ベルくんが原作以上にバグってます。
「ミノタウロス3体、それも一体は強化種。よく生きてたなベル」
エイナの怒りもある程度収まり、事の顛末を聞いたアリスは呟く。
「2体は倒せたんですけど、強化種だけ無理で、途中でアイズさんがきてくれたおかげで助かりました」
強化種と死闘を繰り広げていたベルとミノタウロス。ミノタウロスを逃してしまったアイズがミノタウロスに襲われていると思いミノタウロスを切り刻んだ。周りに気づいていなかったベルはその時ミノタウロスの血を全身に浴びてしまった。
そして、無断でオラリオに来ていたことを知り合いであるアイズに知られてしまい咄嗟に逃げ出してきたのだ。
「ミノタウロスの件は、話を聞く限り私たちロキ・ファミリアの落ち度だ。すまなかったベル」
「いえ、結局アイズさんに助けられたんで問題ありません」
「そうか、何かできることがあれば言ってくれ。ファミリアは違えどベルは私にとって家族みたいなものだからな」
アリスはベルの頭を撫でる。
「さて、エイナ。私はモンスターフィリア後に尋ねた方がいいだろうか?書類精査をするにも今は祭り事で忙しいだろう」
「えっと、はい。そう言ってもらえると助かります」
今は数日後に行われるモンスターフィリア準備にギルドも追われてる。もし、モンスターフィリア後までに書類精査をしていいなら残業をしなくても良い。
「なら、好きな時に呼び出してくれ。半年後の【晩歌祭】まではいるつもりだ」
「わかりました。なるべく早く処理しますね」
エイナの返事を聞きアリスは席を立つ。
「ベル、換金してこい。今から神ヘスティアを紹介して欲しい」
「あっ、わかりました」
ベルも席を立ち今日の成果を換金しに向かう。
●●●●●
ベルの案内で例の教会へと足を踏み入れた。
元々はヘラの持ち物でその後はヘファイトスが管理している。現在は孤児院として使われている、教会の裏には孤児達用の住宅を建てられており、孤児院には孤児達の他に彼らの母親代わりであるマリアと神父として改心してエレボス・ファミリアに改宗したバスラムが滞在してる。
ベル達は教会の方を居候として住まわせてもらっていた。
「君がロキのところの【救世】アリス・グレイくんかい。ベルくんから知り合いって聞いてたけど本当だったんだね」
「神様、信じてなかったんですか!」
ヘスティアの呟きに堪らずツッコむベル。
「それじゃ、ベルくん。先にステータスの更新を済ませよう。僕はアリスくんと少し話したいからね」
部屋からアリスは出て、ヘスティアはベルのステータス更新を済ませる。その後、アリスを部屋に招き入れベルは孤児院の手伝いに外へ出る。
「さて、アリスくん」
「・・・」
神妙な顔つきでヘスティアはアリスに語りかける。アリスもヘスティアの雰囲気を読んで黙って聞く。
「何なんだい!このふざけたステータスは!半月でステータスオールS!敏捷に至ってはSSって。極め付けはこのスキル!」
ヘスティアはベルに渡したステータス用紙とは違い本来のステータスが記載されている用紙を見せる。
その内容は冒険者歴半年としては異例のものだ。
しかし、それ以上にスキルがすごい。
【憧憬一途】
早熟する
【英雄決意】
早熟する
能動的行動に対するチャージ実行権
【静寂愛情】
早熟する
一定人物が保持する魔法を使用できる
【暴喰守護】
早熟する
一定人物が保持するスキルを使用できる
【救世憧憬】
早熟する
一定人物と共闘時にステータスのランクを上げる
アリスはスキルを眺めて目を点にする。
効果の重複。ベルが半月でステータスが異常に伸びている理由。
「なんか、すまない」
何となく謝ってしまった。
ヘスティアはお腹を抑えながら項垂れていた。初めての眷属がまさかのこんな爆弾案件だったのだ。ベルのことは好いているが暇を持ち合わせている神々がこれを見れば飛びついてくるに決まっている。
「いや、別にアリスくんが悪いわけじゃないんだ」
「ステータスの件は言いふらさないし、何かあれば力になる」
「お願いするよ」
これからもヘスティアの気苦労は続くことになる。
●●●●●
