ロキファミリアの4人目   作:暇人M.MAX

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ガレス回
個人的に1番面白かった話です。
なので、原作にはほとんど触れません。
ぜひ、14巻読んでください。


ドワーフの炭鉱夫とアリスの過去

「なぁなぁ、アリスたん。アルヴの王森から辛気臭い顔しとるけど何かあったんか?」

 

「別に」

 

カルーナと言う宿場町に戻ってきた一向。

町に着いて興奮するリヴェリアと見惚れるアイナ、それに関心していたフィン。ロキはロキで念願のハイエルフをゲットした事にはしゃいでいた。

町でリヴェリアと他エルフによる一悶着があったが隠れるように場末の酒場へと逃げ込んだ。

少し落ち着いたら、あまり元気がないアリスにロキが話しかけた。

 

「父上に何か言われたのか?」

 

森を抜ける時に父王と話していたことを知っているリヴェリアは問いかける。

 

「王様は関係ない。これは私個人の問題、ごめん疲れたから今日は先に宿に戻っている」

 

アリスはそう言って酒場から出る。

その後、リヴェリアによるドワーフとの一悶着があったのだが。

 

●●●●●

 

4年前

 

「お見事アリス」

 

「リュート兄さん、そっちは終わったの?」

 

森の中にいた怪物の群れの最後の一体を倒した10歳のアリスの背後から1人の青年が声をかける。

青年の名はリュート・グレイ、アリスの兄である。

 

「ああ、そこまで強いモンスターはいなかったからね。他の兄弟達もそろそろ切り上げるらしい。僕たちも帰ろうか」

 

最奥の森、そう呼ばれるアリスの故郷は辺境も辺境の大樹海の奥地に居を構えていた。陽の光が入りづらく常に薄暗いそこは魔境そのもの。

人類域の境界に接するそこは常にモンスターが溢れており、太古の昔から里の戦士達によってモンスターの進出を食い止めていた。里のものは皆兄弟と言う考え方を持ち確固たる絆で結ばれていた。

エルフの誇り高い戦士と呼ばれる最奥の戦士達。恩恵を授からずとも鍛え抜かれた肉体は千の魔物を倒し、研鑽された魔法は万の魔物を屠ると言われている。

その中でも、アリスは鬼才だった。齢五で戦場に立ち、齢8にして戦士の中でも上位に食い込み、齢10にして最強と言わしめた。

しかし、エルフの習慣に染まらないアリスは里では異端児だった。父と兄リュートはアリスに気をかけていたが、他の兄弟はアリスの鬼才に畏怖し、母はアリスの異端さに軽蔑していた。

 

「あんまり帰りたくない」

 

「そう言うな、アリスが帰らないと僕がアリサ姉さんに怒られるんだよ」

 

里でアリスと仲がいいのは父とリュート、そして姉であるアリサのみである。

 

「・・・仕方ない」

 

「ほら、行くよ」

 

モンスターの処理を済ませて里へと帰還する。

里へ帰ると2人は報告のため戦士長たる父の元へ向かっていた。

 

「ただいま戻りました父上」

 

「・・・」

 

室内に入るリュートに続いて黙って室内に入る。

 

「おお、戻ったか2人とも。早速で悪いが報告してくれ」

 

「・・・」

 

室内には父ゼノンと長兄アランがいた。

父は2人の帰還に喜び、兄はアリスを睨みつける。

 

「部隊は軽い怪我だけで大きな負傷者もなかったよ。でも、魔物の数が多かったのは気になるかな。まあ、アリスが前線で戦ってくれたおかげで大丈夫だったけど」

 

リュートは今日の報告をしながらアリスの頭を撫でる。

ゼノンは末娘の活躍を聞いて誇らしげになる。一方のアランは忌々しくアリスを見る。

 

「戦うことしか脳のない異端児なだけだろう」

 

「兄さん!そんなこと言うなよ!」

 

