もしもこんな日本だったら   作:fire-cat

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台詞集⑤ ~日本の自動車事情(?)~

「ガソリン供給の統制解除はいまだ目処が立たずか」

「残念ながらな。大陸の内戦で何らかのけりがつかない限り日本への供給はダメだろうな」

「ガソリン不足は戦前と変わらず。か」

「そうなると電気で走るこいつら(EOT・E4S)の天下はしばらく続くか?」

「そうは言ってもいつガソリン供給の統制解除があるか分からん。それまでには電気で走るこいつら(EOT・E4S)を日本の車の標準にしなくちゃな」

 

◇◆◇◆◇

 

「やったなっ! 一度の充電で205km走るうえに5人乗り4ドアセダンで最高速度56kmなんてすごいじゃないか」

「ああ。改正国土基本法で鉄道が全て標準軌に切り替わることが決定したし、歩行者、自転車、公共交通優先の交通政策を推進することが決定した。市街地への車の乗り入れも公共交通機関優先政策の影響で制限されつつある。今こそ電気で走るこいつら(EMS)を日本の車の標準にする時だ」

 

◇◆◇◆◇

 

「また停電か。ここ最近多くない?」

「車の充電所もいつも行列。早くガソリン車できないかしら」

「せっかくの電気自動車なんだからこれにコンセント繋げて使えないの?」

「そうなりゃいいなぁ。まあ、いつものようにバッテリー外すか」

 

「ガソリン統制も解除、工場の稼働による都市の電力不足は深刻化か。これからは電気自動車も売れにくくなるな」

「ああ。でも自動車のうち電気自動車が占める割合は8割だからな。一気に入れ替わるかは……」

「そうあって欲しいな」

 

「電力不足で電気自動車の売れ行きが坂道を転げ落ちている今こそ失った市場を取り戻す好機だ。工場を拡大せよ」

 

「一家に一台政策。こいつら(EMS)が売れていた頃は我が世の春だったんだが、あの国民車構想がなぁ。こうもガソリン車への買い替えが続くと世間の寒風が身に堪えるぜ」

「ああ。4人乗りで価格30万円以下。車体重量750kg以下で最高速度時速70km以上、ガソリン車では燃費40km/L以上、電気自動車では1回の充電で航続距離250km以上か……。車体重量が厳しいよな。今のままでは選択部品が付けられないから苦戦する一方だ」

 

「この車の煙くちゃい」

「そうだなぁ。ガソリン車で航続距離も速度も電気自動車とは比べ物にならないって謳い文句だったから購入前提で借りてみたものの……」

「ええ。車は思っていたほど使いませんね。肝心の航続距離も速度も、旅行もバスと鉄道で目的地の傍までは行けますしお盆の帰省も鉄道で間に合いますもの。よくよく考えてみたら車を使うのは隣街のデパートへ買い物に行く時ぐらいですし」

「そろそろ買い替えようと折角借りたが、購入はまだ電気自動車で良いか。煙も出ないし」

 

「思ったより売れ行きが伸び悩むな。原因はわかるかね?」

「排気臭と燃費ですな。マフラーと触媒の劣化が早く、エンジンオイルや燃料添加剤の品質も輸入品と比べ低品質のものが多いのです。輸入品は高いので安価な国産品を使用していますが、その所為で燃費も予測に届いておりません。電気自動車では排気がありませんでしたから多くの国民がそれに慣らされてしまった影響が出ています」

「広告会社へのイメージ戦略依頼とあわせてマフラーの品質向上、触媒、オイル、燃料添加剤の品質向上にも傾注して欲しい、研究予算も来年は倍以上つける。ガソリン精製技術研究への寄付も行う。これはわが社の戦争だ」

 

◇◆◇◆◇

 

「これが従来の蓄電池に代わる完全密閉型鉛蓄電池かね」

「はい。これを積んだ車の性能は従来とは比較になりません。価格も車体重量も平地の近郊への外出であれば平均的なガソリン車に対抗できます」

「北日本や千島の寒さでも耐えうる電気自動車になるかね?」

「申し訳ありません。そこまでは……」

「まだまだ先は長いか」

「電気自動車の復活はあるのでしょうか?」

「わからん。だが中東や大陸が不穏だからな。ひょっとするとな」

 

