スチームパンクダークヒーロー悪役令嬢   作:ATライカ

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再会

 ソフィアは屋敷の全く使われていなかった部屋でサンドバッグを殴っていた。

 侯爵らしくとても広い屋敷だったので、その使われていなかった部屋も同様に広く、その場所に目を付けたソフィアの手によって今では様々な機材が置かれたトレーニングルームと化していた。

 機材を設計してまでトレーニングルームを作ったソフィアは、上半身にいわゆるスポーツブラのようなタイトな下着だけを付けていて、下半身はウール材のこれまたタイトな物を履いていた。

 そんな、この時代の女性からしたら考えられないような格好で、コンパクトな右フックでサンドバックを殴り、ぎりぎりと音を鳴らしながらそれを揺らす。そして振り子のように揺れ始めたサンドバックに左のジャブを打ち、それからもう一度右から強打を放った。

 バスンッとサンドバックを鳴らすと、鍛え抜かれた筋肉質な体から汗が飛び散り、ソフィアは力を籠めるために止めていた息を吐きながら揺れるサンドバックを手で止める。

 

「お嬢様」

 

 そんな彼女に背後から声がかかる。振り返ればそこには、プラチナブロンドの長い髪を持ち、ともすればきつい印象を相手に抱かせるほどに美人な、黒いドレスを着た家政婦(ハウスキーパー)がいた。とはいっても、その黒いドレスには控えめながらも美しい刺繡が入れられていて、明らかに普通のハウスキーパーには見えなかったが。

 

「どうした?アリス」

「次の予定の時間が迫っています」

「ああ、もうそんな時間か」

 

 アリスと呼ばれたそのハウスキーパーは、タオルをソフィアに手渡す。彼女は最初はソフィアの代わりとして、そしていつからかは義妹として育てられた4人のうちの一人だった。彼女ももう、20を超え、成熟した女性になっていた。

 ソフィアはスポーツブラを外し、手渡されたタオルで体の汗を拭き始める。その間に、アリスは懸垂器に掛けてあったシャツと仕立ての良いスーツを回収する。ソフィアはこれからアランに数年ぶりに会いに行こうとしていたので、しっかりと男物を用意していたのだ。その格好は包帯男としてのものではなかったが。

 そして、アランに会いに行くことを考えるとふと懐かしい気分になり、ソフィアはシャツの袖に手を通しながらアリスに声をかける。

 

「昔みたいにお姉さま呼びでもいいんだぞ」

 

 その言葉に、アリスは口をへの字に曲げ、呆れた声をあげる。

 

「お嬢様の年齢の秘密をお教えいただけるのでしたら、今すぐにでも変えますが」

「子供のころは一歳、二歳変われば大人のお姉さんに見えるものさ」

「騙されませんよ」

 

 ソフィアがシャツのボタンを閉じながら何てことの無いように言うが、アリスは全く納得していないようだった。彼女の記憶では、物心ついたころにはもうソフィアは今のような姿だったのだ。

 かつて、5年を超える外遊から姉が帰ってきた時は自分達とそう年齢が離れていないように思え、実際そのまま一緒に成長していったのだから彼女の言葉は真っ当に思えてしまう。が、やはり幼少期との記憶の齟齬がある。

 

「君がハウスキーパーになるとはなあ……」

「話をそらさないでください」

 

 シャツを着終わったソフィアがしみじみとそう言うと、アリスはスーツを差し出しながら少し拗ねた口調で言う。対するソフィアはスーツの襟に指を引っ掛け、そのままそれを肩に掛けながら、片眉をあげてアリスに首を傾げる。

 どうして、ハウスキーパーなんかに?

