平安の呪言師   作:亀と羽公

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遅くなって申し訳ない。

そして読者の皆様、赤バーありがとうございます!!
高評価が多く、歓喜している作者です。

前回のあらすじ:
ファミレス、炎上。

今回は書きたいことを色々と詰め込んだ感じなんです。許してください。なんでもしますから!!(なんでもとは言ってない)

次回はもっと戦闘描写を上手く書きたい、そんな作者でお送りいたします。


第弍話:明月

 

 

 

 ___月が、見ている。

 

 

 丑三つ時。

 

 人が眠りに沈み、獣が息を潜める頃合いにて、

 魔が、妖が、呪いが蠢く(みやこ)の有様を、月だけが見ている。

 

 

 驚嘆の地、平安京。

 平安の時代、呪術全盛期の世。

 血と臓物が地を汚し、魑魅魍魎が跋扈し、

 呪術を携し兵どもが、己が命を賭して人界を守護する。

 まさしく、生きた伝説が息づく魔境である。

 

 

「今宵は、明月であるな」

 

 

 そんな魔境に静かに佇む者あり。

 名を、狗巻威光(いぬまきのたけみつ)

 

 この頃の威光は、”悦”に完全に染まりきってはいなかった。

 丑三つ時には常日頃より都を見回り、呪いを祓っている。

 

 

「ふうむこの様な夜は、酒か団子が欲しくなるな。のう、そうは思わんか?」

 

『おのれ、おのれ、おのレおノれオのれおのれェ! キサマさえイなければ! 貴様が死ンでおれば!! (ワレ)ハ、(ワレ)はァ!!』

 

「なんじゃ、酒は嫌いだったか?」

 

 

 それは、怨であった。

 妖であった。

 魔であった。

 

 清浄なる寺院の境内にて、怨の一文字を形にしたが如き、妖物魔物の類、即ち()()

 呪霊の中でも、人の負の感情より出でるものではなく、術者が死後に呪いに転じた存在(もの)

 

 現代であれば”特級”、その中でも上位の存在として区分されるであろう怨霊は、怨嗟を吐き、呪いを撒き、徐々に空間を

 

 

『威光、威光、威光、タケ光、威ミツ、タケミツ!!』

 

(やかま)しい。そう何度も呼ばずとも聞こえておるわ」

 

 

 威光を見つけてより、怨霊は常に恨みつらみを吐き続けている。

 

 

『貴様が、キサマが、きさまガ、キサマガァ!!!』

 

「呪霊になるまでに儂のことを憎んでいたのか? ならば生前の内に面と向かって言っておけばよかったものを……」

 

 

 その言葉に反応したのか、怨霊は(おもむろ)に両手を交差させる。

 

 右手の指を左手の指の上にして組み、掌の中で指を交差させ、左右の人差し指を立てて合わせ、親指で薬指の方向へ押す。

 即ち、()()()()()。大日如来の化身、不動明王の印である。

 

 

『問答、無用だ___領域(りょういき)展開(てんかい)!!』

 

 

 炎が威光を取り囲む。

 火柱が次々と立ち昇り、気温が急激に上昇する。

 

 

 

瞋恚想地獄(しんいそうじごく)

 

 

 燃え盛り、炎とも靄とも言えぬもののせいでで周りが全く見えない領域が形成される。

 

 

 領域展開。

 現代においては、呪術師の多くが夢見る呪術の極致。

 だが平安の世では、呪術師にとっては比較的標準的な技術の一つだった。

 

 それでも呪術の極致であることに変わりはない。

 領域内で発動される術式は全て「必中」となり、術式の内容によっては「必殺」となり得る。

 

 

 それを理解しているからこそ、威光の表情は若干強張り、怨霊の機嫌は少し良くなった。

 

 圧倒的優位に立つ。

 故に、慢心する。

 

 そして、それが命取りになる。

 

 

『これで少しは貴様も本気に………ッ!?』

 

 

 怨霊が領域を完成させるや否や、掌印を組んでいた()()()()()()()()()()

 

 

『ぐあああああッ!? 吾のッ! 吾の腕がァ!!』

 

「遅い遅い、遅すぎるぞ。それではこうして領域を展開しても切り落とされてしまう」

 

『痛い、痛い、いたいいたいいたい!! お、のれ、おのれぇええええ!!』

 

 

 威光は呪術師であるが、その前に太刀を佩く者__即ち武者であった。

 怨霊如き、かの者にとってみれば朝餉(あさげ)前の様なものだった。

 

 

