ノアールは好きなキャラです。
ロキとの相性も良さそうだし。
「【レア・ラーヴァテイン】」
リヴェリアによって放たれる炎の柱。
都市最強魔導士の名に恥じない一撃がアルフィアを襲う。
「【魂の平静】」
炎の柱がアルフィアに当たる前に掻き消える。
魔法の無効化、アルフィアが持つチート魔法の一つ。
「儂も忘れるな!」
アルフィアに向かって斧を振り下ろすガレス。
アルフィアは動揺することもなく一言つぶやく。
「【福音】」
「グァっ!」
超短文詠唱にて放たれる魔弾がガレスを襲う。
耐久値の高さとスキルによる補正によって都市最硬を誇るガレスでもその魔法の威力は強すぎる。アスフィに急遽準備した魔道具によって威力を軽減しているおかげで耐えられている。
「行け、フィン」
「ああ」
ガレスの背後に潜んでいたフィンは飛び出して槍を振るう。
アルフィアはそれを難なく交わす。
リヴェリアによる遠距離攻撃、ガラスによる近距離戦闘、フィンによる奇襲。三人の連携を持ってしてもアルフィアを崩すことができない。
「攻めあぐねているな」
その4人の戦闘を眺めていた老兵が呟く。
フィンよりファミリアの指示を任されていた老兵、ノアールは『神獣の触手』の戦闘がフレイヤ・ファミリア主体で安定してきたのを見て一休みしていた。アイズが一瞬暴走仕掛けたがなんとか持ち直した。
「ダイン、バーラ。頼みがある」
「ノアール、どうした急に」
ノアールと同じく老兵のドワーフのダインとアマゾネスのバーラに話しかける。
「こっちはフレイヤに任せて大丈夫だろう。問題はあっちだ」
ノアール達はフィン達より冒険者としての経歴は長い。
そのため、ヘラの規格外さはよく知っている。
フィン達が破れれば残りの戦力はアルフィアに敗れるだろうことは想像できる。
「すまんな、2人とも。冒険をしたくなった」
「「⁉︎」」
ノアールには死ぬ気はない。
老兵の命をくれてやることに迷いはない。だが、なりたくなったのだ英雄に。
●●●●●
2ヶ月前
ラウル達若人の訓練を眺めているノアール。
着実に力をつけてきた若人を見ていると自身が老いたことをより一層感じさせられる。
「どうしたの、ノアール」
思い悩んでいたノアールにアリスが話しかけてくる。
「アリス、戻ってきてたのか?」
「うん、ロキに顔を出さないと皆んなに忘れられるって言われて」
都市中を走り回っているアリスは本拠にいることは少ない。ましてや、新人達の訓練に顔を出すことなど皆無に等しい。
「天下の【不動】を忘れる者がうちのファミリアに居るとは思えんが」
「一応、同じファミリアだし。たまには顔を出さないと」
「そうか、なら少しあいつらに手ほどきしてやってくれ」
「うん」
若人達の訓練に参加するアリス。
最初は都市最強の1人であるアリスに挑むことへ腰が引けてた若人達だったが、容赦ないアリスの攻撃に立ち向かわなければ死ぬと思ったらしく勇敢にも立ち向かっている。
手加減をしているがノアールの目から見てもやりすぎなアリスの稽古は叩きのめして回復をして無理矢理起こしまた叩きのめすの繰り返し。
一方的な蹂躙にも立ち向かう者達を見て、また1人が立ち向かう。最後には全員でアリスへ挑みかかっている。
「すまんな、アリス」
「いや、構わない」
訓練場では地面に伏せているラウル達がいた。
それを眺めながらアリスとノアールは会話を進める。
「ノアール、何か悩んでる?」
「・・・限界を感じている」
少し迷ってノアールは自身の悩みを口にする。
「いつからか、意欲より先に、諦念が身体を支配するようになった。腕が重く、視野が狭くなった。心が思い描く自分に枯れた木のような手足がついていかない。日に日に衰えていく肉体を感じる。お前達に追いつくにはもうこの体は老いすぎてる」
かつて、冒険者のいろはを教えたアリス、4人達は今では都市を代表する冒険者。先達者として負けるつもりはない。だが、遅すぎた。この体では先には進めない。