いつもの言い争いが始まろうとした時、ドアを蹴破る音が響く。

 

「アリスちゃーん。怪我はない? 綺麗なお顔に傷がついたら大変だよ!」

 

扉を蹴破った姉アリサはアリスに抱きついてくまなくアリスの身体を調べる。過剰なほどの過保護。

男兄弟の多い中で紅一点だったアリサの待望だった妹はアリサにとって溺愛対象そのものだった。

そのアリサに続いて入ってきたのは母アリヤが入ってきた。

 

「リュート、無事だったので。母に顔をよく見せて」

 

アリヤはリュートに近づき顔を掴み心配する。アリスには目もくれずに。

 

「母上、アリスも居ますよ」

 

「そう、無事でよかったわアリス」

 

「・・・」

 

アリヤはアリスに少し目を向けて一言言う。その後すぐに目線をリュートへ戻す。

 

「ちょ!母さん、その言い方は!」

 

そんな態度にアリサが怒ろうとしたのをアリスが腕を引っ張って静止する。

 

「私、疲れたから先に帰って寝てるね」

 

アリスはそう言って部屋から出ていく。

 

「貴様達、アリスは家族なんだぞ。その言い方は無いだろう」

 

一家の大黒柱たるゼノンはアリヤとアランの態度に怒る。

しかし、2人は反省の色を見せない。

 

「確かにアリスは私の娘です。でも、あの子は里では異端すぎる。いずれ私達とは決別する。なら、最初から突き放したほうがあの子と私達のためじゃない」

 

アリヤは異端なアリスを軽蔑こそすれど、娘としてはちゃんと愛している。でも、きっとアリスは自分の手から離れると思っている。ましてや、ここに居てはアリスのためにならないとさえ思っていた。それゆえにこちらから突き放す態度をしていた。

 

「私も同意見です父上。あの愚妹は異端にて異才すぎる。里の風習に染まらず異端であり、強すぎるほどに異才。いずれこの里に混乱を招き入れる。里のためにも愚妹のためにも里から放逐するほうがいいのです」

 

アランにとってアリスは畏怖対象だった。

幼き妹の鬼才を見た。齢五にしてモンスターを蹂躙する姿は数多くの戦場に立ったアランに強い印象を与えた。その時からアランの中で妹を里から出す考えは決まっていた。

 

「だからと言ってあそこまで邪険に扱う必要はないでしょ!」

 

「そうだよ2人とも、アリスはまだ10歳になったばかりの子供なんだよ!」

 

アリサは2人の考えに叫ぶ。

それに同調するようにリュートも言い返す。

 

「こら辞めんか」

 

家族の問題を言い争っていると静止の声が響く。

 

「長老」

 

静止したのは里の長たるバルーサ・ザバサ。古代より生きながらえている老齢のエルフである。

 

「アリスの処遇を決めるのは今の現状を打開してからじゃ。あの怪物を倒すにはアリスの力が必要じゃ」

 

「アリスをあの怪物にぶつけるのですか⁉︎」

 

ゼノンが叫ぶ。この森の最奥に潜む魔物、闇竜ジャバウォック。古代より生息する黒い魔物、それがつい最近また活動を始めたのだ。

 

「アリスだけじゃ無い。里の全勢力を持ってジャバウォックを倒す。それが無理ならアリサの力を使うしかあるまい」

 

「外の冒険者に助けを呼ぶことは出来ないのですか?」

 

「お主達も知っておろう。この森は生きており、神を嫌っている。むかし、神が足を踏み入れた時に森が怒り狂った」

 

「・・・、わかりました。決行はいつにします」

 

●●●●●

 

「ねぇねぇ、今日は何の肉?」「にく〜?」

 

幼きドワーフの姉妹ナルルとノルンがアリスに話しかけてくる。

 

「今日は猪だ。森で見つけた」

 

「にく〜」「にく〜」

 

