昭和55年7月21日
主 管 大 臣 各文化芸術団体代表者 各出版放送事業代表者 | 殿 |
( 公 印 省 略 )
文化芸術基本法(昭和二十六年法律第四十八号)第三十三条の規定に基づき、日本藝術院は、近年の派生的著作物の創作活動、所謂「二次創作」活動の拡大に鑑み、我が国の文化芸術の品格を保持し、その健全な発展を図るため、下記のとおり指針を定めたので通知する。
関係各機関及び団体においては、本指針の趣旨を十分に理解し、その周知徹底及び適切な運用に努められたい。
第一章 基本原則
先人の創作した著作物に基づき新たな創造を加える派生的著作物の創作は、本歌取りや狂歌に通じる我が国の伝統的な文化的営みの一つである。
しかしながら、原著作者の人格的利益を侵害し、又は公序良俗に反する表現が「自由」の名の下に放置されることは、文化の退廃を招き、ひいては創造の土壌そのものを枯渇させるものであると認識しなければならない。
派生的著作物の創作活動は、著作権法を遵守し、かつ原著作者への敬意と感謝を基盤とし、企業や商品などへの関心や愛着を持つ人々が集まり、交流・情報共有を行う場での精神的交流及び技術的研鑽を主たる目的として行われるべきものである。
第二章 遵守事項
1.品格の保持
派生的著作物は、原著作物に対する敬意を基盤とし、その世界観や登場人物の尊厳を損なわないよう、高い品格を持って創作されなければならず、特に、原著作者及び作品の社会的信用を失墜させ、または原著作者に著しい不快感を与えるような改変を行ってはならない。
2.法令及び公序良俗の遵守
過激な性描写、犯罪行為を肯定・助長する表現、その他、青少年健全育成法等の法令に抵触する内容を含んではならない。特に、未成年者及びそのように視認される登場人物を対象とする性的並びに過度に暴力的・猟奇的な表現は、いかなる媒体においても厳に慎まなければならない。これは実在の有無を理由に免責されるものではない。
3.非営利の原則
同人活動等の派生的著作物の頒布は、愛好者間の交流及び技術の研鑽を目的とするものであり、営利を主たる目的としてはならない。その対価は、原材料費、印刷製本費等の実費を勘案した社会通念上妥当な範囲内に留めるべきである。商業的規模での流通や、原著作者の正規の経済活動を阻害する行為は認められない。
4.政治的・宗教的中立性
特定の政治的信条、政党、宗教の宣伝、あるいはそれらへの批判・攻撃を目的として、既存の登場人物や世界観を利用してはならない。
第三章 運用体制
1.自主規制の徹底
即売会主催者、出版社、書店等の流通事業者は、本指針に基づき、取り扱う作品の審査基準を策定し、厳格に運用すること。即売会を開催するにあたっては、本指針に基づき、参加者または団体に対する適切な指導及び区画分けを行わねばならない。
2.通報と是正
原著作者の名誉を著しく毀損する行為、又は本指針に著しく反する行為が確認された場合、日本藝術院は、関係機関に対し是正勧告を行うものとする。
附則
本指針は、昭和55年8月1日より適用する。