ロキファミリアの4人目   作:暇人M.MAX

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本日2話目です


邪悪胎動2

「さて、アリーゼ達が動き出した頃合いか」

 

各主力ファミリアが闇派閥の拠点を強襲するなかアリスはもしもに備えて遊撃の任についていた。

アリスは前世の記憶にあるとある少女の運命を変えるために街中を駆けていた。

 

●●●●●

 

2日前

 

ギルド本部にて多くの人が集まっていた。

 

「各ファミリア代表が揃った。これより定例の闇派閥対策会議を行う」

 

ギルドの奥に位置する会議室。100人以上が囲める円卓に各ファミリアの団長、副団長あるいは幹部達が囲んでいた。

歴戦の上級冒険者達の前に、肥えたエルフギルド長ロイマン・マルディールは粛々と会議の開始を告げた、と思いきや。

 

「ーーーその前に、現状の体たらくはなんだ。連日のように

襲撃は絶えず、この前は大規模な奇襲さえ許しおって!」

 

怒号が部屋になりびびく。

 

「相変わらずうるさい豚さん」

 

そんな中、アリスは耳を押さえながら本人に聞こえないように呟く。それを聞き取ったアリーゼは笑いを必死に抑えてる。

 

「さっさっと害虫を駆除してえなら、闇派閥を追ってダンジョンも攻略しろなんて間抜けな注文を押し付けるんじゃねぇ豚!」

 

唾を飛ばしながら怒号を鳴り響かせるロイマンに対して殺気を飛ばす猫人の青年、アレン・フローメル。

 

「『遠征』に行った帰りに都市中を走りまわせやがって。頭の中まで贅肉つまってるんじゃねぇーか」

 

「仕方なかろう。ゼウスとヘラがいなくなった今、都市内外にオラリオの力を喧伝するのが急務!でなければ、第二、第三の闇派閥を生み出しかねん!」

 

殺気を飛ばすアレンになんとか言い返すロイマン。

その言葉に耳が痛いねと苦笑いを浮かべるフィンと微かに表情が動くオッタル。

そこからはロイマンとアレンの言い争い。

流石に話が進まなくなるのでフィンが仲裁に入る。

 

「アレン、やめよう。話が進まない。僕たちが率先していがみ合う必要はない」

 

「その口で俺の名を呼ぶんじゃねぇ。小人族、虫唾が走る」

 

派閥間に存在する敵対視の発露に、リヴェリアが目をつまり言い返す。

 

「意思の疎通さえできない眷属の態度、神フレイヤの品性が疑われる」

 

「殺されてぇのか、羽虫」

 

ロイマンに向けていた殺気とは比べ物にならないほどの殺気をリヴェリアに飛ばすアレン。

その場に緊張が走る。ことの発端であるロイマンは冷や汗が止まらない。

この場に慣れたシャクティとオッタル、ガレスは平然としている。フィンは抑えてと手で2人を静止し笑顔を浮かべる。

アリスに関しては片目を瞑り街中にいる魔物達と視覚を共有して外の風景を楽しんでいる。

 

「もう帰りたい、なんで初っ端から殺気が行き交ってるんですか、この会議」

 

「これはいつも通りですから。気にするだけ無駄かと〜」

 

今回会議に初参加のヘルメスファミリア副団長のアスフィ・アル・アンドロメダ。痛み出した腹部を抑えながらアストレアファミリア副団長のゴジョウノ・輝夜の言葉に「無茶言わないでください」と返す。

その中にアリーゼが加わりアスフィがキレて騒ぎ出す。

その光景に「なんでこの状況で騒げるの?」と他の冒険者達の眼差しが殺到する。

 

「ロイマンを庇うわけではないが、先の奇襲を食い止められなかったのは儂の責任だ。詫びのしようもない」

 

騒がしいアリーゼ達を無視して口を開いたのはガレス。

会議室の視線がガレスに集まる。

それに擁護するようにシャクティが続き話が進む。

爆弾の話が出てきて他の冒険者達も興味を示す。

 

「なるほど、理解しました。ですが、先に情報は共有して欲しかったものですが」

 

爆弾の説明を受けて輝夜が難癖を示す。

 

「あくまで予想にすぎなかったからね。それに警備を厳重にしすぎると敵の動きが誘いにくくなる」

 

「勇者様の中では先日の奇襲は予定調和であったと?犠牲者の数も算盤を引いて、小を切り捨てたので?」

 

闇派閥の幹部、ヴァレッタが率いた炊き出しの襲撃は『陽動』で、フィン達が敵の『本命』の敵部隊を先んじて制圧したのは周知の事実。そのことに輝夜は避難している。

 

「そこの【不動】さまが動いていればあそこまでの被害が出なかったのでは?」

 

「彼女は最近働きすぎでね。疲労の色が強かったから暇を出してたんだよ」

 

「はっ、最大派閥様はこの時期に団員を休ませる余裕があるとは私達弱小派閥にはとても真似できない話ですね」

 

