ロキファミリアの4人目   作:暇人M.MAX

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正義失墜です。
筆が進んで僅か1時間で描けた。
アストレアレコードなのに全然彼女達が出てこない。



英雄生誕

夢を見ている。

自分が見ているこの情景は2度と手に入ることはない景色だと知っている彼女。

 

寝台に上半身を起こす白髪の少女と寝台に腰を掛けて彼女に何かを施している白金髪の女性、アリス。

 

「よし、これで暫くは大丈夫だろう。最近、調子はどうだメーテリア」

 

「ありがとうございます、アリスさん。アリスさんのおかげで調子も良くて最近は歩き回ることもできるんですよ」

 

治療行為を終わらせた2人は雑談を続ける。

この前は何処へ行った、あの時はああしたと楽しそうに日頃の行いを喋るメーテリア。それを受け答えしながら楽しそうに聴くアリス。その光景はまるで本当の姉妹のように見えた。

オラリオに来た時、ヘラから改宗を持ちかけられたアリス。

それを断り拒み続けた。次第にヘラも諦めたのかある日、頭を下げてきた。

アリスにとある姉妹の治療をして欲しいと。アリスの魔法とアビリティ【破邪】は病、呪い、毒に効果があり。メーテリアを蝕む不治の病にも治すことは出来ずとも和らげる効果があったのだ。

アリスは度々ヘラ・ファミリアの本拠に足を傾けメーテリアとその姉アルフィアの治療をしていた。

突然、部屋の扉を誰かが蹴破る。

 

「来たな、忌々しい糞女め。今日こそは貴様に吠え面をかかせてやる」

 

扉を蹴破った、灰髪の少女アルフィアは部屋にいたアリスを指差し睨みつける。

治療行為を受けてから度々アルフィアはアリスに挑発して戦っていた。

最愛の妹と仲良く話すアリスが気に食わないのだ。妹を取られた姉は嫉妬からアリスに突っかかっていた。

成績はアルフィアの無勝全敗。先日、レベル6となりアリスのレベルを超えたアルフィアは今度こそ憎きアリスを倒すと意気込んでいる。

 

「もう、姉さんったら。アリスさんに迷惑かけちゃダメでしょ」

 

そんなアルフィアを叱りつけるように言うメーテリア。

メーテリアの言葉を無視してアルフィアは睨みつけるのを辞めない。

 

「わかった。場所を移そう」

 

アリスは腰を上げて言う。

 

●●●●●

 

「はい、怪我と病の治療は終わり」

 

あの後、本拠の鍛練場で戦ったアリスとアルフィア。

結果はアリスの勝利に終わった。

コテンパンにやられたアルフィア体を動かすことはできず現在、アリスに膝枕をされながら治療行為を甘んじて受けていた。

 

「終わったなら、この態勢を辞めろ」

 

敗者として屈辱を甘んじて受けていたアルフィアはそれでも憎まれ口を叩く。

アルフィアの言葉を無視してアリスは彼女の頭を撫でる。

 

「私もお邪魔します」

 

それが羨ましくなったのかメーテリアがアルフィアが頭を置く反対の足に頭を乗っけた。

アリスはそれに微笑みメーテリアの頭を撫でる。

 

「辞めろと言っているのに」

 

アルフィアは悪態をつきながらもその行為を受け入れている。頬を赤く染める彼女はこの行為が恥ずかしいのだ。

 

「アルフィア、無茶してないか?この前よりだいぶ強くなった」

 

アリスは先の戦闘でアルフィアの動きがこの前より段違いに良くなっているのに気づいた。

 

「ふん、レベルが上がったからな。なのに、レベルが上の私に勝つなど相変わらず規格外だな貴様は」

 

「そうか。おめでとう、アルフィア」

 

褒め称えるアリス。それにアルフィアは「子供扱いするな」と吠え返すが聴く耳を持たないアリス。

レベルが上の者の打倒。それはあり得なくはないがとても困難な行為を平然とやってのける。

【不動】と呼ばれるアリスは昔、ヘラ・ファミリアの団長である【女帝】に打ち勝ったことがある。祝福と呼ばれる規格外のスキルを使い当時レベル6と3、3つの差を埋めて勝利してみせたアリスはオラリオで名を馳せた。

自身の主神が欲したその祝福はアリスという異端がもたらした奇跡と聞いたアルフィア。本来なら二つの存在が必要なのに1人で完結してみせた秘術。

神々でも予測できなかった未知の存在。

才禍の怪物と呼ばれるアルフィアでさえ超えることのできない異才の怪物、それがアリス・グレイという存在だった。

 

