異世界で広まる遊戯王   作:決闘者

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ライディングデュエル、アクセラレーション!

 決闘(デュエル)も新たな神事の一つとして街の人々に親しまれつつありますが、やはりそれ以前からある神事をおろそかにするわけにはいきません。

 秋の収穫からしばらくして、冬の寒さが始まる直前に行われる『豊穣祭』。その年一年の収穫への感謝と来年の豊作を祈るお祭りです。

 教会も説法をしたりしますが、どちらかというなら主役は農家の方々。普段は地道な大地と向き合う仕事をしている彼らの年に一度の晴れ舞台でもあります。

 お祭りに合わせて酒蔵が今年仕込んだ新酒のエールやワインの振る舞い酒をすることも手伝って、開始からしばらく経てば完全にグダグダの酒盛りになり果てます。

 催し物も結構多彩で、特定の品種の作物をどれだけ大きく育てたか競う品評会とか、シンプルな力比べである腕相撲大会とか、あるいは調子に乗ったのんべぇたちの飲み比べであったり……

 当然と言えば当然ですが、お祭りムードで決闘者(デュエリスト)たちの戦いの機運も高まりを見せています。どうにか発散させたいところですが、大会をするには参加人数が多すぎますよね。

 ということで、ジャッジの必要人数を結果的に減らせるよう、『豊穣祭記念決闘(デュエル)大会』は二人一組のタッグデュエルで開催してもらうことにしました。

 ライフやフィールドを共有し、互いに協力しなければ勝つことは難しい決闘(デュエル)ですが、連携が決まれば1VS1ではありえないほど有利になれるのがタッグデュエル。

 ……それに四人ずつにジャッジ一人が付くので、人手不足も何とかなりますしね。

 気の合う友人、互いに手の内を把握し合ったライバル、優勝を目指して急遽結成されたタッグ……皆さん手探りですが、まあ、お祭りですから楽しくいきましょう! 

 優勝賞品は冬の祭礼の時と同じく、エースカードのレア仕様、タッグデュエルですから二人分です。

 もしかしたら迷宮兄弟*1のように、タッグでこそ強い決闘者(デュエリスト)も現れるかもしれませんね。

 

 

 

 

 

 

 うう……完全に寝不足です。

 かろうじて決闘(デュエル)大会の優勝者であるしぶとい昆虫デッキと豪快な恐竜デッキのシナジー皆無なタッグチームにレア仕様のカードを渡したところまでは覚えているのですが、そのあと夜も更けているのに院長先生に連れられて酒盛りに引きずり込まれたので、あまりの眠さに後半は何をしていたかを思い出せません。

 院長先生も飲みすぎてよく覚えてないとおっしゃいますし、一体何があったやら……

 まあ、こういうことはうだうだ考えても仕方ありません。まずは今日しなければいけないことを片付けなくては。

 私は欠伸を噛み殺しながら孤児院の仕事に取り掛かりました。

 

 二日酔いの院長先生に代わって郵便屋さんに手紙を出しに行ったのですが、郵便屋さんは朝一からみんな出払っているとのこと。

 少なくとも、私がこの街に来てからは初めてのことだったのでびっくりしました。

 郵便屋さんをしているのは各地を渡り歩く少数民族。小型の飛竜を飼いならして空輸をしているので届く速さはなかなかのものです。

 飛竜を飼いならす技術も乗りこなす技も一族秘伝のものなので、居ないとなると行商の人とかに陸路で届けてもらうしかないんですよねぇ。

 それだと届くまでにどれほどかかるか……素直に郵便屋さんが帰ってくるのを待つ方が早そうです。

 仕方ありません。院長先生には二日酔いが治ってから自分で手紙をもう一度出してもらうことにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 街の魔道具師さんが作成している決闘机(デュエル・デスク)ですが、発明されて時間が経ったことで改良案も出ています。

 まず、ライフ計算機能。もちろん電卓みたいなものがあるわけではないので、レバーを動かすとライフが増減するようなちょっとレトロな仕組みです。

 他にも、据え置き式の決闘机(デュエル・デスク)を携帯できないか。つまりは決闘盤(デュエルディスク)にしようという案ですね。

 ただ、盛り込んだ機能のために小型化が上手く進まず、今までのものより小さいが携帯できるほどではない中途半端な大きさの試作品に留まっています。

 独りでも移動・設置できるのは大きな進歩ですけど、装着という規模にはちょっと大きすぎます。

 据え置きとして使うには若干小さく逆に不便なので、どうにもならずに解体することになるかと思ったのですが……

 思わぬところから引き取りの要請が来て、むしろこの大きさのままで生産することになりました。

 

