ロキファミリアの4人目   作:暇人M.MAX

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なんとか間に合った。
邪悪胎動はこれで終了。
次は正義失墜なんですけどストックが無くなったので投稿が不定期になります。
絶対アストレアレコード分は終わらせるので、
暖かい目でお待ち下さい。



邪悪胎動3

【殺帝】は笑っていた。

使えない信徒の1人が糞忌々しい冒険者の1人を道連れにしたのだ。

邪神に惑わされた愚かな少女がガネーシャ・ファミリア所属の冒険者【象神の詩】アーディ・ヴァルマを巻き込んで自爆した。

ヴァレッタは歓喜か、リュー達秩序側は絶望した。特にアーディの姉シャクティは槍を取りこぼして呆然としている。

 

「大丈夫かアーディ」

 

「大丈夫です」

 

しかし、爆炎の中から2人の声が消えてくる。

 

「はっ?」

 

「えっ⁉︎」

 

ヴァレッタはその不可解な現象に首を傾げ。リュー達はその声に気づいた。

煙が晴れその場にいたのはアーディと自爆した少女を抱えるアリス・グレイの姿があった。

誰にも気づかれずにこの現場に忍び込んだアリスは爆発する爆弾を少女から切り離しその爆発と爆風を剣圧によって防いだのだ。

 

「ふっーーーー、ざけんじゃねーーーーーーー!この糞アバズレがー!」

 

ヴァレッタは叫び声を上げる。

ヴァレッタにとってアリス・グレイは憎悪の対象だった。策略を練りに練った作戦を毎度のことに理不尽に防いでいたアリス。戦闘の際にはこちらのことを殺さないように手を抜かれていることにも気づいた。

存在そのものがヴァレッタは気に食わなかった。

 

「ヴァレッタ様、街中の信徒達が自爆を決行してますが魔物達に冒険者や市民への被害が食い止められています。それに爆発による建物の被害がありません!」

 

「ッ⁉︎」

 

ヴァレッタは外の空を見る。

夜中である空は黄昏の色をしていた。都市全体を囲む魔法陣が光り輝いていた。

【ラグナロク・ハイリヒトゥーム】により構築された結界陣が空を照らしていた。

アリスが使ったのは防護魔法、街と市民に被害が出ないように防護魔法をかけたのだ。

【不動】の真骨頂は単身のつよさではなく戦域を支配することに長けている。

 

「野郎ども、自爆しろ!」

 

「もう遅い」

 

ヴァレッタは瞬時に指示を出すがもうすでに遅く。

少女をアーディに託したアリスの身体が一瞬ぶれたと思いきや信徒達が気絶し出す。

 

「〜〜〜引くぞ!」

 

レベルで勝っていた現状がアリスの登場でひっくり返された。ましてや、秘策の自爆攻撃が効かないとなるとこの場は不利と考えたヴァレッタは撤退の合図をする。

 

「待ちなさい!」

 

「待って、リオン」

 

リューが追いかけようとするがアリーゼが止める。

 

「アリスが被害を食い止めてくれてるけど街中は混乱してるはず、まずは市民の誘導が先よ」

 

「しかし、今やつを逃がすわけには」

 

「私が行く」

 

2人の会話にアリスが入る。

アリーゼはアリスの提案に頷き任せる。

アストレア・ファミリアは避難誘導に、ガネーシャ・ファミリアは避難誘導及びこの場で気絶している信徒達の対処にあたった。

 

●●●●●

 

「おいおい、いいのか私ばっか追いかけて」

 

屋根の上を走り逃げ回るヴァレッタ。

それを追いかけるアリス。

アリスの進路を妨害しようと数多くの闇派閥が立ち塞がる。それをアリスは峰打ちで気絶させながら前へ進む。苦戦はしてないが一向に距離が縮まらない。

 

「あの糞メスガキどもが私のところに来たってことはあんたのお仲間のところには【暴喰】か【静寂】がいるぜ。今頃死んでるかもな?」

 

ヴァレッタは逃げながらも挑発を辞めない。

ヴァレッタが生粋のサディストであるのも含めるが、その挑発に逆上して視野を狭れるのが目的でもある。

 

「お優しい【不動】さまのことだ。仲間を見捨てられない、私たち闇派閥を殺さないお前はとんだ偽善者だよ!」

 

アリスは止まらない。

どれも事実だ。家族が大切だから今からでも駆けつけたい。目の前の元凶を殺すことはしたくない。ただ、事実を言われてるだけなのだから怒り狂う必要もない。ただ、自分のやるべきことをやればいいだけなのだから。

 

「ちっ、少しは表情を動かせよ能面エルフが」

 

全く動揺しないアリスに苛立ちが募るヴァレッタ。

 

(被害はあの【不動】のせいで少ないが狼煙は上がった。あとはあの2人が動き出すまで私がこいつを引きつければいい)

 

