平安の呪言師   作:亀と羽公

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気づけば一週間以上経過していた……。
「五条先生と戦わせたいけど、加減が分からぬ……」と悩みに悩み、時に迷走したりもしましたが、なんとか書けました。
書けたのか? ……正直、五条先生が強すぎるせいで塩梅がよく分からん。

「五条先生はもっと強い」などの不満が多い回になるかもしれません。
だけど許して、これが私の限界……。


前回のあらすじ:
【過去編】 威光が怨霊倒したよ
【現代編】 頭富士山が死んだ! この人でなし!!(死んどらんわ!!)


真夜中のテンションで書いてるから後日若干変わってるかも、そんな作者でお送りします。


第参話:呪言

 

 

 

「おや、花御。来てたのかい?」

 

 

 湖の中心に展開された領域に視線を向けつつも、視界の端に呪霊・花御が現れたのを見て、夏油は声をかける。

 

 

縺医∴(ええ)遘√b莉イ髢薙′荳榊ョ峨□(私も仲間のことが心配なのです)

 

 

 夏油は内心、相も変わらず呪霊の分際で生意気なものだ、と笑う。

 

 

 心配! よりにもよって、呪霊が!

 自己愛の塊(人間)の負の感情から生まれた存在が、心配とは。

 滑稽すぎて思わず口角が上がってしまう。

 

 だが、花御の様子から、言葉だけではないことを読み取る。

 

 

「………それだけじゃないんだろう?」

 

「………遘√?縲(私は)逕キ繧剃ソ。逕ィ縺励◆繧上¢縺倥c縺ェ(あの者を完全に信用したわけではない)繧ゅ■繧阪s(勿論)縺ゅ↑縺溘b(あなたも)

 

 

 まあ、想定の範囲内だ。

 

 呪霊(彼ら)呪詛師(僕ら)という存在を仲間だとは思ってはいない。

 程のいい駒。或いは愚かな家畜程度の認識だろう。

 

 呪霊に協力する間は生かすし、叛逆すれば殺す。

 そういう利害関係の一致で成り立っている。

 

 

「まあそこは勝手に思ってくれて良いさ。彼も私も最終的な目的は別の場所にあるのだから」

 

 

 そう、あくまで私も呪霊(彼ら)を、五条悟(六眼)を封印する為の駒として利用している側にすぎない。

 

 

「さて、私は先に帰らせてもらうよ。高専関係者に顔を見られるわけにはいかないからね」

 

 

 目的はさらに先に。

 

 死滅回遊(慣らし)が始まった時、同時に全てが動き出す。

 

 その為にも、ここで彼が落ちる訳には行かないのだが……。

 

 

「まあ、幸運を祈ってるよ。威光」

 

 

 

 

 

  ■■■

 

 

 

「さて、誰に言われてここに来た」

 

 

 五条悟。現代最強の呪術師。

 まさしく、()()()()()()()()()()()存在である。

 

 

「命令されて動くタイプじゃないか……」

 

 

 文字通り首だけになった漏瑚を足で踏み潰しながら、五条が問う。

 

 

「僕を殺すと何かいいことがあるのかな。どちらにせよ相手は誰だ?」

 

 

 漏瑚は必死に抵抗を試みるも、悲しいかな。首だけの彼には為す術はない。

 ただ一方的に蹂躙されるのみである。

 

 

「早く言えよ。祓うぞ。言っても祓うけど」

 

 

 この場で彼が助かる方法は二つ。

 

 一つ目は、近くにいる花御に助けを求める。

 彼女であれば、気配を殺し、五条悟と接敵せずに漏瑚を回収できるであろう。

 

 そして二つ目は……

 

 

「さて、改めて聞こう。助けてやろうか、呪霊」

 

 

 平安の呪言師に助けを求めること。

 

 

(新手!? 全く気づけなかった!)

 

 

 声がした瞬間にその場に現れた、そう思わせる程の速度で(威光)は来た。

 

 そして、その場で最も最適な言霊を放つ。

 

 

『 動くな 』

 

(!? 呪言!!)

