異世界で広まる遊戯王   作:決闘者

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光射す道となれ!

 この世界に迷い込んですぐに商家の方に保護され、あの街をホームグラウンドにしていた私にとっては今回の旅は初めての遠出です。

 護衛として雇われた自由戦士の方々が数名、物見遊山気分の院長先生と緊張している私、献上品として用意された特別製の決闘机(デュエルデスク)の一行で出発します。

 ……この中だと私も献上品のくくりに入ってませんか? 大丈夫? 

 ま、まあ、気を取り直して……自由戦士の方々は普段は街の周りの魔物狩りなんかをしている戦闘職の人たちです。

 魔物は魔法を使った後に出る『澱んだ魔力』に邪神の残した呪いが反応して生まれる生き物? らしく、倒しても死体すら残りません。

 そのため、必要な仕事なものの不経済という何とも残念な仕事で、大きな都市では教会の僧兵団なんかがこの仕事をしているそうです。

 私の住んでいた街でも以前は自由戦士の集まりが悪かったそうですが……案の定、デュエルモンスターズのプレイヤーである決闘者(デュエリスト)な自由戦士が半ば定住するようになり改善されたとか。

 いいんでしょうか、命のかかる仕事の環境をそんな決め方をして……

 自己紹介された時も”バスター・ブレイダー使いの○○”とか”クラブ・タートルマスターの××”とか異名が完全に決闘者(デュエリスト)に寄っているのですけど。

 彼らには私がデュエルモンスターズを広めたことは伝わっているらしく、護衛の士気はすこぶる高いです。

 決闘机(デュエルデスク)と同乗する荷馬車の上で、少しずつ遠ざかる街に別れを告げます。

 さようなら、しばらくの別れです。私の第二の故郷。

 ……そんな感傷は自由戦士のリーダーの『さあ、決闘の街(デュエル・シティ)に別れを告げろ!』という言葉に吹っ飛びました。

 決闘の街(デュエル・シティ)!? そんな呼ばれ方してるんですかあの街!? 

 

 

 

 

 

 

 

 護衛の僧兵団と合流する大都市までの旅路は何の問題もなく過ぎました。

 もともと魔物が生まれる条件的に、魔法を使う人がたくさんいる集落の周辺以外では見られないこともあって人里離れた場所ほど安全なんですよね。

 あえて困ったことを挙げるとするなら、寝ずの番の自由戦士が献上品の決闘机(デュエルデスク)でガッツリ遊んでいたことでしょうか。

 名目としては『輸送の過程で故障や不具合が起きていないか早期に確かめる』ということでしたが、明らかに楽しんでましたよね? 

 院長先生は『ちょうどいい獣除けだ』と笑っていましたが……後で不敬を咎められたりしませんかね……

 

 大都市で合流した護衛をしてくれるという僧兵団は、当たり前ですが自由戦士の方々よりキチッとした印象を受けます。

 統一された整った装備、行き届いた統率と規律。さすがは大都市の僧兵団の所属だと感心しますね。

 僧兵団にも通常業務があるので、私たちの護衛をしてくれるのはその中から選抜された一団ということですが、少なくともミソッカスではないことは確かです。

 

「今回の護衛任務は教皇猊下直々のご下命。この身に代えても本部大神殿へお連れしましょう」

 

「ありがとうございます。頼りにしておりますよ」

 

 院長先生が僧兵の隊長さんに感謝と信頼を伝えると、隊長さんは胸を張って応えました。

 

「今回の任務には”特に理解のある者”を選抜いたしました。問題はありませんとも!」

 

 自身満ちた声ではありますが……『特に理解のある者』? 

 首を傾げた私の目に、護衛の僧兵たち全員の腰に見覚えのあるアイテムが付けられているのが映りました。

 あ、あれは! ストラクチャーデッキと一緒に発売された革製デッキケース! 

 ということは…………この人たちはみんな決闘者(デュエリスト)!? 

『特に理解ある者で選抜』ってめちゃくちゃ私情こみの人選じゃないですか! 