挑発をしながらも状況を理解して逃げに徹するヴァレッタ。

レベル7の2人が秩序側上位冒険者を潰してくれれば戦力は覆る。あとは、2人にこの【不動】を押し付ければいいだけだ。

アリスが気絶しれば街にいる魔獣も魔法も消える。あとは殺戮を楽しめばいいだけだ。

暫く逃走劇を繰り広げる2人をよそに状況は動いていた。

市民に少なくない被害が出始めており、闇派閥と避難誘導に追われる冒険者達も混乱していた。中央広場になんとか避難誘導を進めているが未だに爆発音は鳴り止まない。

【ラグナロク・ハイリヒトゥーム】は万能であるが扱いが難しい魔法だ。特に防護・回復魔法はそれ相応の集中力が必要となる。無機質で動かない建物等ならアリスの空間認識能力を持ってしれば出来なくはないが、動き回る人や物に魔法をかけるには数秒足を止めて集中しなければならない。そのため、市民には防護魔法がかかってないので被害が出始めているのだ。

そして、ある知らせが都市を揺らした。

 

「【猛者】陥落!」

 

誰が叫んだか、それは秩序の冒険者か、闇派閥か、それとも神々か。

誰かはわからない叫び声に都市全域が揺れた。

最強の敗北は多くの冒険者の心を挫いた。ある者は足を止めて、ある者は絶望に膝を降る。数々の冒険者が絶望するなか闇派閥は手を休めない。

しかし、次々に聞こえてくる冒険者達の敗北がアリスの足を鈍らせる。

 

「【九魔姫】【重傑】がやられた!」

 

その言葉を聞くや否やアリスはすぐさまに方向転換して駆け出す。

それを見たヴァレッタは冷や汗を抑えながら笑みを浮かべる。

 

「たく、遅いんだよ。生きた心地がしなかったぜ」

 

●●●●●

 

「・・・」

 

灰色の髪をした女性、【静寂】アルフィアは目の前で倒れ伏せるリヴェリアとガレスを見下ろしていた。

 

「お前達は相変わらずあの女の足を引っ張るんだな。ほら来るぞ、お前達を守りに英雄になれるのに英雄を放棄した女が」

 

その声は落胆の色を見せていた。

刹那、リヴェリア達の前に疾風の如く現れたアリスがアルフィアとの間に立ち塞がる。

 

「アルフィア!」

 

「久しいな、アリス。相変わらず家族ごっこに明け暮れてると見える」

 

旧知の再会に喜びはない。

かたや大切な仲間を傷つけられた者、かたや大切な存在を傷つけた者。目の前に存在するのは明確な敵。

 

「彼等は私が引き受けます」

 

遅れてやってきた【万能者】アスフィがリヴェリア達を抱えて戦線を離脱しようとする。

 

「お願い」

 

アリスは振り返らずに短く告げる。

姿勢を低くし居合の姿勢をとる。

 

「来いアリス」

 

「・・・」

 

刹那、一瞬風が吹いたと同時に確かに存在した2人の距離がアリスによってゼロとなる。

神速の抜刀をもって繰り出される切り上げをアルフィアは紙一重で上空へ逃れることで交わす。

 

「【福音】」

 

不可視の魔弾がアリスを襲う。

それらは凄まじい魔力を纏っており直撃すればタダでは済まず、防いでも余波で平衡感覚が崩れる音の攻撃。

アリスの耳が微かに揺れる。

 

「疾ッ!」

 

二閃

斬撃を放ったアリスの前で魔法が斬られる。

 

「聴覚だけで私の魔法を捉えるか。相変わらず規格外な奴め」

 

「アルフィアだけには言われたくない。短文詠唱なのに相変わらず規格外な威力」

 

屋根の上に立ったアルフィアを追いかけてアリスも屋根の上へ上がる。

お互い軽口を叩くがどちらも気にした様子はない。

 

「なんでこんなことを」

 

「貴様が家族ごっこに明け暮れてぬるま湯に浸かっていると知ってな、それを壊したくなっただけだ」

 

「メーテリアが望むと」

 

「貴様が妹の名を口にするな!」

 

アルフィアが魔法を繰り出す。

アリスはその場から退避する。

屋根が破壊されて家が崩壊する。アリスが施した防護魔法をも貫通する威力。

 

「約束を忘れた貴様が妹の名を口にするのだけは許さん!」

 

続け様に魔法を繰り出すアルフィア。

アリスはアルフィアを中心に周りを駆ける。魔弾の数々を交わしながらアルフィアへと肉薄する。

アリスの間合いになった瞬間に斬撃を放つ、それをアルフィアは後ろに飛びながら間合いを離す。

先ほどのヴァレッタとの逃走劇と同じ構図になるが状況が違う。

相手がアルフィアであることレベルが上の相手であること、そしてアリスに余裕がなく冷静さを欠いており周りが見えていない、視野が狭待っていること。

 

「【父神(ちち)よ、許せ、神々の晩餐をも平らげることを。貪れ、炎獄(えんごく)の舌。喰らえ、灼熱の牙!】」

 