ドワーフの集落『ロンザ』。

ドワーフの男、ガレスを勧誘するためここロンザに滞在しているロキ一向。フィンはガレスを勧誘するために策を練り、リヴェリアはドワーフの主婦達に仕事を手伝わされ、アイナは未知の料理に舌を肥やして、ロキはドワーフの酒を飲み明けていた。

そんな中、アリスは村に馴染めず良く森や平原に行って狩りをしていた。

貧乏なロンザにとって肉を定期的に下ろしてくれるアリスは歓迎されたがただ村にいずらいから狩りをしていたアリスにとっては複雑な心境だ。

 

「何や、アリスたん。難しい顔して、悩みがあるなら聞くで?」

 

「何だロキ?ガレスの勧誘はいいのか?フィンがサウナで倒れたと聞いたが」

 

「あー、ガレスと根比べしたらしくてな。2人とも意地張ってサウナで倒れたんや。あまりの馬鹿さに笑い回ったわ」

 

そんなことになっていたのかとアリスは思った。

 

「それより、ほれほれ、うちに話てみーや?子の悩みを聞くのも親の勤めちゅーもんや」

 

「・・・、この村にいると故郷を思い出すんだよ」

 

話さないとウザ絡みをし続けるだろうとふんだアリスは仕方なく口を開く。

 

「故郷って、リヴェリアが言っていた最奥の森って所かいな?」

 

「ああ、あの里はこの村のように皆を家族として扱っていた。この雰囲気は故郷に通づるものがある」

 

「ふぅーん、でエルフの王様に言われたのも故郷がらみか?」

 

「あぁ、里の長老から伝言を言われた。その後、森から手紙が来たんだ」

 

ロキは思い出した。アルヴの森からの帰り道、アリスの肩に一羽の鳥が止まったことに。あの時、アリスは手紙を受け取ったのだ。

 

「誰からや?手紙、読んだんか?」

 

「母からだ。読んでいない、どうせ罵詈雑言の嵐だろうし」

 

「何でや?母親なんやろ?」

 

「そうだな、ロキ。少し、昔話を聞いてくれるか?」

 

●●●●●

 

アリスを含めた里の戦士達は森の中を進んでいた。

闇竜ジャバウォック討伐に向けて進軍をしていたのだ。

戦闘には父ゼノンが立ち、副官としてアランが追従する。

アリスとリュート、アリサはそこから離れた位置で後に続く。

里の戦士達の中でも選り抜かれた精鋭部隊。

 

「もうすぐだ。皆のもの気を引き締めろ」

 

父の言葉に緊張が走る。今回の戦場は過去のどのような戦場よりも過酷を極めるだろう。

 

「敵襲!」

 

誰かが叫んだ。

突然の怪物達の強襲に一団は狼狽える。

怪物達の後方には目的の闇竜が潜んでいた。

読んでいたのだ、エルフ達の強襲を逆手に取り逆に襲った。

 

「狼狽えるな! アランは隊列を組め。俺は闇竜を抑える」

 

「わかりました父上。戦士達よ落ち着け、隊列を組め。魔法が使えるものは詠唱を始めろ。弓兵は近づく怪物から確実に仕留めろ。剣士達は後ろに魔物を通すな!」

 

一瞬の状況判断により混乱は収まる。

鍛え抜かれた精鋭達はすぐに隊列を組み直す。

戦闘が始まった。

アリスとリュートは姉アリサを守りながら戦っていた。

アリサは魔法にて怪我人の治療に当たっていた。

本来なら拠点を気づいてそこで治療をするはずだったのだがいきなりの戦闘により拠点を作れず後退もできない。

何とか、戦力は拮抗しているが一向に倒しても倒しても湧いて出てくる怪物達に戦士達は疲労していた。

そして、最悪の事態が訪れた。

 

「ゼノン様がやられた!」

 