 が、止めを刺そうとする時、それでは怨霊の矜持を傷つけるやもしれぬ、と威光は思い至る。

 

 血降りにて、太刀に付いた怨霊の血を落とすと、威光は太刀を()()()()()

 

 

『きッ、貴様ァッ! どこまで吾を愚弄するつもりだ!!』

 

「何、少し本気を見せてやろうと思うてな。お前も、侮られたままでは不本意だろう?」

 

『な、にを、言っている?』

 

 

 威光の言葉に、怨霊はたじろぐ。

 

 

「ここまでは丹後守(武者)として、ここからは呪術師とし(お前に合わせ)て貴様を祓う、そう言っておる」

 

『今まで、呪力による強化をしていなかったと、そう言うのか……?』

 

「無論だ。武者は武者、呪術師は呪術師だ。公私混同する男ではないぞ、儂は」

 

『ふ、ふざけるな! 糞ッ!? 早く治れッ!?』

 

 

 怨霊は必死に呪力による回復を試みる。

 

 しかし叫び虚しく、肘から先を失った両腕は生える素振りを見せない。

 

 

「無駄だぞ。儂の太刀は特別製でな、斬られた場所は治りが遅くなるらしい」

 

 

 呪具「絶待(ぜつだい)」。

 片手で扱える太刀型の呪具で、凡ゆる物体を硬度を無視して切り裂くことができ、かつ切り裂かれた部位は回復が難しくなる。

 当時の威光が好んで使っていた呪具の一つである。

 

 

「さて、少しは楽しませろ? 怨霊」

 

 

 そう言うと、威光は掌印を結ぶ。

 

 右手と左手の人差し指と中指をそれぞれ立て、右手を刀、左手を鞘に見立て、右手で空中を切る。

 空中を切った後、刀に見立てた右手指は、鞘に見立てた左手に納める。

 

 

()()()()__」

 

 

 摩利支天(まりしてん)(のり)

 今から数百年後、忍者が結ぶ印の基になった、戦場に臨む武士が行う修法。

 そして摩利支天は別名、威光菩薩とも称される。

 

 

『わ、吾の領域がァッ!?』

 

「なんだつまらん。押し合いの一つでもしてみせんか」

 

 

 昏き空が明るく変わる。

 炎燃え盛る大地に水が張られる。

 

 地が、空が、光を反射する。

 無窮の蒼空が広がっていく。

 

 丑三つ時には似合わない、鏡面世界の領域が展開される。

 

 

 

無碍降魔(むげごうま)

 

 

 

 中央には菩提樹が(そび)え、その下に威光が座している。

 

 

「さて、長く展開しても仕方がない。さっさと終わりとしよう___『 死ね 』

 

 

 その言葉が放たれると、怨霊の身体は即座に微塵に刻まれ、爆ぜ、潰される。

 怨霊が最後に見たものは血塗られた視界と、それを見て不満げにする威光であった。

 

 

「………いやはや足りぬ。足りぬ足りぬ足りぬ! 全くもって足りぬなぁ!! これでは届かぬ。これでは遠い。これでは駄目だ。これでは到底___」

 

 

 領域を解除し、元の昏き寺院の境内へと戻ってきた威光はため息を漏らす。

 

 

「___かの鬼神の如き領域に、至れるはずもない」

 

 

 その心の内に浮かぶは、他を顧みない圧倒的な自己を持つ厄災。

 

 もっと強くあらねば。

 もっと身勝手にあらねば。

 もっと、自由にあらねば

 

 

「………帰ったら団子でも食うか」

 

 

 ………日々、悩みながらも威光は帰路に着く。

 

 

 その姿を、左様。

 ()()()()()()()()

 

 

 

  ■■■

 

 

 

 

「どうしたんだい、威光?」

 

「いやなに、昔のことを思い出していただけだ」

 

 

 空を仰ぎ見れば今日は明月。

 奇しくもあの日と同じだな、と威光は過去を振り返る。

 

 未熟であったあの頃から、数え切れぬ程の研鑽を積んできた。

 未だ、鬼神の領域に至れたかは定かではない。

 

 だが、再びかの者と逢えるかも知れない、というのは中々に胸躍ることである。

 例え、その結末が死であったとしても。

 

 

「来たよ。五条(ごじょう)(さとる)

 

 

 現在、威光は夏油と共に、峠の脇の茂みにてある人物を待っていた。

 正確には、呪霊・漏瑚が、その人物と戦うのを見に来ていた。

 

 