「でも、生き急いでるように見える。アルフィアは幼いんだからもっと楽しいことを探して欲しい」

 

「ふん、私は生きることに執着などしない。貴様も私に構わずメーテリアの治療に専念してればいいんだ」

 

「なんで?」

 

「この雑音だらけの世界で私は生きたくない。この*****世界になんの希望を見出せばいい」

 

アルフィアの悲痛。誰にも見せたことのない弱みをアリスに曝け出す。

アリスと言う強さを知った、規格外を感じた。確かな信頼を寄せているからこそアリスに弱みを見せれた。

 

「違うわ、姉さん」

 

「「⁉︎」」

 

2人の会話に入り込んでくる。

目を閉じていたはずのメーテリアは立ち上がりアルフィアの顔を覗き込む。

 

「世界が*****のは当たり前、それでも私はこの世界が大切なんだ。だって、この世界には姉さんがアリスさんが、ヘラが皆んながいる。皆んなが愛した世界がある。だから、私はこの世界を*****世界に変えたい。皆んなが愛せる世界に変える」

 

誰よりも弱い少女は、この場にいる誰よりも強い心を持っていた。

誰かの手を借りなければ生きていけない少女の笑顔はこの世界のどんな光景よりも綺麗だった。

きっと、彼女の優しさは誰かを笑顔にする。彼女の笑顔は誰かを幸せにする。

 

「だから、姉さん、アリスさん。どうかこの世界を*****世界にするために手伝ってくれない」

 

ああ、確かにこの時私は約束したのだと思い出すアリス。

忘れてしまった約束をアルフィアは覚えていた。なのに姉として接してきた自身が忘れていた。

約束を思い出しても覚悟は決まらない。でも、もう一度彼女と会わなければいけない気がする。

 

●●●●●

 

「・・・うっ」

 

身体の痛みを感じながら目を覚ますアリス。

 

「やぁ、目が覚めたかいアリス」

 

目を覚ましたアリスを待っていたのは今回の損害報告を眺めていたフィンだった。

 

「どれぐらい寝てた」

 

「3日と行ったとこかな。断続的に闇派閥から嫌がらせはあるけど大きな被害は出てない」

 

アリスは気を失った後のことをフィンから聞かされた。

神の一斉送還にそれを実行した邪神エレボスの存在。

 

「すまない」

 

一通り説明し出したあとフィンはアリスへ謝る。

アリスは謝罪の意味がわからず首を傾げる。

 

「僕の判断ミスだ。あの2人の存在を知っておきながら勝てると傲慢にも考えていた。8年前、僕たちがゼウスとヘラを追い出してから僕は満足していた。彼等に勝った気でいた。でも、実際は前へ進んでもいない停滞したままだったんだ」

 

「・・・」

 

フィンの懺悔を黙って聞くアリス。

今回の件で、冒険者は人々から叱咤を受け続けている。街に広がる混乱は止むことはなく。悲鳴が鳴り響いている。

 

「弱気になりすぎたね。君が目を覚ましたことを皆んなに知らせてくるよ」

 

フィンは椅子から立ち上がり部屋を出る。

部屋に残されたアリスは窓から見えた景色は曇り空が広がっておりその光景はとても美しくなかった。

 

●●●●●

 

部屋を飛び出したアリスは街中を彷徨っていた。

アリスの存在を確認した冒険者や住民は足を止めてアリスを見る。

彼女に向ける視線には失望が見えていた。

英雄は迫害され、悪が力を増す。

あの時の里のように悪意が街中に充満していた。

誰のせいでもない、決してアリスや戦い続けた冒険者達のせいではない。でも、この状況を誰かのせいにしなければ正気を失いそうな弱者達はその悪意に呑み込まれている。

悪意に満ちた視線を受けながら歩き続けたアリスは次第に人がいない場所に来ていた。

視線を上へ向けると、半壊した教会が建っていた。

かつて、メーテリア達ときた彼女が好きだった場所。

 

「なんでここに来ちゃうんだろう」

 

アルフィアと再会したせいかもしれないという考えが頭によぎる。

扉を開けて中に入る。

 

「来たか、アリス」

 

「アルフィア」

 