後ろで弓を放ち戦況を見極めていた斥候が叫ぶ。

最強の陥落。それは戦士達の戦意を下げるには十分だった。

一瞬の動揺をしたアリスの前に死が訪れる。

 

(ジャバウォック⁉︎なんで、さっきまで父上と遠くで戦っていたんじゃ)

 

ジャバウォックは一瞬にて戦士達を吹き飛ばしアリスの前に立つ。そして、その凶刃をアリスに振り下ろす。

 

「えっ・・・」

 

しかし、その刃はアリスには届かなかった。

アリスを突き飛ばし、代わりにアリサが貫かれた。

 

「アリサ姉さん⁉︎クソッ⁉︎」

 

「よせ、リュート⁉︎」

 

最愛の姉を貫いたジャバウォックに怒りを露わにし襲いかかるリュート。それを静止するアランだったが止まらない。

 

「えっ・・・」

 

ジャバウォックはアリサから爪を抜きリュートへ振るった。

リュートは理解する前に身体を切り刻まれた。 

 

「兄さん、姉さん?嘘、嘘⁉︎」

 

目の前で家族が死んだ事実を受け入れられず狼狽えるアリス。戦士達は一瞬にして怪物達に飲み込まれる。

 

「落ち着いて、アリスちゃん」

 

膝から崩れ落ちたアリスの手を握るアリサ。

彼女は微かだが生きていた。残り少ない命を使ってアリスのところまではってきたのだ。

 

「姉さん・・・」

 

生きていた。それだけで僅かに心を取り戻せた。

 

「アリスちゃん、私の命をあげる。だからお願いみんなを守って」

 

「えっ?」

 

アリスは理解できなかった。

最愛の姉の言葉。姉の命、何を言っているのか。

 

「私は助からない。なら希望を残すしか無い。大丈夫、私は常にあなたといるから。もう、1人で泣く必要もない」

 

「愛してるわ、私の可愛い妹」

 

アリサはアリスの額に口付けをする。

そこに秘術はなった。眩い光が発せられる。アリサは光となり消滅してその光はアリスへと降り注ぐ。

 

「アリサ⁉︎皆のもの秘術はなった!諦めるな、まだ希望は潰えていない」

 

アリサが紡いだ希望。最も家族が避けたかった悲劇。

里に伝わる禁忌の秘術、命と引き換えに他者へ祝福を与える。

奇跡の光を見た戦士達は持ち直した。アランの言葉により立ち上がる。

そして、ジャバウォックは自身の脅威を感じ逃走を図る。

 

「なんで、なんで」

 

アリスのみが状況を理解できずに呆然とする。

 

「アリス、立って!アリサから託されたのだろう!」

 

「アラン兄さん・・・」

 

アランはアリスを無理矢理立たせる。

そして、呆然としているアリスの頬を引っ叩く。

 

「ここは俺たちが受け持つ。貴様はジャバウォックを追え!」

 

「でも、」

 

「アリス、最後だから言う。俺はお前が嫌いだ。異端なお前が理解できない、異才なお前が怖い、強すぎるお前を恐れた。そして、いずれ俺を置いて死地へと向かうお前が嫌いだ」

 

「えっ?」

 

「何故お前なんだ。何でお前にその強さがあるんだ。何でお前が戦わないといけないんだ」

 

アランの本音をアリスは聞いた。

その顔と声音はいつも自分に向けてくる嫌悪のものではない。慈愛が込められた声。

アランはアリスの頬を撫でる。

 

「里を出ろアリス。みんなを救い、里を出ろ。ジャバウォックを倒せ、そして里の混乱に乗じて里を抜けろ」

 

「何言ってんの?」

 

「行け、アリス。最後の愚かな兄の頼みだ、皆んなを救ってくれ」

 

アランは背を向ける。

いまだに理解できないアリス。でも、やらなければいけないことは知っている。

アリスは駆ける。

 

「ようやく行ったか愚妹め」

 