ヘスティアとベルと別れた頃には日が沈みかけており夕暮れ時になっていた。
アリスが街中を歩いていると一つの集団が目に止まる。
アリスはその集団に近づく。
「久しぶりフィン」
「!やぁ、アリス帰ってきてたのかい?」
「今日オラリオに着いた」
軽く挨拶を交わすアリスとフィン。
リヴェリア達とも挨拶する。そして、アイズにも挨拶しようとしたが。
「アイズ、どうしたそんなに落ち込んで?」
「アリス?ベルに逃げられた」
どうやらミノタウロスの件はアイズに相当ショックを与えたらしい。
「アイズさん、ベルも別にアイズさんが怖くて逃げ出したわけじゃないと思いますよ」
「そうだよアイズ。ベルも驚いて逃げただけだって」
落ち込んでるアイズを慰めるレフィーヤとティオナ。
ティオネも2人ほどではないが慰めている。
昔からベルとは仲が良かった分今回の件はショッキングだった。
そうしていると本拠前に着いた。
「今帰還した。門を開けてくれ」
「了解しました!」
フィンの言葉に了承した門番が門を開ける。
「レフィーヤ、こっちにこい」
「えっ?わかりました」
アリスはレフィーヤと場所を入れ替わる。
「おーかーえーりー!」
門が開くと同時に主神であるロキが飛びついてくる。アイズ、ティオネ、ティオナが避ける。アリスも避けようと考えるが後ろには誰もいないため避けると地面にダイブするのは可哀想だと思い受け止める。
「このうちが育ててドチビ超えを果たした胸は、アリスたん!帰ってきてたんやな、ぐぉっ⁉︎」
抱きつくと同時に胸を弄りだしたロキ。アリスはそんなロキの腹に一発拳を入れる。
お腹を抑えて悶えますロキにフィンが一言つげる。
「無事戻ったよ。遠征は失敗したけど死者は無しだ」
「お、おかえりやフィン」
何とも閉まらない帰還だがロキ・ファミリアらしい出迎えでもある。
●●●●●
「で、どうやった黒竜は」
「やっぱりゼウスとヘラが負けただけはある。アルフィア達4人でなんとか撃退できたのが奇跡に近い」
あの後、食事を済ませたアリスはロキの部屋に来ていた。
ステータスを更新するため背中を裸させて後ろを向く。
「相当無理したやろ、見てみい」
ロキはアリスの髪を一房握り見せてくる。
髪は本来の白金より白色が強くなっており毛先は銀色になっている。
「7年前は片目が変色したやろ。【聖女祝福】はフレイヤが過去に行った祝福の残火を再燃焼してるもんや。いわば神の力をその身に宿してる状態に近い。器にヒビが入ると同時に器もフレイヤの神の力に適用しようとしとるんや、使いすぎるといずれフレイヤと瓜二つになるで」
アリスは本来の色とは違う紫色の片目を抑える。
【聖女祝福】は強力な分デメリットも多い。肉体への負荷などのデメリットもあるが肉体の変動もある。
「それよりもや、今回はレベルアップしてるんやないか?」
「してて欲しいな。流石にアルフィア達がして自分だけしてなかったとなると単独で黒竜に挑まない限りは私はレベル8にならないだろうし」
【ナイト・オブ・ナイト】がランクアップを果たし、他2人もランクアップを果たしているだろう。そのことを考慮してアリスもあわよくばランクアップしていて欲しい。
「おっ、ランクアップしとったで。これでオラリオでは唯一のレベル8や。おめでとさん。アビリティも発現してるな、一個しかないからランクアップしとくで」
「ん、お願い」
ロキはアリスのランクアップを済ませる。
「これでオラリオでは唯一のレベル8や。フレイヤを抜いてウチがオラリオ1や」
ロキはステータス用紙をアリスに渡す。
アリスはステータス用紙を眺めながら発展したアビリティを見る。
「【英傑】?」
「そやで、全く見たことも聞いたこともないアビリティやな。まあ、いずれはわかるやろ」
意味深なアビリティではあるが悪い気はしないのでよしとする。
「そういえば、ベルがオラリオに来てる」
「?ベルなら15になるまで冒険者にならんやろ?」
「アルフィアに無断で来て冒険者になってた」
「なにー!ウチのところに来てないやん。ベルは必ずゲットする気だったのに!」
喚き出すロキ。
