「皆さんこんばんは。スタジオ1930です。今日はコメンテーターに専門家の靖国博氏をお迎えして、技能実習法について取り扱っていきます。それではよろしくお願い致します」
「よろしくお願いします」
「靖国さん、今回定められた、外国人の技能実習の適正な実施及び実習環境保護に関する法律、所謂、技能実習法ですが、どの様な法律なのでしょうか?」
「そうですね。これはそもそも海外にある現地法人の社員研修として1960年代から行われていた研修制度が基になります。元々は海外に拠点を持つような大企業だけがこの制度の対象でしたが、昨今、所謂中小企業でも人手不足が顕著になり、海外拠点を持たない企業でもこの制度を利用して、研修を行う組織を立ち上げて海外から人材を受入れようという動きが活発になりつつあることはご存じですよね」
「ええ。専門学校の研究科や高等専修学校に進む若者も多くなり、なかには専修学校在籍中に起業する若者も出てきたりして中小企業に勤める若者が減少してきましたから、中小企業の労働力不足の解消にもつながるのではと期待されていますね」
「そういう事もあって、中小企業に限らず、海外から技能実習のための人材を受け入れるにあたって、労働諸法や健康保険法の扱いなどを取り決めないまま受け入れてしまうと女工哀史の様なことにもなりかねないという懸念から定められた法律です」
「憲法や労働諸法にも労働者の権利の保護は謳われていますがそれだけでは不十分というわけですね?」
「そうですね。労働諸法はこういう海外からの技能実習を行う人材を受け入れる想定をしていませんでしたから、どうしても現状の法律では法の穴を突き、安価な労働力、言葉を飾らないで言えば奴隷といっても良いでしょうが、そんな扱いをする企業も現れてくるでしょう。そんな日本の恥ともなる事態を起こすことのないように今回法律を定めたという事ですね」
「では法律の説明を簡単に行って頂けますか?」
「まず、理念ですが、【技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習を行う研修生、】法律では以下技能実習生と呼ぶと規定していますね。【技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならず、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。】と定められています」
「安価な労働力では無いという訳ですね?」
「そうです。その為、条件の確認や条件と異なった場合は関係機関に技能実習生が通報できる様に、【技能実習を滞りなく行う為、技能実習を望む者は日本語について別に定めた基準に達していなければならない。】と定められています。そもそも技能を伝えるには言葉が通じないと難しいですからね。身振りでなんとかなると仰る方もおりますが、正しく伝わると思いますか?」
「身振りだけでは難しいと思いますね。ところで、この基準というのは日本語能力試験のことですよね?」
「それのみではありませんが、現状では日本語能力試験かビジネス日本語能力テストが利用されることがほとんどになるでしょう。基準からみると日本語能力試験2級かビジネス日本語能力テスト400点以上が必要とされているようです」
「それはなかなか厳しいですね。私もうっかりすると落ちそうですよ」
「またまた御冗談を」
「ところでこの法律、保険関係はどのようになっているのでしょうか」
「技能実習生は、国民年金保険法、国民健康保険法、労働基準法、労働者災害補償保険法、最低賃金法、労働安全衛生法の適用を受けることになっています」
「あれ? 国民年金保険法も適用されるんですか」
「あはは、それはそうですよ。国民年金保険法では日本に居住する満18歳以上の方は国籍を問わず年金保険料を納付しなければなりませんから」
「納付した金額が無駄になるようなことはありませんか? 何れ帰国しますよね」
「そうですね。おっしゃられたように、何れ帰国するので年金を払っても無駄になってしまうという意見もあったのですが、国民年金保険法には脱退一時金の支給規定がありますから無駄にはならないという判断があったようです」
「なるほど。脱退一時金は気が付きませんでした。ところで実習生の要件はどのようになっているのでしょうか」