アランはアリスの旅立ちに微笑む。

最愛の妹を結局死地へと送り出してしまった。ジャバウォックを倒さなければ意味をなさない。それでも、アリサが施した祝福はきっとアリスを守ってくれると信じている。

アランにとってこの世界は憎むべき対象だった。

初めての妹は、最悪に備えられた生贄だった。弟達はいつ死ぬかもわからない戦地へと立つ戦友だった。

弟が死に自分だけが生き残り続けた。

神を呪い続けた。何で弟達が死ななければならない。何故、妹を選んだ。何故、俺を生かし続ける。

弟達が生き残れるように模索し走り続けた。でも、最後には自分だけが残った。

そんな時、アリスが生まれた。

女の子だ、戦士にならずに済む生贄にならずに済む妹が生まれたのだ。

家族は喜んだ、アリスは家族の希望だった。自分たちが守りそして生きた証。

異端なアリス、それでも家族はアリスを愛した。

しかし、異端だけではなくアリスは異才だった。

齢5の少女が剣を持ち屈強なエルフの戦士を倒したのだ。

里のエルフは歓喜した、新たな強き戦士の誕生。里の未来は安泰だと。

異端児と里から嫌われていたアリスは皆んなの期待に応えようと強くなった。皆んなに必要とされ始めてしまった。

強いアリスは戦場に立たされる。里の期待を背負い戦い続ける。そして、摩耗し消耗し命を燃やして死ぬ。

ふざけるな、なんでアリスなんだ。どうして俺の家族ばかりが死ぬんだ。

アリスの鬼才を見たアランは里を裏切ることを決意した。

アリスが独り立ちできるようになったなら里から逃すと。

きっと、心優しいアリスは自分たち家族を見捨てることはできない。だから嫌われるようにし続けた。何度、心を痛めたか。もっと、話したかった、もっと、抱きしめてやりたかった。それも、もう叶わない夢。

 

「愛しているぞアリス」

 

聞こえないだろう呟きを呟いてしまう。

 

「悪いな怪物達、妹の旅立ちなんだ。ここから先には行かせん!」

 

 

 

アリスがジャバウォックに追いついた頃には里は半壊していた。里に残っていた戦士達が必死に戦っているが全く歯が立たない。

 

「うぉぉーーー!」

 

アリスは雄叫びを上げながらジャバウォックへと突撃する。

そこからは1人と一体の死闘。

闇竜の天敵の光を纏い駆け抜けるアリス、何度もその光に苦渋を飲まされ続けたジャバウォック。

古代より続く因縁の戦い。多くの戦士が光を纏いジャバウォックを撃退してきた。しかし、倒し切ることは叶わなかった。里始まって以来の鬼才を誇るアリス。もし、ここで倒さなければ未来永劫ジャバウォックは倒せない。

誰もがその死闘に目を向けていた。

 

「うぉーー‼︎」

 

『グギャーーーーッ!』

 

アリスから放たれた一閃はジャバウォックの魔石を砕いた。

アリスは灰となったジャバウォックの上に立つ。

 

「勝ったよ、兄さん姉さん」

 

「アリスなの?」

 

勝者のアリスに声をかける者がいた。

 

「母さん・・・」

 

「その光、そんな」

 

母アリヤは理解してしまった。

ジャバウォックがここにいた。

夫の死、アリサの死、息子達の死を。

 

「なんで、なんで貴方なの!」

 

「・・・」

 

「貴方が死ねばよかったのに」

 

「ッ!」

 

非難の声。

言ってしまった言葉にアリヤも我に帰る。決して本心ではなかった。でも、あまりの事実に気が動転してしまっていた。

 

「ご、ごめんなさい「そうだ!」」

 

謝ろう、アリヤはそう思い言葉を出したがそれを遮る声がした。

幼きエルフがアリスに石を投げつけた。

 