 五条某が牛なし牛車__(くるま)と呼ぶらしい__から降りる。

 黒い服と目を覆う黒布を纏い、銀色の髪を靡かせる男。誰であろう、五条某その人である。

 

 なるほど、確かに強いのだろう。

 一見隙だらけだが、飄々とした態度で異質さを醸し出している。

 何よりも姿勢が既に臨戦体勢に入っている。

 

 中にいる男と会話した五条は、車を見送ると、周囲に視線を向けている。

 

 

「まあ、あれだけ殺気を出していて気づかない方がおかしいんだけどね」

 

 

 夏油が笑うと同時に、月明かりに影が映る。

 

 

 大地が大きく割れる。

 

 

「君、何者?」

 

 

 急襲した漏瑚を予想していたかの様に何なく避け、冷静に問う五条。

 

 

「ヒャアッ!!」

 

 

 続けて、壁を火口に一瞬で変化させ、噴火させる。

 路は焼け爛れ、岩礁(マグマ)の様に溶け出している。

 

 

「存外、大したことなかったな」

 

 

 と、漏瑚の声が聞こえる。

 

 

「いやいや、これで死んでたら獄門疆なんていらないよ」

 

「仮にも無下限の使い手なのであろう? ならばこの程度では死ぬことはあるまい」

 

 

 夏油と威光が否定すると同時に、溶け出した路の一帯から五条が姿を表す。

 

 マグマが空中で静止し、五条を避ける様に方々へ散っていく。

 

 

「流石に、漏瑚じゃ勝てないかな」

 

「何処で入ろうか。奴が死にそうになってからか?」

 

「ん〜。ここで漏瑚を失うのは痛いし、頃合いを見て、かな?」

 

 

 漏瑚の戦闘に視線を戻すと、先ほどと既視感のある(でじゃゔな)件をやっていた。

 

 

「………??? け……夏油、なぜ彼奴ら手を合わせているのだ?」

 

「うーん、多分だけど術式の開示じゃないかな? 必要ある様には見えないけど」

 

 

 手のひらを合わせていた状態の2人。

 五条が徐々に手を握りこむように、漏瑚の手に指を絡める。

 

 

「貴様ッ!!」

 

 

 漏瑚が叫ぶと同時に、五条の掌が漏瑚の腹へと叩き込まれる。

 

 

「おお速い。儂でも受け切れるかどうか」

 

「そんなこと言って、平安(生前)の頃は宿儺の斬撃を弾いてたじゃないか」

 

「アレは呪具があってこそだ。今は出来るかどうか……」

 

 

 夏油と威光が平安談義をしている間にも事態は五条有利な展開へと進んでいく。

 

 

「無限はね、本来至る所にあるんだよ。僕の呪術はそれを現実に持ってくるだけ」

 

 

 五条は人差し指の上に一つの核を作り出す。

 

 

「『収束』『発散』。この虚空に触れたらどうなると思う? 術式反転『赫』

 

 

 その言葉を最後に、漏瑚の肉体は赤い光に包まれ、次の瞬間まるで鞠の様に漏瑚の体が森を跳ねる。

 何とか体勢を立て直し反撃を試みるも、五条に蹴飛ばされ、湖へと落ちていく。

 

 

「お? 五条悟が消えたぞ?」

 

「あれが例の瞬間移動ってやつか」

 

 

 そして次の瞬間、再び五条悟が漏瑚の眼前に現れる。

 

 

「ごめんごめん、待った?」

 

 

 小脇に1人の少年を抱えて。

 

 

「あの小僧は?」

 

「あ〜言ってなかったけ? あれが今世の宿儺の器、虎杖悠二だよ」

 

「あれが? 見たところ宿儺の様には見えぬが」

 

「どこ!? ねぇここどこ!? どこ!?」

 

 

 五条の真横であたふたする虎杖を眺めながら、威光はそう零す。

 

 

「うん。だって彼は”檻”だからね」

 

「”檻”……? まさか!? 彼奴が宿儺を抑え込んでいるとでも言うのか!?」

 

「富士山!! 頭富士山!!」

 

「そうだね、驚くのも無理はない。実際、私も驚いたからね」

 

「あの宿儺を抑え込むか……虎杖悠仁、面白いではないか」

 

「先生、俺10秒くらい前まで高専いたよね? どーなってんの?」

 

「んー飛んだの」

 

 

 威光の記憶に虎杖悠仁の名前が刻まれた瞬間である。

 

 

「自ら足手纏いを連れてくるとは、愚かだな」

 

「大丈夫でしょ。だって君、()()()()

 

 

 アハハ、と笑いながら五条が漏瑚を煽る。

 

 瞬間、漏瑚の中で何かが切れる。

 

 

「舐めるなよ小童が!! そのニヤケ面ごと飲み込んでくれるわ!!!」

 

 

 その様子を見て夏油がため息をつく。

 

 

「あーあー漏瑚がキレちゃった。これじゃあ”茈"ってやつは見れそうにはないかな〜」

 

「”茈"、とは?」

 

「無下限呪術の奥義みたいなやつ。記録としては知ってるんだけど、実物を見ておきたかったんだけどなぁ」

 

 

 夏油と話しているその間に漏瑚は掌印を組み、領域展開を行う。

 

 

領域展開!!

