ロキファミリアの4人目   作:暇人M.MAX

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間に合ったけど急ピッチで描いたからちょっと短い
もっと書けた気がする
流石に明日の更新は無理そうです


【不動】【勇者】再誕

決戦の日

曇った空がオラリオを覆っていた。

バベルを囲むように氷壁ができていた。

その中に身構えて闇派閥の襲撃に備える冒険者達が大勢身構えていた。

 

「フィ〜〜〜ン、やっとテメェをギタギタにしてやれる」

 

闇派閥を指揮するヴァレッタは高台の上から籠城する冒険者達を見下ろしていた。

闇派閥達、狂人者は殺戮が今か今かと待ち遠しくて仕方がない。

邪神達はの光景に高笑いをあげている。

 

「はっ?」

 

自分達の勝利を疑わない彼等はある光景に目を疑った。

氷壁の前に陣取るのは白金の髪を後ろに纏めて縛り片刃の大剣を地面に刺し白いマントを羽織るアリス・グレイのみ。

 

「ヴァレッタ様、大変です。敵が1人だけです」

 

「んな、見ればわかる!」

 

「いえ、氷壁の中には敵がいません」

 

「はっ?」

 

報告してきた下っ端の言葉を信じられないヴァレッタ。

氷壁の外に陣取るアリスの後方の氷壁の中に確認したヴァレッタ。その後方には多くの武装した冒険者が見える。

 

「冒険者ではありません。レベル1や2程度の取るに足らない者たちもいますがそのほとんどが武装した神々や一般民達です」

 

その報告を聞いたヴァレッタは訳がわからなかった。

守るべき者たちを立たせて冒険者達はどこへ行った。

即座に思考を巡らせる。都市外に出た形跡はないから予想できるのはダンジョンにいる事。

闇派閥達に作戦をわからせないためのハリボテの軍団。

撤退はできない、この戦場に立たされた今、引けばアリスが追撃する。闇派閥の本当の本拠の存在を知らせることになる。

 

「糞、糞、クソォーーーー!」

 

攻める以外の道がないヴァレッタは雄叫びを上げる。

 

●●●●●

 

「おいおい、マジかよ」

 

絶対悪の怪物、『神獣の触手』を引き連れていたエレボス。

ここへ精鋭達が来るだろうとふんでアルフィアとヴィトーを連れて待ち構えていたエレボスの前にあり得ない光景が広がっていた。

 

「見ているかい、神エレボス、アルフィア。そして、見えているかい、ヴァレッタ、ザルド」

 

ここにいるエレボスとアルフィアに、そして地上にいるヴァレッタ、ザルド、闇派閥達に語りかけるフィン。

 

「どうやら君たちはやり過ぎたようだ。なんたって、ゼウスやヘラでさえ成し遂げれなかった偉業を成し遂げてしまったんだからね」

 

エレボス達の前に広がる大軍。

冒険者達の群れが目の前に広がっていた。

 

「オラリオのレベル3以上の冒険者がここにいる。そして、地上には悪に屈さずに立ち上がった神々やオラリオの民がいる」

 

悪に立ち向かうためにオラリオは一つになった。

闇派閥に立ち向かうためにある程度は力を合わせていた現状とは違う。確かに肩を並べて戦う共闘がここに実現していた。

ゼウスやヘラがなしえなかったオラリオ全体が力を合わせる光景にアルフィアは目を見開き驚愕する。

 

●●●●●

 

決戦前日

 

中央広場に集められた市民、神々、冒険者達は【勇者】フィン・ディムナを見上げていた。

前日、アストレア・ファミリアによって防がれた【白髪鬼】の襲撃により市民の信頼を取り戻しつつある冒険者達。そのおかげですんなりと集めることができた。

 

「この場に集まってくれたことに感謝を述べる」

 

本題に入る前にフィンは感謝の言葉を口にする。

 

「今回の作戦の内容を言う」

 

フィンの口から述べられた言葉に皆が口を開く。

それは市民を危険に晒す行い。許容できない作戦だった。

 

「ふざけるな!」「俺たちに危険を晒せと言うのか」「私の子供は怪我をしたのにまた危険を晒せって言うの」

 

罵倒が飛び交う。

予想していた光景にフィンは狼狽えることはしない。

 

「どうか、僕に君達の『勇気』を貸してくれ」

 

頭を下げるフィンに罵倒が鳴り止む。

冒険者の懇願。頼り、助けられ、救われるだけだった弱者に【勇者】が頭を下げて懇願してきたのだ。

 