ファミリア内でセクハラを行うロキはぞんざいに扱われることが多い。そんな中に純粋無垢なベルはロキにとって癒しだった。
「どこや、ウチのベルを取ったのは」
「ヘスティア・・・」
「・・・よりによってドチビのところかい!」
アリスにとって告げられた神の名、それはロキの怨敵(一方的な)ヘスティアの名だった。
「ガネーシャのところで神の宴があるからそこで問い詰めてやる」
ロキが恨めしく言っているところアリスは無視して身支度を済ませて部屋を出る。
●●●●●
「さて、こうして4人が揃うのも久しぶりだね」
本拠のバルコニーにてフィン、リヴェリア、ガレス、アリスの4人が円卓を囲み酒を飲んでいた。
「そうだな、何処かの誰かは放浪癖が強くて本拠にいないしな」
リヴェリアは片目を閉じてアリスを見る。
アリスは気にした様子はなく酒を楽しむ。
「仕方ないだろう。儂らがダンジョン攻略を専念して、アリスには都市外のモンスターを間引いてもらわんといかん」
「そうだね、都市外でのモンスター数は年々増えてる。都市外の冒険者の質は一部を除けば高くはない。特に竜の谷から溢れてくるモンスターの対処はレベル3相当じゃないと対処できない時もある」
リヴェリアの言葉にアリスを庇うガレスとフィン。
リヴェリア自身も別にアリスを責めているわけではないが1年も留守にされると文句の一つも言いたくなる。
「フィン達はダンジョンではどうなの?」
アリスは酒を一口飲みフィンに尋ねる。
「んー、今回の遠征は失敗だったよ。未知のモンスター出現に、それの対処で武器も潰れたしね」
アリスの問いに苦笑いを浮かべながら答えるフィン。
リヴェリアとガレスも今回の遠征失敗に良い思いはないのか苦渋の表情を浮かべる。
「59階層走破はきついか」
「いや、いけないことはないと思う。問題はその先に60階層を攻略するためにサポーターを連れて行く必要がある」
フィン達は一度アリスと共に60階層に辿り着いている。しかし、その時はアリスとの4人のみ。その先の階層はアリス1人では攻略が難しい。フィン達でも来ることはできるが物資を運んでは59階層に辿り着けてない。
「私たち自身、レベルが上がってない。ステータス自体は限界値まで上がっている」
「仕方ない、レベル7になる適正敵はダンジョンにいない。バロールの単独討伐なら可能性があるけどあれは状況が悪い」
単眼の王、バロール。49階層にいる階層主は大荒野の最奥に陣取っている。そこから超長距離からの狙撃や散弾、バロールを守るように配置されたモンスターの大群。それらを相手取るにはロキ・ファミリア総出で対処する必要がある。
「それとして、闇派閥の動向が気になる。あれから7年だ、そろそろ態勢を整えてると思う」
「そうだな。神エレボス達からもたされた情報でクノッソスの迷宮の存在は知れたが何処の入り口も潰されて今は入り口が見つからない」
フィンの呟きにリヴェリアが賛同する。
「最近、都市外で商人達の動きが怪しい。あとはモンスターの売買が行われてた」
7年前の大抗争後、闇派閥の敗北によってオラリオから手を引いた商人達はここ最近また都市周辺へと戻って来ていた。
「うむ、やはりクノッソスには儂らが知らない出入り口があるのじゃろう。オラリオ外か、オラリオ内の何処か、それとも両方かの」
クノッソス入り口があったダイダロスにはガネーシャとエレボス両ファミリアが監視している。
そこ以外として考えられるのはギルドが手を出せない範囲か都市外に限られる。
「まあ、予想に過ぎない話をしてもどうしようもない。それよりアリスはこれからどうするんだい?僕たちは今回の事後処理で忙しいが」
「暫くはレベルアップの慣らしをするからダンジョンに潜る」
「ほどほどにね。君の行動はアイズとベート辺りが真似するから無理だけはしないでね」
暫く前にアリスが経験値稼ぎとして深層の闘技場に入り浸るという自殺行為をした。それを真似してアイズとベートは大量の携帯食料を持って闘技場に行った。
「無茶か、そうだなフィン達にもレベルを上げて欲しいから偉業準備をしとくよ」
「お手やらかにお願いするよ」
アリスの言葉に苦笑いを浮かべるフィン。