上諭
朕、議会の議決を経て国民年金保険基本法を裁可し茲に之を公布せしむ。
内閣総理大臣
国務大臣
宮内大臣
司法大臣
外務大臣
内務大臣
文部大臣
農林水産大臣
国務大臣
郵政大臣
通商産業大臣
厚生大臣
国務大臣
運輸大臣
大蔵大臣
労働大臣
国務大臣
建設大臣
国土大臣
防衛大臣
児童家庭大臣
第1章 総則
第1条(目的)
この法律は、日本國憲法第2章第41条に規定する理念に基づき、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを防止し、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与するため、公的年金制度を確立し、その給付に関する必要な事項を定めることを目的とする。
第2条(基本原則)
年金制度は、普遍性の原則に基づき、日本国内に住所を有する全ての者を加入の対象とし、世代間扶養の原則に則り、現在及び将来の国民が相互に支え合い、その運営は社会保険方式によるものとする。
第3条(国家の責務)
国は、この法律に定める年金給付が、国民の尊厳を保ち、健やかで文化的な生活を営むための実質的な支えとなり続けるよう、物価及び経済の動向を常に監視し、年金の実質的価値の維持に努めなければならない。
2 国は、年金受給者が適切な生活支援を受けられるよう、他の社会保障制度との有機的な連携を図るための総合的な施策を講じる責務を負う。
第4条(国民の責務)
被保険者である国民は、社会連帯の精神に則り、自らの勤労を通じて現在及び将来の世代の生活を相互に支え、もって国家の安定と繁栄に寄与する責務を有する。保険料の納付は、この責務を果たすための具体的な行為と位置づける。
第5条(用語の定義)
この法律において、次に掲げる用語は、それぞれ次に定めるところによる。
被保険者:第2章に定める資格を有する者をいう。
事業主:事業所に使用される者を雇用する者又は法人をいう。
標準報酬月額:被保険者の報酬の月額を等級区分にあてはめた額をいう。
標準賞与額:被保険者の賞与等の額から千円未満の端数を切り捨てた額をいう。
算定基礎所得:第10条第1号被保険者の前年の所得に基づき、報酬比例部分の保険料を算定するために政令で定める額をいう。
保険料納付要件:年金給付を受けるために必要とされる保険料の納付期間又は免除期間等の要件をいう。
第6条(年金原簿及び秘密保持)
厚生大臣は、被保険者ごとに、その資格の取得及び喪失の年月日、標準報酬月額及び標準賞与額、保険料の納付状況その他政令で定める事項を記録するための年金原簿を設け、これを適正に管理しなければならない。
2 年金事務に従事する者又は従事していた者は、職務上知り得た個人情報(被保険者及び受給権者の所得、健康、住所等に関する事項を含む。)を正当な理由なく漏洩してはならない。
第7条(行政上の調査権限)
厚生大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主、被保険者、又は年金給付の受給権者に対し、報告若しくは文書の提出を命じ、又はその職員に、事業所若しくは被保険者等の住所若しくは居宅に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
第8条(関係行政機関との連携)
厚生大臣は、この法律に基づく年金事業の適正な実施に必要な限度において、他の社会保障関係法令に基づく給付及び徴収に関する情報について、関係行政機関等に提供を求め、又は提供することができるものとする。
第9条(管掌)
厚生大臣は、この法律の施行に関し、公的年金制度の適正な運営を確保し、被保険者及び受給権者の利益を保護するため、必要な措置を講じなければならない。
2 年金保険事業は、政府が管掌する。
第2章 被保険者
第10条(被保険者の種別)
日本国内に住所を有する民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める成年年齢(以下「成年年齢」という。)以上60歳未満の者は、すべて国民年金の被保険者とし、その就業状況に基づき、次の二種に区分する。
第1号被保険者:日本国内に住所を有する成年年齢以上60歳未満の者(次号に該当する者を除く。)
第2号被保険者:常時従業員を使用するすべての事業所に使用される者であって、基礎年金拠出及び報酬比例年金拠出の義務を負うもの。
第11条(任意加入被保険者)
前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者(第2号被保険者を除く。)は、厚生大臣に申し出て、国民年金の被保険者となることができる。
一 日本国内に住所を有する成年年齢以上60歳未満の者であって、政令で定める老齢給付等を受けることができるもの。