「・・・ノアールは確かに老いた。でも、弱くはなってない」
「ッ⁉︎何故そう言える」
アリスの言葉がノアールに刺さる。
「力衰えて、動きは遅くなった。でも、その技は日に日に冴えわたり、技量は高まっている。なら、ノアールはまだ剣を握れる、立ち上がれる。その牙は欠けてない、その刃は刃こぼれしてない」
「だが、もう・・・」
冒険をするには限界が来ている。
「戦うんだ。私たち、冒険者は地位、名声、それとも富か、何かを求めて冒険者になった。だから戦う、例え手足がなくなろうとその誇りがあり続ける限り戦う。限界なんて戦い抜いたあとに決めればいい。ノアールは何を願って冒険者になった?」
ノアールは自問する。
遥か昔、オラリオの地に踏み入れた時の情景。
願望を胸に栄光ある未来を願った。それはとても幼稚で、かけがいのないものだった。
「英雄になりたかった。物語に出てくるような、華々しい英雄に、誰もが胸を熱くするような英雄に、自分は、俺は英雄になりたかった」
「・・・なら成ればいい、最後まで戦い抜いて英雄に。歴史に名が残らないかもしれない、それでも私は私たちがノアール達を覚えている。私たちの中ではノアールは英雄だ」
「ああ、ならもう少しは戦える」
●●●●●
「全く、しつこいな貴様達は」
いくら突き放そうと倒れないフィン達に嫌気がさすアルフィア。今のままでは三人に明確なダメージを与えられない。
「仕方ない、見せてやろう真の雑音を」
アルフィアは身に纏う【静寂の園】を解く。
リヴェリアはアルフィアから感じられていた魔力が消えたことに気づく。
フィン達は知っている、アルフィアの魔法が中にも作用していることを。
「リヴェリア!」
フィンは叫ぶ。
迎撃は不可、回避を遅すぎた。ならば防ぐしかない。
リヴェリア咄嗟に防護魔法を自身と2人に施す。
「【福音】」
「【サタナス・ヴェーリオン】」
場に轟音が鳴り響く。
ガレスが前に立ち防ぐが先ほどまでの威力とは比較にならないほどの高威力。
リヴェリアの防護を突き破り三人を吹き飛ばす。
地に伏せる三人。
その3人に歩み寄る三つの足音。
「すまんな、フィン。貴様らの冒険邪魔させてもらう」
老兵、ノアール、ダイン、バーラの3人はフィン達の前に立ちアルフィアと対峙する。
「ノアール、ダイン、バーラ。何をしてる」
立ちあがろうとするが平衡感覚が崩れてるフィンは上手く立ち上がれない。
「何、時間稼ぎよ。俺たちでは【静寂】は倒せん。だが、お前達の道は作れる」
3人は前へ進む。
「付き合ってもらうぞ【静寂】、この老兵達の最後の戦いに!」
アルフィアは答えない。
返す言葉はない。
かつて、アリスと一緒にいた時によく揶揄ってきた老兵達。なんど吹き飛ばしても次の日には愉快に揶揄ってくる。アルフィアはそんなノアール達が苦手だった。だが、それと同時に心地よかったのも覚えてる。
振るわれる剣と斧、拳。そのどれもが自身が知っているものより衰えて老いていた。
知り合いだからと言って手を抜くつもりはない。
魔法で3人を吹き飛ばす。しかし、それでも立ち向かってくる。残り少ない命を燃やして時間を稼ぐ。
「「いまだ!」」
地に伏せられたダイン、バーラはアルフィアの足を掴む。
「⁉︎」
油断はしてない。それでも、老兵の気迫と磨き抜かれた技術がアルフィアの一種のスキをついた。
「やれ、リヴェリア!」
ノアールは身動きが取れなくなったアルフィアの背後に周り腕で彼女の口を塞ぐ。
魔導士の唯一の弱点は詠唱。それを呟かなければ魔法は発動しない。
今のアルフィアは静寂の園を使っていない。
ならば、魔法がアルフィアを貫く。
「【レア・ラーヴァテイン】‼︎」
悲痛な顔をしたリヴェリアが魔法を3人諸共に放つ。
炎の柱が4人を呑み込む。
老兵は黒ずみになりながらもアルフィアを離さない。
しかし、アルフィアは所々傷を負いながらも立っていた。
「ガレス、僕を投げろ!」
「ッ⁉︎」
フィンの意図に気づいたガレスは彼を自身の斧に乗せて投げ飛ばす。
