異世界で広まる遊戯王   作:決闘者

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キングのデュエルはエンターテインメントでなければならない!

 良い感じに広まっているデュエルモンスターズですが、決闘(デュエル)を行う上であまり見かけないカード群があります。

『リバースモンスター』。裏守備表示から表側表示になった時に効果を発揮するモンスターたちです。

 これまでに作成したカードの中にもリバースモンスターが無いわけではないのですが、他のカードとシナジーを持つわけでもなく1枚で完結した単発の効果という印象でしょうか。

 基本的に出したターンに効果を使いにくいので、相手の攻撃を誘う玄人向けなところも災いしています。

 強力な効果のカードもあるんですが、一貫性が無いというか、わざわざリバース効果のサポートをする必要が無いというか……

 そんなわけで、現在のリバースモンスターの扱いは『稀に見かける踏んでから気づく地雷』みたいな感じなんですよね。

 なんなら扱いにくいけれど全体でサポートを共有できる『スピリットモンスター*1』より見かけません。

 

 流石にそれは不憫なので、リバースモンスターのテコ入れを計画することにしました。

 しかし、シンクロ黎明期に差し掛かったくらいの時期でリバースモンスターとして一貫した効果を持つカード群…………『ワーム』、ですよねぇ。

《ワーム》、光属性・爬虫類族で統一されたモンスターテーマで、ほとんどの下級モンスターがリバース効果かそれに関連する効果を持っています。

 条件はバッチリですが、はたしてイラストが受け入れられるでしょうか? ワームは『デュエル・ターミナル』というアーケードで登場したカードストーリー世界で、序盤での世界の敵である『隕石に乗ってやってきた侵略者』です。つまりは宇宙人ですね。

 同じく宇宙人をテーマにしたリトルグレイっぽいのが多い《エーリアン》とかより、なんというか、生理的嫌悪を起こさせるような姿のものも結構います。

 説明なしで見たら、"キモイ"以外の感想浮かばないですよねぇ……どうしましょうか。

 

 

 

 

 

 テコ入れなのに受け入れてもらえなければ新規投入の意味がありません。

 ということで一計を案じて、いつぞやの野良決闘(デュエル)に即興ストーリーを付けていた吟遊詩人さんに協力を仰ぎ、まずワームのストーリー背景『デュエル(D)ターミナル(T)世界』のストーリーを広めていくことにしました。

 

 数多の部族が日々(しのぎ)を削る群雄割拠の世界、そこに突然現れ侵略を開始した異星の生物たち。

 彼らに対抗するため有力部族たちは力を合わせA(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)(正義の同盟)を結成して対抗する……

 

 結論から言うと、すごく人気が出ました。

 今までカードのイラストから想像するしかなかったところからの、公式からのストーリー開示です。

 特に直接的なカードパワーよりイラストや設定を重視する人の多いこの世界では、刺さる人が予想よりも多かったようですね。

 満を持して異星からの侵略者《ワーム》と同盟軍《A・O・J》のモンスターを作成しましたが、人気がすごかったです。

 ストーリーが魅力的だったのが根底にあるのでしょうが、それゆえにストーリーにだけ出てきてまだ未作成のテーマのカードはいつ出るのかという問い合わせも多かったのが印象的でした。

 

 総剣司令ガトムズ率いる剣士集団《X-セイバー》。

 霊山に封じられた三龍を信仰し、その封印を守護する《氷結界》。

「紅蓮術」という炎を操る術を持つ戦士団《フレムベル》。

 霞の谷に本拠を置く鳥人の一族《ミスト・バレー》。

 

 A・O・Jを構成する四部族のカードを切望する決闘者(デュエリスト)の気持ちも分かりますが、やっぱりシンクロが多いので大シンクロ時代に強制的になりかねないんですよね……

 そのために、わざわざ強力な汎用シンクロモンスター《A・O・J カタストル》も今は名前だけの公開に留めたのですから。

 情報だけ開示されて実物のカードが見られないもどかしさというのは本当につらいものだとは分かるのですが……調整する時間は必要です。

 物語の第二部でエクシーズ召喚が出るときには解決できているように努力しなければいけませんね。

 

 

 

 

 

