もしもこんな日本だったら   作:fire-cat

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海外
1944年~1950年 モスクワの地にて


「7月20日」

 忌々し気にスターリンが日付を口にした。

「あのテロであのちょび髭伍長が死亡したときは天祐だと思ったのだが……」

 壁に貼られた地図に手を忌々し気にたたきつける。

「8月のワルシャワ蜂起で活動を停止したのも今にして思うと稚拙だったかもしれん」

「同志書記長閣下、そのようなことは……」

「あの活動停止の間にグデーリアンめが奴らの言うところの北方軍集団をバルト海経由で撤退させてしまった。奴ら、今ではヴィスワ川の後詰として我が軍に抵抗しておる」

 忌々しげなスターリンの声にヴィスワ川一帯で一進一退の攻防を繰り広げている赤軍幹部が顔を伏せた。

「それに……」

 そんな軍幹部を一瞥すると外務大臣であるモロトフが

「資本主義者どもに潜り込ませていたスパイ網がドイツ諜報部に暴かれたのも痛手でした」

 首を振る。そんなモロトフの言葉に追い打ちがかかる。

「あの英米を虚仮にしまくった声明が中立国経由で此方のスパイの証拠とともに新聞社にばらまかれた所為で奴らが摘発せざるを得ませんでしたからな。こちらの防諜はどうなっているのやら」

「暴かれた程度であればファシストどもの謀略という事で片が付いたのですが忌々しい」

 恐る恐るといった体でモロトフが報告を重ねる。

「西側の戦線で怪しい動きがあります。英独で講和をするのではないかと考えられますが、こちらの目と耳が潰されてしまい気がつくのが遅くなりました」

 一気に眉を寄せ不機嫌になるスターリン。

「ベルリンへの進行はどうなる、ジューコフ?」

「はっ! このままでは残念ながら英米が先にたどり着くかと」

「くそっ!」

「ポーランドにくれてやる領土はどうする? マレンコフ」

「残念ながら約束のバルト海に面した土地として渡す予定だったポンメルンの占領の前にこの戦争が終わりそうです。東ブランデンブルクのほかにバルト海に面した土地として東プロイセンはくれてやるしかないかと」

「忌々しい。7月のテロでちょび髭がくたばってなければ、もう少し楽に進めたかもしれんが。戦争の才能が全くなかったからな」

「書記長……」

「仕方あるまい。バルト海へはカレリアで手を打つか。だが、海への出口は、バルト海、黒海のほかに確保しておきたい。どこか」

 ないかと言いかけたスターリンの目に地図の端ー極東ーが映る。

「待てよ……ふむ。……モロトフ」

 絶対権力者に見据えられたモロトフの顔から血の気が引いていく。

「何を青ざめているのかね。喜べ、君に活躍の場ができた」

 いぶかしげな表情を一瞬浮かべるも慌てて打ち消すモロトフ。

「東の……蒋介石へ援助をしているな? その援助を打ち切れ」

「しかし、それでは日本軍が」

 曲がりなりにもある程度の評価をしているジューコフが口をはさみかけるが

「何か言ったかね? ジューコフ」

「いえ。何も言っておりません」

 慌てて口をつむぐ。

「モロトフ、確か我が国は満洲国については声明書で「満洲帝国の領土の保全及不可侵」を尊重するといっていたな?」

「はい。その様に日本に伝えております。公館も設置しております。ただ、今となっては無意味なこ……と……まさか?」

「モロトフ、我が赤軍が満洲を占領した後君は速やかに、ソビエト連邦は満洲国を1932年の建国時にさかのぼって承認する。そう発表したまえ。満洲国は皇帝溥儀の要請により我がソビエトが保障占領する。ベリヤ、君は確実に皇帝溥儀の身柄を押さえるのだ。両名とも失敗は許さん」

「蒋も毛も批判しますぞ」

「我がソビエトの援助なしでどこまで日本に抵抗できるのか見ものだな。日本に対して反撃攻勢が行えるようであれば少しは話を聞いてやろう。反撃も満足に行えないようなら、この戦争に対する貢献の不足を訴えて満洲を我がソビエトに組み入れるまでの事だ。ああ、それとモンゴルのチョイバルサンに連絡したまえ。ソビエトはモンゴル人民共和国による内モンゴル地域の併合を認める、と」

 

 

 

 

1945年8月 

 ソビエト連邦、モンゴル人民共和国、対日宣戦布告。

 ソビエト連邦、満洲国を1932年にさかのぼって国家承認。満洲国進駐は日本軍からの解放と満洲国防衛を目的として皇帝溥儀の要請による保障占領であると宣言。但し、中華民国による抗議により承徳市のみ返還

 モンゴル人民共和国、蒙古自治邦政府を併合。独立を承認しない中華民国による抗議があったが独立承認と引き換えに張家口市を返還。

 

 

 

 

1950年

「満洲もソビエト社会主義共和国連邦の16番目の共和国となったか。ポルト・アルトゥルの拡張を急がなくてはな」

「中華人民共和国の抗議がまた増えますな」

「放っておけ、せっかくお膳立てしてやったウイグルも解放せず、アムドからチベットに手を出した挙句英米軍の介入でアムドからも叩き出され、宿敵の中華民国も大陸から放逐できない国など捨て置いて構わん。ウイグルも我々が押さえていなかったらどうなっていたことか。今更奴等の領土などとふざけおって。ウイグルは東トルキスタン人民共和国としてソビエト社会主義共和国連邦の17番目の共和国となるのだからな」

 

 




 このスターリン、満洲をソ連以外に渡す気は全くありません。
 東欧中欧が獲れなかったので、満洲を是が非でも獲りに来ています。満洲を獲るためなら慎重且つ大胆な策を用いてきます。
 満洲とサハリンが確実に獲れるなら、クリル諸島は獲れるなら獲るが無理に獲らなくても良いか、位に考えています。その分満洲とサハリン侵攻部隊は士気も練度も風紀も装備も一級の部隊を投入し、獲れそうに無い欧州側は懲罰部隊中心に入れ替えました。自分の家(予定地)を壊したり汚したりはしないでしょうから。
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