「俺はやるぞ!」

 

1人の青年が声を上げる。

かつては盗みを働いた青年は1人の冒険者の少女に救われた。青年は改心して一つの善行を積んでいた。そんな青年が勇気を示した。

 

「そうだ、俺もやる。この街は俺たちの街だ、俺たちが立ち上がらなくてどうする」

 

一つの小さな勇気が伝達し新たな勇気を生んだ。

名乗りを上げる市民達。その光景に神々は目を輝かせる。

はるか昔に見た古代の英雄達、彼等は恩恵も無いのに立ち上がって見せたのだ。

 

「ありがとう、君達の『勇気』に感謝を」

 

この光景にフィンは胸が高まる。

 

「君達の勇気に誓い、君達を守り、勝利を導くことを約束する」

 

フィンは高々に宣言する。

 

「誓約はここなった。

神々よどうかご照覧あれ。これより停滞していた人類は歩みを進める。今から綴るは『人と神』の物語。『英雄』の時代は終わった。『神時代』はかつての栄光を失った。されど希望は潰えず新たな物語が始まる。どうか見守ってくれ、このファミリア・ミィスを!」

 

英雄の言葉に皆が雄叫びをあげる。

冒険者達の心に火が灯る。市民達の体に熱がたける。神々の魂に歓喜が浮かぶ。

道化の神はこの光景に笑みを浮かべる。

美の女神は興味のなかった魂達が輝き出したことに目を光らせる。

伝達の神は英雄達の雄叫びに高笑いをする。

 

「英雄に資格がいる?ああ、ああ。俺が間違っていた。英雄に資格なんていらない。誰もが英雄になれるんだ。見ろこの光景を、誰もがこの暗黒の時代を切り開こうとしている英雄じゃないか。派閥の共闘なんてものじゃない。そう、これは」

 

「オラリオ連合、と呼ぶべきかしら」

 

正義の女神はこの光景を前に確かな正義を感じていた。

【勇者】が焚き付けた炎が燃え上がっている。自身の眷属達もその火に当てられて胸を高鳴らせていた。

女神、アストレアさえもこの光景に胸を熱くしていた。

 

「フィン、やっぱり君は本物だよ」

 

この美しい光景を生み出したフィンにアリスは英雄の姿を見た。

 

●●●●●

 

「だが、所詮1人だ。あいつさえ倒せば神々も殺せる。そしたらダンジョンにいるフィンは無力になる」

 

叫び終えたヴァレッタは冷静に告げる。

短期決戦、フィン達に余力を与えずにアリス・グレイを無力化してフィン達を無力化する。

だが、それが困難なことをヴァレッタは知っている。

【不動】アリス・グレイの規格外を見てきたのだから。

こと、1対多に置いてアリスの右に出る者はいない。

 

「魔剣だ、ありったけの魔剣と魔法を奴に叩き込め!」

 

ヴァレッタの合図とともに詠唱を始める魔導士達。

魔法を持たない者も魔剣を構えて準備する。

 

「一斉に放てよ!」

 

決戦の火蓋が切られた。

 

 

「汚い空だ」

 

アリスは空を仰ぎ見ていた。

曇天が空を覆っていた。灰色をと通り過ぎて黒色に近い空。汚れきったそらがオラリオを包んでいた。

街中からアリスを倒さんとする闇派閥の詠唱の声が、魔剣を構える音が聞こえる。

アリスは地面に刺した大剣を抜き構える。

 

「【聖女祝福】起動」

 

1柱の光がアリスに降り注ぐ。

その光景を見た人々は超常なる力を目の当たりにする。

それを知らない神々は自身の力に等しい存在に動揺する。

それを知る神々はその光景に魅了される。

 

魔法の嵐がアリスに襲いかかる。

光の柱が収まり、アリスの周りを覆うように光の粒子が奔流していた。

大剣を脇構えにして構える。光の粒子が大剣に集まる。

迫り来る魔法がアリスの視界を覆い尽くす。

その瞬間、刹那の時に放たれるアリスの斬撃が世界を掻き消した。

 

「はっ⁉︎」

 

声を発したのは誰かはわからない。

しかし、闇派閥の誰かが発したことだけはわかる。

 

「おいおいおい、ふざけんじゃねぇー。なんだこれは」

 

ヴァレッタが【白髪鬼】が、初老の獣人が、妖魔の姉妹が闇派閥の全員が空を仰ぎみた。

 

