上諭
朕、議会の議決を経て外国人の技能実習の適正な実施及び実習環境保護に関する法律を裁可し茲に之を公布せしむ。
内閣総理大臣
法務大臣
外務大臣
厚生大臣
労働大臣
通商産業大臣
第一章 総則
第1条(目的)
この法律は、日本国憲法の精神に則り、技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的とする。
この目的を達成するため、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図る体制を確立し、もって国際協力の推進と国際社会における我が国の地位向上に資することを旨とする。
第2条(基本理念)
技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達(以下「修得等」という。)のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならず、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。
2 技能実習は、技能実習生が本国において修得等が困難な技能等を修得し、帰国後に本国の産業振興に寄与することを主眼として行われなければならない。
第3条(定義)
この法律において「技能実習」とは、本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて、当該機関の業務に従事させることにより技能等を修得させる活動をいう。
2 この法律において「技能実習生」とは、次条に定める要件を満たし、適正な手続を経て入国し、在留する外国人をいう。
第4条(技能実習生の要件)
技能実習生となろうとする者は、次に掲げる要件をすべて満たさなければならない。
一 修得しようとする技能等が、同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと。
二 修得しようとする技能等が、本国において修得等が困難であること。
三 満十八歳以上であり、帰国後に本国への技能等の移転に努める意思を有すること。
四 本国において、技能実習職種と同種の業務に従事した経験等を有すること。
五 日本語に関し、政令で定める基準*1に達していること。
六 その他主務省令で定める要件。
第二章 技能実習の実施
第5条(技能実習計画の認定)
技能実習を行わせようとする者(以下「実習実施者」という。)は、技能実習生ごとに技能実習計画を作成し、主務大臣の認定を受けなければならない。
2 技能実習計画には、修得させる技能等の内容、実習の期間、待遇、実習責任者の氏名その他主務省令で定める事項を記載しなければならない。
第6条(講習の受講)
監理団体(第15条に規定する許可を受けた者をいう。)は、その監理する技能実習生に対し、入国後、配属前に一月以上の講習を行わせなければならない。
2 前項の講習期間中、監理団体は技能実習生に対し、生活維持に必要な手当として月額六万円以上を支給しなければならない。
第7条(実習時間及び休日)
技能実習の実習時間は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)に定める労働時間と同様とする。
2 実習実施者は、技能実習生に対し、労働基準法に基づく休日を与えなければならない。
3 実習に必要な資格取得のために行う学習会、講習会等が、実習実施者の指示により行われる場合、又は参加が事実上強制されている場合は、これを実習時間とみなす。
第三章 技能実習生の待遇及び保護
第8条(報酬及び労働条件)
実習実施者が技能実習生に支払う報酬の額は、日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上でなければならず、かつ、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)に基づく地域別最低賃金を下回ってはならない。
2 実習実施者は、技能実習生との間で締結する雇用契約において、労働基準法、労働安全衛生法その他の労働関係法令を遵守しなければならない。
第9条(社会保険等の適用)
技能実習生は、国民年金保険基本法(昭和三十四年法律第百十八号)、国民健康保険法、労働者災害補償保険法及び雇用保険法の適用を受けるものとする。
2 実習実施者は、技能実習生に係る社会保険料の事業主負担分を納付しなければならない。
3 技能実習生は、国籍の如何を問わず、国民年金保険基本法に基づき保険料を納付する義務を負う。 帰国時には、同法に基づく脱退一時金の支給を受けることができる。
第10条(差別の禁止)
実習実施者は、技能実習生であることを理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
第11条(人権侵害行為の禁止)
実習実施者及び監理団体は、技能実習生に対し、暴行、脅迫、監禁その他精神的又は身体的な自由を不当に拘束する手段を用いてはならない。
2 実習実施者等は、技能実習生の旅券、在留資格者証等を保管してはならない。
第四章 家族の帯同及び滞在管理
第12条(家族帯同の禁止)
技能実習生は、本邦において技能実習を行う期間中、配偶者、子その他の親族を帯同してはならない。
第13条(招へい及び連座責任)
技能実習生が、親族、知人等を短期滞在等の資格で本邦に招へいすることは妨げない。ただし、招へいされた者が在留期間を経過して本邦に残留(以下「不法残留」という。)したときは、当該技能実習生は、以下の各号に該当する場合を除き、不法残留幇助の責めを負うものとする。
一 招へいされた者の在留期間満了前に、当該者に対し帰国を強く促し、かつその事実が客観的に証明できる場合。
二 招へいされた者が不法残留の状態にあることを、速やかに入国管理局又は警察機関に通報した場合。
三 招へいされた者から脅迫、暴力等を受け、通報等が困難であったと認められる場合。
2 前項の責めを負う技能実習生は、出入国管理及び難民認定法の規定に基づき、在留資格を取り消され、退去強制の対象となる。
3 実習実施者又は監理団体が、招へいされた者の不法残留を容認し、又は助長したと認められるときは、その認定又は許可を取り消すとともに、罰則を適用する。
第五章 監督及び罰則
第14条(外国人技能実習機構)
技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るため、認可法人外国人技能実習機構を置く。機構は、実習計画の認定、実習実施者の届出受理、報告徴収、実地検査等を行う。
第15条(監理団体の許可)
監理事業を行おうとする者は、主務大臣の許可を受けなければならない。許可は、営利を目的としない法人であって、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を行う能力を有するものに与えられる。
第16条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第2条第1項の規定に違反し、労働力の需給調整の手段として技能実習を行わせた者。
二 暴行、脅迫、監禁その他精神的又は身体的な自由を不当に拘束する手段により、技能実習生の意思に反して技能実習を強制した者。
三 技能実習生の旅券又は在留カードを保管した者。
四 第13条第3項の規定に違反し、不法残留を助長した者。
第六章 雑則
第17条
この法律における主務大臣は、法務大臣、厚生大臣、労働大臣とする。
2 この法律における主務省令は、主務大臣の発する命令とする。
第18条
この法律に定めるもののほか、この法律の規定の実施に関し必要な事項は、主務省令で定める。
附則
第1条(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第2条(検討)
政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。