青少年健全育成法(昭和三十年法律第三十三号)の一部を改正する法律(昭和五十五年法律第十一号)
上諭
朕、議会の議決を経て青少年健全育成法を裁可し茲に之を公布せしむ。
内閣総理大臣
国務大臣
宮内大臣
司法大臣
外務大臣
内務大臣
文部大臣
農林水産大臣
国務大臣
郵政大臣
通商産業大臣
厚生大臣
国務大臣
運輸大臣
大蔵大臣
労働大臣
国務大臣
建設大臣
国土大臣
防衛大臣
児童家庭大臣
前文
次代を担う青少年を健全に育成していくことは、我が国社会の将来の発展にとって不可欠の礎である。我が国においては、これまでも青少年の健全な育成のための様々な取組が様々な分野において進められてきたが、なお一層の努力が必要とされている。
もとより、青少年をめぐる問題は、大人の社会の反映であり、この社会に生きるすべての大人がその責任を共有すべきものである。そして、青少年をめぐる問題は、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野にわたる広範な問題であり、青少年の健全な育成に関する施策をより効果的に推進していくためには、国、地方公共団体その他の関係機関及び国民各層の協力と密接な連携の下での国民的な広がりをもった一体的な取組が不可欠である。
ここに、日本国憲法、教育理念心得及び教育基本法の精神に基づき青少年の健全な育成に関する方向を示し、青少年の健全な育成に関する施策を総合的に推進するため、この法律を制定する。
第一章 総則
第1条(目的)
この法律は、日本国憲法、教育理念心得及び教育基本法の精神に則り、次代の社会を担う青少年が、自らを律し、他者を尊重する品格と道義を備えた人格として、心身ともに健やかに成長することができる環境を整備することを目的とする。
第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 青少年とは民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める成年年齢に満たない者をいう。
二 有害情報とは青少年の健全な成長を阻害する情報であって、次のいずれかに該当するものをいう。
イ 犯罪、残虐行為、自殺等を露骨に、かつ肯定的に描写し、青少年の規範意識を著しく麻痺させるおそれのあるもの。
ロ 青少年を性的搾取の対象とする、又は性的対象として描写する表現物。この場合において、青少年には、その風貌が青少年とみなされる創作物上の表現を含むものとする。
ハ 特定の人間又は集団に対し、不当な差別又は偏見を助長するおそれのあるもの。
第3条(基本理念)
青少年の健全な育成は、青少年の人権を最大限に尊重しつつ行われなければならない。表現の自由、学問の自由及び国民の知る権利は、不当に侵害されることのないよう最大限配慮されなければならない。
2 本法の運用にあたっては、事業者及び業界団体による自主的な取り組みを最大限尊重し、公権力による介入は必要最小限度に留めるものとする。
第4条(国及び地方公共団体の責務)
国及び地方公共団体は、日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとり、家庭、学校、地域社会及び事業者と連携し、青少年の健全な育成に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
第5条(保護者の責務)
保護者は、その保護する青少年に対し、有害情報から適切に保護するとともに、情報の主体的な選択と活用ができる能力を育むよう努める第一義的責任を有する。
第6条(事業者の責務)
出版、映像、通信その他の事業を行う者は、その事業活動が青少年に与える影響の重大さを自覚し、自主的かつ積極的に青少年の健全な育成に配慮するよう努めなければならない。
第二章 青少年の健全な育成のための措置
第7条(自主規制の促進)
国は、事業者及びその団体が、青少年にとっての良好な社会環境の整備及び青少年の健全な育成を阻害する行為の防止について、日本芸術院等の助言に基づき、青少年の健全な育成に配慮した自主基準を作成し、及び遵守することを奨励するものとする。
第8条(特別指定有害情報の指定及び措置)
内閣総理大臣は、第11条に定める中央青少年健全育成審議会の答申に基づき、青少年の健全な育成を著しく阻害すると認められる情報を「特別指定有害情報」として指定することができる。
2 「特別指定有害情報」を頒布、販売、又は公然と陳列する者は、個人を識別できる証明書による年齢確認及び区画を分ける等の措置により、青少年への提供を防止しなければならない。
第9条(特定表現物の製造等の禁止)
第2条第2号ロに掲げる情報のうち、特に青少年の人格の尊厳を著しく傷つけ、その健全な成長を阻害するものとして別に定める法律で規定する表現物については、その製造、頒布、所持を禁ずる。
