前回投稿した話は挿入投稿で最新話の一つ前(つまりここの二つ前)にあります。ご注意ください。(pv及びUA数的に気付いていない方がチラホラいそうなので注意喚起)
──急速だった。
一瞬、というほどではなかったけれど。凄まじい速度で、その
「──ッ」
「ぼっちちゃんが、
「顔を晒されたことの急激なストレスに、身体が耐えられなかったんだわ!!」
息を呑み、その現象を正しく認識し、言語化し終わった頃には……もう手遅れだった。ぼっちは、『後藤ひとり』は拳大まで縮み、人型ですらない名状し難きナニカへと変貌していた。
私達は、ただ普通にライブTシャツのデザイン案を出し合っていただけだ。『ちょっとは遊ぼう』という話にはなっていたが、それは恭助が到着してからでも遅くない。
途中で後藤夫妻の手料理をご馳走になり、食後はあまり間を置かず作業再開。そして暫くして、ぼっちの第一案が完成した。
デザイン自体は、(私達に合っているかはさておき)アリだと思った。
ただ問題は、ソレを見た虹夏の一言だ。
『ぼっちちゃん、私服もそんな感じなの?』
私はてっきり肯定が返ってくるものと思っていたが、ここで意外にも、彼女がジャージとバンドTシャツ以外の私服を持っていることが判明。虹夏と郁代が目を輝かせ、それを着て見せるよう拝み倒した。
『『──か、カワイイ〜〜!!!』』
どちらかというと
素材が良いのは知っていたし、絶望的な顔色の悪さだけ化粧なり何なりで誤魔化せば、顔だけで食っていけるんじゃなかろうか──なんてことを、私も呑気に考えていた。だから私は、虹夏の行動を後押しさえしてしまった。
『そうだ前髪上げましょうよ! 絶対その方が良いわ!』
『えっ、あっ、それは』
『お、喜多ちゃんもそう思う〜? 私も賛成!! 多数決は2対1だよぼっちちゃん?』
『あっ、あ、リョウさん……!』
『ごめんぼっち。この件に関しては、郁代と虹夏に同意』
『そっ、そんな……!』
『ヨシ! 観念するんだねぼっちちゃん、さぁ──』
『──ウ゛ッ !!!』
『『『え?』』』
────そして、今に至る。
「ぼっちちゃん、死んじゃった……」
「新しいギタリスト、探さないとです」
「そこ二人、縁起でもないこと言わない。まだ生きてるよ。こんな姿になっても、呼吸と脈は、ちゃんとある。今恭助に、ちょっち急いで来るように──」
「──う゛っ」
「……虹夏?」
突然、虹夏が胸を押さえて膝を突いた。
「こ、この部屋……急に、息苦しくなって……ッ。コフッ、ゴフッッ! 気管に、何かが入り込んだ……!?」
「う゛っ!? ヤダ、私もだわ……! 肺に、詰まったみたい……!」
──ヤバい。コレは、本当にヤバい。
「恭助に、電話を……ッ。ぐぅ……!!」
ダメだ。私にも症状が現れた。声が出ない──そして、
────コレは、胞子か?
今この室内には、
しかしこの胞子、何よりマズイのは……!!
「──二人共、ハンカチでも袖でもいいから、鼻と口を塞いでッ……!!」
「リョウ……?」
「先輩……?」
「──ぼっちだ。この胞子、
彼女の身体が小さくなったのは、分裂したからだ。今までは爆発しても複数体になることがなかったから、油断していた。
──この胞子は全て、
マズイ。喉は当然食道にも繋がっている。誤って消化してしまったら、互いに無事で済むか分からない。
幸い地面に横たわっている大きな欠片があるから、恭助さえ来てくれれば、クレイジーダイヤモンドの引き寄せ効果で胞子を集めて治療できるだろうが……流石の『彼』も、食べてしまったものを元通りにはできるかどうか……!
「ゴホッ、ゴホッッ!! ッッ……!」
「リョウ……ごめんね……私のせいで……」
無理に喋り過ぎた。いよいよ本当に声が出ない。
だがまだ身体は動く。メッセージを……
「──ごめんなさい……あの日、逃げちゃってごめんなさい……」
「いつも明るさだけで乗り切ろうとしてごめん……それで肝心な時に限って暴走して……あたし、リョウに迷惑かけてばっかだ……」
「…………ふたり、とも? なにを、いって」
「もう逃げないから……まだギターは下手っぴなままだけど、今度こそ、絶対に……」
「それに、恭助くんにも……また、助けられてばっかり……」
──コレは、なんだ?
虹夏と郁代は、こんな昏い目をしていたか? まるで、今にも自殺しそうな……。
「でもボーカルはもう仕上げたから……天才過ぎてごめんなさい……あとかわいくてごめんなさい……」
──あ、いや。郁代は大丈夫だわ。
しかし、うん。分かった。細胞摂取による嗜好の伝播だな。
心臓を移植された患者がドナーの影響を強く受けた事例なんかは複数あるし、有名だ。ただこっちはもう少しファンタジーな……ファフニールの血を浴びたジークフリートに近いだろうか。
まァ、そこは今重要なことじゃあない。
郁代は大丈夫。私も気分が落ち込んでこそいるが、私はお姉ちゃんだ。長女だから耐えられる。事態を解決するまでは耐えられる。問題は、虹夏だ。
実のところ、ぼっちと趣味趣向が合うのは私だけど、価値観の根底が近いのは虹夏の方だ。
どこまでも優しくて、頼られたら助けずにはいられなくて、自分の長所よりも短所を見がち。
だから──
「…………私がいなくなれば、お姉ちゃんはもう一回、ギターを……」
「──ッ」
虚な目で三角旗を見た虹夏を、体当たりする勢いで抱きつき止める。長紐はダメだ。首を吊りかねない。
「…………暑い」
「あー……伊地知先輩いいなぁ……リョウ先輩とそんなにくっつけて……」
「ええいっ、郁代も、来い……!」
「へへ……やったぁ……」
郁代の笑い方が微妙にぼっち化しているが……まぁいい。二人共大人しくなったし、これで連絡ができる。
「うぅ……ダメ、だ……ライブ……できる気が、しない……」
「ふふふふふ、もうムリまぢ病む……」
──恭助、早く来てくれ。お姉ちゃんちょっと、この地獄は長く持たないかもしんない。
*
「ドラァッ!!」
乾坤一擲。指定された座標に到着してすぐ、玄関を破壊し侵入。すかさず再生能力で元通りにする。
「きゃあ!?」「わふんっ!?」「何事!?」
「あ゛ー……」
轟音に驚いた声がいくつかと、姉の声。同じ場所からだ。まずはそこに向かお──ん?
「あー大丈夫です大丈夫です。そこで待っててください。虹夏、悪いんだけどちょっと行って大人しくさせてきて」
「うん……」
あれ? いま虹夏ちゃんの声も聞こえたぞ?
──でもって、近くの部屋からふっつーに出てきたぞ??
「あー……なんというか、その……この通り、無事です。お騒がせしました……」
「お、おぅ……何事もなかったなら、うん。良かったです、ハイ?」
んー? んんーー???
どういうことかナー? 姉貴ぃー??
「えっとね、リョウを責めないであげて。一時は本当に危なかったから」
「……じゃあ一応、診察させて」
「うん」
同化を解除し、診察に意識を割く。
「……たしかに、大丈夫そうだね。……それで、何があったの?」
「…………」
「虹夏ちゃん?」
「……見えた」
「え、何が?」
「
「へぁっ!?」
次回、オリジナル(デート)回。安価は絶対。アンケート結果も絶対。インディアンうそつかない。