ロキファミリアの4人目   作:暇人M.MAX

5 / 15
アストレアレコードです。
結末は決めてるんですがそこまで行くのに長い。


邪悪胎動1

暗黒期

闇派閥が暴れ回り冒険者を、市民を襲い回っている時代。

血と硝煙を都市に撒き散らし、都市に雲が掛かることが多かった時代。

 

「くっ、【不動】」

 

闇派閥の1人である者が地に伏せている。

街中で騒動を起こした闇派閥は突如として現れたアリスによって鎮圧されていた。

 

「あっ、アリス!また、出遅れたのね私達」

 

「アリーゼに、アストレアファミリア」

 

全てを片付けた後に赤髪の女冒険者が現れる。その後ろには後をついてきた少女達が見えた。

 

「そうよ!強く美しく完璧なアリーゼ・ローヴェルとは私のこと」

 

「おい、とうとう頭がおかしくなったのか? うちの団長様は」

 

「元からではないでしょうか」

 

「2人ともアリーゼはおかしくない!少しあれなだけだ」

 

「そこはしっかりフォローしてやれよ」

 

「皆んな、私が完璧だからって嫉妬しちゃダメよ」

 

「「イラッ」」

 

「お前達は相変わらず仲がいいのだな」

 

騒がしいアストレアファミリアに笑みをこぼすアリス。

 

「すまない。遅れた」

 

ガネーシャ・ファミリア団長、シャクティ・ヴィルマが団員達を引き連れてきた。

 

「シャクティ、後は任せた」

 

「ああ、すまないアリス」

 

「えぇー、もう行っちゃうのアリス?リオンが寂しがるわよ」

 

「なっ、私は寂しくなどない!」

 

「リュー、暇ができたら伺う」

 

「アリスさんも子供扱いしないでください!」

 

リューの頭を撫でるアリス。

リューは顔を真っ赤にしながらも手を払い除けようとはしない。

 

「リューってアリスのこと拒まないわよね?」

 

潔癖なエルフでも特にそれが顕著なリューはアリーゼ以外の人と触れ合うと拒絶反応を起こしてしまう。

アリスとはアリーゼと同様に触られてもなんともないのだ。

 

「アリスさんは恩人で、その、憧れでもある・・・」

 

リューの声が小さくなる。

里を飛び出したリューは勢いのまま飛び出したため旅の準備もまともにしておらず、ましてや世間知らずで潔癖なためか他種族を頼ることができずに途方に暮れていた。

リューが飛び出したことを知ったリュミルアの森の族長は知人であるアリスに手紙を出しリューの面倒を見てもらうように頼んだ。

行倒れ寸前だったリューをアリスが見つけてオラリオまで連れてきた。

オラリオに着いたら逸れた2人だったがアリーゼがリューを助けてそのままアストレアファミリアに入団した。

リューにとってアリスは命の恩人であり先達者として憧れでもある。

 

「リューったら可愛い!」

 

「こら、抱きつくなアリーゼ」

 

リューの態度を見てアリーゼが抱きつく。

 

「じぁ、私は行くよ」

 

アリスはその場から立ち去る。

 

●●●●●

 

「これがガネーシャ・ファミリアからの報告書になります」

 

「ありがとう、ラウル」

 

若い少年ラウルから報告書を受け取ったフィン。

ラウルはフィンに一礼して執務室から立ち去ろうとする。

 

「ラウル、君は幾つになった?」

 

「?14っすけど」

 

呼び止める声に不思議そうに答える。

それを聞いたフィンは少し考えて笑みを浮かべる。

 

「そうか、呼び止めて悪かった。もう行っていいよ」

 

「はぁ、失礼します」

 

首を傾げながらも今度こそ退出するラウル。

 

「フィン、なぜラウルの年齢を聞いた?」

 

「他意は無いよ。ただ、少し麻痺していると思ってしまってね」

 

執務室にいたリヴェリアの問いかけにフィンは背もたれに体重を預けて答える。

 

「息をするように人が死ぬ。悲鳴が絶えることのない無法地帯。成人もしてない子供が戦場に駆り出される状況に」

 

「致し方ない、と済ませていい問題ではないな。だが、ラウル達は裏方、せいぜいが戦場での支援程度にすませている」

 

「それでもだよ、リヴェリア。この状況を招いたのは紛れもない僕たち、いや僕だ。それに若いラウル達を突き合わせるのは気が引ける」

 