第10条(国民の意見の反映及び調査研究)
国は、青少年の健全な育成に関する施策の策定及び実施に資するため、青少年、保護者その他の国民の意見を国の施策に反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 国は、社会環境が青少年に及ぼす影響に関する調査研究その他の青少年の健全な育成に関する施策の策定に必要な調査研究を推進するよう努めるものとする。
第三章 中央青少年健全育成審議会
第11条(設置及び所掌事務)
青少年の健全な育成に関する重要事項を調査審議するため、総理府に中央青少年健全育成審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 青少年の健全な育成に関する施策の基本となる大綱を作成し、及びその実施を推進すること。
二 前号に掲げるもののほか、青少年の健全な育成に関する重要な施策の企画及び立案並びに総合調整に関すること。
第12条(組織)
審議会は、委員長、副委員長及び委員をもって組織する。
2 委員長は、内閣総理大臣をもって充てる。
3 副委員長は、次に掲げる者をもって充てる。
一 内閣官房長官
二 国家公安委員会委員長
三 法務大臣
四 文部大臣
五 厚生大臣
六 その他内閣総理大臣が指定する国務大臣
4 委員は、法律、教育、心理学、医学の専門家、創作活動に従事する者、並びに青少年の保護者代表を含む、良識ある人格者の中から、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する。
5 委員長は会務を総理し、副委員長は委員長を助ける。
第13条(権能)
審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、第8条に定める「特別指定有害情報」の指定について、日本国憲法に保障された表現の自由との関連を十分に考慮し、多角的かつ慎重に審議し、答申する。
第14条(政令への委任)
この法律に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 罰則
第15条(罰則)
第9条の規定に違反した者は、六箇月以上三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
2 第8条第2項の規定に違反し、青少年に対し「特別指定有害情報」を提供した者は、百万円以下の罰金に処し、提供より得た売上を全て没収する。
附則
第16条(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
この法律は多分あると思う。
第2条二項ロは後から問題が生じて修正されたんでしょう。経緯は大まかに、こんな感じで。
①1975年、コミックマーケットが立案され、企画が進められる。一部の華族が企画の主旨に賛同し運営に尽力。
②当初制定されていた「青少年健全育成法」は、実在の青少年を保護することに主眼が置かれていたため、漫画やイラスト、彫刻や絵画といった作品については、「創作物であり実在しない」という理屈で、性的搾取の対象とするような創作物が一部で出回った。
③コミックマーケットの回数が進むにつれ、二次創作作品に、児童が視聴するようなテレビ番組の、未成年に見えるキャラクターが性的搾取の対象とされるものが含まれはじめ、問題が表面化。
④文化のパトロンであり、「品格と道義」を重んじる社会のオピニオンリーダーでもあった華族が、自分たちが愛し、あるいは文化的に支援している作品も、そうした二次創作の対象となった事でその精神性を著しく貶める形で利用されることに、眉を顰めた(強い不快感と懸念を示した)結果、芸術院や政財界の上層部に対する、「国家の品格に関わる問題である」という静かだが極めて重い問題提起となった。
⑤審議会などで議論が重ねられた結果、「青少年の尊厳を守る」という法の理念を徹底するためには、創作物であっても「青少年とみなされる風貌」を持つキャラクターを保護対象に含める必要がある、という結論に至った。
⑥法の抜け穴を塞ぐ形で、第2条二項ロが修正された。
ロ 青少年を性的搾取の対象とする、又は性的対象として描写する表現物。
これをこんな感じで→
昭和五十五年一月一日 施行(現在施行)
青少年健全育成法(昭和三十年法律第三十三号)の一部を改正する法律(昭和五十五年法律第十一号)
第1条
青少年健全育成法(昭和三十年法律第三十三号)第2条二項ロを次の通り改める。
ロ 青少年を性的搾取の対象とする、又は性的対象として描写する表現物。この場合において、青少年には、その風貌が青少年とみなされる創作物上の表現を含むものとする。
※ちなみに、設定上「成人している」とト書きされていても、審議会と芸術院で審査の結果、風貌が青少年(未成年)とみなされたらアウト。
※ 台詞集④ 〜某イベントにて〜 のあとがきもいじりました。