 

 

 音の速度は空気中で、約340m/秒。

 威光と五条の距離は約6m。だが五条の接近により距離はそれ以下。

 

 威光が声を発してから、0.02秒以下で五条の耳が彼の声を認識する。

 

 そして五条の肉体が、筋肉が、呪力が、彼の意志に反して硬直する。

 防ぐ術はない。不意打ちであれば()()の一手。

 

 既に五条の術式は回復している。

 だが、最強に対してであっても呪言(それ)()()()()()()()

 

 

「……ふむ、その様子を見るに呪言は効くようだな。『 抵抗するな 』

 

 

 再び言霊が放たれ、五条の全身の筋肉が脱力する。

 耳に防御しようと廻していた呪力も霧散する。

 

 

「ッ! 誰だよ君、こいつの仲間?」

 

「その質問に答える義理はない。儂はただ、此奴を拾いに来ただけ故な」

 

 

 最初の呪言の効果が薄れ、ようやくまともに口が利ける様になる。

 

 

(呪霊じゃない……受肉体の呪言師か? しかも蛇ノ目と牙! 狗巻家か!!)

 

 

 五条の六眼は術式・呪力を詳細に見ることができる。

 綿密な呪力操作を可能とし、無下限呪術を使いこなすには必須な代物である。

 故に、六眼は術者の肉体を流れる呪力であっても観測が可能である。

 

 彼の双眼は、威光が呪力によって肉体を構成された呪霊ではなく、実体を持った受肉体であることを見抜いていた。

 そして、威光の口元にある呪印を確認し、狗巻家の者であると確信する。

 

 

「あ゛〜あ゛〜あ、あ。うん良し。ほれ行くぞ、呪霊」

 

 

 威光の使う呪言は、言霊を増幅・強制させる狗巻家の高等術式だが、この術式には幾つか弱点がある。

 

 まず、無機物に呪言は効かない。

 次に、耳から脳にかけてを呪力で防御されると、簡単に防がれてしまう。

 そして、反動がとても大きいこと。

 強い言霊を扱えば格下相手でも声が枯れ、格上相手なら吐血する羽目になり、最悪の場合は呪言が自分に返ってくることもある。

 

 そしてそれは威光程の熟練の呪言師であっても例外ではなく、現に五条に二度呪言を使用しただけで喉への負担が現れている。

 

 

 声の調子が元に戻ったのを確認して、威光は五条が踏みつけていた漏瑚を回収する。

 

 

「威みッ!?」

 

「ほらほら何も喋るな。呪力を食うぞ。今は肉体を戻すことに専念しろ」

 

 

 威光の名前を出そうとする漏瑚を黙らせ、その場を去ろうとする。

 

 万事解決。まさに溜飲が下がった気持ちでさろうとする威光に、立ち塞がる者がいる。

 

 

「おい、このまま帰すと思うか?」

 

 

 五条悟である。

 

 彼の後ろを見れば、虎杖悠仁が思う様に動けず四苦八苦している姿が見える。

 

 二度目の呪言は一度目の呪言をさらに強くするためのもの。

 本来であれば、数十秒ほどその場に留められたはずだったが……。

 

 

「お前、やはり強いな。駄目押しが必要か……『 閉じろ 』

 

 

 今度の五条は呪言への対策は怠らなかった。

 耳から脳にかけてを呪力で守り、呪言が来ようとも問題がない、()()()()()

 

 

「ッ!?」

(何も見えない……六眼を封じられた!?)

 

 

 五条の視界が黒一色に染まる。

 一気に周囲が認識できなくなる。

 

 五条は六眼を運用する上で、裸眼では情報量過多で疲労が溜まるため、黒の目隠しをつけている。

 それが仇となり、六眼を封じられた五条は目を閉じているのと同様の状態に陥る。

 

 

「げほっ、ふむ最強といえど視界を封じられればこの程度か」

 

 

 威光は平安時代の呪言師。ましてや威光は源氏。

 敵は多く、直ぐに呪言のタネは暴かれた。

 そして対抗策は即時に練られ、”呪力で防御する”という古典的だが有効な手段が確立された。

 

 それを、威光が黙って見過ごす筈がないのである。

 当然、そういう輩を狩る対策を彼は講じていた。

 

 

「逃すか!!」

 

「ッ! 凄いな!?」

 

 

 視界は潰した。呪言(デバフ)は効いている。

 故に、五条は威光の宿す呪力だけで彼の場所を感知し、攻撃を行った。

 

 五条の拳が、先ほどまで威光の頭蓋があった場所を貫く。

 

 

(こいつ、体術も並じゃない! 簡単に去なされた!!)

 

(此奴、呪力感知だけでこちらの位置を! まるで平安の頃に戻ったかの様だ!!)