闇派閥が活発に活動し出したのはゼウスとヘラが去った後。

ゼウスとヘラを追い出したのはロキファミリアとフレイヤファミリア、元々フレイヤはヘラと因縁があったが今回の件で指示を出したのはフィンだ。野望のために邪魔だった二大派閥を片付けるために。

抑止としては心許ない戦力だったロキとフレイヤ、そのためかオシリスが去った後、なりを潜めていた闇派閥が動き出した。

 

「現状、秩序側の勢力が優っているがそれはアリスのお陰でもある」

 

今この場にいない自派閥の幹部の一人であるアリス。彼女は都市内外、ダンジョンを駆けずり回り闇派閥の対処に当たっている。

 

「全く、お前はアリスに負担をかけすぎている。この前会った時など、見てられないほどやつれてたぞ」

 

「それは本当にすまないと思っている。でも、彼女という切り札があるから僕は前へ進める。僕は多くの者を犠牲にし、取りこぼし続けるだろう。でも彼女は僕が見捨てた者を守ってくれる、取りこぼしたものを拾ってくれる」

 

フィンはアリスに絶対的な信頼を置いている。

そんなフィンにリヴェリアとガレスは呆れたように苦笑いを浮かべる。

 

「全く、嫉妬してしまうほどお主はアリスに惚れ込んでおるの」

 

「ああ、全くだ」

 

「そうだね。彼女が小人族ではないのが悔やまれるぐらいには惚れ込んでいるよ」

 

フィンは二人の茶化しに苦笑いを浮かべながらも同意する。

フィン・ディムナはアリス・グレイという存在に惚れ込んでいる。

アリスに初めて会った時、フィンは彼女の強さにしか興味がなかった。しかし、共に過ごすうちに彼女の心の強さを知った。

彼女は多くの命を救った、見返りも求めず。時には罵倒されているときもあった。それでも誰かの笑顔のために彼女は走り続けていた。

そんな彼女にフィンは勇気を見た。自分が持つ偽物ではなく本物の勇気、時には蛮勇とも思われる行動を彼女は勇気に変えて見せた。

そんなアリスだからこそフィンは無償の信頼を置けるのだ。

 

それから軽い談笑をしていると窓が開きそこから人が入ってくる。

 

「今、戻った」

 

「お前はいつも正面から帰って来れないのか」

 

「面倒」

 

窓から入ってきたアリスにリヴェリアは呆れた声を出す。

それをお構いなしに執務室のソファに座り紙袋に入ったじゃが丸くんを取り出して食べる。

 

「さて、アリス。最近、闇派閥の動きで怪しいことはないかい?」

 

「? いつも通り、少し襲撃の規模が落ち着いてきてる感じ」

 

「そうか、ガネーシャファミリアの報告と相違ないな」

 

フィンは先ほどリヴェリア達と話していた内容をアリスに話す。アリスから何かしら聞ければ闇派閥の今後の動きも予想できたが特に成果はなかった。

 

「あっ、そう言えば」

 

「?」

 

アリスが何か気づいたようで声を出す。

一同アリスの言葉を待つ。

 

「最近、調教師を見かけてない」

 

「「「⁉︎」」」

 

アリスの言葉を聞いたフィンは再度ガネーシャファミリアの報告書を見返す。リヴェリアとガレスはギルド、アストレアファミリアからの報告書を取り出して内容を精査する。

 

「?」

 

急に慌ただしく動き出した3人に首を傾げながらじゃが丸くんを頬張る。

 

「やはり、リヴェリア、ガレスそっちもどうだい?」

 

「ギルドの報告書には見当たらない」

 

「こっちもじゃ。一時期頻繁に起きていたものがここ最近なくなっておる」

 

報告書の確認を終えた3人は目的の報告が一切ないことに気づく。

 

「全く、アリスに言われて気づくなんて僕もヤキが回ったよ」

 

「いや、私もガレスも気づいてなかった」

 

「そうじゃの、襲撃されることが当たり前すぎて中身まで目が回らんかった」

 

3人は妙に納得する。

 

「何があったの?」

 

3人だけで考えがまとまっている中、何の話をしているかわからないアリスは率直に尋ねる。

 

「闇派閥が冒険者狩りをする中で最も卑劣で残酷な方法、怪物進呈が最近の報告に上がってない」

 