「中東とベトナムの影響で原油の統制復活だと! 原油はガソリンも軽油も全て統制? 重油も発電と国防関係優先だと? ふざけるなぁ!」

 

「無念だがわが社の国内におけるガソリン車開発はここまでと上層部が判断した。わが社のガソリン車開発販売事業を分社化し海外に拠点を移す。国内の自動車開発は電気自動車へ舵を切る。わが社の危機である! 社員は各々奮励努力せよ」

 

「まさか、統制再び。とはな」

「好機ですね、我が世の春再びかぁ」

「浮かれている場合ではない。ガソリン車に見切りをつけた各社が親会社の大手総合商社と組んで次々参入してくるぞ。資金力に劣るわが社が太刀打ちできるか……」

「マジですか……」

 

◇◆◇◆◇

 

「これが実用レベルのニッケル水素電池か?」

「ええ。やっと商用化のめどが立ちました」

「1960年に商用化したニッケルカドミウム電池が鉛蓄電池に代わるかと思えば学士院や枢密院から環境汚染のリスクを指摘されて規制で車に積めなくなったからな」

「わが社のニッケル水素電池の開発が1970年開始でしたか」

「何とか1970年代の完成に滑り込めたな。後は充電方法が何とかなればな」

「そちらは吸収合併したアイツらに任せるしかないが」

 

「急速充電については形になりそうだが……」

「鉛蓄電池への充電速度がなぁ……」

「だが拙速は巧遅に勝る場合もある。この技術を出して時間を稼いでる間に改良を進めよう。後少しだ、頑張ろう」

 

「……出来た。できましたよ。これなら十分商用化になります」

「そうか! できたか!」

「ええ。この直流急速充電なら従来の交流急速充電よりも短時間で電池を充電することができます。制御技術もTRONのおかげでこの後も改良のめどが立っています」

「やったな……。長かった。開発を始めて苦節15年、ようやく満足のいく充電方法が完成したか」

「ええ。後はこの直流急速充電施設を他社に先駆けて広げていくだけです」

「ああ。そうなれば」

「とはいっても建てられるところに全て発電所を建てたようなものですから大丈夫ですかね、電力事情」

「だから二度のオイルショックから電力自給を掛け声にした全国各地でのマイクロ水力発電施設建設も始まっている」

「日本では河川を利用するための利権が異常に複雑なため、建設の手続きが煩雑でしたけど、省庁編制で大分ましになりましたからね」

「ああ。それに約100ℓ/Sの水流で有効落差が1.0m程度の用水路に設置しても1.8kWの定格出力の小水力発電機が開発されたのも大きい」

「あれで全国の用水路や小河川に設置が進みましたものね。おかげで懸念されていた電力事情の悪化も無くなりつつありますし」

「日本の未来は明るいですね」

 

「日本の未来だけではなくわが社の未来も明るいぞ」

「あっ! 社長!」

「開発部諸君、今度の冬季ボーナスは期待していいぞ!」

「やったぁぁ! ありがとうございます!!」

 

 




半島の戦争がないので鉛の価格が大幅には上がりません。工場の特需もないので電力不足が遅くなっています。
GHQのガソリン放出も遅れています。その為電気自動車の市場が大きくなっています。
流石に軍用車両や特殊車両・大型車・寒冷地仕様車は電気自動車ではありませんが。

なお戦後しばらくの間、経済は飢餓と赤色革命が怖いので適切に援助はされて一応上昇していますが、のんびりペースで急激な経済成長にはなっていません(内需優先です)

自動車産業は海外に拠点を移し開発から販売まで手がけており、現地法人なので大きな貿易摩擦が生じていません。

鉄道が全て標準軌なので輸送量と速度が狭軌とは違います。

荷物輸送は、国土基本法の影響で鉄道で輸送し目的地近辺の駅からトラック輸送が通常の輸送方法です。
急ぎの長距離(高雄~幌筵等)の輸送は航空機を使用する場合もあるはずですが。
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