ガールズラブ付け足したほうがいいですかね?
「なんできた、アリス」
「君を救いに」
アルフィアとアリスは燃え盛るダンジョンの中で対峙していた。
方や、スキルの影響で疲労が見れており器たる肉体にはヒビが走っている。
方や、先の戦闘で重傷を負い、病により吐血は止まらない。
両者ともに疲労していた。
「ふざけるな!貴様は悪役たる私を救うだと?英雄になるのでは無いのか?私を救えば英雄などなれないことはわからないのか!」
普段の落ち着きを忘れてアルフィアは叫ぶ。
全てはアリスを英雄にするためにしてきたこと。誰よりもアリスの強さを知っている。だからこそ彼女に後を託せる。
「私は私の意思で英雄になる。誰かに求められたからじゃない。私が救いたいから英雄になる」
他人に意思を委ねるつもりなどアリスには無い。
アリスは救いたいから救う。【偽善】の押し売りを行う。
例え、罵られようがアルフィアを救う。
「何故だ!何故わからん」
「そばにいて欲しいから」
「⁉︎」
アルフィアに向かって手を伸ばす。
「私は英雄になる。でもそれはきっと1人じゃなれない。フィンやリヴェリア、ガレス、ロキ、皆んなが居て私を支えてくれる。アルフィアにも私を支えて欲しい、助けて欲しい、そばにいて欲しい。どうか、私が英雄になるのを見届けて欲しい」
アリスはこれからも茨の道を進む。
前へ進むことを選び続ける。挫けもする、立ち止まることもあるそれでも前へ進むのは美しい世界を作るため。
そして、その先を誰かに見せたいから前へ進む。
「だから、私はアルフィアを救う」
「ふざけるな。私は望んでなどいない、」
アルフィアは本心を隠しながら言い返す。
その手を握りたいのを抑えながらアリスを突き放す。
かつてはアリスの手を握ることに憧れていた。メーテリアに手を引かれるアリスの後を追いかけていた自分は空いているもう片方の手を握ろうとしていつも躊躇っていた。
憧れの手が今自身に向けて伸ばされてる。
だが、これを掴めばアリスに汚点を残すことになる。もう、自分は救われては行けないのだから。
「なら、戦おう。意地がぶつかり合うなら、私たちは戦うしか無い。だって私達は冒険者なんだから」
「・・・そうだな。最後ぐらい貴様に勝つのも一向だ」
アリスは大剣をアルフィアに向ける。
アルフィアは今まで使ってこなかった刀を鞘から抜く。
静寂が場を支配する。
一瞬、炎が揺れると同時に2人は激突する。
大剣と刀がぶつかり合う。剣をぶつけ合いながらお互いが魔法を放つ。お互いが戦士としても魔導士としても超一流。
『神獣の触手』を倒した冒険者達が見入っていた。
【顔無し】ヴィトーは2人の放つ輝きに目を奪われていた。
そして、邪神エレボスは盛大な姉妹喧嘩に笑みを浮かべていた。
エレボスの目的は達成された、目にかけてたアストレアの眷属達は見事に今回の戦いで成長した。地上ではオッタルが高みへと昇った。フィン達が殻を破りアルフィアに一矢むくいた。そして、アリスが英雄へと歩み出した。
ならば、見届けようこの戦いを。
「【祝福の禍根、生誕の呪い、半身喰らいし我が身の原罪】 」
紡ぐは最強の一撃。
かつて海の覇者を倒した魔法。
「魔力解放」
アリスは足を止めて迎え撃つ。
「【禊(みそぎ)はなく。浄化はなく。救いはなく。鳴り響く天の音色こそ私の罪】 」
アリスの大剣から極光を放つ。
天を斬った時以上の力を剣へと流し込む。
「【神々の喇叭(らっぱ)、精霊の竪琴(たてごと)、光の旋律、すなわち罪禍の烙印】 」
詠唱を唱えるアルフィアと力を溜めるアリス。
この力のぶつかり合いを制した方が勝者となる。アリスにとっては魔法を放つ前に止めればいい。しかし、アルフィアが納得する勝利を得るには真正面から斬り伏せる。
「【箱庭に愛されし我が運命(いのち)よ砕け散れ。私は貴様(おまえ)を憎んでいる!】
【代償はここに。罪の証をもって万物(すべて)を滅す】
【哭け、聖鐘楼】 」
完成された魔法。
鐘の音がダンジョンに鳴り響く。
アリスは極光を放つ大剣を構える。
「【ジェノス・アンジェラス】」
「斬り裂け!」
轟音がアリスへと襲う。
アリスは斬撃を放ちそれを迎え撃つ。
両者とも階層を破壊する威力を誇っている。
アリスの膝が曲がる。このままでは押し負けてしまうと思った時、また彼女に背中を押された。
「姉さんをお願い」
聞きなれた、もう聞けないはずの少女の声が聞こえた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
大剣を握る力を強める極光が光を増す。
アルフィアの魔法を押し返し、呑み込む。
「私の勝ち」
「ああ、私の負けだ」
決着はついた。
両者に余力はなく、もう戦う力はない。
アリスがアルフィアに向けて手を伸ばす。
アルフィアはそれを掴むことに躊躇う。
するとアルフィアの足元が崩れる。
崩れ落ちる足元を見てアルフィアは微笑む。
これでいいのだと、その手を掴む権利はとうの昔になくなっているのだから。ましてや、自分だけがおめおめと生き残るのに抵抗がある。
「アルフィア!」
大穴に呑み込まれるアルフィアを見てアリスは駆ける。