二 日本国内に住所を有する55歳以上60歳未満の者。
三 日本国籍を有する者その他政令で定める者であって、日本国内に住所を有しない成年年齢に達した者以上60歳未満の者。
2 前項の規定による被保険者(以下「任意加入被保険者」という。)については、第22条の規定は、適用しない。
第12条(被保険者資格の取得及び喪失)
被保険者は、第10条各号に定める要件に該当するに至った日にその資格を取得する。
2 被保険者は、次の各号に掲げる場合に、その資格を喪失する。
イ 60歳に達したとき(引き続き加入する場合を除く。)。
ロ 日本国内に住所を有しなくなったとき(第2号被保険者を除く。)。
ハ 第10条各号に定める要件に該当しなくなったとき。
第13条(届出の義務)
第2号被保険者を使用する事業主は、その事業所に使用される被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額に関する事項並びに氏名その他政令で定める事項について、政令で定める期日までに厚生大臣に届け出なければならない。
2 被保険者は、氏名、住所その他政令で定める事項に変更があったときは、政令で定めるところにより、その旨を厚生大臣に届け出なければならない。
第14条(標準報酬月額の決定及び定時改定)
第2号被保険者の標準報酬月額は、被保険者の資格を取得した際又は毎年一回、政令で定める方法により算定した報酬の額に基づき、政令で定める等級の区分に従って決定する。
2 標準賞与額は、賞与等の額から政令で定める額を控除した額とする。
第15条(標準報酬月額の随時改定)
標準報酬月額が決定された後、昇給その他の理由により、その者が受ける報酬の額に著しい変動があり、政令で定める基準に該当するに至ったときは、政令で定めるところにより、その標準報酬月額を改定する。
第16条(算定基礎所得の決定及び定期的な見直し)
第1号被保険者に係る算定基礎所得は、毎年一回、政令で定める時期に、前年の所得として租税に関する法令の規定により申告された額に基づき、政令で定める等級の区分に従って厚生大臣が決定する。
2 前項の算定基礎所得の等級区分及び決定に関する具体的な算定方法については、第2号被保険者の標準報酬との均衡を考慮し、政令で定める。
第17条(算定基礎所得の随時改定)
算定基礎所得が決定された後、その者が得る所得の額に著しい変動があり、政令で定める基準に該当するに至ったときは、政令で定めるところにより、その算定基礎所得を改定する。
2 第1号被保険者は、事業の廃止若しくは休止、天災その他政令で定める特別の事情により、当該年の所得が前年に比して著しく減少することが見込まれる場合、厚生大臣に申し出て、算定基礎所得の改定を受けることができる。
3 厚生大臣は、前項の申出の内容を審査し、必要があると認めるときは、当該年の所得の見込額に基づき、算定基礎所得を改定する。改定された算定基礎所得は、申出のあった月から適用する。
4 第1号被保険者は、所得が前年に比して著しく増加し、政令で定める基準に該当するに至ったときは、厚生大臣に申し出て、算定基礎所得の改定を受けることができる。
5 厚生大臣は、前項の申出を承認した場合、その者の当該年における所得の見込額に基づき、算定基礎所得を改定する。改定された算定基礎所得は、改定のあった月から適用し、それに基づき納付された保険料は、その者の老齢報酬比例年金部分の額の計算の基礎に算入するものとする。
第18条(被保険者期間)
被保険者期間は、被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までとする。
2 被保険者の資格を同時に取得し、及び喪失した場合は、その月を被保険者期間に算入しない。
第19条(育児休業等終了時の改定の特例)
第2号被保険者が育児休業等(政令で定めるものに限る。)を終了した場合において、その後の三月間の標準報酬月額に著しい変動があったときは、政令で定めるところにより、その者の標準報酬月額を改定することができる。
第20条(産前産後休業終了時の改定の特例)
第2号被保険者が産前産後休業(政令で定めるものに限る。)を終了した場合において、その後の三月間の標準報酬月額に著しい変動があったときは、政令で定めるところにより、その者の標準報酬月額を改定することができる。
第3章 年金保険料
第1節 保険料の算定及び納付
第21条(保険料の算定)
被保険者が納付すべき保険料は、基礎年金部分の保険料と報酬比例部分の保険料の合算額とする。
2 第2号被保険者に係る保険料は、標準報酬月額及び標準賞与額に共通の保険料率を乗じて得た額とし、事業主と被保険者が折半して負担する 。
3 第1号被保険者に係る保険料は、定額の基礎年金部分の保険料に、所得に応じて政令で定める率を乗じて得た報酬比例部分の保険料を加算した額とする 。