 と問いかけているようだった。

 

「養子として育ててもらえた恩がありますから」

「そうか。ベアトみたく自由にして良いいんだけどな」

「あの子の真似はできません」

「ははっ、そうか」

 

 ソフィアは少し笑って、アリスの肩を叩いてから部屋を出ていこうとする。しかし、それに待ったをかけたのは振り返ったアリスだった。

 

「お嬢様。クレアから伝言です」

 

 アリスがポケットから一枚の折りたたまれた紙を取り出すと、ソフィアはそれをひったくるようにして受け取り、そのまま片手でその紙を開く。気になっていたらしいアリスがそれを覗き込もうとすると、ソフィアはその紙と彼女との間に自分の体が入る様にアリスに背を向け、内容を隠してしまう。

 

(ノックも無しに入るところとか、こうやってじっと後ろで見つめてるところとかが、アリスの妹らしい所ではあるよなあ)

 

 と益体の無いことを考えながら、紙に書かれた数字の羅列とは全く違うことを話し始める。

 

「ベアトが南アメリカの旅から帰ってくるそうだ。フィールドワークが上手くいったんだと」

「まあ!」

 

 アリスは一緒に育った姉妹が帰ってくるのに嬉しそうに笑顔になり、ちらっと後ろを振り返ってそんな彼女の表情を見たソフィアも微笑む。

 

「よかったな。

 それじゃあ、私は今日は遅くなるから」

 

 ソフィアは紙をぐしゃぐしゃにしながらポケットに突っ込み、今度こそ部屋を出ていく。

 彼女の表情は先ほどとは打って変わって、険しいものになっていた。

 

 

 

 ロンディニウム。名実ともに世界の中心になりつつある街。

 世界を席巻する蒸気機関の震源地でもあり、最先端の街。世界の工場とすら評されるほどの工業力で大量の物を輸出し、その代わりに世界中の様々なものが輸入される。

 昨今では芸術や文化さえもここから発信され始めていた。

 そして、最近では人口流入だけではなく、かつて流入した人間が産んだ子が生粋のロンディニウムっ子として働き始めたこの街を、しっかりとした服装で男装したソフィアが紳士らしくステッキを突きながら歩いていた。

 向かう先は銀の輪亭。ここ十年訪ねていない場所だった。だが、そこに銀の輪亭は変わらずにあるだろうとソフィアは確信を持っていた。

 果たして久方ぶりにたどり着いたそこには確かに銀の輪亭が存在していて、ソフィアはその扉を開く。

 

「いらっしゃいませ」

「ごきげんよう」

 

 かつて見た時よりもハドソン夫人は歳を重ねていたが、まだまだ若く働き盛りだ、元気そうに挨拶をする。ソフィアもそれに帽子を軽く上げながら、スマートに挨拶を返す。

 そして、ハドソン夫人は突然現れた明らかに身分の高そうな男に、少々委縮しながら口を開く。

 

「銀の輪亭になんの御用でしょうか?」

「そう、怖がらなくてもよい。少し言付けを頼みたいのだ。サイダーを貰えるかな?」

「少々お待ちを!」

 

 ソフィアはそう言いながら店の中へと進み、カウンターに手袋を置く。一方のハドソン夫人は慌ててカウンターの中に入って、サイダーを用意する。

 

「いい店ですな」

「もったいないお言葉です。どうぞ」

 

 ソフィアはカウンターに置かれたサイダーを一口飲む。味も鼻に抜ける風味も、ただのサイダーだった。

 

「このサイダーは自家製ですかな?」

「ええ、そうなんですよ。夫が昔ながらの作り方で作っているんです」

「そうなのですか」

(昔ながらで、自家製っていうのが重要なんだろうな)

 

 ソフィアは微笑みを浮かべながら、かつてピクシーも楽しんだであろうサイダーの味を楽しみ、それを飲み干してから本題に入ろうとする。だが、カツン、とグラスがカウンターテーブルに置かれたことで音を鳴らし、その音にソフィアはおどけた顔をする。

 そして、そのおどけた顔を微笑みに戻し、ソフィアはハドソン夫人に問いかける。

 

「ここによく、アラン・ホームズと言う方が来ますね?」

「ええ」

「その方に伝言を頼みたいのですが、よろしいでしょうか?」

「それくらいなら、お安い御用ですわ」

 