「君たちアストレア・ファミリアの活躍はよく耳にしてるよ。なんなら、1日ぐらい君たちが休めるように僕たちの方から手伝いを出そうかい?」

 

非難を浴びせる輝夜とそれを軽々しく流すフィン。

輝夜やアレンなど一部冒険者は厳しい視線を向けるが今回の件は最大公約数を取ったフィンを明確に責められる者もいない。ましてや、今まで闇派閥の対処に尽力してきたアリスに助けられた冒険者はこの中でも数多くいる。そんな彼女達を声を大にして非難できない。

 

「はい、この話はヤメ!わたしこんな不景気な話を聞きたくないわ!嫌な気持ちになってお菓子をやけ食いしていまいそう」

 

一向に話が進まない中、空気を読まない能天気な少女がやかましい声をばらまく。

 

「だって、そうじゃない。みんな都市を守るために最善を尽くしてるのに、それを責め合うなんておかしいわ!」

 

その言葉に全ての者が目を見開く。

アリーゼ・ローヴェルという少女は空気を読まなくて人をイラつかせることが多いが、こと人を惹きつける才能は人一倍高い。

そこからはフィンが議長となって会議が進んだ。

 

「さて、僕から話がある。敵に相当な手だれがいる。それは間違いないね、オッタル、シャクティ」

 

会議が終わりに差し掛かり最後にフィンはある報告をしようとする。

 

「ああ、少なくともレベル6以下は有り得ん」

 

アダマンタイトの壁にできた大穴を見たオッタルはその力を見て見当を立てる。そして、ある答えが頭によぎる。

オッタルの言葉に場が驚愕する。現状都市内での最高レベルは6が2人。それが敵側にも出たとなると戦力差が覆る可能性もある。

 

「我々も『倉庫』制圧の際に、正体不明の女と遭遇した。魔導士、あるいは魔法剣士だと思われる」

 

シャクティも先日の『闇市場』制圧の際に目撃した人物を述べる。

 

「シャクティ、リヴェリアから報告は聞いているんだけど、その女は【福音】と詠唱したんだね」

 

「ああ、そうだ」

 

「ッ⁉︎」

 

シャクティの返答にオッタルは目を見開く。そして、自身の考えが正解なんだと気づく。

他のものはなんのことかわからずにざわめき出す。

 

「混乱を招くことは言えない。オッタルとロイマンは済まないが会議が終わっても残ってくれないかな」

 

フィンの言葉に頷くオッタルと事態の深刻さに冷や汗が止まらないロイマン。

2人とも叫びたいほど動揺しているが必死に隠している。

 

「さて、本題に入ろうと思う。ヘルメス・ファミリアの偵察によって、闇派閥の新たな拠点が見つかった」

 

「「⁉︎」」

 

目を見開くアリーゼと輝夜の反応を追うように他の冒険者も驚きをあらわにする。

ヘルメス・ファミリアを代表してアスフィが偵察で得た情報を説明する。

 

「今回見つかった三つの本拠地を同時に叩く」

 

「一つはアストレア・ファミリアが行くわ」

 

フィンが攻撃の意思を示したと同時にアリーゼが席を立ち名乗りをあげる。

 

「まだ、僕は何も言ってないよ」

 

「本拠に突入するファミリアを募るんでしょ?ロキとフレイヤはばらけるとして残り一つは余る。なら私達が受け持つわ!機動力なら負けないもの!」

 

苦笑いするフィンに、身を乗り出す。

その姿に黙っていたシャクティも動き出す。

 

「我々もアストレア・ファミリアと連携する。それなら頭数も十分だろう」

 

「わかった。なら、予定通り一つは僕たちが受け持つ。もう一つはオッタル頼めるかな」

 

「いいだろう・・・」

 

フィンの視線に頷くオッタル。

二大派閥の作戦参加に士気が高まる冒険者の中、冷静に、鋭く双眸を細める輝夜。

 

「腰を折るようで恐縮ですが、罠の可能性は?」

 

「十中八九罠だろうね」

 

「⁉︎」

 

フィンの言葉に場の一同が固まる。

先ほどまでの士気の高まりが下がる。

 

「三つの本拠は囮の可能性。もしくは、僕たちを誘い込むための罠。なんにせよ僕たちは現状を打破するためには攻め込むしかない」

 

「死地へ私たちを送ると」

 

「爆弾にレベル6以上の強敵が出てきた今、どこも死地だ。もし死にたくないなら都市から逃げ出すことを勧めるよ」

 

「ッ、」

 

輝夜は目の前の腹黒小人族を睨みつける。

後出しにも程がある。アリーゼが本拠襲撃に名乗りを上げることも見越していたのだ。それに今の話を聞いても撤回することはないことを理解している。

 

「今回は先の問題が多い状況での襲撃だ。だから、アリスには有事の際に自由に動き回れる戦力として遊撃に徹してもらう」

 

爆弾と強敵の二つ。

それがどこにあるのかいるのかわからない状況での襲撃。

そして、あまりにも都合が良すぎる3つの本拠地の発見はフィンの親指を疼かせていた。

フィンの提案に一同が安堵する。【不動】アリス・グレイがいるのならば最悪は免れると信じて疑わない。

 