 

 

 五条は強い。威光の呪言を自力で解ける程度には強い。

 だがそれでは威光を圧倒することはできない。

 

 

「……五条悟、お前との戦いは望んでいるが、それは今ではない」

 

「そうかい? 僕はいつでも大歓迎だけど?」

 

「はぁ、血の気が多い、というのか? っと、そろそろ潮時だ。再戦はまたの機会に、な」

 

「はあ? 言っただろ、逃さないって」

 

「誰が逃げると言った。言っただろう、儂は此奴を拾いに来ただけだとな」

 

 

 そう言うと威光は四度目の呪言を発動させる。

 

 

『 倒れろ 』!!」

 

「くッ!」

 

 

 呪言を聞いた瞬間から五条の平衡感覚が喪失する。

 姿勢を崩すも、踏みとどまり、即座に周囲の呪力を確認するが、既に威光は去った後であった。

 

 

「チッ、逃げられたか。気配を消すのが上手いな……」

 

 

 舌打ちをしつつ、先ほどの呪言師と呪霊のことを思い出す。

 

 

「このレベルの呪霊と受肉体が徒党を組んでるのか。楽しくなってきたね」

 

「それにしても、狗巻家か……少し調べてみる必要がありそうだな」 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 とあるアパート。人の気配のしない廊下を花御と共に夏油が歩く。

 そしてとある一室の扉の前で止まる。

 

 施錠もされていない扉を開き、花御に先を譲る。

 

 

「花御、お先にどうぞ」

 

 

 中には、部屋の中とは思えないほど広い空間が広がっている。

 

 生得領域。術者の心の中の世界を具現化した空間。

 呪力で顕現させることができ、領域展開を行う上で最も基礎的な部分となる。

 だが、結界を張らずとも生得領域は具現化させることができ、こうして元々ある空間に貼り付けることもできる。

 

 

「随分と穏やかな領域だね」

 

 

 この生得領域はタコの様な呪霊、陀艮のもの。

 南国のビーチを思わせる領域。普段はこうして呪霊たちの拠点として利用されている。

 

 

「漏瑚はどうした、夏油」

 

 

 砂浜に設置されたビーチチェアで、本を読むつぎはぎの呪霊、真人(まひと)が夏油に問う。

 

 

「瀕死。威光が助けに入ったから多分大丈夫」

 

「無責任だな。君が焚きつけたんだろ」

 

「とんでもない。私は止めたんだよ」

 

 

 夏油が否定したところで、再び入口のドアが開かれる。

 

 

「ほら、帰ってきた」

 

 

 漏瑚の首を片手に掴み、威光が入ってくる。

 

 

「威光、おかえり。無事で何より」

 

「ああ、戻った。お前の言う通り、強かったぞ。五条悟」

 

「どうだい、勝てそうかい?」

 

「いや〜どうだろうな。呪言は一応効く様だが、次回からは対策されるだろうな」

 

 

 威光が率直な感想を口にし、夏油がそれを興味深そうに聞く。

 

 2人が楽しそうに談話していると、威光の手元から奥歯を噛み締めるような声が聞こえる。

 

 

「……ッ! おい! そろそろ離せ!!」

 

「お〜すまんすまん。お〜い花御、ほれ」

 

 

 漏瑚の頭を花御に投げ渡す。

 

 そこで、夏油が音頭をとり、作戦の確認を行う。

 

 

「さて、これで分かったと思うけど……五条悟は、然るべき時、然るべき場所、こちらのアドバンテージを確立した上で封印に臨む」

 

「決行は、10月31日、渋谷。詳細は追って連絡するよ。いいね、真人」

 

 

 真人は笑顔で夏油の提案を受け入れる。

 

 

「異論ないよ。狡猾にいこう。呪いらしく、人間らしく」

 

 

 呪術界の裏で、呪いは溜まり重なり、そして増えていく。

 

 呪術界転覆の日は、近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、羂索。儂はどこで寝泊りすれば良いのだ?」

 

「………ウチ来る?」

 

「……………マジかー」

 

 

 後日、夏油の家で寝泊まりする威光の姿が確認されたそうな。

 

 

 







夏油と威光の二人暮らし編……乞うご期待?


威光は武者なので(「武者なので」って理由も変だけど)、身体能力がバカ高いです。
ただ、今は受肉仕立てで鈍ってて呪力込みでようやく生前の呪力なしレベルになれます。
言うなれば今回の戦いは、

五条(六眼封印+呪言デバフ)
vs
威光(受肉仕立てデバフ)

だった訳です。
五条先生はもっと強いって言う意見の方、多いと思うんですが、これでなんとか……。
このくらいの実力じゃ無いと宿儺相手に生き残れなさそうなの……。


また一週間後くらいの投稿になると思います。気を長くしてお待ちいただけると幸いです。
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