異世界で広まる遊戯王   作:決闘者

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イン・トゥ・ザ・ヴレインズ!

 シンクロ時代到来、さらには原作アニメ『5D's』のストーリーを広め始めたことを記念して、シンクロをテーマにしたデュエル大会を企画してみました。

 EXデッキはシンクロモンスターに限定し、実質融合テーマを締め出すことにはなりましたが、公式大会ではなく私が持ち出しで開催する大きな野良大会と言うことで許してもらっています。

 オープニングイベントとして"決闘竜乗り(デュエル・ドラゴン・ライダー)"と巷で呼ばれている方々によるライディングデュエルのエキシビションマッチも行われ、『5D's』で認知度が上がっていることもありかなりの反響でしたね。

 特に飛竜に小型決闘机(デュエルデスク)を装備して行う決闘(デュエル)は、決闘者(デュエリスト)の魔力だけではなく飛竜の常在魔力も使用できるので映し出される立体幻像(ソリッドビジョン)の出力が段違いなのです。

 "決闘竜乗り(デュエル・ドラゴン・ライダー)"の人たちが一枚ずつ持っているドラゴン族シンクロモンスターの幻影の大きさや迫力ある動きも、通常の決闘机(デュエルデスク)では出せなかったでしょう。

『5D's』の話の中に出てくるものとは若干違うものの似通った姿を持つ閃珖竜と琰魔竜の戦いは、本戦に向けて存分に場を熱狂させてくれました。

 そして始まるシンクロ大会本戦。

 事前に発売されているストラクチャーデッキのテーマである【X-セイバー】【フレムベル】【氷結界】【ミスト・バレー】の参加者が多めですね。いろんな意味で名高いトリシューラが暴れるかと思いましたが、現在のカードプールではなかなか出づらいようで。

 他にも【ウォリアー】や【A・O・J】、隊長さんは【ジャンク】で参加してるみたいです。

C(チェーン)*1などという実装した側からしてもマニアックなテーマを採用している方もいるので、何が心の琴線に触れるのかは分かりませんね……

 シンクロ大会だと告知しているのにアドバンス戦術やスピリット、儀式モンスターを使っているひねくれた方もいますが、まあこういうルールの穴を突きたがるのも決闘者(デュエリスト)のサガというものなのかもしれません。

 幸いなことにシンクロ使い以外が優勝するなどという番狂わせは起きず、3素材ジャンク・デストロイヤー*2で壁モンスターを一掃して隊長さんが勝利しました。

 ……割とどこの大きな大会でも見かけるんですけど、この人この街の住人じゃないですよね、仕事はどうしてるんでしょうか? 

 でも、迂闊につついたら闇が深そうだから聞かないでおきましょう。

 

 隊長さんはジャンク・ウォリアーの特別なカードが欲しいとのことですが、通常のパックで出るウルトラレア版はお持ちのようなので、絵違い版を進呈しました。

 カードとしての性能は同じでも、好きなカードの絵違い版って欲しくなりますよね! 

 

 

 

 

 

 一応、院長先生を通して教会本部の方にもこまめに進捗は報告していたのですが、激動のシンクロ時代の到来や原作アニメストーリーの流布など、通常の報告だけでは理解が追い付かないと判断したのか本部から"神託士"の一団が街へやってきました。

 "神託士"とは、本来は天界から神託を受け取りやすくなるよう人々に"洗礼"を与える事を役目としている神官の人たちです。

 神託を受けることを自分から請い願えるのはおとぎ話の妖精姫くらいのもので、神託が受けられるかどうかは天界の神様次第。しかし、受け取れてもそれがちゃんと聞こえるかは個人差があるのだそうで。

 神託士は"洗礼"を行うことで神託の経路(チャンネル)を整え、神託が下りた際に正しく受け取れるようにするわけですね。

 

 ならばなぜそんな人たちが来たのか? それは"洗礼"の副次効果が関わってきます。

 天界の神が神託を下ろす経路(チャンネル)は等しく全ての者の魂に繋がっているので、"洗礼"によってその流れを整えると同じく"洗礼"を受けた者に『接続』することができてしまうのです。

 いうなれば神様の親回線に相乗りして通話みたいなことができちゃうわけですよ。

 勿論、本来は神様が使用するところを使うわけですからいつでも使うということはなく、院長先生も本部とのやりとりに連絡用の魔法道具を使ってたくらいです。

 しかしこの件に関しては一応神事扱いのデュエルモンスターズ関連の連絡を密にする必要があるので許可が下りたわけなのですが……

 "洗礼"を受けても、私が他の人に『接続』できないんですよね。

 他の人も私に『接続』できなかったので、拡大解釈して神事(デュエル)に関わる有力決闘者(デュエリスト)たちが洗礼を受けることで間接的に報告を上げられるようにしました。

