【リメイク更新中】ウルトラ世界で星を狩る蛇【こっちは未完】   作:Emerihhi

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前回のあらすじ!
エボルト「平和な俺の日常をご紹介していましたところ、なんとクソ兄貴が現れて邪魔をしてきやがりましたことをここに報告いたします」
ゼロ「俺空気だったんだけど」
エボルト「知るか、お前が悪い」
ゼロ「ひどい!!」
エボルト「というわけで、どうなる第7話!あとクソ兄貴はくたばれ


第7話 エボルト、ついに火星に行く

やっと見つけたぞ、エボルトォ!

久しぶり…でもないか。俺は会いたくなかったぜ、クソ兄貴ィ!!

 

 蛇と蜘蛛が、衝突する。

 一瞬の拮抗の末、吹き飛ばされたのはエボルトだった。エボルトは勢いを殺さず、逆に利用してゼロの近くまで後退。普段の飄々とした態度はどこへやら、焦りを前面に押し出した声で叫ぶ。

 

「ゼロ!サインで連絡しろ!」

「クソ兄貴って、え、おま、は!?」

「いいからサッサとやれ!」

「よそ見してる暇があるのか?」

 

 その声に顔を正面に戻すも、時すでに遅し。キルバスに焦点があったときには、視界いっぱいに真紅の拳が写り込んでいた。

 

「オレから目を離せばやられる…まだ学んでなかったか?」

「ッグ、馬鹿力が……ッ、ほざけ!!」

 

 拳の直撃をもらってしまったが、当然、ただでやられるエボルトではない。防御こそ叶わなかったが、殴られ回転する勢いを利用してお返しだとでも言わんばかりにキルバスを蹴り飛ばす。空気抵抗のない宇宙空間、キルバスは抵抗なく吹き飛んでいくが、戻ってくるのも時間の問題だ。

 しかし、それでよかった。そのたった十数秒こそを、エボルトは求めていた。

 

Imitation(イミテーション) Evol(・エボル) Trigger(・トリガー)

 

「本当にコレ使えるんだよな、ヒカリィ…!?」

 

 エボルトが取り出したのは、エボルトリガーに似た物体。ただし、エボルトリガーはモノクロに赤色で装飾がされているだけなのに対して、こちらは赤を主体に金と青で装飾されており、フェーズ1のエボルを思わせる色合いとなっている。―――名を、イミテーション・エボルトリガー。読んで字の如く、エボルトリガーの模造品である。

 事の次第をかいつまんで話そう。すべての始まりは、一週間ほど前に宇宙警備隊に『ある知らせ』が届けられたこと。それは、とある新人警備隊員からの『取締に向かった犯罪集団の拠点が既に何者かに襲われていて、構成員は全員死亡していた』という報告。エボルトはキルバスの存在を直感、対抗するための策―――ヒカリによるアイテムの作成を前倒しした。

 イミテーション・エボルトリガーは、皆様ご存知『光の国のマッドサイエンティスト』ことウルトラマンヒカリの発明品である。

 

Force(フォース) The(・ザ・)Evolution(エボリューション)

 

 フォース・ザ・エボリューション。訳すとすれば、『進化を強制する』または『無理やりに進化させる』。本来であればフェーズ4:エボルブラックホールとなったときに得るはずのブラックホールの操作能力を、『創造』『操作』『廃棄(破壊)』の三工程のうちの『創造』に限って行使できるようにするアイテムである。

 しかし、用いるエネルギーがウルトラマン由来の光のものであるという点から、ドライバーに馴染まず暴走する危険性があるため、使用限度は3回までと決められていた。エボルトにとっては、逃走成功の可能性も、自爆して死亡する可能性もある、まさに諸刃の剣と呼ぶべきアイテムである。

 

Cobra(コブラ) Rider System(ライダーシステム)

Imitation(イミテーション) Evol(・エボル) Match(・マッチ)

 

Are(アー) You(ユー) Ready(レディー)

 

「変身!」

 

Black Hole(ブラックホール)!】【 Black Hole(ブラックホール)!】【 Black Hole(ブラックホール)!】

Imitation(イミテーション)!】

【 フッハッハッハッハッハ!!】

 

 ハーフボディの形成までは通常のブラックホールフォームへの変身と同じだが、そこから先の変身シークエンスが違う。上下に3つ並ぶはずのEV-BHライドビルダーは前後に3つ並び、白く半透明で向こう側が透けている。そのままハーフボディとビルダーが組み合わさると、腰部に赤から青へのグラデーションで彩られ、裾が金縁となっている『I-EVOベクターローブ』が装着されたエボルが姿を表した。

 