高速でアルフィアに飛来するフィンは槍を前へ突き出す。
迫り来るフィンの今にも幼い泣き出しそうな顔を眺めたノアールは今までのことを走馬灯のように思い出す。
生意気な後輩達がオラリオへ来た。冒険者のいろはを教えた。自身が夢見た光景を作り出してきた4人。
「泣くな、フィン。貴様と、貴様らと出会えて良かった」
「ッ⁉︎貫けぇぇぇぇぇぇぇ!」
アルフィアの腹部をノアール諸共貫くフィン。
その衝撃でアルフィアとノアールは後方へと突き飛ばされる。
砂煙が晴れると腹部に血を流し、口からも吐血しても尚立ち続けるアルフィア。
「あれでも、倒れんのか」
その光景にリヴェリアは驚愕する。
フィンの一撃は必殺に近い威力を出していた。
長時間に及ぶ戦闘はアルフィアの病を誘発させ苦しめていた。
アルフィアとて限界など超えている。しかし、立ち上がる。
ノアール達の意思はフィン達だけではなくアルフィアにも届いていた。
最後の壁としてフィン達の壁として戦い抜かなければいけない。
それと、意地だ。あの女以外には負けるつもりは無いと心の奥底に眠る思いがアルフィアを立たせてた。
「・・・」
フィン達は全力を使い尽くした。
もはや戦う余力はない。そんな3人の前に英雄は立っていた。
「待たせた」
「アリス・・・」
アルフィアは目を見開き。
フィン達は微笑みを浮かべる。
●●●●●
「・・・」
ヴァレッタは息を潜めていた。
アリスが天を斬ったあと、味方達を盾にしながら生きながらえていた。
盤石をたった1人によって壊された。このままでは敗北は確定。引くにも空に飛んでいるアリスが創り出した鳥達がオラリオを監視してる。今この場を逃げても地上へ戻ったフィンたちが自分たちを掃討しに乗り込んでくる。
故に信者達の格好をして姿を偽り氷壁の中に侵入した。そのあとは、冒険者の格好をして身バレしないよう慎重に行動していた。
今から犯すは神殺しという大罪。
神ロキを屠りアリスを無力化する。
あと少しで神ロキに手が届くところまで来ていた。
そんなヴァレッタを1人の少女が見ていた。
(あと、少し)
「させません!」
少女がヴァレッタへつかみ掛かる。
その騒ぎに周りが気づく、ロキは後退りラウル達はロキを守ろうと近づく。一羽の鳥がヴァレッタへ迫る。
あと数秒でアリスが来ると感じたヴァレッタは小人族の少女を引き離そうとする。
しかし、レベル5の力を持ってしても少女を引き離せない。拳を振り下ろし、足を上げても、どれだけ痛めつけられようと少女は手を離さない。
「テメェ、放しやがれ!」
「痛ッ、放しません。今ここで放したら、リリは変わらなくなる」
少女、リリルカ・アーデでさえこの行動に驚いている。
冒険者に痛めつけられてきた日々、物乞いのように過ごした幼少期、冒険者の才能はなく搾取されてきたサポーターとしての日常。
死んでいった冒険者を見てザマァー見ろと思ったこともあった。
この前の襲撃では酒に覚れて恐怖を和らげていたが、今でも目の前の闇派閥達は怖い。それでも死ぬかもしれないと思っていても身体が動いていた。
【勇者】の勇気に当てられた、【不動】の背中に魅せられた。自分でも出来るのだと思わされた。
今ここで動かなければ一生後悔することだけはわかる。
今までの激情を乗せて力一杯ヴァレッタを捕まえる。
ヴァレッタはリリルカを見て固まる。
ヴァレッタの良く知る瞳と目が合う。真紅に染めた紅瞳がヴァレッタを睨みつけている。
2人の間に羽が落ちる。
「ヴァレッタ!」
鳥と位置を入れ替えたアリスが上空から大剣を振り下ろす。
ヴァレッタはリリルカを力一杯蹴り飛ばし攻撃を躱す。
着地したアリスはすぐさまにヴァレッタへ迫り来る大剣を振り上げる。
回避は不可能と感じたヴァレッタは左腕を盾にする。
「ッ、」
ヴァレッタの左腕が宙を舞う。
「覚えてやがれ、アリス、糞小人族!」
痛みに耐えながら逃走を図る。
アリスはすぐに追いかけようとするがその場に膝をつく。