4 前項の所得の定義及び保険料算定の基礎となる額については、第2項に定める標準報酬及び標準賞与額との間に、相互に均衡が図られたものとなるよう、政令で定める。
第22条(基礎年金給付費の国庫負担)
基礎年金給付に要する費用については、政令で定めるものを除き、その総額の二分の一に相当する額を国庫が負担する。
第23条(保険料の徴収)
第2号被保険者に係る保険料は、事業主がその負担分と被保険者負担分を合わせて国に納付する義務を負う。
2 国は、正当な理由なく保険料の納付を怠った者に対し、滞納処分その他の措置を講じることができる。
第24条(保険料の前納)
被保険者又は事業主は、政令で定めるところにより、その納付すべき保険料を前納することができる。この場合において、前納に係る保険料の額については、政令で定めるところにより、割引をすることができる。
第25条(保険料徴収権の消滅時効)
保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、これらを行使することができる日から2年間を経過したときは、時効によって消滅する。
2 前項の時効の援用、中断及び停止に関する事項は、政令で定める。
第2節 免除、猶予及び追納
第26条(保険料の免除及び猶予)
第1号被保険者(任意加入被保険者を除く )は、所得の減少、離職その他政令で定める経済的な理由により保険料の納付が困難である場合、厚生大臣に申請することにより、その保険料の全部又は一部の納付につき免除又は猶予を受けることができる。
2 前項の免除の区分は、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除とする。
3 第1号被保険者であって、学校教育法に規定する大学その他の教育施設に在学する者(政令で定める者を除く。)は、所得が政令で定める基準以下である場合、厚生大臣に申請することにより、その在学期間中の保険料の納付につき猶予を受けることができる。
4 前二項の申請は、保険料の納付期限から2年を経過していない期間について、遡って行うことができる。
5 障害年金を受けている者又は生活維持保障基本法による生活扶助を受けている者は、法定免除の規定に基づき、届出により保険料の納付を免除される。
6 免除又は猶予を受けた期間は、老齢給付の受給資格期間に算入される。
第27条(追納)
保険料の免除又は猶予を受けた被保険者は、当該免除又は猶予に係る保険料の額に、政令で定める利息を加えた額を追納することができる。追納の期間及び手続きは、政令で定める。
第28条(保険料時効消滅時の給付不支給)
保険料を徴収する権利が第25条の規定により時効によって消滅したときは、当該保険料に係る被保険者であった期間に基づく保険給付は、行わない。ただし、当該期間に係る被保険者の資格の取得について第13条の規定による届出若しくは第53条第1項の規定による確認の請求又は第52条第1項の規定による訂正の請求があった後に、保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものであるときは、この限りでない。
第4章 年金給付
第1節 通則
第29条(支給期間及び支払期月)
年金給付を受ける権利は、その権利を有するに至った月の翌月から始まり、権利が消滅した月で終わる。
2 年金給付は、政令で定める支払期月に、それぞれその前月及び前々月の分を支払う。
第30条(未支給年金)
年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付で、まだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の遺族で、政令で定める順位及び要件を満たすものに、未支給年金として支給する。
第31条(死亡の推定等)
年金給付の受給権者が行方不明となり、その者の死亡の有無が明らかでない場合における年金給付の支給停止、並びに失踪宣告を受けた場合における年金給付の取扱いについては、政令で定める。
第32条(年金給付を受ける権利の消滅時効)
年金給付を受ける権利は、これを行使することができる日から5年間を経過したときは、時効によって消滅する。
2 前項の時効の援用、中断及び停止に関する事項は、政令で定める。
第2節 老齢に関する給付(老齢年金)
第33条(支給要件)
老齢年金は、被保険者又は被保険者であった者が、資格期間が10年以上である場合に、60歳に達したときから支給する。
2 前項の資格期間は、保険料納付済期間、保険料免除期間、及び合算対象期間を合算した期間とする。
第34条(年金額)
老齢年金の額は、老齢基礎年金部分と老齢報酬比例年金部分の合算額とする。
