第1章 総則
第1条(目的)
この協定は、「極東アジアにおける日本国と連合王国並びに合衆国との間の相互協力及び安全保障協定」(以下「相互防衛協定」という。)の効果的な運用に資するため、日本国における連合王国及び合衆国の軍隊の地位を定め、もって相互防衛条約の目的の達成並びに日本国の安全及び地域社会との調和の確保に寄与することを目的とする。
第2条(定義)
この協定において使用する用語の意義は、次のとおりとする。
(1)「軍隊」とは、一の締約国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で、その公務に関連して、本協定の適用区域内における他の締約国の領域に所在するものをいう。関係締約国は、特定の個人、部隊又は編成隊が本協定にいう「軍隊」に含まれるか否かについて、相互に同意することができる。
(2)「軍属」とは、締約国の軍隊に随伴する文民であり、締約国の軍隊に雇用され、無国籍の者ではなく、極東アジアにおける日本国と連合王国並びに合衆国との間の相互協力及び安全保障協定締約国でない国の国民ではなく、かつ軍隊が置かれる国に通常居住する者でない者をいう。
(3)「家族」とは、軍隊の構成員もしくは軍属の配偶者又は生活上当該構成員もしくは軍属又はその配偶者に依存するその構成員もしくは軍属の子をいう。
(a)軍隊の構成員若しくは軍属の近親者で、経済的又は健康上の理由により扶養され、当該構成員又は軍属の占有する住居に同居し、かつ、軍隊当局の同意を得て受入国の領域内に居住する近親者は、家族として取り扱われる。
(b)軍隊の構成員又は軍属が死亡し、又は転任のために受入国の領域を離れた場合において、その家族(近親者を含む)は、死亡又は転任後の90日間に限り、引き続き家族として取り扱われる。
(4)「派遣国」とは、当該軍隊が所属する締約国をいう。
(5)「派遣国の軍当局」とは、その派遣国の軍隊又は軍属の構成員に関し、その国の軍法を施行する権限を法律で与えられた派遣国の当局をいう。
(6)「受入国」とは、駐在、通過中にかかわらず、その領域内に軍隊又は軍属がある締約国をいう。
(7)「理事会」とは、極東アジアにおける日本国と連合王国並びに合衆国との間の相互協力及び安全保障協定第9条により設立された理事会又は、理事会の代わりとして機能する権限を与えられた補助機関をいう。
第3条(協定の適用範囲)
この協定は、日本国の領域内において、派遣国の軍隊、軍属及びそれらの家族に対して適用される。
第4条(法令遵守義務)
派遣国の軍隊、軍属及びそれらの家族は、日本国の法令を尊重する義務を負い、この協定の精神に反するいかなる活動、特に日本国における政治的活動を行ってはならない。派遣国は、この義務の遵守を確保するため、必要なすべての措置を執るものとする。
第5条(協定と国内法の関係)
この協定に別段の定めがある場合を除き、派遣国の軍隊、軍属及びそれらの家族には、日本国の国内法が適用される。
2 この協定のいかなる規定も、派遣国の軍隊、軍属及びそれらの家族に、日本国の国内法で認められていない権利、特権又は免除を与えるものと解釈してはならない。
第2章 駐留・通過及び軍隊の活動
第1条(駐留の原則)
派遣国の軍隊の日本国における駐留は、相互防衛協定の目的達成のために必要な最小限度のものとし、その規模、配置及び期間は、両政府間の合意によって決定される。
第2条(通過及び移動手続)
軍隊の構成員は、日本国への出入国に際し、派遣国が発給した有効な身分証明書及び移動命令書を所持し、提示しなければならない。軍属及び家族の出入国手続は、両政府間の合意により別途定める。
第3条(部隊・軍属・家族の身分)
この協定に基づく日本国における滞在は、軍隊の構成員、軍属又はそれらの家族に対し、日本国における永住権その他の在留資格を取得する権利を与えるものではない。
第4条(装備品・物品・車両の取扱い)
派遣国は、日本国に持ち込むすべての装備品、物品及び車両の登録、管理及び処分について責任を負う。公用車両には、その所属を明確に示すための特別な標識を付するものとする。
第5条(制服・識別・携行品)
軍隊の構成員は、原則として公務中は制服を着用する。
2 武器の携帯は、公務の遂行上必要であり、かつ、派遣国の権限ある当局によって許可された場合に限られる。武器の使用に関する規則は、日本国の法令(正当防衛及び緊急避難に関する規定を含む。)の趣旨に沿ったものでなければならない。
第6条(演習及び訓練)
派遣国は、施設及び区域において実施する演習及び訓練について、その計画、期間、規模及び内容を、受入国の権限ある当局(関係地方公共団体を含む。)に事前に通報し、緊密に協議しなければならない。