「空を斬った!」

 

曇天は二つに裂けて、その隙間から晴天が差し込む。

 

「【黄昏の時、空を染め尽くせ】」

「【ラグナロク・ハイリヒトゥーム】」

 

空が黄昏色に染まる。

日光と混ざり合い黄金の輝きがオラリオに降り注ぐ。

その光景を見た者は、この美しい世界に魅せられた。

 

「貴方達の攻撃は終わり?」

 

アリスの脳裏によぎるのはこれまでの闇派閥の蛮行。

果物をくれた店主が死んだ。迷子の子供と母親を一緒に見つけた親子が子どもの亡骸を抱きしめて泣いていた。親しい者達が死んできた。

 

「なら、次はこっちの番」

 

これから始まるは戦闘と呼ぶには一方的すぎる蹂躙。

今でも殺しに躊躇いはある。でも、この美しくない世界を美しい世界に変えるために、【偽善】を貫くために。

悪役を倒そう。

 

「文句ある?」

 

●●●●●

 

「総員、構えろ」

 

勇者の合図に皆が身構える。

 

「【静寂】は僕たちが引き受ける。【白妖の魔杖】は全体の指揮をお願いしていいかな」

 

「生意気な小人族め。貴様の指揮下にいるのは我が主の指示だからだ。私は今でも地上に戻りあの忌々しい妖魔どもを殺したい」

 

エルフの青年、【白妖の魔杖】ヘディン・セルランドは前回の戦いで敗北を期していた。

次回こそは憎き妖魔を殺すと誓っていたが、フィンの作戦によりその誓いは果たされない。

神フレイヤから命令されたからここにいる。決して、あの情景に魅せられたからではないと自分に言い聞かせる。

 

「テメェらだけであの女を倒せるのか」

 

【女神の戦車】アレン・フローメルは睨みつけるように問う。

 

「それこそ愚問だよ。倒せる倒せないんじゃない。僕達が倒さないといけないんだ。彼と彼女に示さないといけない、ケジメをつけないといけない」

 

「チッ、負けんじゃねーぞ。テメェらを轢き殺すのは俺なんだからな」

 

アレンなりの激励にフィン達3人は意外なものを見たように驚き、その後笑みを浮かべる。

 

「さて、行こうか。リヴェリア、ガレス」

 

前へ歩み出すフィンの後に続くリヴェリアとガレス。

3人に立ち塞がるは才禍の怪物アルフィア。

 

「貴様らか、相変わらず群れるのが得意と見れる。最初は驚いたが所詮は雑音。いくら数が増えようがその雑音が変わることはない」

 

「なんだい、邂逅一番からよく喋るじゃないかアルフィア。それともアリスが来てなくて寂しいのかい?」

 

お互いが挑発する。

 

「安い挑発だ。あの女との別れは済ませてる。もう、会うこともないだろう」

 

アルフィアの言葉に否と反応するリヴェリア。

 

「アリスはお前に会いに来るぞ。地上の民を救い、そしてお前を止めに来る。あいつは立ち上がった、前へ進み出した」

 

「そして、儂達も前へ進む。お前を倒し、あの小娘に追いつくように、追い越せるように前へ進む」

 

リヴェリアとガレスがフィンの隣に立つ。

 

「お前達にそれができるのか?今まで何もしてこなかったお前たちに価値があるのか」

 

「耳が痛いね。そうだ、僕たちは止まったままだ。だから、止まった時間を進めるために、君を倒す。僕たちの勇気を君に示そう」

 

槍をアルフィアに向ける。

 

「【魔槍よ、血を捧げし我が額(ひたい)を穿て】」

「【ヘル・フィネガス】」

 

魔眼が発動する。

フィンは高揚する感情を感じながらも気が狂わなかった。

感情が高揚してる、でもこれは狂気ではない勇気だ。目の前の冒険への気持ちが高揚してる。

 

「たった3人で私を倒すと言うか。それは蛮勇だぞ」

 

「知らないのかい、アルフィア。蛮勇を勇気に変えた者こそが英雄と呼ばれるんだ」

 

真紅の瞳がアルフィアを映す。

 

「決着をつけよう、アルフィア。ゼウス、ヘラとの僕達の戦争に今こそ終止符を打とう」

 

「「「お前を倒すのは僕/儂/私たちだ!」」」

 




アルフィアとザルドを生存するか悩んでます
あと、ベルくんをどのファミリアに入れるか

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