異世界で広まる遊戯王 作:決闘者
冬の祭礼の後、大会で使った机”
予約さえとれば無料で使用することができますが、大人が仕事をしている時間帯は子供たちの遊び場になっています。
ほとんどの子供たちは仲良く利用しているのですけど……
「ね、ねぇ、僕と
「やだ! お前とはしないよ!」
「うぅ……」
こうして爪はじきにされている子もいます。
見かける度にたしなめてはいますが、みんな仲良くというのは難しいのでしょうか。
「はいはい、泣かないで。私がお相手しましょう」
「! う、うん!」
『ルールを守って楽しく
願わくば、
「わ、わ、まけちゃった……」
「……」
この子のデッキタイプは【ロックバーン】。相手の盤面をロックして効果ダメージのバーンで真綿で首を絞めるように倒すエグいデッキです。
主流のデッキがモンスターを並べて殴り合う【ビートダウン】の現状で、このデッキを相手にするのはかなり厳しいでしょう。
友達をなくす系のデッキなのでこうなっていたのは必然だったということですか……
『パックに遊ぶ友達は付属しません』という状況になる前に教えてあげなければ。
「……勝利を求めるな、とは言いません。
「
「対話……上回る一手……」
そう、それはサイバー流リスペクトの精神。それが無ければ先攻完全制圧系壁とやってろゲームになってしまいます。
じゃんけんで勝って先攻取った方が勝つゲームなどと言われてはいけません。相手がいてこそ
私の言葉に幾らかでも感じるものがあったのか、さっそくデッキを組み直しはじめました。
もちろん、私もアドバイスを求められたら快く応えてあげましょう。別にデッキを意図的に弱くする必要は無いのですよ。
おかしい……どうしてこうなったのでしょう。
確か私は勝利を求め闇堕ちしかけた子どもにリスペクトの精神を説いたはずなのに……
何度目をこすっても、目の前にいるのは「ヒャハハハハハァーッ」というテンションMAXな声を上げて
残りライフが4000でも100でも相手のライフが0になればいいんだという攻めの姿勢に要所要所で最低限の防御をするプレイスタイルは他の子どもたちにも変な人気が出ています。
おかしい……『
勝率的にはさほど変わっていないか若干落ちたくらいですが、みんな楽しく
院長先生の話によると、街の産業の一つとして魔法道具師の方々の
街の内輪での需要もなかなかで、特に酒場などでは納入の要請が大きいとのこと。
噂ではこの街の領主様も特別製の
デュエルモンスターズが知られていない街でも、かっこいいモンスターが映し出される道具というだけでも価値があるでしょう。
正直なところ、何もしなくても売れていくと思うのですが、院長先生はこれを機に新たな企画を打ち出すべきと考えているようです。
一般の人が
なるほど、つまりは初心者入門用、ストラクチャーデッキということですね。
既に
新しく
院長先生や魔法道具師の方々は購入母数である
……ってストラクチャーデッキを作る私が勘定に入ってないじゃないですか!
たしかにデュエルモンスターズが広まるのは嬉しいですけど、そんな仕事量をタダ働きは嫌ですよ!
え? 院長先生のコネで魔法造形師に依頼した
く、くく、くれるんですか!? えへへ、もぉ、今回だけですよぉ。
ふへへ…………ふつくしい……
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この国の王城は、主に政治が執り行われる王宮と、王族の私的な生活の場である後宮に分けられる。
後宮では公的儀式に出ない王の側室や、社交界デビューをしていない王族の子供たちが暮らしていた。
まだ幼い第一王子は珍し物好きで、出入りの商人は気に入られようと各地から珍奇な品をかき集めて持ち込むのが定例だった。
「どうでしょうか? 北海の果てにあるという地で捕れるイッカククジラの角でございます」
「ふむ……たしかにめずらしいしなだ。だがつのにしてはかるすぎる。うみのいきものにつのがあるというのもいぶかしいし、ながいきばなのではあるまいか?」
「お、おお、申し訳ありません! 不勉強ゆえ、平に、平に……!」
「よい」
第一王子は厳しく教育されているため声を荒げるようなことはなかったが、己の好奇心を満たすものは無いのかとどこか白けた様子である。
幾つもの珍品をくり出すものの王子の気を引く物はなく、苦し紛れに懐のデッキを持ちだした。
「こちらはこの国の一部で流通が始まった新たな札遊び『デュエルモンスターズ』です。主に3種のカードが……」
「まて……ふむ、このモンスターのかかれたえふだにだけこうげきりょくとしゅびりょくがある。おそらくこれをくらべてきそうのだろうが、あきらかにせいのうがちがいすぎるものがある。このほしのかずがかんけいしているのか……?」
「さすがは王子、慧眼でございますな」
「つまらんせじはいい。わたしにこのカードについてもっとおしえてくれ」
初めて品に食いついてきたことに喜びながらデュエルモンスターズのルールを教授する出入り商人。
王子も己の思索の埒外とも言える『カードゲーム』の存在にこれまでになく心が躍るのを感じていた。
「なるほど、ルールはいっけんふくざつだが、おぼえてしまえばみょうにしっくりくる。このカードはほかにないのか?」
「申し訳ありません、今はこのデッキ以外には未開封のものは4パックしか……その、王子殿下に手垢のついたデッキを渡すわけには」
「よい、おまえがかんがえてくんだデッキをうばおうとはおもわぬ」
せっかく王子の興味を引けたというのに、手元にあるのは未開封のパックが4つだけ。
既に組んである魂のデッキは、たとえ王子であろうと渡したくはなかった。
商人のそんな心を読んだ王子は、次の機会にデッキを組めるだけのカードを持ち込むことを頼み、商人も喜んで承諾する。
(たのしみだな……モンスター、まほう、わな。まほうとわなにはえいぞく? というのもあるらしいし、どのようなものかはやくみてみたい)
王子の依頼を受けてカードを買いに行った商人が、テーマが全く違う複数のストラクチャーデッキを買ってきて王子が目を白黒させるのは別の話。