「―――ダメだな、全然調子が上がらねえ……が、」

「よくもやってくれたなァ、エボルト!!」

 

 変身成功とほぼ同時に、キルバスが帰ってくる。それを正面から迎え撃つ―――と見せかけて背後へ回り、強烈な回し蹴りを叩き込んだ。

 

「さっきよりはマシだ!」

 

 2人は一度互いに距離を取った。音のない宇宙は、当然といえば当然だが、それが今はやけに不気味に感じられる。その場を満たす緊張感に気圧されたゼロが、ほんの少し後ずさり―――それを合図にしたかのように、星狩りたちは再び衝突した。

 

「アアァァアアアッ!!」

「オォオオオオオ!!」

 

 蛇と蜘蛛は全身から真紅のエネルギーを放出し、拳をぶつけた状態で押し合い始めた。数秒しないうちにキルバスが有利に立ち、エボルトは押され、後退していく。このままエボルトが弾き飛ばされるかに思えたが、エボルトはすかさず全エネルギーの半数を足に集中。エネルギー量に任せたゴリ押しで空間に(ひず)みを作り、そこを足場としてキルバスに対抗し、次第に押し返してゆく。

 次に動いたのもエボルト。ドライバーのレバーは右手側についているのだが、それを左手で回すという暴挙に出る。一瞬キルバスが動きを止めるも、そこはさすがのブラッド族最強。すぐさま我に返ると、レバーを回すエボルトの手を抑えにかかる。しかしエボルトは最低限の防御だけを固めると一切の抵抗をやめ、キルバスのエネルギーに乗る形でバク転。大きく弧を描いてその場を離脱する。

 

「少しは効いてくれよ……!」

 

Ready(レディー) Go(ゴー)!】

Black Hole(ブラックホール) Finish(フィニッシュ)!】

 

「ハァァアアアアアッ!!」

 

 読んで字の如くブラックホールをキルバスの背後に生成し、前方宙返りで勢いをつけた飛び蹴りを胸部装甲へとぶち当てる。ただでさえ相手が格上だと言うのにこちらは弱体化しているのだと、もとからダメージは度外視して()()()()()()()()()()()()()ためだけに行った攻撃。

 エボルトの狙いは唯一つ、キルバスをブラックホールで固定することで可能になる時間稼ぎであった。

 

「相変わらず、まだるっこしいことを……フンッ!」

 

 しかし、キルバスはそれを、こちらもまた出力任せのゴリ押しで強行突破。稼げた時間はわずか4秒にも満たず、エボルトはひとつ舌打ちをする。

 ゼロはいるだけ邪魔だ、どうやって逃がすか。応援は必要か不要か―――不要。ゼロと同じく、いるだけ邪魔になる。今の戦力でキルバスに勝つのは不可能、逃亡も困難。

 ではこの局面、一体どうやって生き残る?どうやって離脱すればいい?同時に幾つものことを並列して考え続ける。相手の動きを読め。予測しろ。最適解を導き出せ。損失は最低限に、しかし時には賭けに出て。必死に頭を回転させるも、最善策は愚か、有効な手札さえ思いつかない。

 

 イミテーション・エボルトリガーの使用可能回数、残り2回―――!

 

「もう終わりか、エボルト?なら次はコッチからいくぞォ!!」

 

 言うが早いかキルバスはエボルトに接近し、鳩尾に狙いを定めると下から上へと刺し穿つような膝蹴りを放つ。エボルトはそれを上体を反らして回避すると、そのままバク転し意趣返しにつま先で顎を狙い蹴り上げる。しかしキルバスはそれを足首を掴むという正気とは思えない方法で防ぐと、逆にエボルトを投げ飛ばした。投げ飛ばされたエボルトは空中で一回転、体制を整えるとすぐにゼロの隣まで後退し、ゼロに何やら耳打ちをする。

 キルバスは当然その行動を訝しむも、余裕綽々で何もせずにただ棒立ちするのみ。エボルトはそれに苛つく様子もなく、もう一度必殺技の発動体制に入る。

 

「いいかゼロ、チャンスは一回だけだ……一瞬でいい、確実にアイツの動きを止めろ」

「わかった、だがお前はそれでいいのか?お前自身の力で勝ちたいんじゃなかったのかよ」

「オイオイ、勘違いするなよ!俺は死にに行くんじゃァない。勝ちに行くんだ」

 

 エボルトはまだ何かいいたげなゼロを視線で制し、再び右足にエネルギーを集中させ始める。ゼロも、不満げではあるがウルトラ念力の準備を始めた。

 

「作戦会議は終わったか?ならもう始めていいよなァ!?」

 