2 老齢基礎年金部分の額は、次の各号に掲げる期間に基づき計算した額とする。
満額:成年年齢から60歳までの40年間(480月)の全期間にわたり保険料を納付したと仮定した場合の額とする。
計算額:前号の満額に、被保険者期間のうち保険料納付済期間及び免除期間に応じて政令で定める率を乗じて得た額とする。
3 老齢報酬比例年金部分の額は、第1号被保険者及び第2号被保険者であった期間の標準報酬月額及び標準賞与額(第1号被保険者にあっては、第21条第4項に基づき算定された額)に基づき、その加入期間に応じて政令で定める算定式により計算した額とする。
第35条(支給開始年齢の特例)
年金の支給を希望する者は、65歳に達する前又は65歳に達した後において、政令で定める増額又は減額率に基づき、年金の支給を請求することができる。
第3節 障害に関する給付(障害年金)
第36条(支給要件)
障害年金は、被保険者が、所定の保険料納付要件を満たし、かつ、疾病又は負傷により障害認定日において政令で定める障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合に支給する 。
2 第2号被保険者であった者が、適用事業所に使用されなくなった後であっても、被保険者期間中の疾病又は負傷が原因で政令で定める障害等級に該当するに至ったときは、障害厚生年金に相当する額を支給する 。
3 初診日の特定その他障害の状態に関する認定に必要な事項は、政令で定める。
第37条(給付の種類及び額)
障害に関する給付は、障害基礎年金、障害厚生年金及び障害手当金とし、その額は、障害等級に応じて政令で定める 。
2 障害基礎年金は、第36条第1項の要件を満たす者に対し、障害等級1級又は2級に応じて第34条第2項に定める老齢基礎年金部分の額を準用して計算する。
3 障害厚生年金は、第2号被保険者であった者に対し、その報酬と加入期間に基づき、政令で定める算定式により計算した額とする。
4 障害手当金は、第2号被保険者であった者が、疾病又は負傷により障害等級3級に満たない軽度の障害を負った場合に、一時金として支給する。支給要件及び額は、政令で定める。
第4節 遺族に関する給付(遺族年金)
第38条(支給要件)
遺族年金は、被保険者又は被保険者であった者が死亡した場合において、所定の保険料納付要件を満たし、かつ、その者により生計を維持されていた遺族があるときに支給する。
第39条(遺族の範囲及び順位)
遺族とは、死亡した被保険者又は被保険者であった者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、政令で定める順位及び要件を満たす者をいう。
2 前項に規定する「子」とは、成年年齢に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子をいう。
3 前条に規定する「生計を維持されていた」ことの認定に関する基準は、政令で定める。
第40条(給付の種類及び額)
遺族に関する給付は、遺族基礎年金及び遺族厚生年金とし、その額は、遺族の数及び構成に応じて政令で定める。
2 遺族基礎年金は、被保険者等に子が遺された場合などに支給し、その額は第34条第2項の老齢基礎年金部分の額を準用する。
3 遺族厚生年金は、死亡した者が第2号被保険者であった場合などに支給し、その額は老齢報酬比例年金部分の額を基礎として、政令で定める割合を乗じた額とする。
4 この年金制度に定めるもののほか、遺族の生活の安定を図るため、寡婦年金及び死亡一時金を支給することができる。その支給要件及び額は、政令で定める。
第41条(加害者に対する年金不支給)
遺族年金は、被保険者又は被保険者であった者を故意に死亡させた者には、支給しない。被保険者又は被保険者であった者の死亡前に、その者の死亡によって遺族年金の受給権者となるべき者を故意に死亡させた者についても、同様とする。
2 遺族年金の受給権は、受給権者が他の受給権者を故意に死亡させたときは、消滅する。
第5節 一時金に関する給付
第42条(脱退一時金)
この法律に定める保険料の納付は国民の責務であるため、被保険者資格の喪失を理由とする保険料の返還は原則として行わない。ただし、国際的な信義則に基づき、短期滞在の外国人であって政令で定める要件に該当する者が、年金給付の資格期間を満たさずに被保険者の資格を喪失し、日本国外に転居した場合は、その納付した保険料の一部を脱退一時金として請求し、支給を受けることができる。
2 脱退一時金の支給要件、額の計算及び請求に関する事項は、政令で定める。
第6節 支給調整及び特例
第43条(在職老齢年金)
老齢年金の受給権者が、引き続き第2号被保険者である場合、加給年金額を除く老齢年金の額と、その者の総報酬月額相当額との合計額が支給停止調整額を超えるときは、政令で定めるところにより、その年金の一部又は全部の支給を停止する 。