 

 

 漏瑚と五条・虎杖の周囲に結界が張られ、外部からの視認が不可能になる。

 

 

「こうなってしまっては観戦もなにもないな」

 

「十中八九、五条悟が領域を展開して、後は漏瑚が祓われるのを待つだけになる」

 

 

 そして、夏油は笑みを浮かべる。

 

 

「だから領域が解けたタイミングで、君は漏瑚を助けに入ってくれ」

 

「不意打ちか。あまり好かんが、まあ致し方あるまい」

 

 

 そして数分を経たずして、漏瑚の張った領域が塗り替えられ、結界が解かれる。

 

 

「初陣だね。行ってらっしゃい威光」

 

「初陣が現代最強の呪術師か……相手にとって不足なし! いざ尋常に勝負!!」

 

 

 時刻は丑三つ時。

 今宵もまた、月は見ている。






これで、5000文字行かないくらいなのか………。
小説家ってすげーな。

試験運用的にフォント使ってみてるんですけど、いります?
要らないなら次回から消えます。怨霊のやつは作者的には見にくくて要らないかな?と思ってるんですが………。感想で教えてください。



感想で書いてたかも知れないんですが、作者は設定厨です。
なので、モブキャラにいちいち設定をつけてから書いてます。バカですね。どこに乗っかられる訳もないので、ここで供養させてくだせえ。



平安京の特級呪霊(推定)


 前半で出てきた出オチ担当。
 作者が設定練ってたときにボツにしたやつを混ぜて生まれた可哀想な生き物。

 名前は藤原戯奴(ふじわらのざこ)。
 生前は、威光の同僚的な感じで覇を競い合ってい(ると思ってい)た。しかし憧れ兼好敵手だった(と思っていた)威光ばかりが昇進し、自分は評価されない現実に不平不満を溜まらせる。逆ギレして退職。
 その後は呪詛師に身を落とす。呪術を極めるために御山に籠って、修行したり、人殺したり、”浴”したり、色々やってみた。けど結局は何も掴めず悶々としていた。
 最後は、一般通過フィジカルギフテッドに殺された。死因は撲殺。享年38歳だった。

 呪霊になってからは息を潜めて再び呪術を極めようとするが、威光に見つかった。
 生前の恨みつらみを吐き出して、今の自分の全力をぶつけようとしたら、逆に殺された。領域展開も習得したのに殆ど見せられんかった。
 因みに「貴様さえいなければ」「貴様が死んでいれば」というのは、逆ギレした時に吐いた「貴方さえいなければ、私は呪術師にはなっていなかった」「貴方がどこかで死んでさえいれば、私は貴方の様になりたいと思うこともなかった」という理由の残滓みたいなもの。

 術式は「爀炎火鳥(かくえんかちょう)」。
 名前から分かる様に、炎系の術式。攻撃範囲が広く、火力も高いが、その分消費呪力量も多い。
 術式反転を使える。「活」と唱える事で炎で傷を治せる。なんなら致命傷も治せる(はずだった………)。

 領域は「瞋恚想地獄(しんいそうじごく)」。
 領域展開時には、領域内にいる全てに術式反転を必中させる。これで半永久的に戦い続けることができる。
 領域を習得したのは呪霊になってからで、威光対策をしてきたはずだったのに満足にも戦えずに再び死んだ。
 かわいそうな戯奴……!! ひとえにてめぇが弱いせいだが……。

 もし、死滅回遊まで続けば再登場があるかもしれない。いや、ないだろう。(反語)


………冷静に考えて、なんでこんな設定作ってんだろ。
あと、タグにオリジナル術式ついとるのなんで? 全然出すつもりなかったのに………。まあ結局出てるから良いんだけどさ。



次回は威光の初陣。
早めに投稿できるよう、張り切って書くぞー!
………こんなこと書いて一ヶ月後に投稿とかありそうで怖い。


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