山田弟は、初恋を砕けない   作:しやぶ

27 / 27
 
 …………はい、半年と一ヵ月ぶりですね。明けましておめでとうございます……(震え声) もう二月ですけど一日(ついたち)なので実質元日ですよね?? ハイ戯言です申し訳ございません……。

 もう待っている人はいないかもしれませんが、再開です。亀の歩みではありますが、キリのいいところまでは書いていこうと思います。

 それではどうぞ。
 


(2)

 

「──で、どういうつもりだよ? 姉貴」

「なんのこと?」

「どうして今日、虹夏ちゃんを家に呼んだ?」

 

 風呂から上がり、食事を済ませ、虹夏ちゃんは今、食器を洗ってくれている。

 オレも手伝おうとはしたのだが、『怪我人は下がっていろ』と言われあえなく撤退。

 折角なので、この時間で──彼女と距離がある内に、最初(ハナ)から手伝う気なんて欠片もない姉を、問い詰めておくことにした。

 

「呼んではいないよ。歓迎する理由はあっても拒否する理由がないから上げただけ」

「ほーん? じゃあ普段昼まで寝てる姉貴がこんな時間に起きてるのも、料理なんてしねえのに食材が買ってあったのも、虹夏ちゃんの身長に合う湯浴み着がポンっと出てきたのも、全部偶然?」

「うん。凄い偶然」

 

「──じゃあ、()()()()()()()()()()()()()?」

 

「…………うん。昨日は、何もなかった」

 

「はぁ……あのさ」

 

 昨日の後藤家で、何があったのか……実はオレ、()()()()()()()()()()()()

 分かっているのは、何故か『結束バンド』の4人が揃って倒れていたらしいという()()()()。そうなった過程、原因が分からないのだ。

 ……しかし、察しは付く。

 

「皆が倒れた原因、()()()()()の異能だろ?」

 

 後藤夫妻とふたりちゃんにはスタンドが見えていなかった。あの3人は、オカルトに理解があるだけの一般人だ。姉さんと虹夏ちゃん、喜多さんも同様。

 

 でも、彼女だけは違う。

 

 そして倒れた後、虹夏ちゃんと姉貴も見える(こちら)側に来た。無関係とは、考えにくい。

 

「──ッ。待って恭助、誤解! ぼっちに悪意はなかった!」

 

「はぁぁ……やっぱ()()()()()()ね。知ってるわ、そんなこと」

「……へ?」

 

「そんな心配しなくても、能力が危険って理由で、誰かを遠ざけようとはしないよ」

 

 それなら真っ先に、オレが消えないといけない。

 でも姉さんも、虹夏ちゃんも、きっと喜多さんも、そんな理由で身内を切り離したりはしないだろう。

 

「まぁ、流石にそろそろ本人に、異能を自覚して貰ってもいいんじゃあないかとは思うけどね?」

 

 かつてオレも一度、能力が意図しない動きをした。

 オレの場合は、それをキッカケに訓練して、制御できるようになったけど……後藤さんは、自分の体質を自覚していない。それでは()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………分裂したんだ」

「ん?」

「だから、分裂したの。ぼっちが。鼻から吸えるくらい細かくね」

「……は?」

「それで分裂したぼっちを吸い込んだら、思考回路が自己嫌悪に支配されるようになった。私と郁代はそこまで酷くはなかったけど、虹夏は譫言(うわごと)で『自分が死ねばお姉ちゃん(星歌さん)がもう一回ギターをやってくれるんじゃないか』って言い出すくらい気分が落ち込んでた」

「…………」

 

「これ本人に自覚させたら、どうなると思う?」

 

「あ゛ー……それはダメだわ……」

 

 結束バンドはメンバー同士の仲が良好だけど、後藤さんは特に虹夏ちゃんと仲が良い。……というか、言い方はアレだけど『懐いている』と表現した方がしっくりくる。

 

「だからぼっちには、まだしばらく秘密。完全にタイミングを逃したっていうか、私の判断ミスでこうなったワケだし……申し訳ないとは、思ってるよ」

「オーケー分かった。昨日の話はこれでオシマイ。

 ──で、今日虹夏ちゃんを呼んだ理由は?」

 

「……いや察せよ愚弟」

 

「え?」

「あ゛??」

 

 ひぇっ。乙女の口から出ていい声じゃないだろそれ。

 

「…………『落ち込んでるから甘やかせ』ってんなら分かるけど……今の状況、逆じゃん」

 

()()()()()()よ。我が愚弟には虹夏の回復のために、今日一日デロデロに甘やかされてもらおうと思います」

 

「……マジで?」

「ジーマーで」

 

「…………姉貴よ。いまオレ、手足がマトモに動かないって知ってるよな?」

「うん」

 

「好きな娘からされるがままにされて正気を保っていられるほど、オレの精神力は強靭じゃあないんですけど??」

 

「よかったね。正気を失っても手足が動かないなら、間違いも起こらないでしょ」

 

「オレに死ねと? それってつまり」

「生殺しだって? そう言うと思って」

 

「……何だその袋」

「ほい」

 

 取り出された『箱』を見て、風呂上がりで元々火照っていた顔が更に熱くなる。

 

「やめんか!? 花のJKが真顔でそんなもの持つなアホ!!」

「真顔じゃなければいいの? テヘペロ」

「やかましいわ!!!」

 

「はいはいごめんごめん。

 ──本命はこっちね」

 

 見た感じ、袋にまだ何か入っているのは分かっていたが……今度は何だ?

 

「…………真っ当に気を利かせられるなら、最初からやってくれよ……」

「その憎まれ口が無くなるなら、考えてやらんこともない」

「どうせ3秒で『熟考した結果ナシ』って言うんだろ?」

「わかってるじゃん」

「わかりやすいからな、姉貴は」

「おかしいな。これでも学校では『ミステリアス』って評判なのに」

(ガワ)だけだろうが」

 

 

 ──渡されたのは、身体を動かさなくても楽しめる『映画』だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。