「お前がもっと早くあの化け物を倒してれば父ちゃんや母ちゃんは死ななかった」

「そうだよ。なんで貴方が生きてるの。討伐に行ったみんなはどうしたの?カルナはどうしたの?」

「私の息子はどこなの」

 

非難の嵐がアリスを襲った。少年に続いて石を投げつけるものも出た。

騒ぎを聞きつけた長老が必死に抑えようとするが現実を受け入れるには余りにも被害が多すぎた。

誰かのせいにしなければ収まらない。その火種を撒いてしまったのは母であるアリヤだ。

 

「アリス、ッ!」

 

アリヤは見てしまった。

娘の絶望した顔を、今にも泣き出しそうで幼い迷子のような顔を。誰があの子にあんな顔をさせた、それは他ならないアリヤ自身。石を投げつけられた頭からは血が流れている。

早く抱きしめて謝りたい、でも、そんな資格があるのか。どうして、身体が動かない。

 

「待って、」

 

アリスはその場から駆け出していた。

もう2度と会うことは叶わない親子の別れ。それは2人に深い傷を残した。

 

 

森の中を駆け巡るアリス。

アリサの祝福のお陰か傷は癒えていた。

それでも、胸が痛み続ける。

 

「・・・」

 

顔を歪め、涙を流し走っていた。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいと声にならない謝罪を呟き続けていた。

異界の記憶がなければ普通のアリスという少女だっただろう。きっと剣も持たずに女の子として生活していたのだろう。自分という異端が家族を狂わせてしまったのだ。

幼き妖精の旅立ちは決して祝福されたものではなかった。

森を抜けたアリスは彷徨い、怪物に襲われた行商にであった。多種族の町に着き、暫くして旅に出た。

戦うことだけがアリスにできる唯一のこと、多くの命を救い多くの命を取りこぼした。祝福された時もあれば罵倒を浴びせられた時もあった。

そんな旅を続けている時に勇気と出会った。

 

「やぁ、とても強いエルフがいると聞いてね。僕はファミリアを立ち上げる予定なんだけど、そのファミリアに入ってはくれないかな?」

 

●●●●●

 

「で、フィンと出会ったのか」

 

「ああ、その時は断ったが結局こうなってしまったよ」

 

「しかし、アリスたん。ごっつい勘違いしてるで」

 

「何がだ?」

 

ロキはアリスを叱りつけるような声で言う。

 

「親って言うのはなどんなことがあっても子供が可愛いんや。可愛くなかったら育ててないで捨ててる。産んだから親やないんや育てたから親なんや」

 

「何が言いたい?」

 

「アリスたんの親は絶対アリスたんを恨んでなんかない。断言してやる」

 

ロキは言い切り私に手紙を渡してくる。

 

「読んでみい」

 

震える手、読まなければいけない。きっと、読まないと前へ進めない。前へ進まないとフィン達に置いていかれる。

でも、怖いのだ。あの罵倒が今でも頭に過ぎる。あの時の悪夢を観て枕を濡らしていた。

 

「もし、罵倒が書いていたらうちが殴り飛ばしに言ってやる。それはフィン達も一緒や。たとえ、アリスたんが世界から嫌われてもうちらは絶対嫌わん」

 

「なんか、親みたいなこと言うんだね」

 

「知らんのか?ファミリアって言うのは家族なんや。神は親で眷属は子供や」

 

「わかった。読むよ」

 

ロキから手紙を受け取り中身を出す。

 