 待ちきれないと言わんばかりに飛び込んでくるキルバスを無視し、エボルトとゼロは同時に高度を上げる。急停止したキルバスが上を見上げたときには、エボルトは既に飛び蹴りの体制に入っていた。

 

Ready(レディー) Go(ゴー)!】

Black Hole(ブラックホール) Finish(フィニッシュ)!】

 

「くたばれクソ兄貴ィ!!」

「またそれかエボルト!俺には効かないと言っだろォ!?」

 

 先程と同じくゴリ押しで突破しようとしたキルバスをゼロの念力が押し留める。一瞬の硬直の隙を突き、エボルトの蹴りがキルバスを―――否、()()()()()()キルバスをブラックホールへ押し込んだ。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

『いいかゼロ、よく聞け。今の俺達がこの場でアイツを倒すのは無理だ』

 

 エボルトは、『今この場でキルバスを倒すのは不可能』と言い切った。そしてその上で、自分に策があるとも。

 

『アレを倒すのは無理、時間稼ぎも不可能。だからアイツを、俺のブラックホールをワープゲートにしてここから遠く離れた地点に放り出す』

『ブラックホールは力押しで突破されるぞ。それこそ不可能だ』

『いいや、出来る。俺がアイツから離れず押し込み続けるから、お前はそれを念力で援護しろ。もちろんキルバスの動きを止めるだけだ。俺まで押し込むなよ』

『わかってるよ!どこに追いやるんだ、下手なところだと被害が増えるだけだぞ』

『俺がこの間もらった小惑星帯でいいだろ。あのへんには生命体のいる星も無えしな…アイツはワープが出来ない、戻ってくるだけで数年はかかる』

 

 それでもゼロは反対だった。この策では高確率でエボルトが巻き込まれる。しかし同時に、現状それしか手の打ちようがないのも事実だった。

 

『大丈夫だ。俺を信じろ。―――必ず、生きて帰る。まだエースの”どーなつ”ってのを食ってないからな』

『…お前、こんな時まで飯のことかよ』

 

 戦闘が始まってから、ずっと硬い表情だったゼロが笑った。その安堵を感じとり、エボルトはゼロの発言を茶化す。

 

『食事っていうのは最高の娯楽だ。生きるってことは案外、おいしいってことかもしれないな。そうだろ、ゼロォ?』

 

 適度に緊張はほぐれた。心身ともに状態は良好。勝利条件は明確になり、具体的な勝ち筋が見えたのだと、そう思っていた。思い込んでいた。

 今思えば、どうして気がつかなかったのだろう。エボルトは、一度も自分の離脱方法について言及していなかった。あいつは最初から、自分の安全なんて考えちゃいなかったんだ―――。

 

「隊長!エボルトが!エボルトが俺を庇って!」

 

 ただただ悔しかった。守りきれなかった自分が恨めしい。許せない。

 最悪の宇宙人とまで言われたブラッド族でも、あいつは仲間を想っていた。母星を愛していた。美味しいものを食べたら笑うし、きれいなものを見せたら喜ぶ。自分の命も危うい中、真っ先に俺を逃がそうとした。あいつは、あいつは……どこにでもいる、普通の宇宙人だったんだ。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

「あァクソ、身体痛え…無理なワープはするもんじゃねえな」

 

 今頃ゼロはこの事件を隊長サンにでも報告しているだろう。俺は足手まといから離れられ、ゼロは安全地帯に逃げられ、クソ兄貴は邪魔者が消えて好き勝手できる。win-winだな。ああ、もうひとつ俺の利を追加しよう。これによって、俺はほぼ完全な信頼を得られた。感謝してるぜ、ゼロ。

 ワープ先の座標は火星に設定してある。あそこにはおそらく、火星の王妃であるベルナージュがいるはずだ。…8割方カンだけどな。賭けにはなるが、もうこれしかない。泣いても笑っても、これが現実。

 

「貴様ら、何者だ!!あの三人の仲間か!?」

 

 金色のエネルギーに緑の目、黄金のバングルをつけた左手―――俺は、賭けに勝った。運命の女神とやらは俺に微笑んだ。

 ただ、一つだけ聞きたいのは―――なんで火星にパンドラタワーが生えてるんだよ?ていうか俺抜きで火星滅亡戦争始まってるし……何事?




なんとか!なんとか火星に着いてるので!次回予告詐欺じゃ!!ないです!!
なんかいつもの2倍ぐらい文量あるな…しかもやたら―――を使ってるし…戦闘しかしてないのに…不思議…

次回、大乱闘スマッシュブラッド族in火星〜ベルナージュ大迷惑〜

アルファベット表記の上にカタカナのルビは

  • あったほうがいい
  • 別になくてもいい
  • どっちでもいい
  • そんなことより続きかけコラ

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