「モンスターを使ってない」

 

「ああ、そうだ。考えられるのは戦力の蓄え。闇派閥の構成員の殆どはレベル1だ。モンスターの方が戦力になる。決戦に向けて戦力を蓄えている。そして、決戦を決行する戦力が彼方に着いたと考えるべきだ。アリスやオッタルを超える強敵がね」

 

フィンは親指を押さえながら見解を述べる。

さっきまで働いていなかった自分の勘が戻ってきたかのように働いている。

麻痺しているのは思考だけではなく勘も麻痺していた。この現状が当たり前と思いすぎて危機感が抜けていたことに反省する。

 

「考えられるのはレベル7、オシリスファミリアの帰還」

 

「だが奴等は主神を失ってから消息を絶っている。生きてるかも不明だ」

 

「リヴェリアの言う通りじゃ。それにあやつらが大人しく今の闇派閥に従うとは考えられん」

 

フィンの見解にそれぞれの意見を述べる。

 

「今までいなかった神が闇派閥にいる、と思う」

 

「アリスの言う通りだ。策略、陰謀にたけた神が知略を授けた。今まで、娯楽のために虐殺を好んだ神と違い明確な目的を持った神が居る」

 

「全く、神という奴は傍迷惑な奴らばかりだな」

 

リヴェリアは微かに傷んだ頭を抑えて自身の主神を思い浮かべる。

 

「リヴェリア、ガレスは街の警戒を強めてくれ。アリスは逆に魔物の数を減らして決戦にむけて精神力を回復してくれ」

 

「わかった」

 

●●●●●

 

フィン達と話し合った次の日、アリスはホームの中庭で休んでいた。

 

「・・・」

 

「アリス?」

 

目を閉じて身体を休めているとアリスを呼ぶ声が聞こえた。

目を開けて顔を上げると金髪の少女が覗き込んでいた。

 

「アイズ・・・」

 

「寝てたの?」

 

「半分寝てた。熟睡すると魔物達が消えちゃうから」

 

アイズはアリスの隣に腰を下ろす。

アリスは寝ていて固まった身体をほぐすように背を伸ばす。

 

「アイズは今日はホームで鍛錬か?」

 

「うん、皆んな忙しくてダンジョンも行けないから」

 

アイズが入団してから時間が経ち、レベル3となった。最近では戦闘狂いもなりを潜めつつリヴェリア達の言うことをある程度は聞くようになっている。(相変わらずモンスターは爆砕しているが)

 

「私も戦えるのに」

 

都市で闇派閥が暴れておりその対処にファミリアが追われているのを知っているアイズは自身も役に立てるのにホームに閉じ込められている現状に不満を持っている。

 

「そうか、でもこう言うのは大人の私達が請け負うものだ」

 

「でも」

 

「それにアイズはまだ対人戦は不慣れだからな。人と戦うこととモンスターと戦う事は違う」

 

モンスターを大量に倒してきたアイズ。しかし、人と戦った経験はファミリア内での模擬戦と昔にイシュタル・ファミリアのフリュネ・ジャミールに襲われた時程度。

戦闘経験を抜きにしても幼いアイズを戦わせたくないリヴェリア達、闇派閥の中にはアイズと年の変わらない信徒が居る。もしもの時は殺さなければならない。そんなことをアイズにはさせたくなかった。

 

「人を殺すことになるかもしれない。心ある者を殺すことは自分の心を削ることだから」

 

「だから、アリスは殺さないの?」

 

「ッ⁉︎」

 

幼子の指摘にアリスは動揺する。

 

「皆んな言ってた。アリスは皆んなを救ってるけど闇派閥も殺さないようにしてるって」

 

アリスは闇派閥と何度も戦っている。

幹部の撃退に成功はしているが撃破はしてない。ましてや、逃げられている。高位の冒険者になるほどに耐久は高くなる、アリスでも傷つけずに無力化は一苦労なのだ。

 

「そうだな。私は私のために人を殺すことを躊躇っている。人を殺してしまえばいずれその行為に慣れてしまう」

 

いつからか武器を振るうことに躊躇いがなくなった、いつからか凶器を生き物に向けることに迷いがなくなった、いつからかモンスターを殺すことに何も感じなくなった。そして、いつかはきっと人を殺すことに心を痛めなくなる。

 