 ハドソン夫人は自分にまかせてくださいと言わんばかりに胸を叩き、ソフィアはそんな彼女に微笑みながらポケットから封筒を取り出す。

 

「これを渡してくだされば結構です」

 

 ハドソン夫人はその封筒を両手で受け取るとしっかりと頷く。ソフィアはサイダーの勘定を置き、手袋をはめてからステッキをパブの木の床に軽く打ち付けた。

 

「では、よろしくお願いします」

 

 ソフィアはそう柔らかい顔でハドソン夫人に言いながら、退店する。そして、当てもなくロンディニウムを散策し、ここ数年の変化を自らの目で一つずつ確認するのだった。

 ロンディニウム散策は昼過ぎから始まり、夕方を越え、やがて夜になる。

 やがてやってきたトラファルガー広場の噴水の前、ソフィアはステッキの柄に両手を置きながらそれを眺めていた。この辺りは夜になると人はまばらになる。バッキンガム宮殿やウエストミンスター宮殿の目と鼻の先だからか、怪しい人間はいない。

 因みに、この世界ではまだウエストミンスター宮殿は火災で焼け落ちていない。そのため、ビッグベンもまだ存在せず、加えてこのトラファルガー広場には未だネルソン提督像も建っていない。

 そんな広場に一人のインバネスコートを着た男が手に封筒を持ちながらやってきた。そして、彼、アラン・ホームズは広場の中心に立つ一人の紳士を見つけるとそこへ駆け寄る。

 

「ダン!」

 

 アランの呼びかけにソフィアは振り返る。アランはしっかりとした服装で包帯もつけていない彼女に一瞬面食らったが、すぐに気を取り直して右手を差し出した。

 

「久しぶり。元気だった?」

「この通りね。君は少しやせたか」

 

 ソフィアもアランに手を差し出し、二人は固く握手をする。ソフィアの言う通り、アランは少しやせていた。とはいっても、やつれたような雰囲気ではなくどちらかと言えば精悍になったというべきか。

 

「まあね。いろいろ苦労したんだよ」

「そうか」

「ああ、そうそう。貴方が言っていた電信、あれに投資して結構儲けられたんだ。お礼を言わせて欲しい。本当にありがとう」

「お礼を言われる筋合いはないな」

 

 アランは胸に手を当てて礼をすると、ソフィアはめんどくさそうに鼻を鳴らす。それにアランが困ったように笑うと、真面目な顔になる。

 

「本当に感謝しているんだ。これでお金を用意できたから、娘を大学に入れられたんだ」

「……そうか」

 

 ソフィアはアランのその発言に、やや間を置いて返す。そして、僅かに沈黙が続き、やがてアランが手に持った伝言の封筒をソフィアに見せる。

 

「それで、わざわざ呼びつけてどうしたんだい?それも、こんな所に」

「秘密の話をするにはこういう場所がうってつけだ」

 

 ソフィアは人がほとんどいないトラファルガー広場を見渡す。聞き耳を立てようと近付いてきた人間がいるなら、すぐにわかるだろう。アランは『秘密の話』と言う言葉にかつて彼に言った調べ物についてだろうとすぐに予測がついた。

 

「アラン。いったいどれくらい君は知ることが出来た?」

 

 ソフィアは本題にすぐに入る。アランは少し迷ってから、重々しく口を開いた。

 

「このロンディニウムの地下にドラゴンが封印されているのはまず間違いないと思う。でも、ウェールズにもまたドラゴンの封印があった。

 多分だけど、赤いドラゴンはウェールズに、もう片方の白いドラゴンはこのロンディニウムに封印されているんじゃないかな」

「なるほど……」

 

 ソフィアは完璧な回答だと心の中で唸る。そして、それは本編と全く同じなのだなと確証も得ることができた。

 ソフィアが何かの確信を得た様子を見抜いたアランは真剣な顔でソフィアのアメジスト色の瞳を射貫く。

 

「逆に教えて欲しい。かつて、『あまり知り過ぎないほうが良い』って言ったよね。それはどういう意味なんだ?