「ロイマン、有力派閥に他の区画にも目を光らせるよう協力の要請をしてくれ」

 

「仕方あるまい。都市の平和のためだ」

 

「襲撃は三日後とする。それでは解散」

 

フィンの合図とともに席を立ち部屋から出ていく冒険者達。

その場に残ったロキファミリアの一同とオッタル、ロイマン。

 

「さて、本題に入る前に彼女は報告してたかいアリス」

 

フィンはアリスに問いかける。

その問いにアリスは頷き答える。

 

「もうすぐ、来ると思う」

 

アリスが答えるとともに扉を何者かが突き破る。

そのことにオッタルとロイマンは身構えるがロキファミリアの一同は動揺していない。

入ってきたのは一匹のオオカミ。その大きさは巨体なオッタルをも覆い隠せそうな黒いオオカミであった。オオカミは1人の女性を咥えていた。

 

「なっ、アリス・グレイ。なぜ彼女を襲わせた」

 

オオカミがアリスの作り出した魔物であること、そして女性がギルド職員であることに気づいたロイマンは声を上げる。

 

「『内通者』だから」

 

「⁉︎」

 

「ロイマン、すまないね。アリスの魔法で今回の会議に出席した冒険者とギルド内の職員を調べさせてもらった」

 

アリスの魔法、【ラグナロク・ハイリヒトゥーム】は結界魔法。その効果は結果内のであらゆる事象を行う。

事象の出力は本来なら短文詠唱程度の威力しか出ないが妖精歌唱の効果により追加詠唱を行うことで効果、出力を変化できる。アリスが【探索、索敵】と唱えることにより結界内の人の位置や情報を読み取ることができたのだ。

 

「闇派閥は決戦を行おうとしてる。僕がヴァレッタなら今まで使わなかった『内通者』を使う。この日のために使わなかった切り札の一つを切るだろうと思ってね」

 

「全く、【殺帝】とお主は嫌いあっておるのに何故かお互いのことを理解しあっておるの」

 

「ガレス、やめてくれ鳥肌がたつ」

 

ガレスの呟きに冗談じゃないと即答するフィン。

彼の腕には本当に鳥肌が立っており、件の【殺帝】ヴァレッタも寒気がしたらしい。

 

「アリス、今から各ファミリアに作戦は2日後に変更と知らせてくれ」

 

「わかった」

 

アリスはオラリオ上空に飛ばしていた鳥の魔物達へと指示を出す。囁き鳥と名付けた魔物達はアリスの意思を声に出して報告してくれる。

 

「さて、彼女の処遇はロイマン任せるよ」

 

「・・・わかった」

 

ロイマンは顔を色を悪くする。

会議頭で冒険者を叱りつけたが、まさかギルドに裏切り者を出したとなれば責任追求は免れない。

 

「さて、本題に入ろうか」

 

「「・・・」」

 

フィンの言葉に2人は身構える。

 

「本当に【暴喰】なのか」

 

オッタルは重い口を開きフィンに問いかける。それに答えるようにフィンが頷く。

 

「まさか本当に【暴喰】と【静寂】、ゼウスとヘラが寝返ったのか」

 

ロイマンはその事実に動揺する。

 

「私とガレスが現場を確認した。現場には【静寂】特有の魔力の残滓を感じ取れた」

 

「儂もあの斬撃には見覚えがある。オッタル、お主も薄々は勘づいておろう」

 

リヴェリアとガレスが答え、ガレスの問いにオッタルは黙って頷く。

 

「どうするのだ。相手はレベル7。戦力が完全に逆転したぞ」

 

「対策はない。時間が無さすぎる。だからアリスを遊撃に置いた。アリスかオッタル、もしくは僕たちが2人または3人がかりで対処するしかないだろうね」

 

フィンの言葉にロイマンはそれしかないかと落胆する。

 

「話は以上だ。今の話は決して口外しないように頼む」

 

●●●●●

 

「おい、【顔無し】。作戦を明日からでも出来るようにテメェの主神様に伝えとけ」

 

椅子に腰掛ける【殺帝】ヴァレッタは闇派閥の幹部【顔無し】ヴィトーに告げる。

 

「おや、内通者の報告では3日後では?」

 

純粋な疑問を告げる。

 

「はっ、フィンの野郎のそばにはあの忌々しい【不動】がいやがる。あいつがいる限り内通者の存在は気づいてるはずだ。この情報もブラフの偽情報を掴ませるためのものだろうよ」

 

「そこまでわかるとは、まるで両思いの恋人同士みたいですね」

 

「気色悪いこと言ってんじゃねーよ。ぶっ殺すぞ!」

 

ヴァレッタはフィンの策略に気づいていた。

フィン自体も完璧に誤魔化せるとは思っていない。

これで、状況は五分と五分になった。

 

決戦は2日後、

秩序と混沌が交わろうとしていた。

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