2 前項の総報酬月額相当額及び支給停止調整額の算定並びに支給停止の具体的な方法は、政令で定める。
第44条(離婚時における年金分割)
第2号被保険者であった者の離婚等をした場合における年金給付の額の算定については、当事者の一方の請求又は合意に基づき、婚姻期間中の被保険者期間に係る標準報酬月額等の記録を当事者間で分割し、年金の額の計算に反映させるものとする 。
2 前項の規定による年金分割の要件、対象期間、請求手続その他必要な事項は、政令で定める。
第7節 給付の制限
第45条(給付の制限)
年金給付は、次に掲げる場合には、政令で定めるところにより、その額の全部又は一部を支給しないことができる。
一 被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となった事故を生ぜしめ、若しくはその障害の程度を増進させ、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、その回復を妨げたとき。
二 受給権者が、虚偽の申請その他不正な行為によって年金給付を受け、又は受けようとしたとき。
2 障害年金は、被保険者又は被保険者であった者が、故意に、障害又はその直接の原因となった事故を生ぜしめたときは、当該障害を支給事由とする障害年金又は障害手当金は、支給しない。
3 障害年金の受給権者が、故意若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、その障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、政令で定める改定規定による改定を行わず、又はその者の障害の程度が現に該当する障害等級以下の障害等級に該当するものとして、当該規定による改定を行うことができる。
4 受給権者が、正当な理由がなくて、第7条第1項の規定による命令に従わず、若しくは同項の規定による当該職員の質問に応じなかったとき、又はこの法律の規定による届出をせず、若しくは書類その他の物件を提出しないときは、保険給付の支払を一時差し止めることができる。
第46条(他の公的年金給付との調整)
この法律による年金給付は、同一の支給事由について、他の法令の規定により、これに相当する給付を受けることができるときは、政令で定めるところにより、その額の全部又は一部の支給を調整することができる。
2 障害年金は、同一の傷病について労働者災害補償保険法による障害補償給付を受ける権利を有する者に対しては、その価額の限度において支給しない。
第5章 制度の運営及び財務
第47条(年金積立金の管理及び運用)
年金給付に充てるため、この法律に基づく年金積立金を保有する。
2 年金積立金は、国民の福祉に資することを目的とし、その確実かつ効率的な運用を図らなければならない 。
第48条
政府は、年金積立金の長期的な観点からの安全かつ効率的な運用を行うため、別に法律で定める特殊法人を設ける。
2 特殊法人の運用委員会は、年金積立金の運用に当たっては、被保険者の利益に資すること、及び長期的な財政の安定に寄与することを最優先の方針とする
3 運用委員会は、前項の基本方針に基づき、次に掲げる事項を議決しなければならない
一 新たな運用手法を採用する場合であって、既存の運用手法に比してリスクが高いと認められる場合における、当該リスクの適切な管理体制に関する事項。
二 運用受託機関の選定及び総合評価に関する基本ルール。
三 資産構成の戦略的見直し及び政策的意義を持つ運用指針(社会的責任投資及び統合思考に関する事項を含む。)の策定。
四 その他運用委員会が年金財政の維持及び被保険者の利益保護のために特に重要と認める事項。
第49条(年金基金との調整)
厚生大臣は、この法律の実施に当たり、事業所または法認団体が独自に設ける年金制度の健全な発展に配慮し、これらの制度を運営する年金基金との間で、被保険者の記録管理及び給付の調整に関し、必要な措置を講じなければならない。
第50条(財政検証)
政府は、少なくとも五年ごとに、保険料及び国庫負担の額並びにこの法律による保険給付に要する費用の額その他の年金保険事業の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間における見通し(以下「財政の現況及び見通し」という。)を作成しなければならない 。
2 前項の財政均衡期間は、財政の現況及び見通しが作成される年以降おおむね百年間とする 。
3 政府は、第一項の規定により財政の現況及び見通しを作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第51条(給付水準の調整)
