瓶は危なくて投げらんないですし、かと言って手元に置いてたら、絶対隙見て飲もうとしますよね? ()()()()

 

「──あれ、私キミに名前言ったっけ?」

 

「ウチの姉が『SICK HACK』のファンでしてね。特に同じベーシストの貴女が推しなんですよ」

「おぉ〜、キミのお姉さん見る目あるねぇ」

「斯く言うオレも、一応ベーシストの端くれなので……貴女の腕は尊敬してるんです。だから、こんなところで死なれちゃ寝覚めが悪い」

「──ふぅん……そっかそっかぁ…………サインとか、いる?」

「今度姉と一緒にライブ行くんで、そん時にお願いすると思います」

「ん、りょ〜かいぃ…………あ゛

「どうしました?」

 

「……今ね、キミへのお礼に何曲か、リクエストを受けて演奏してあげようと思ったんだけど……」

 

「おっ? それは嬉しいですね。ちょうどこれから路上ライブ演るとこだったので、ベースとアンプなら──」

 

「いや私自前のベース持ってきてたのに、どっかやったなって」

 

「ア゛ァ !?」

 

 

 尚この時の怒声が原因で、ちょうど戻ってきていた後藤さんが、しばらく合流できずにプルプル震えていたそうな。

*1
泥酔者は放っておくと本人も周囲も危険。動けばフラフラして色んなところに体当たりするし、動かない状態でも突然吐いたりする。最悪自分の吐瀉物で窒息して死亡なんてことも。

*2
ちなみにジョジョ4部アニメ19話にて、クレイジーダイヤモンド本来の担い手である仗助と相棒の億泰は、群体スタンド『ハーヴェスト』と交戦した際アルコールを血管に直接流し込まれて酔っ払うが……仗助は(本人も酔っていたからかもしれないが)億泰の酔いを治していない。また同回で仗助は『文字を治して字を変える』という行動を取っているが、コレは『インクを消しとばしている』のではなく『治療時の引き寄せ効果』で『インクを紙から分離した』のだと思われる。

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