アリスの鼻からは血が流れ落ち、身体中から脂汗を流していた。
「アリスたん、すぐにスキルを解きい。もう、器にヒビが入ってる」
「ダメだ。まだ、アルフィアを止めてない。それより彼女は無事か」
「ラウル達が見てる。あの子のおかげでうちは命拾いしたわ」
蹴り飛ばされたリリルカに駆け寄ったラウルとアナキティは気絶しているだけのリリルカを見て安堵する。
会話をする2人に近づく1人の女神。
「アリス、せっかく綺麗な顔が台無しよ」
膝をつきアリスの顔を拭くフレイヤ。
我が子にするかのように慈愛を持って接するフレイヤにアリスは戸惑い、ロキは憤怒する。
そんな2人を無視してフレイヤは話を進める。
「行きなさいアリス。闇派閥達は主戦力を失くして敗走してるから後はオッタルと彼がなんとかするわ」
フレイヤの後ろに控える2人の大男。
片方はフレイヤの戦士たるオッタル。
もう1人は敵であるザルドが控えていた。
●●●●●
「いつまで寝てるの?ザルド」
オッタルに負けたザルドは空を見上げながら大地に横になっていた。
そんなザルドに話しかけるフレイヤ。
「早くトドメを指せオッタル」
ザルドは役目を果たした。
見事に壁を乗り越えて見せた勝者、オッタルに言う。
しかし、オッタルは首を横に振りそれを拒否する。
「やっと、一勝だ。まだ貴様に勝ち越してない」
「馬鹿か?俺はもう戦えない」
ザルドの体を蝕む毒が先の戦闘で悪化している。もはや剣を握る力さえ残ってない。
「全く、男の子って意地ばかり張るのね。オッタル、これを飲ませなさい」
フレイヤはあるものをオッタルに渡す。
オッタルはそれを受け取りザルドに飲ませる。
そして、それを見たザルドは表情が固まる。
(許せ、ザルド)
女神には逆らえない。
いくら敗者に行う行為とはいえ惨すぎる。
そのこの世の物とは思えない色をした液体をザルドの口へ運ぶ。中身を知っているオッタルでも見た目があれ過ぎて引いている。
メシマズ女神のそれはありとあらゆるモンスターを食してきたザルドでさえ絶句するほど不味かった。
しかし、味とは裏腹にザルドの体を癒していた。
「ユニコーンの角や人魚の生き血などをエリクサーと一緒に煮込んだものよ。常人なら意味をなさないでしょうけど貴方ならスキルの効果で毒を和らげるでしょう?」
フレイヤと一緒に調合をした薬神2人は見た目に引いたが効果は保証していた。
「・・・何故だ?」
力を取り戻して、立ち上がるザルドは戸惑いながらも尋ねる。
「だって、貴方。昔はもっと輝いてたから前みたいに戻って欲しかったのよ」
「・・・」
「毒を克服して貴方が英雄になればいいのに?いつから諦めたの?」
「・・・俺では英雄にはなれない。あいつらの輝きを、あいつの強さを知った俺は、自分には無いものを知った」
かつて、ザルドはヘラと共にアリスに挑んだ。
結果は共倒れ。
アリスはスキルを制御できずに暴走。その膨大な力を前にザルドは無力だった。自身の派閥の団長と女帝のみが戦っていたが最後には倒されていた。アリスも2人を倒すと同時に倒れたために引き分けとなった。
あの時から自分では英雄足り得ないと知った。
昔は自分も英雄になりたかった。だが、英雄になるべき存在と出会い挫折した。
「ザルド、お前は俺を泥臭いと言った。ならお前は泥に塗れる覚悟はないのか?」
自身に敗北し続けてきたものなら言葉。
挫折を繰り返してなお諦めなかった男。
彼に比べればなんたる小さいのだろうか、俺はいつ自分が小綺麗でいることを選んだ。
「、粋がるなよクソガキ。なるほど、まだ俺にもやれるらしい」
フレイヤは光を取り戻したザルドの魂を見て微笑む。
●●●●●
「行け、アリス。アルフィアは英雄を、お前を待っているぞ」
ザルドの一言を聞いたアリスはすぐさまにダンジョンへと駆け出す。
この選択は間違えかもしれない。
完全に悪の芽を滅ぼすことはできず、いずれ災厄が訪れるかもしれない。
それでも、アリスは彼女を救うために駆け出す。