 デュエルモンスターズで得た利益はもはや私一人が保管しておくには危険な域になっています。

 なので院長先生に頼んで、教会の方でほとんどを預かって運用してもらっているのですが、こういうところでも異世界カルチャーギャップを感じますね。

 教会は救済活動もしていますが、普通に金融関係もやっていますし、なんなら最も安定した信託先みたいな扱いを受けています。

 院長先生いわく、"黒字経営もできないところが救済活動なんて正気の沙汰じゃない"とのことですが、事業・投資・金貸しと金策にためらいの無い教会というのは、現代日本人的にはすごい違和感ですね。

 まあ金貸しも教会が一番利息が良心的で安心できると評判なので、母体組織が大きい事もありますがやっぱり組織形態が違うんだなぁと感じます。

 そういうわけで、私がデュエルモンスターズのカードで得たお金が決闘(デュエル)振興の投資に回され、新型決闘机(デュエル・デスク)開発や決闘者(デュエリスト)養成、決闘(デュエル)という新たな遊戯に関わる多岐にわたる産業の発展を経て利益を出す……という循環を形成しているのだとか。

 いわばこの世界のインダストリアル・イリュージョン社*2ということでしょうか。私としては衣食住をお世話になっているので、たまに買い物に出かけられるくらいのお金があれば十分なのですが*3

 使い道がそれほどないので、塩漬けにしておくくらいなら使ってもらわないと景気が悪くなって孤児院の食堂のご飯が貧しくなってしまいます! 

 それこそお金を使って良いもの食べればいい? 同僚の前で自分だけ良いもの食べれるほどメンタルは強くありませんよ……

 

 

 

 

 

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 教会公認デュエリストを目指す自由戦士たち。決闘塾(デュエル・スクール)で学ぶ彼らにも幾つかの派閥が存在する。

 真剣勝負で勝敗を決するのは決闘者(デュエリスト)として当然のことであるので除外するとして、『決闘(デュエル)において何を重視するのか』が派閥の争点といって間違いない。

 

 力強く、相手のモンスターを打ち負かすことを主軸に据えたパワープレイ派。

 巧妙なコンボこそ決闘(デュエル)の妙だと考えるテクニック派。

 相手へ敬意を払い、取りうる手段をすべて踏み越えてみせてこその勝利と信じるリスペクト派。

 

 そんな数ある派閥の中でも異端視されているのが、悪役(ヒール)善玉(ベビーフェイス)を演じて戦う姿で観客を沸かせることこそを重視する演技(ロールプレイ)派である。

 もちろん決闘者(デュエリスト)の誇りにかけて八百長などしないが、実際に争い合う決闘(デュエル)の当事者ではなく観客の反応を大切にする彼らは、もっと認められるために様々な方法を貪欲に模索していた。

 そこに発表されたカードのイラストにまつわるストーリー。

 明確な『敵』へと『正義』が立ち向かう姿は演技(ロールプレイ)派が求める姿に合致している。

 ストーリーになぞらえて悪役(ヒール)善玉(ベビーフェイス)がそれぞれの役になりきり決闘(デュエル)の勝敗を争う、演技(ロールプレイ)決闘(デュエル)の誕生である。

 

 決闘塾(デュエル・スクール)内での小規模大会で演技(ロールプレイ)派は、自らに課した縛りのせいか良い結果を出せなかった。

 しかし、観客を大いに沸かせた決闘(デュエル)は教会関係者の目に留まり、個別に激励の言葉を送られたことで演技(ロールプレイ)派は派閥を割ってでも新たな可能性を探し続けることを誓ったのだ。

 いまや演技(ロールプレイ)派は各派閥の良いところを積極的に取り入れ、パワープレイの趣向を凝らし相手を乗り越える姿で魅せるパワーデュエル分派、相手の裏をかいてどんでん返しを決めるテクニックデュエル分派、あえてリスペクトを捨てることで悪役(ヒール)としての純度を高めるアンチリスペクト分派など数多の分派に分かれた。

 本流である演技(ロールプレイ)派は、デュエルモンスターズを生み出した"決闘始祖(デュエル・マスター)"と(ちまた)で呼ばれる人物の発言から"エンタメデュエル"派と名を変え、現在も活動を続けている。

 

 モットーは『決闘(デュエル)でみんなに笑顔を』!

 

*1
基本的に特殊召喚できず、召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに手札に戻ってしまう効果を持つ。

*2
デュエルモンスターズ創造者ペガサス・J・クロフォードの設立した会社。

*3
そもそもこの街で売られている娯楽品の筆頭がカードである。

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