「仕方ないからと人を殺して殺して殺し続ければ、私は狂ってしまう気がする」

 

アリスは自身の両手を眺める。

別に1人も殺してきてないわけではない。最初の頃は人との戦いが不慣れで殺してしまった時もある。殺さなければ多くの命を救えなかったから殺した時もある。この手はもう血に染まっている。だからこそこの手に染み付いている血が見えなくなる自分を恐れてしまう。

 

「大丈夫、アリスには皆んなが、私がいるよ」

 

アリスの手を握るアイズ。

アイズの手から温かみを感じ取る。自身より小さい手は自身よりとても温かい。

 

「ああ、ありがとうアイズ。アイズがいるから私達はがんばれる」

 

「?」

 

守りたい存在、家族。

それは確かにここにあるのだから。

 

●●●●●

 

「フレイヤファミリアからの報告とガネーシャファミリアからの報告を見るに少なくとも2人は主戦力がいると考えられるね」

 

執務室に集まったフィン、リヴェリア、ガレス、アリスの4人と主神ロキの一柱。

5人は定期的に集まって近況報告をしている。そして、つい最近二つの派閥からある情報がもたらされた。

 

「儂も現場を見たがあれは魔法ではなく物理によるものと考えられるの」

 

「私の方も魔力の残滓が残っていた」

 

フレイヤファミリアからの報告現場はガレスが、ガネーシャファミリアの現場はリヴェリアが確認している。

 

「つまりはその犯人は別者ちゅーわけか」

 

「両方に長けた人かもしれない」

 

犯人は別人と決めつけた考えにアリスは意義を唱える。

実際、やろうと思えばできると確信しているアリス。

 

「そんなことできるのは君ぐらいだよアリス。流石にアダマンタイトの壁を魔法なしで壊す魔導士はいないよ」

 

フィンは苦笑いを浮かべながら否定する。

リヴェリア達もフィンの意見に賛同なのか規格外なアリスに常識を知れと言った視線を向ける。

 

「さて、話を戻すけど。その2人の人物の情報と一致する人物が頭によぎった。ただ、なんで彼等が闇派閥に与したのかがわからない」

 

「復讐ちゃうんか?実際、うちらは恨まれることをしとるしな」

 

「確かにそれならわかるけど、あの2人はそんなことのためにこんなややこしいことをしてくるかな?真正面から乗り込んでくる光景の方がしっくりくるよ」

 

2人が所属していた派閥は自身達によってこのオラリオから姿を消した。

 

「【暴喰】のザルド」

「【静寂】のアルフィア」

 

ガレスとリヴェリアがそれぞれの名を口にする。

2人とも浅からぬ因縁をもつ。何度も戦い苦渋を飲まされた相手だ。

 

「アルフィア・・・」

 

アリスは懐かしい名を聞いて昔を思い出す。

 

「3人とも感傷に浸るのはいいけど。彼等が敵に回ったことを忘れないでね。特にアリス、彼女との仲は知っている。闘いたくはないだろうけど彼女の相手をできるのは君だけだ。剣を鈍らせないようにしてほしい」

 

「わかっている」

 

アリスは鞘におさまった刀を強く握りしめる。

そんな様子を見てリヴェリアはフィンに問いかける。

 

「別にアリスじゃなくてもいいだろう。私とガレスが2人がかりでアルフィアを抑える」

 

「そうじゃのう、ザルドはオッタルに譲るとするか」

 

「全く、毎度の如く僕を悪者にしようとするのはやめてくれないかい。わかった、2人に任せるよ」

 

フィンはやれやれと言った感じに苦笑いを浮かべる。

 

「まあ、きな臭いことには変わりないちゅーことや。2人を連れてきた神の正体もわからへん。今後何が起きるかはうちでも予測できないわ」

 

「でも、目的はわかる」

 

「「「「?」」」」

 

アリスの呟きに一同が首を傾げる。

 

「オラリオの崩壊、私たちはそれを阻止するために全力で戦う」

 

アリスの答えに一同が笑みを浮かべる。

 

「よっしゃ、景気づけにいつものやっとくか」

 

ロキの提案にフィンとガレスは賛同し、リヴェリアは肩をすくめながら手を前に出す。アリスも無言で手を重ねる。

 

「熱き戦いを」「まだ見ぬ世界を」「一族の復興を」「家族のために」

 

決戦まで残り数日

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。