2 派遣国は、特に、火器の使用、航空機の飛行、又は受入国の国民の安全若しくは公衆の平穏に重大な影響を及ぼす可能性のある演習若しくは訓練については、受入国の権限ある当局の事前の同意を得るものとする。
3 受入国の当局は、国民の安全確保又は公共の福祉の維持のため、訓練の中止又は変更を要請することができ、派遣国は、この要請に誠実に対応するものとする。
第3章 裁判管轄及び法的保護
第1条(管轄権の原則と分類)
日本国の領域内で発生したすべての犯罪及び民事上の紛争については、この協定に定める場合を除き、日本国の裁判所が裁判管轄権を有する。
第2条(刑事管轄の競合と優先順位)
裁判管轄権が競合する事件については、次のとおり第一次の権利を分配する。
(a) 派遣国は派遣国の財産若しくは安全のみに対する犯罪、又は公務執行中の作為若しくは不作為から生ずる犯罪に対し第一次の権利を有する。
(b) 日本国は上記以外のすべての犯罪に対し第一次の権利を有する。
2 公務執行中であったかの認定について日本国の当局が異議を申し立てた場合、日本国及び派遣国政府は外交上の協議を通じてこれを解決する。
第3条(逮捕・拘禁・移送の手続)
日本国の裁判権が及ぶ事件の被疑者の逮捕は、原則として日本国の当局が行う。
2 日本国が公訴を提起した被疑者の身柄は、裁判が確定するまでの間、日本国の当局の管理下に置かれるものとする。
第4条(裁判における被告人の権利)
日本国の裁判所で裁判を受けるすべての被告人は、日本国憲法及び法律が保障する、弁護人を選任する権利、黙秘権、迅速かつ公正な裁判を受ける権利その他のすべての権利を完全に享受する。
第5条(二重処罰の禁止)
いずれかの一国の権限ある当局によって確定判決が下された同一の犯罪について、他方の国の当局によって重ねて処罰されることはない。
第6条(民事責任と損害賠償)
公務執行中の作為又は不作為によって生じた損害については、日本国政府が請求の受付及び査定を行い、日本の法令に基づいて賠償を行う。支払われた賠償額は、日本国と関係派遣国との間で合意される割合(原則として日本国25%、派遣国75%)で分担する。
2 公務執行中でない作為又は不作為によって生じた損害については、当事者間の民事訴訟手続により解決する。
第4章 財政・税制・通関措置
第1条(給与・財産の課税免除)
派遣国から支払われる給与に対する日本の所得税及び住民税を免除する。ただし、日本国内で得たその他の所得についてはこの限りでない。
第2条(物品・車両の関税免除)
公用の装備品及び軍隊構成員等が赴任時に持ち込む個人用の車両・家財道具について、日本の関税及び消費税を免除する。
第3条(通関手続と証明書様式)
派遣国は、本協定に基づき輸入される物品等に係る通関手続の円滑な実施のため、日本国の税関当局との協議により定められた様式の輸入証明書を使用し、当該物品の用途及び所属を明示するものとする。
2 日本国の税関当局は、提出された証明書に基づき、速やかに通関処理を行うものとする。
第4条(現地調達と経済影響の調整)
派遣国は、物品、役務及び労働力を日本国内で調達するにあたり、日本の経済及び地域市場に急激な変動を与えないよう、日本の当局と事前に協議するものとする。
第5条(濫用防止と監視協力)
免税措置の濫用を防止するため、両国の税関当局は定期的に情報を交換し、共同で調査を行うことができる。
第5章 施設の提供と管理
第1条(提供及び管理)
派遣国は、相互防衛協定の目的達成のため、受入国内において施設及び区域を使用することができる。個々の施設及び区域に関する協定は、両政府の権限ある代表者で組織する合同委員会を通じて締結するものとする。
2 派遣国は、提供された施設及び区域を、この協定の目的に従って管理し、維持し、及び運営する。
第1条(施設の使用条件)
施設及び区域の提供、規模、及び使用条件は、派遣国および受入国政府が設置する合同委員会における合意によってのみ決定される。
第2条(施設の管理)
派遣国は提供された施設の管理・警備を行う。ただし、受入国の権限ある当局(地方公共団体の当局を含む。)は、派遣国の軍当局との間の合意に基づき、公務を遂行するため、事前の通告をもって施設及び区域にいつでも立ち入ることができる。
2 火災、公衆衛生上の緊急事態、又は人の生命、安全若しくは財産に対する明白かつ現在の危険がある場合において、受入国の当局は、派遣国の軍当局への事前の通告をもって、又は事前の通告が不可能な場合は事後速やかに通告することにより、必要な措置を執るため施設及び区域に立ち入ることができる。
第3条(施設の返還と原状回復)