アリスに迫り来る脅威。

詠唱を聞いた瞬間に危機感を感じたアリスは咄嗟に回避を取ろうとするがすでに遅い。

 

「【レーア・アムブロシア】!」

 

「ッ⁉︎」

 

回避は不可能と感じたアリスは刀にてそれを防ぐ。

突如現れた大男、【暴喰】ザルドが放った斬撃はアリスの刀に阻まれるがお構いなしに自身の全力の力にて振り下ろす。

 

「ーーー⁉︎」

 

瞬間、アリスの刀が砕けちりアリスは後方へと飛ばされる。

アルフィアは動きを止め、アリスの行方へと目を向ける。

アルフィアの隣に降り立ったザルドも大剣を肩乗せて同じ方向へと目を向ける。

 

「やったか」

 

「いや、手応えが軽い。刀が砕けた瞬間後方へ飛ぶようにして威力を逃したようだ」

 

あれで倒せたとは信じてない2人はそれでも確かめるように話は合う。

煙が晴れて、そこに立っていたのは頭から軽く血を流すアリスの姿だった。

 

「ザルドッ!」

 

アリスは叫ぶようにザルドの名を呼ぶ。

 

「久しいな【不動】、相変わらず勇者の餓鬼の下に甘んじているようだな。なんだその体たらくは。昔、俺たちに土をつけたとは信じられない」

 

レベル7が2人揃った。揃ってしまった。

オッタルは倒れ伏せ、リヴェリア達は戦線への復帰は無理。フィンが援軍を遣す余裕はない。

肉薄するアリスとザルド。

 

「【創造】」

 

瞬時に魔法にて武器を作るアリス。両手に2本の剣を持つ。

剣と大剣がぶつかる。

ぶつかると同時にアリスの剣が砕ける。

軽い脳震盪を起こしてるアリスは強度までのイメージを浮かべられず側だけ作っている。

 

「【創造】【創造】【創造】【創造】【創造】【創造】!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

砕けると同時に剣を作り直すアリス。

ザルドは大剣の重さをものともせずに嵐のような斬撃を繰り出す。

 

「【福音】」

 

ザルドが当たらない射線へと移動したアルフィアが魔法を放つ。

 

「ッ!」

 

魔法の予兆を感じ取ったアリスがザルドに剣を投げつける。

ザルドは首を逸らすことでそれを交わすが攻撃の手が止まる。

瞬時にザルドの腹部を蹴りその場から離れる。

 

「【創造】」

 

弓と複数の矢を作り出し空中でそれをアルフィアに向けて放つ。

 

「舐めるな!」

 

蹴られたザルドはアルフィアの前へと立ち大剣よる一刀でそれらを叩き落とす。

屋根は着地したアリスは顔を歪ませて2人を睨む。

 

「なんで、なんで、なんで!」

 

かたや、剣をぶつけ合い、高めあった好敵手。

かたや、実の妹のように面倒を見てきた家族のような存在。

ファミリアは違えど確かな絆で結ばれていた。

 

「「すべては貴様のせいだ」」

 

「⁉︎」

 

2人が答えた言葉に全くの検討もつかないアリスは驚きの表情を見せる。

 

「貴様が前へ進まなかったから」

 

「貴様が立ち上がらないから」

 

「「貴様が『英雄』にならなかったから、こうなった」」

 

「ーーー」

 

2人の答えに何も言い返せずにただ黙ることしかできない。

ああ、その通りだ。

家族がいることに満足していた。誰かを殺すことに躊躇っていた。強くなりすぎることに躊躇していた。喝采を浴びることを避けていた。栄光を掴むことから逃げていた。フィンの野望のために目立つことを辞めていた。

ロキ・ファミリアは【勇者】フィン・ディムナのファミリアでなくてはならない。決して【不動】アリス・グレイのファミリアではないのだと。

知っていた、こうなることを知っていたのにこうならないで欲しいと何もせずに祈っていた。

 

「「『英雄』にならない貴様は眠っていろ」」

 

アルフィアから放たれる魔法を咄嗟に避ける。その動きは先ほどのキレがなく次への動作への余力がない。

アリスに接近するザルド。武器を作り受け続けるアリス。受け続けることしかできず身体のいたるところに傷ができる。

アルフィアの魔法も避けることが出来ずに受けてしまう。

吹き飛ばされ意識が遠のくアリスの視界に落胆した視線を向ける2人の姿が見えた。

 

【不動】アリス・グレイが気を失ったことにより、街中にいた魔獣が、街を守っていた魔法が消える。

それを見た冒険者達はアリスの敗北を知った。保っていた戦意が瞬く間に挫ける。

そこからは破壊の嵐がオラリオに降り注いだ。

アリス・グレイという異端の存在が介入した。しかし、たった1人の少女を救っただけで正史と変わらない絶望がオラリオに降り注いだのだった。




レベル7ふたりがかりでも倒せないレベル6って規格外すぎでは?
やりすぎたけど反省はしていない。
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