 私としては、堅苦しい報告をする手間が省けて助かります。

 

 

 

 

 

 驚くべき事実が判明しました。

 最近、就寝前に孤児院の同僚が独りで机にデッキをセットして一人回ししている事例がやけに多く、他の場所でも似たようなことをしている目撃例が多数報告されました。

 事態を訝しんだ院長先生が同僚を詰めたところ、神託のネットワークを利用してリモートデュエルをしていたことが明らかになったのです。

 いや……たしかにちょっとしたスキマ時間にデュエルできるならしたくなる気持ちも分からなくはないですが、流石にまずいのでは……? 

 でも神事のための連絡という体裁だけみれば強く責めるわけにもいかず、院長先生も『ほどほどにして早めに寝るように』と釘を刺すに留めました。

 それからしばらく、人の口に戸は立てられないとは良く言ったもので、洗礼を受けた決闘者(デュエリスト)たちの間で神託ネットワークは相手がちょうど捕まらない時の決闘(デュエル)マッチングシステムとしてひそかに活用されているようです。

 問題と言えば問題ですが、成長して独り立ちできる実力になった決闘者(デュエリスト)が居心地のいいこの街から出発しないのではないかという懸念はある意味解消されたといっていいでしょう。

 しかし、利用者もそれほどいないはずなのにそんなに都合よくマッチングできるものなのでしょうか? 

 同僚いわく"秒で相手が見つかる"とのことですが、滅茶苦茶暇な人でもいるんですかね……

 

 

 

 

 

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 天界とは神々が住まう世界であり、地上の維持・管理を行う場所でもある。

 様々な神が己の権能をもって世界の法則・秩序の維持や管理を行っているが、創造の女神が世界を創り出す原初の時代ならまだしも、ある程度の法則・秩序が整ってからはそれらに手を加えるスパンは一年や二年などという短い期間ではない。

 結果、暇を持て余した神々はデュエルモンスターズにガッツリはまっているのだが、その中でもいくらかのグループができている。

 遊戯の神と賭博の神はお互いを好敵手と定め、相手に勝つために研鑽するタイプ。

 闘争の神や武勇の神はいろんな相手と決闘(デュエル)して、バリエーションを楽しむタイプ。

 地上の民に神々の言葉を下ろす神託の神は、決闘(デュエル)したいけど上手く声をかけられないタイプだった。

 神々のほとんどは地上そのものに関わる権能を持つのに、自分は民に神託を与えるだけ。

 たしかに地上の民に直接干渉できるのは自分だけかもしれないが、母なる女神の子らに干渉するその権能もなぜかこの札遊びの発明者に神託を下ろすことはできなかった。

 なんとなく疎外感があり、決闘(デュエル)したいけど上手く相手を見つけられない神託の神は妖精姫のデュエルモンスターズに関する質問に超速で答えて自分を慰めていた。

 そんな日々を過ごしていたのだが、最近神託のために使っている地上の民への精神経路が頻繁に使用されているのに気が付く。

 何事かとそっと確認すると、どうやら地上の民が経路を一部利用して他の民と決闘(デュエル)をしているようだった。

 地上の民がたまにこの精神経路を使って連絡などを取ることがあるのは知っていたが、まさか決闘(デュエル)まで……

 ──────そこで神託の神の脳裏に電流が走る。

 神威さえ抑えれば、ここに混ざっても気付かれないんじゃないか……? 

 ここで決闘(デュエル)の相手を探している地上の民たちは他の者と違って精神経路がクリアに繋がっているようだし、天界からでも気取られはしないだろう。

 自分は強大な権能を持つ神でもないし、神威を隠すのはそれほど難しくないはずだ。

 まあ地上の民たちの集まりなのだから地上の民同士を優先するが、相手が見つからない者とするのなら問題は、ないか。

 

 

 ……決闘(デュエル)の相手がいない時に超速で応じてくれる謎の神物(じんぶつ)が誰なのか、地上の民が知ることはないだろう。

 

 

*1
刑務所所長・鷹栖が使用した鎖がモチーフのデッキ破壊テーマ。

*2
素材となったチューナー以外のモンスターの数までカードを破壊できるシンクロモンスター。

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