 そして、これ、これも一体どこで手に入れた?」

 

 アランは懐から一つの冊子を取り出す。それは、ソフィアがかつて手に入れ、外遊する直前にアランに渡したものだった。

 

「解読できたのか?」

「一部ね」

「表だったか?地図だったか?」

 

 アランは何も言わない、ソフィアが納得のいく答えを言う前に口を割るつもりはないらしかった、ソフィアはアランの無言の問いかけにステッキをカツンと石畳を打ち鳴らし、口を開いた。

 

「おぼろげだが、私は事の全体像が見えている。この帝国の体制を揺るがしたい何者かがいるのだろう、とな。そしてそれが、恐らくオールバニ公だろうということも。

 だが、確たる証拠はない。すべては状況証拠だ。

 社会全体の流れ、新聞に書かれる言説の傾向、紳士クラブの噂などから予想できるだけのな」

 

 ソフィアはおおよそ真実は知っている。しかし、その知っていることも、それが段々と外れ始めていることも誤魔化し、その代わりに確たる証拠を持っていないことだけは直接的に伝える。

 アランは虚実入り混じるそれに言いくるめられたのかは定かではないが、一つ頷く。

 

「そして、とある密輸船から差し押さえた物の中から、私はそれを見つけた」

「密輸船?」

「アヘンと人身売買のな。少し、調査を依頼されてね」

 

 密輸船を壊滅させたのは誤魔化す一方で、その全滅した密輸船が政府によって秘密裏に調査されたという事実はそれとなくほのめかす。

 

「だが、どうやってもそれを解読することはできなかった。まあ、密輸船にあったものだ、帳簿か報告書か、地図だろうと当たりはつけられる」

「何かの表と報告書だと思う。数字と何かが並べて書かれているみたいだ」

 

 アランは持ってきていた冊子を取り出し、解読できた一部をソフィアに伝える。それを聞いたソフィアはステッキの柄から片手を放し、顎にそれを当てて目をつぶって考え始める。

 ソフィアが今日確認したかったのは、まさにこの暗号文だったのだ。

 

(この証拠は本編では存在しなかったもののはず。それがここにあるというのがどれだけ影響を及ぼすのだろうか。

 アランの代で解決できるほどに事が進んでしまったりするのか?)

「真実は未だ遠い、か……」

 

 ソフィアが考え込み始めると、アランが肩を落とす。しかし、それに待ったをかけたのはソフィアだった。

 

「一つ。情報を持っている」

「本当!?」

「持っているのだが……」

 

 ソフィアはこの先を言うか逡巡し、珍しく歯切れが悪そうな顔になる。アランはそれに不思議そうな顔をし、ソフィアはややあって今日アリスから受け取ったクレアからの伝言、ひいてはジョージから受け取った情報が詰まった紙を取り出す。

 

「はっきり言って、教えたくはないな」

「ダン。頼む、教えて欲しい」

 

 ソフィアは迷う顔でアランの決意に満ちた顔を見る。

 

(この情報を教えるとどういう様に事態が進む?もはや予測不能だ)

 

 そして、一つ問いかけることにした。

 

「なぜ、そこまでする?」

「そんなの、娘のためさ。娘には不自由なく暮らして欲しい。そのためには、こんな一歩間違えればどうなるか分からないことなんて、放っては置けない」

 

 アランは彼女の問いかけに即答し、言い切る。ソフィアはそんなアランの表情を見て、確かにこの目の青い男はシャーロットの父親だと思った。

 

「そうだな……。うん」

 

 ソフィアは深く頷き、そもそも『教えたくない』と口走った時点で、心の底では教えると決心していたのだろうなと自分を顧みた。

 そして、彼女は手元の暗号化された文章を見て、口を開く。

 

「ヘイスティングス侯爵が怪しい。この10年近く療養中だと発表されているが、公には一切姿を現していない。

 戦争、汚職、政争、彼は精力的に動いていたが、それが先ほど話題に上げた密輸船の失敗の時期から段々と散発的になり、やがて止まった。

 ヘイスティングス侯爵と密輸船の関係は不明だが、相関がある可能性が高い」

 

 アランはその名前に心当たりがあったのか、俯きながら何事かを考え始める。その間に、ソフィアもこれを見た時から受け続けていた衝撃を思い出す。

 

(この男は霧の都のマギの悪役、それも終盤の大物の一人だったはずだ。それがまったく活動していない?