 引き取りの要請をしたのは、なんと郵便屋さんを営む少数民族の方々で、少々の仕様変更を加えて欲しいとのこと。

 変更点は、フィールドにセットしたカードが飛んでいかないようスリット式にして固定具を付けること。

 なぜそんな限定的な機能が必要なのか聞いて、私は自分の過去の迂闊な発言を後悔しました。

 

 なんでも、郵便屋さんは豊穣祭の宴会に参加しており、眠りかけで半分寝ぼけていた私からライディングデュエルについて聞いたそうです。

 ほとんどの人は酔っていたので笑い話としてまともに聞いていなかったのですが、民族全体でウワバミの彼らはほぼシラフでそれを聞いていました。

 小型の飛竜を飼いならし、それに騎乗する少数民族にとって空中での速さ比べは身近な遊びですから、速さで先じた者が先攻を取るというルールも実に納得出来てしまいます。

 スピードスポーツのような競い合いに決闘(デュエル)を加えた斬新な遊びともなれば興味を惹かれぬわけはありませんでした。

 しかし既存の決闘机(デュエル・デスク)は飛竜に載せるには大きすぎました。

 どうにかならないかと一族で集まって話している中で、決闘机(デュエル・デスク)が小型化したと聞いて意気揚々と乗り込んできたというわけだったのです。

 

 実際問題、飛竜に小型決闘机(デュエル・デスク)が載るのか? という問題は簡単に解決しました。

 郵便屋さんが小型決闘机(デュエル・デスク)を抱えると、『あと小麦の袋2つ分までは重くても大丈夫だ』と判断したからです。

 飛竜に乗って空を飛ぶ少数民族の方々は、積載量の限界を詳細に把握しています。というか、そうでなくては飛竜を任せてはもらえないのだとか。

 あとは実際に試してみるしかないということになるので、急遽飛竜に乗せやすいように形を整えた専用試作品が用意されました。

 そして上空で行われる決闘(デュエル)……いえ、ライディングデュエル。

 地上から見ている私にはよくわかりませんが、目の良い少数民族の方々は興奮しているので上手くいっているのでしょう。

 アニメで見る分には最高でしたけど、現実になるとさすがにライディングデュエルはしてみたくないですね……

 

 

 

 

 

 

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 小型の飛竜を雛の頃から飼いならし、騎乗して空を舞う『竜飼い』の民族にとって、空で速さを競い、その趣向を凝らすことは最早人生と同義であった。

 上空で予期せぬ突風や怪鳥の襲撃を受けても、頼れるのは己の技と飛竜との連携だけ。

 それを競い比べる過程で鍛えるのは生きるための知恵でもあった。

 そんな民族にもたらされたスピードの世界で進化した決闘(デュエル)の話。騎乗し上空に上がった状態で間近でモンスターの幻影が戦闘するとなれば子飼いの飛竜の胆も鍛えられるというものだろう。

 『デュエルモンスターズ』自体は前々から軽いわりに稼ぎになる荷として注目されていたが、これまではしょせん地上の遊びであり、空中という圧倒的スリルには及ばなかった。

 だが、これは違う。

 これが現実になればまさにそれは相乗効果、楽しい×楽しい=すごい楽しい という圧倒的娯楽の暴力だ。

 早速決闘机(デュエル・デスク)を取り寄せてみたものの、大きすぎて飛竜には載せられない。

 どうしたものかと首をひねっていたところに小型化したらしいという報が飛び込んできた。

 これこそ天の女神様の配剤、今まさに『竜飼い』の民族は思考がイケイケドンドンになって暴走していた。

 

 結果としてライディングデュエルの実行は成功した。

 専用の小型決闘机(デュエル・デスク)も増産の約束を取り付けられたし言うことなしだが、希望者全員に行き渡るまでには今少し時間がかかるだろう。

 情報をもたらした功で先行して決闘机(デュエル・デスク)の取り付けが終わった者は、身内の中で【決闘竜乗り(デュエル・ドラゴン・ライダー)】と呼ばれ尊崇の目を向けられている。

 デュエルモンスターズの大本らしき人物もこちらに協力的で、族長は最新の【シンクロ】カードから世界に1枚しかないドラゴンをモチーフにしたカードを五種預かったという。

 これは新年の速さ試しの代わりに開催されるライディングデュエル大会での上位五名に一枚ずつ授けられるとか……

 これを聞いて、心が燃え上がらない『竜飼い』の者はいなかった。

 

 

 

 ライディングデュエル。

 それはスピードの世界で進化した決闘(デュエル)

 そこに命を賭ける『竜飼い』の一族の者を人々は5D'sと呼んだ!(呼びません)

*1
原作で登場した双子のタッグデュエリスト。迷宮の特殊ルールも含めて主人公たちを苦しめた。

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