「技能実習の要件は第一に同一の作業の反復のみによって習熟又は熟達できる技能ではないこと。第二に技能実習生の本国において修得等が困難な技能を習得すること。第三に18歳以上で、帰国後に本国への技能等の移転に努めること。第四に技能実習職種と同種の業務に従事した経験等を有すること。と定められています」
「なるほど。単純作業や簡単な技能では認められず、経験もある程度ないとダメという事ですね。靖国さん、法律の主な点をまとめて頂けますか?」
「はい。こちらのフリップをご覧ください。今回、団体監理型と呼ばれる、組織を立ち上げて監理しながら研修先を探す仕組みができましたが、この団体監理型による技能実習生の配属前の事前研修が1か月あります。その間は6万円の手当が支給されます。次に配属後ですが日本人と同様に活動し、一日の実習時間は労働基準法に定められた労働時間と同じになります」
「給与はどのようになるのでしょうか?」
「給与は日本人と同じになります。ただこれは最低賃金法に定められた地域別最低賃金から可能とされています。残業は夜勤も含めて行えますが、当然労働基準法の適用がありますので注意しなくてはいけません」
「週に40時間を超えた労働……失礼。実習は禁止ということですね?」
「実習に必要な資格取得のために会社が行う勉強会についても実習時間に含まれる点は注意しなくてはいけません」
「時々裁判になる事例ですね。必要な資格取得のために会社が行う勤務時間外の勉強会は労働時間に含まれるのかという」
「その点はまた別にお時間を頂きたい問題ですね」
「その点は来週の特集で取り扱う予定です。保険については如何でしょう」
「先ほど説明しましたが、保険についても実習中は健保、労災保険が適用されますし、年金の納付も必要となります」
「今までの点をまとめると、日本人労働者を雇用するのと実習生を受け入れるのではほぼ雇用条件は変わらないという事でしょうか?」
「そうですね。企業の中には人手不足対策や安価な労働力として期待していた面もあるようですが、あくまでも技能実習制度は【日本の技能、技術、知識を途上国へ移転させ、経済発展を担う人づくりに寄与すること。】が目的とされ、今回制定された法律はその目的を達成する為の法律ですね」
「なるほど。受け入れる方々はその点を勘違いしないようにしていただきたいものですね。ところで、故郷から家族を呼び寄せられるとか、そのような、ん〜、語弊があるかもしれませんが、特例的な措置というか制度はあるのでしょうか」
「いえ、ありません。技能実習生はあくまでも技能実習のために来たのであり家族を受け入れる事はありません。これは条文にも記載されており、家族は今まで通り旅券法の適用を受けることになります。これ、気を付けて頂きたいのは連座制が適用される事なんです」
「といいますと?」
「技能実習生が家族や親族、友人を招くこと自体は問題ないのですが、その方たちは査証が切れても滞在したままでいると不法残留罪になり国外退去となります」
「当然ですね。それが何か?」
「技能実習生も不法残留幇助責任を取らされて国外退去となるんですよ。雇用者にも責任が及ぶこともあり得ます」
「それは、厳しいですね。国会で議論されなかったんですか? これ人権侵害問題にもなりかねませんけど?」
「長い間法律が定まらなかった主な原因がこれなんです」
「今回制定されたという事は」
「合法的に滞在する外国人に対しては保障がされていますからね。不法残留者の査証が切れる前に実習生が帰国を促していた、不法残留者の存在を通報した、実習生が不法残留者から脅迫等を受け滞在させていた場合等は情状酌量されますから、実習生が法律を遵守すれば問題ないという事で成立しました」
「なるほど。実習生の身の安全についても受け入れ先は気を付ける必要がありますね。それではスタジオ1930、本日はこの辺で失礼します」
国民年金保険法は新憲法制定時に旧厚生年金保険法を全面改訂し新たに国民年金保険法として制定されています。上乗せする国民年金基金についても定めてあります。
年金保険料は満18歳以上を対象に国籍を問わずを納付しなければなりません。
日本語能力試験、認定開始年は1982年
ビジネス日本語能力テスト、認定開始年は1984年
となります。