そのままアルフィアを追いかけて炎の中へ飛び込む。
「手を伸ばせアルフィア!」
「いいんだ、アリス。この身は炎に返すと決めてる。メーテリアの所に行かせてくれ」
後少しで手が届くのに足りない。
その距離を縮めるには少しでもアルフィアが手を伸ばしてくれれば良い。
「ふざけるな!誰かに救って欲しいから英雄を、私を求め続けたんじゃないのか!」
「ッ⁉︎」
幼き日、アルフィア達は両親に捨てられた。
苦しむ妹を背に担いで妹を助けるために街中を歩いていた。
苦しい自分の体調を無視して歩き続ける。
とある女神と出会った。恩恵を授かれば助かるかもしれないと言われた。しかし、結果は無意味だった。悪化したのかもしれない。女神は必死に私達を助ける術を探してくれた。
それでも、病が良くなることはなかった。
部屋から出ることのできない妹と違い、自分には才能があった。延命のために強くなった、治療法を身につけるためにレベルを上げた。だが、思い通りにはならなかった。
そんな時、ある女アリスと出会った。
女神が言うには唯一の対抗策らしい。
世界が変わった、アリスの治療を受ければ病は治らなくても良くはなる。彼女から治療を受け続けれれば無茶をしない限り延命はできる。
アルフィアにとってアリスは希望だった、英雄だった。
幼き頃読んだ英雄譚。英雄に憧れた、誰かを救う英雄に。そして、自分達をこの苦しみから救ってくれる英雄に憧れた。
「今、目の前にお前を救う奴がいる!だから手を伸ばせ!」
アルフィアは戸惑う。
手を伸ばせばアリスは全力でアルフィアを救う。それを許容してくれるオラリオではないかもしれない。もしかしたら、自分達の汚名を彼女にも被せるかもしれない。
それでも無意識に微かに手を伸ばしてしまう。
その伸びかかった手をアリスは掴み取りアルフィアを引っ張る。
「私を助ければ破滅の道を歩むかもしれないんだぞ」
「うるさい、もう私から逃げるのは許さない。また、英雄にならばいい。何度だって奇跡を起こして見せる」
「ああ、傲慢だな」
「知らなかったのか、私は昔から傲慢なんだ」
落ちていく2人に光が包み込む。
「「行こう」」
●●●●●
オラリオではオッタルとザルドを中心にが闇派閥と怪物達を倒していた。レベル1、2の冒険者はアスフィを筆頭に無力化された闇派閥を捉えていた。
戦闘はあり、怪我を負ったものもいるが死人は出てない。
街の上空に一つの光が出現する。
光が収まるとアリスとアルフィアが出現する。
地上に戻ってきた2人が見たのは夕暮れ。
朱色に染まる太陽がアリスの結界と相まって幻想的な景色を作っていた。
「綺麗だ」
呟くアルフィア。
「なに言ってんの?これから美しい世界にするんだよ」
「?」
アリスの言葉がわからず首を傾げるアルフィア。
そんなアルフィアにお構いなしに詠唱を紡ぐ。
「【未踏の情景よ、禁忌の扉よ。今日この日、我が身は天の法典に背く。】」
美しい歌声がオラリオに響き渡る。
それを聞いた人々は空を仰ぎ見る。
「【愚かなる願い、果たされぬ約束、嘆く渇望。果たされない再会を、どうか届けて欲しい】」
行うのは死者を蘇らすわけでも、神になり変わるわけでもない。
ただ、この世界を美しくするだけ。
「【代償は払わない、ただ声を届けて欲しい。砕け散れ】」
アリスの結界が砕け散る。
世界にヒビが入り黄昏の結界は砕け散り黄金の硝子が降り注ぐ。
「【ヘル・エパネノスィ】」
アリスが持ち得ない魔法。
【妖精歌唱】と維持されていた結界を使い新たな魔法へと改変した禁術。
光を浴びた人達は傷が癒える。重症だったものや片目や片手、片足を失っていたもの達も傷が治り欠損していた部位が蘇っている。
だが、それだけじゃない。
気を失っていた闇派閥の幼い少女の前に光が集まる。
「お父さん、お母さん?」
声が彼女に聞こえた。
少女は涙を流す。
恋人を失ったもの、子供を失ったもの、親を失ったもの、今回の件で最愛の人を失った人達に声が届いた。
少しの再会、気休めにもならないそれは別れを告げることのできなかった彼等にとってはかけ甲斐のない時間。
「メーテリア?」
アルフィア達の前にも光が現れた。
『あの子に会わないでこっちに来たら怒るわよ。だから、生きてね姉さん』
妹からの言葉。
涙を流すアルフィア。もう2度と聴けないと思っていた彼女の声はとても優しい声音をしていた。
アルフィアには託されたものがある。
「・・・わかった」
メーテリアはアリスに微笑む。言葉は交わさない、もう言うことなどないのだから。
後はお願い、と頑固な姉と幼き我が子をアリスへと託す。
光が消える。アルフィアは手を伸ばすが光は空はと登る。
今日この日、人類は歩みを進めた。
これから続く道は酷く険しい道なのかもしれない。
1人の妖精は英雄としての役目を担った。だが、それは孤独な戦いではない。彼女に後に続く英雄達がいる、彼女の背中を押してくれる者たちがいる、彼女と共に歩み続けるひとがいる。
世界はいまだに破滅へと進んでいる。だがこの日を持って英雄達は救世の歩みを進めた。
最後の英雄なんていらない、英雄達は確かにここに存在する。誰かの英雄は永遠に存在し続けるのだから。
次回がアストレアレコード最終回です。