中には灰髪の女性、アルフィアが待っていた。

対峙する2人には戦闘の意思はない。

アリスは黙って教会の椅子に座り、アルフィアはアリスとは反対側の椅子に座る。

 

「覚えているかアリス」

 

「ああ、この場所にはよくメーテリア達と来た」

 

昔、メーテリアに手を引かれてこの場所に連れてこられたアリスとそれを追いかけていたアルフィア。

暖かい記憶、もう戻ることのない過去。

 

「私は今でもこの世界が*****と思っている。街の現状を見たか」

 

「・・・」

 

「戦い抜いた英雄は迫害され、闇派閥という悪が力を増している。ならばこの悪意を断ち切るために、新たな英雄を産むために悪役が、私達がすべてを呑み込もう」

 

「・・・」

 

アリスは黙ってアルフィアの言葉を聞き続ける。

彼女達が本当の悪になっていないことなんてわかっていた。あの時、トドメを刺さなかったのも、市民に被害を出さないように射線に気を使っていたことに。

 

「私は・・・」

 

彼女達の目的も知っている。

それでも決心がつかない。その道は茨の道、帰り道などなく前へ進み続けなければならない。英雄なんてものは決して華々しくないのだ。

 

「私はメーテリアとの約束を果たせない。この短い命では時間がなさすぎる。だから、この*****世界を*****世界に変えてくれる英雄を作り出す。そのための壁となる。メーテリアの子が愛せる世界になるために礎となる」

 

お前はどうなんだと視線で語りかけてくる。

答えれない、答えを持ち合わせてないから。

悩むアリスをよそに2人へと近づく人物がいた。

 

「お前は来るなと言ったぞ、エレボス」

 

その人物、神物を睨みつけるアルフィア。

その視線をものともせず肩をすくめる。

 

「いや、俺も【不動】に興味があったんでな。古代、とある女神が下界に授けた秘術を受け継いだアリス・グレイにね」

 

悪意をまるでコートを着るかのように纏う邪神エレボス。

アリスはこの全ての元凶であるエレボスと初めて対峙した。

 

「【不動】、正義とは?」

 

アリスはこの時分岐路に立たされていた。

 

●●●●●

 

正義とは、アリスにとってその答えを持ち合わせてはいない。

だが、昔メーテリアに言われた言葉を思い出す。

 

「世界が美しくないのは当たり前、それでも私はこの世界が大切なんだ。だって、この世界には姉さんがアリスさんが、ヘラが皆んながいる。皆んなが愛した世界がある。だから、私はこの世界を美しい世界に変えたい。皆んなが愛せる世界に変える」

 

彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ。そして、今まで助けてきた人々の笑顔が頭によぎる。

アリス・グレイは世界を旅してきた。その旅は『偽善』で満ちていた。罵倒された時もあった、非難された時もある、でも感謝され皆んなが笑っていた景色は確かに美しかった。

 

アリスの前に小さな炎が現れる。

アリスはそれに向かって歩み出そうとするが足が重くて動けない。

そんな時、アリスの背中を押す存在がいた。

 

「がんばって、アリス姉さん」

 

かつて、共に過ごしいつしか姉と呼んでくれたメーテリアが笑顔でアリスの背中を押して送り出す。

重い足取り、それでも確かに前へ確実に歩みを進み続けている。

 

「その道は地獄だぞ」

 

声が聞こえる。

行くなと、この先の過酷さを告げている。

 

「それでも前へ行くよ、父さん」

 

前へ進まないと何も得られないから。

 

「後戻りはできないよ」

 

「もう戻ることはしないよ、リュート兄さん」

 

後ろにはもう救ってきた人たちがいるから。

 

「戦い続けることになる、傷つくことになるぞ」

 

「戦うことに、傷つくことをもう恐れないよ、アラン兄さん」

 

戦い抜いた先に美しい世界が広がってるから。

 

「その先は悲しみに満ちてるかも知れないわよ」

 

「悲しみを乗り越えた先に皆んなが笑って過ごせる未来があるから前へ行くよ、アリサ姉さん」

 

きっとその笑顔はとっても美しいから。

 

炎の前へたどり着いたアリス。

それを掴み取ろうとしたら目の前が光だし炎が形を変えて1人の幼い少女となる。

 

「アリス」

 

本当のアリス・グレイがそこにいた。

異界の魂を宿さない、本当のただの少女がこちらを見上げていた。

 

「ごめん」

 

「なんで」

 

「私は君の人生を奪った。きっとあの里で皆んなに愛されて平和に暮らす君の人生を奪ってしまった」

 