派遣国は、提供された施設が不要となった場合、これを速やかに返還する。その際、派遣国の活動に直接起因し、かつ日本の環境法令に基づき人の健康又は生活環境への重大な影響をもたらすと両政府が合意した汚染について、その影響を除去するために必要な措置を、自らの費用において講ずるものとする。
第4条(環境保全と地域調整)
派遣国は、その活動にあたり、騒音、水質汚濁等に関する日本の環境法規を遵守する。また、地域住民の生活環境に配慮し、定期的な協議の場を設けるものとする。
第5章 地元住民及び雇用等に関する事項
第1条(雇用・労働条件の尊重)
派遣国が日本で雇用するすべての従業員には、賃金、労働時間、安全衛生に関する日本の労働関係法規が完全に適用される。
第2条(医療・教育等の協力体制)
派遣国は、軍隊構成員等のための医療・教育に関し、地域の医療機関及び教育機関との連携を図るよう努めるものとする。
第3条(住生活及び社会統合支援)
派遣国は、軍隊の構成員、軍属及びその家族が日本国において安定的かつ調和的な生活を営むことができるよう、日本国の行政機関、自治体、地域団体等と連携して、住居の確保、地域への適応に関する支援及び必要な社会教育に協力するものとする。
第6章 通信・情報・安全保障関連
第1条(通信・暗号・周波数調整)
派遣国は、独自の通信設備を運用することができる。ただし、電波の使用にあたっては、日本の電波に関する法律に基づき、主管庁との間で周波数の調整を行わなければならない。
第2条(情報保護・機密保持義務)
派遣国並びに受入国は、この協定の運用に関連して相互に提供した秘密情報を、それぞれの国内法に従って適正に保護する義務を負う。
第3条(相互安全保障協力の枠組み)
派遣国及び受入国は、本協定に基づく駐留活動の遂行に際し、極東アジア地域における安全保障の維持と相互防衛体制の強化を目的として、情報共有、共同訓練、災害対応その他相互支援の協力枠組みを構築・維持するものとする。
2 これらの協力活動に関する計画及び実施体制は、合同理事会の協議を経て定める。
第7章 理事会・紛争解決・協定運用
第1条(理事会の設置と構成)
この協定の実施に関するすべての事項を協議するため、両政府の代表者からなる「日米英合同理事会」を設置する。
第2条(理事会の権限と手続)
合同理事会は、次の事項について協議及び調整を行う。 (a) 本協定の解釈、運用及び施行に関する問題
(b) 派遣国の軍隊の活動に関連する行政調整及び地域連携
(c) 必要な補足協定又は実施手続の作成に関する事項
2 理事会は、必要に応じて専門委員会を設け、協定に関する事項を審議することができる。
第3条(協定の解釈に関する紛争処理)
この協定の解釈又は適用に関する紛争は、まず合同理事会における協議によって解決を図り、解決に至らない場合は、外交上の経路を通じて解決する。
第4条(改正要請と審議)
締約国は、本協定の内容について改正を要すると認めた場合、合同理事会に対してその趣旨及び理由を記載した文書を提出し、審議を求めることができる。
2 改正は、締約国の合意に基づき外交文書により行う。
第8章 加盟・廃棄・適用地域の拡張
第1条(新規加盟の手続)
本協定への新たな加盟を希望する国がある場合には、既存の締約国の全会一致の合意を要件とし、加盟国としての参加条件及び協定の適用範囲について合同理事会において協議・決定するものとする。
2 加盟国は、本協定の全条項を誠実に遵守しなければならない。
第2条(協定の廃棄と有効期限)
いずれの締約国も、他方の締約国に対し1年前に書面で通告することにより、この協定を終了させることができる。
第3条(地域的拡張と特別協定)
締約国は、相互防衛協定の適用対象地域外において、本協定の必要な部分を拡張適用する場合には、当該地域の統治権を有する国との間で特別協定を締結するものとする。
2 拡張適用は、合同理事会による審議を経て、発効日及び適用条件を定める。
附則
第1条(施行期日)
この協定は、署名国による批准書の寄託が完了し、署名国の過半数による寄託の日から起算して30日後に効力を生ずる。
2 その他の加盟国については、その批准書の寄託の日から30日を経て効力を生ずる。
第2条(批准・寄託・通告手続)
この協定の批准書及び加盟書は、アメリカ合衆国政府に寄託するものとする。
2 アメリカ合衆国政府は、その寄託が行われた日付を、他の署名国及び加盟国に通知するものとする。
第3条(政令・実施細則への委任)
この協定の実施に必要な細目は、政府間の合意又は日本の国内法で定めることができる。
第4条(関連法令との整合)
日本国政府は、本協定に係る各分野の施行に関し、関連する国内法令との整合性を確保するために必要な法令の改正又は新規立法を速やかに行うものとする。