『アリスへ

まず、最初に謝らせて。

ごめんなさい。

あの時、貴方にとても酷いことを言ってしまった。本心ではないって言っても信じてくれないかもしれない。

アランが貴方を里から逃すと言った時、私は賛成できなかった。だって、愛しい子供を手放すことなんてできない。

息子が死ぬ日々、里の外では常に誰かが戦っている。

アリサはお勤めのためいつかその使命を全うする。

私には何も残らない。そう思った時貴方が産まれた。

嬉しかった、私の手元に残る唯一の子供だと。

貴方がやることなすことがどれも愛おしかった。

だから貴方が剣を取った時はとても怖かった。また、私の手から貴方がいなくなるのかと。

だから貴方を嫌うことにした。里にいれば戦い続けてしまう貴方を里から解き放つ。その時、きっと貴方を愛していたら引き止めてしまうから。

自分の心を偽り続けているうちに自分の本心がわからなくなってしまった。

愚かな母を恨んで構わない、憎んでかまわない。

でも、これだけは覚えていて。

私は、私たち家族は貴方を愛しているのだと。

母より』

 

「ぁ、ぁぁぁああああ!」

 

幼き頃の記憶が蘇る。

この世界に生誕して未知の世界にはしゃいでいた。

異端の行動を起こす自分は里に迫害された。そのことに泣く私を母は抱きしめて慰めてくれていた。

愛されていたのだ。長兄であるアランにも、母であるアリヤにも。こんなにも家族から愛されていたのだ。

 

「いっぱい泣きいや。声を出して泣けるってことは前へ進めるってことや。もう、溜め込んじゃダメやで」

 

ロキがアリスを抱きしめ幼子を諭すように背中をさする。

剣を取った日からアリスは声を出して泣かなかった。兄に嫌われた、母に嫌われた。それはとても悲しくて前世を持つアリスにも辛かった。誰にもバレずに布団にくるまって泣いていた。里を抜け出す時も声を出せなかった。いつしか、アリスは声を出して泣くことが出来なくかった。

 

「ぅあああ!」

 

「・・・」

 

泣くことは決して悪いことじゃない。

アリスはロキに抱きつきながら泣き続けた。長年の涙を流すかのように泣き続けた。

 

「子供って言うのは難儀なもんやな」

 

下界に降りてフィンに出会った。

アリス、リヴェリアを仲間に加えた。そして、ガレスも仲間に加える。それぞれの苦悩を知った。

野望を持つフィン、自由を求めたリヴェリア、衝動を求めたガレス、そして泣くこともできず迷いつづけたアリス。

ロキにとって前世を持つアリスが1番幼く見えた。

迷子なのだ、アリスという少女は迷子だった。だが、きっともう大丈夫だろう。また、迷うことはある。でも前へ進めるだろう。

 

●●●●●

 

「暑い」

 

その日は晴れていた。

無事、ガレスを仲間にした一向は次の行き先で揉めていた。

西だ南だ東だとそれぞれ行き先を主張する。

ぶっちゃけどうでもいいアリス。元々アリスは4年間世界を旅していた。そのためある程度の街には行ったことがある。

ロキはその3人を面白そうに見ており、アイナは止めなくていいのかおろおろしてる。

流石に終わらなそうなのでロキが仲裁に入る。

 

「アリスたん、こっちにきい」

 

ロキはアリスを呼ぶ。

アリスは4人の近くによる。

4人の手を取ったロキは手を一つに重ねる。

 

「「「「なっ」」」」

 

「ほい、引っ込めるんじゃないで。これから儀式を行う」

 

唐突な行動に声を上げる。

特にリヴェリアとガレスからは非難の視線が飛ぶ。

そんなことを気にしないロキは話を進める。

 

「これからするのは誓いの儀式や。この儀式するたびに思い出して欲しいんや。なんで、ファミリアに、冒険者になったのか。何かあるたびにこの儀式をして原点に立ち帰るんや」

 

ロキの言葉に納得する4人。

 

「熱き戦いを」「まだ見ぬ世界を」「一族の復興を」

 

「ほらアリスたんの番やで」

 

「家族のために」

 

迷い続けた幼き妖精は前へ進み出した。

迷い続け前へ進む、確かな誓いを胸に前へと。

 

 

 




一応は過去編は終わりです。
続くは分かりません。
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