 あの密輸船は彼の物だった可能性が高くはあるが、その一つの失敗でここまで鳴りを潜めるものなのか?)

 

 ジョージに調べさせていたのは、ここ最近のヘイスティングス侯爵の動向だった。そして、その回答は『10年公に姿を現しておらず、会った人間も見つけることが出来なかった』だ。

 そして、考え込む二人の内、最初に正気に戻ったのはアランだった。アランは解読中の冊子のとあるページを開いて見せる。

 

「実は、この……、この部分がヘイスティングス侯の名前だと思うんだ」

 

 ソフィアが覗き込めば、そこには『???、ヘイスティングスが戦争』と書かれていた。その一文以降もいくらか文章はあったようだが、ソフィアはかつて、運び屋から聞いたアヘン畑を軍が接収してきたという話を思い出す。

 

「別の戦域の可能性もあるが、密輸船の時期的にはインドの地名の可能性が高い」

「インドの?」

「彼はかつてのインド総督だ。相当大立ち回りをしていた」

 

 アランが首を傾げると、ソフィアはそう注釈をつける。そして、もう一つ思い出したことがあったのでそれも付け加える。

 

「彼は借金を背負っていたはずだ」

「なるほどね」

 

 アランが苦々しい表情を作りながら頷く。そして、ソフィアは彼について知っていることはもうないと、言わんばかりに視線を解読文から上げると、そのまま噴水へと目を向ける。

 わずかに揺れる水面には三日月が浮かんでいて、それもぶれるように輪郭をぼやけさせていた。

 

「アラン。これで君は知り過ぎた。これからどうする?」

「どうって?変わらないよ」

 

 ソフィアは当然のように言い切ったアランのことを見て、彼と同じ髪色を持つシャーロットのことを思い出す。

 

「これ以上踏み込めば死ぬ可能性があるぞ」

「死にそうに見える?」

 

 アランが冗談めかしながら両手をあげて、自身の体を見る。ソフィアはそのスーツがシャーロットにピッタリのサイズだと改めて思いながら、ため息をつく。

 

「見える」

 

 その一言にアランは少しムッとして、ソフィアの胸に指を突き付ける。

 

「そういう貴方はどうなんだ?このヘイスティングス候を疑って、調べたのだって結構危険だろう?」

 

 もっと危ない橋を渡ってるよ、とは言わず、ソフィアは目を細めるだけに留まる。

 

「貴方だって、僕と同じだ。子供がいるんだろ?」

 

 暗に子供のためでもあるんだろうと、アランが問いかけてくるが、それにはソフィアは首を振る。

 

「私は私のために事態を追及している」

「どうやってさ」

 

 ソフィアはアランのそのちょっとした尋問の言葉にあえて乗っかってやることにする。

 

「発生するだろう事態を逆手に取るだけだ。危険は冒さない」

 

 ソフィアとて、遊んでいるわけではない。来たるアスタロトの排除のために少しずつ動いているのだ。それ以上に、最終的に自分が勝つために、布石を打ち続けている。

 アランはソフィアが正直に自らの行動を言ったことに驚いた表情をする。

 そんなアランの呆けた顔にソフィアは少し笑うと、彼の肩を叩く。

 

「気を付けろ。娘を悲しませるな」

「う、うん」

 

 アランの首肯に満足そうに頷いたソフィアは踵を返す。その途中、ちらっと噴水を見て、そこに映る雲に半分隠れた三日月を見た。

 

「それじゃあな。また会えるのを楽しみにしている」

「貴方も気を付けて。それじゃあ、またどこかで」

 

 ソフィアはアランの言葉に片手をあげて応えると、ステッキを肩に掛けながら彼と永遠になる別れをしたのだった。

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