年金の給付水準は、前条の財政検証の結果に基づき、将来にわたり公平な給付と負担の関係が維持されるよう、経済情勢及び被保険者の状況の変化に応じて調整されるものとする。国民の生活水準、賃金その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定の措置が講ぜられなければならない 。
2 前項の調整は、物価及び賃金の変動に加え、将来の財政均衡を図るため、賃金や物価による年金額の改定率を調整し、緩やかに年金の給付水準を決定するものとする。調整の具体的な方法は政令で定める。
第52条(国民年金監督委員会)
日本國憲法第7章第14条の規定に基づき、この法律の適正な運営を議会の立場から監督するため、国会に国民年金監督委員会を設置する。
2 委員会は、国会が選挙する委員をもって組織する。委員の任期、資格その他必要な事項は、別に法律で定める。
3 委員会は、厚生大臣及び第47条第3項に規定する特殊法人に対し、年金制度の運営状況及び積立金の管理運用に関する報告を求め、又はその業務を検査することができる。
4 委員会は、その活動状況について、毎年国会に報告するとともに、これを公表しなければならない。
第6章 不服申立て及び雑則
第53条(審査請求及び再審査請求)
年金給付に関する決定は、厚生大臣又はその委任を受けた者が行う。
2 年金給付の決定に不服がある者は、この法律の定めるところにより、社会保険審査官に対し、審査請求をすることができる 。
3 前項の審査請求の決定にさらに不服がある者は、社会保険審査会に対し、再審査請求をすることができる。
第54条(受給権の保護)
年金給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢年金等を受ける権利を国税滞納処分により差し押さえる場合その他政令で定める場合は、この限りでない。
第55条(年金原簿の訂正請求)
被保険者又は被保険者であった者(その者が死亡している場合にあっては、第30条の規定により未支給年金の支給を受けることができる遺族を含む。)は、第6条第1項に定める年金原簿に記録された自己に係る特定事項(資格の取得及び喪失の年月日、標準報酬その他政令で定める事項をいう。)が事実でない、又は年金原簿に自己に係る特定事項が記録されていないと思料するときは、厚生大臣に対し、年金原簿の訂正を請求することができる。
2 厚生大臣は、前項の訂正の請求に係る年金原簿の訂正に関する方針を定め、あらかじめ、社会保障審議会に諮問しなければならない。
3 厚生大臣は、第1項の請求に理由があると認めるときは、当該請求に係る年金原簿の訂正をする旨を決定し、請求者及び関係者に速やかに通知しなければならない。
第56条(年金記録の確認請求及び通知)
被保険者であった者及び被保険者は、厚生大臣に対し、自己に係る第6条第1項に定める年金原簿の記録内容について確認を請求することができる。
2 厚生大臣は、前項の確認の請求があった場合、政令で定める期間内に、当該記録の内容について請求者に通知しなければならない。
第57条(政令への委任)
この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他その執行に関し必要な事項は、政令で定める。
第58条(罰則)
偽りその他不正の手段により年金給付を受けた者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2 事業主が、正当な理由なく第3章に定める保険料の納付義務を履行しなかったときは、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
3 前二項に定めるもののほか、この法律の規定に違反した者に対する罰則は、政令で定める。
第59条(調査権限の行使に係る罰則)
第7条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者は、30万円以下の罰金に処する。
第60条(経過措置)
この法律の施行前に、従前の厚生年金保険法(以下「旧法」という。)により被保険者であった期間、保険料を納付した期間、又は給付を受ける権利を有していた者については、この法律の規定にかかわらず、従前の規定の例により、その期間又は権利をこの法律の規定に読み替える措置を講じるものとする。
2 この法律の施行日において、現に旧法に基づく厚生年金の受給権者であった者であって、従前の経過措置政令により在職老齢年金の規定の適用を受けない者に限る については、第43条の規定は適用しない。
3 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第61条(非常事態における特例)