 これからの旅が不安になってきました…………

 

 

 

 

 

 

 第一印象は、その、ちょっと良くなかったですが、僧兵の隊長さんはかなりストイックな方でした。

 私に『決闘(デュエル)の指南を頼みたい』と言い、他の隊員たちが自由時間に献上品のチェック(という名の試遊)にかまけている間も、決闘(デュエル)の勉強に余念がありません。

 彼のデッキは低レベルモンスターが主軸で、魔法での全体強化などを駆使しても一定以上の打点を越えられないことが多いようです。

 それだけなら上級モンスターを入れてしまえばいい話なのですが、彼の低レベルのモンスターでも決闘(デュエル)の役に立つことを示したいという決意は固いようですね。

 ……いつ出すかと迷っていましたが、彼の瞳に希望の光を見た私は新たなカードを作ることを決意しました。

 さあ、教えてあげましょう。大いなる存在を呼ぶ儀式やアドバンスではなく、力を合わせる融合でもない。絆を束ねる力…………シンクロ召喚を。

 

 

「ジャッジ・マンで黒魔族のカーテンに攻撃! さあ隊長、後がなくなったっスね?」

 

「いや……絆は、潰えない! チューナーモンスター、ジャンク・シンクロンを召喚し、効果で黒魔族のカーテンを蘇生! 戻ってこい、黒魔族のカーテン!」

 

「チューナー? いやでも俺の方が攻撃力は上っス!」

 

「レベル2の黒魔族のカーテンにレベル3 ジャンク・シンクロンをチューニング! シンクロ召喚、現れろレベル5 ジャンク・ウォリアー!」

 

「えええええええ!?」

 

 うんうん、さっそくシンクロ召喚を使いこなしていますね。

 もうナチュラルに献上品を試遊台にしているのにツッコむ気力もなくなってきました。

 チューナーモンスターと非チューナーモンスターのレベルの足し算で行われるシンクロ召喚、弱さを力に変える新たな召喚の形。

 最新カードが見られると告知され観戦していた僧兵の方たちからの反応もなかなかで、『凄い』『自分も使ってみたい』といった声も聞こえます。

 ただ高レベル高ステータスなモンスターだけが強いのではありません。低レベルモンスターももっと使ってやってほしいものです。

 この世界はモーメント*1とかそういうのは無いんで、じゃんじゃんシンクロしちゃってください。

 まあ、もしシンクロ一強になりそうだったらシンクロキラーたちを放流するつもりでもありますけどね。

 

 

 

 

 

 

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 天界、それは創造の女神と神々が住まう神域。

 邪神・悪神を封印する冥界と並んで人々に知られる神話の世界である。

 最近、天界の神々の間でにわかに流行しているものがある。

 それは、遊戯の神が興味をひかれて地上から昇天させた札遊び、『デュエルモンスターズ』。

 神々は『女邪神ヌヴィア』を見てこれに似た奴いたなぁと昔を懐かしんだり、『治療の神ディアン・ケト』という斬新な解釈に感心したり(約一名が憤慨したり)、『かつて神と呼ばれた亀』に困惑したり、それぞれ楽しんでいた。

 カードを作る程度は神々には造作もない事なので、捧げられたカードを参考に自分でカードを作ってみた神も居たのだが、それで決闘(デュエル)をしてみるとどうもしっくりこない。

 オリジナルのカードを見るに地上の民に授けられた母なる女神様の権能の一部で作られたようで、その慧眼は流石は我らの母と感心することしきりである。

 

 今日も今日とて特に熱を上げている遊戯の神と賭博の神が決闘(デュエル)するのを複数の男神と女神が観戦している。

 権能でコイントスを的中させる賭博の神と圧倒的ドロー運の遊戯の神の戦績は全くの五分。

 序盤にモンスターが融合して異形の機械竜(ガトリング・ドラゴン)を呼び出した賭博の神が優勢であったが、調子に乗って神威を使い過ぎて敵を一掃し勢い余って自分まで破壊したことで形勢は逆転、今回は遊戯の神が勝利した。

 神々も新たな種類のカードを求めてやまないが、母なる女神様の子らである地上の民に神託を授ける権能を持つ神が製作者に要求しようとしてもできなかった。

 未知なるゲームを楽しむ神々も、この未知には首を傾げていた。

 

「おい! 全知の書に新しいカードが記されたぞ! シンクロ?召喚するモンスターだってよ!」

 

「まあ! シンクロってどういう召喚方法なのかしら?」

 

「早速見に行きましょう!」

 

 

 神々は世界のこれまで全てが記載される書物、『全知の書』を新カードをチェックするのに使っている。

 ……全世界の現状を記す力を持つのに、最近はデュエルモンスターズのルール&カードブックとしてしか使われてない全知の書は泣いていい。

 

*1
遊戯王5D'sに登場するエネルギー機関。逆回転すると危険。

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