少女に謝罪を口にする。

本来歩むはずの人生を壊した。そして、これから歩む道は険しく遠い道。それに彼女巻き込むことへの謝罪。

 

「大丈夫、あなたは1人じゃない。私がいる、アリサ姉さんが、兄さん達が皆んながずっとそばにいるから」

 

アリスの手を包み込む幼いアリス。

 

「一緒に行こう」

 

答えは見つかった。

この美しない世界を誰もが愛せる美しい世界に変えるため前へ2人の少女は前へ進み出す。

 

●●●●●

 

目を閉じていたアリスは目を見開きエレボスとアルフィアを見る。

先ほどまでの暗い顔はなく、答えを得たアリスに迷いはない。

 

「『偽善』」

 

「「・・・」」

 

アリスが出した答えを黙って聞く2人。

 

「誰かを救いたい、守りたい、笑顔にしたい。その行為はきっと『偽善』と呼ばれるんだろう。でも、それが私の正義」

 

「それはとても険しい道だぞ」

 

エレボスが求めた答えより遥かに上をいく答えにたまらずエレボスは言い返す。

 

「皆んなが笑っていたから。『偽善』を貫いた先には美しい世界が待っているから。私はそれだけで前へ進める」

 

「アリス・グレイ、君の答えを聞かせてもらった。ならば、その正義が世界を救えるかこのエレボスが確かめさせてもらう」

 

「ああ」

 

エレボスとアルフィアに背を向けて教会から出ていくアリス。

 

「まったく、愚鈍な姉だ。ここまで焚き付けなければ立ち上がらないとは手がかかる」

 

彼女の背中を見たアルフィアは目を開き微笑みを浮かべる。

最愛の妹、メーテリアに手を引かれていたアリス、常に背中を見続けていたアルフィア。

あの時の光景は戻らない、でもあの時の約束は果たされる。

 

●●●●●

 

「フィン!」

 

ロキやリヴェリア達と今後について話していたフィン達の元に駆け込んできたアリス。

 

「部屋を抜け出したと思ったら今度はなんだい?」

 

息を切らして駆け込んできたアリスに問いかける。

 

「最善の作戦は?」

 

「・・・、籠城だね。市民を守り、少数精鋭で各戦力を各個撃破する。僕とロキの予想が正しければダンジョンからも本命が来るだろうし」

 

アリスの問いに疑問を浮かべながらも答える。

今までの彼女なら何も言わずにフィンの指示に従ってきた。作戦の内容について追求してきたこともない。

 

「最高の、犠牲も出さずに済む作戦は」

 

「⁉︎それは、こちらから打って出ること。でも、あまりにもリスクが高すぎる」

 

アリスの言葉により脳裏をよぎったもう一つの作戦。ハイリスクハイリターンな作戦。全滅か無傷の完勝かの2択。

 

「やろう、フィン」

 

しかし、それを実行しようと言うアリスに目を見開く。

アリスの中で何かが変わったことに気づく。

 

「私はもう迷わない、前へ進むよ。フィン達のことを待つこともやめる。私は英雄になる」

 

「「「⁉︎」」」

 

決意の表明。

アリスの言葉に3人の心が揺れる。それを見ていたロキは面白そうに笑みを浮かべる。

アリスは黙って手を前へ出す。

3人を試している、君たちは英雄になる気はないのかと問いかけてきている。

 

「全く、生意気なエルフじゃ!」

 

「そうだな。末っ子に諭されるとは私もヤキが回ったようだ」

 

ガレスとリヴェリアがその手に重ねる。

その光景を見て眩しく思うフィン。

彼等は自分とは違う、人工の英雄では最善を捨てて最高を選べない。

 

「フィン、君の勇気はどこにある?」

 

「ッ⁉︎」

 

アリスの言葉にフィンは揺れる。

そして、答えを出す。

 

「前だ、停滞し続けた僕の勇気は前にある。今この時前へ進まないときっと勇気を見失う。それだけは絶対ダメだ」

 

フィンは前へ進み手を重ねる。

 

「熱き戦いを」

「まだ見ぬ世界を」

「一族の復興を」

「家族のために」

 

この時、英雄は産声を上げた。

 




この作品のアルフィアとザルドが嫌われてるらしいですが作者は2人のことは好きです。
アルフィアなんて3体とも完凸してます。
ザルドも初期は完凸済みです。
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