日本国憲法第24章に定める非常事態宣言が発令された場合、非常事態宣言が発令された場合、政府は、国民生活の維持及び国家の復興のため、政令で定めるところにより、保険料の徴収猶予、給付額の臨時的な調整その他必要な特例措置を講じることができる。
2 前項の措置は、事態の収束後、速やかにその影響を是正するための計画と共に国会に報告され、その承認を得なければならない。
附則
第1条(施行期日)
この法律は、公布の日から施行し、昭和三十四年五月一日から適用する。
第2条(厚生年金保険法特例の廃止)
厚生年金保険法(昭和十六年法律第六十号)、厚生年金保険法特例(昭和二十六年法律第三十八号)、被用者年金各法は、廃止する。
第3条(被保険者の資格に関する経過措置)
昭和三十四年五月一日において現に従前の厚生年金保険法、並びに被用者年金各法(以下「旧法」という。)による被保険者である者が、引き続きこの法律による被保険者となったときは、その引き続く資格の取得については、第13条第1項の規定による厚生大臣の確認を要しない。
第4条(高齢任意加入被保険者)
旧法による被保険者であった期間は、この法律による被保険者であった期間とみなす。但し、旧法による脱退手当金の計算の基礎となった期間は、この限りでない。
第5条(恩給法との関係)
この法律の施行の際、現に恩給法(大正十二年法律第四十八号)による恩給(以下「旧恩給」という。)を受ける権利を有する者の当該権利は、なお従前の例による。
2 この法律の施行前に公務員又は軍人であった期間(旧恩給の基礎となるべき期間に限る。)については、政令で定めるところにより、この法律の被保険者期間とみなし、又は合算することができる。ただし、旧恩給の計算の基礎となった期間は、この限りでない。
3 この法律の施行後、公務員又は軍人となった者は、第2章に定める第2号被保険者とし、恩給法は適用しない。
第6条(旧恩給受給権者に関する特例)
前条第1項の規定により旧恩給を受ける権利を有する者が、この法律による老齢年金の支給を受けることができるときは、その者の選択により、いずれか一方の給付を受けるものとし、両者を同時に受けることはできない。ただし、旧恩給の額がこの法律による老齢基礎年金の額を下回る場合その他政令で定める特別の事情がある場合は、この限りでない。
・この時期から、統一された国民皆保険・国民皆年金制度にすべし。総務泣かせの国民年金と厚生年金、被用者年金制度の乱立なんて許しませんぜ~w
・ただ、保険料徴収体制と所得把握能力が……。
・非被用者層に対しての強制的な保険料徴収体制……まずこの時までに正確な所得捕捉ができるように国民総背番号制度を導入して口座把握・非被用者層の収支把握とかに活用できていないと。
・申告納税制度の実施は確定。併せて第三者通報制度もしばらく実施されているか。密告を促す社会は望ましくないという理由で1954年に廃止されるのも同じだろうが。
・とはいえ、いくら憲法で謳っているとはいえ、剛腕な政治家・国家百年先を見据えた意識の高い官僚がそろってないと難航しただろうなぁ。
・既存加入者からの資産流用で公平性に欠けるとみなされるだろうから、この辺の政治的調整が難しそうだ。高い給付を享受する被用者年金加入者層が、低い給付の層との統合に強く抵抗するだろうし……。と思ったが、よくよく考えれば、華族が、「未加入者を迅速に救済し、憲法に定められた社会保障の土台を緊急に確立することはノブレス・オブリージュである」として国民年金に加入し、その莫大な資産所得に応じた巨額の保険料を納めるなら、既得権益云々の被用者層の主張は、単なる利己主義にみられるか。であれば、利己主義者なんてこの日本では絶対に避けたいレッテルだから反対意見は小さくなるな。
・第49条は妥協の産物だな。こっちがメインになりそうな気もするが今の年金よりはましな給付だろう、たぶん。
・同一の理由で複数の制度から満額の給付を受ける「二重取り」は防げているはず……。
あとは……
・条文番号、条文内の相互参照箇所の条文番号のふり間違いあったら、ごめんなさい。
・健康保険法を一本化した法案はマジで勘弁……。
それにしても、この日本の華族。
国民としての「義務」を率先して果たしながら、一般国民が持つ基本的な「権利」の一部を放棄している、その姿をこの日本の国民はどう見ているのやら。
権利を求めず、ただ責任を果たす姿が、国民からの深い尊敬を集め、彼らの特別な地位を正当化する、何よりの権威の源泉となっているならいいが。
左派からでさえ
「あの華族の姿を見よ。新たな特別的扱いも権利も求めず、国家の安寧のためにあれほどの責任を果たしておる。将来的には廃すべき特権階級とはいえ、他国の特権階級とは違うあの姿勢は見習わねばならぬ。それに引き換え、君の主張はあまりに卑小なエゴイズムではないか」
などと言われていたりして……。