異世界で広まる遊戯王   作:決闘者

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○○とはどんな効果だ?いつ発動する?

 ようやく帰ってきましたよ! 私の第二の故郷! 

 孤児院の子供たちも久しぶりの再会を喜んでくれます。

 

「ねーちゃん、おかえりー!」

「おみやげ! おみやげは?」

 

 ……よ、喜んでくれます。

 しかしこの程度は予測できたこと。お土産もバッチリ買い込んできていますよ、そんなに高いものは買ってませんが。

 まず男の子にはそれっぽい剣の形をした護符(アミュレット)

 武勇の神と成長の神は双子なので、子供から大人まで人気がある普遍的なモチーフです。

 ……なんならこの街でも似たようなものが売られているのですが、まあそこは気にしない方向で。どこででも見かけるお土産物ってありますよね。

 女の子には花の意匠の髪飾り。

 小さな品ですが、おしゃれが嫌いな子はそういないのでまずハズレないでしょう。

 実際、女の子たちは自分の好みの品を選びながらキャッキャッしています。

 私が不在の間、代わりに頑張って下さった同僚たちには隣国特産の薬草の香り袋をチョイスしました。

 枕元に置いておけば安眠できると評判が良かったものです。

 ……子供たちと掛かってる額が違い過ぎる? ナンノコトヤラ。

 人間関係を円滑にするためには潤滑剤が必要なのですよ。

 さあ! 無事に帰ってこれましたし、これからまたいつもの日常が始まりますよ! 

 

 

 …………この時は、この後に起こる出来事を予想もしていなかったのですが。

 

 

 

 

 

 

 私は普段、孤児院で子供たちに計算(算数)を教えているのですが、このたび院長先生に新たな仕事を任されました。

 デュエルモンスターズの詳細なルールを教え、一人前の決闘者(デュエリスト)を育成する……決闘塾(デュエル・スクール)の開校です。

 初めに言われた時は『は?』としか返せなかったのですけど、私のところに指名が来た時点ですでに決定事項だそうで。

 教会が”神事”として公式・公認戦を監督するならルールに対する深い知識は不可欠。さらにデュエルモンスターズが普及していない地域に新たに広めていくためには熟知した決闘者(デュエリスト)の数をそろえる必要があります。

 決闘者(デュエリスト)候補生となるのは元々いくつかの街を渡り歩くフットワークの軽い自由戦士の方々。

 彼らがこの街で決闘者(デュエリスト)となり、各地でまずは決闘(デュエル)を実演していくのが教会の描いた青写真なのだとか。

 まあたしかに、本部大神殿に行く旅の途中でも、この街ほど決闘者(デュエリスト)の多いところはありませんでしたが……本当に私が講師をするんですか? 

 現役の自由戦士の方々ということは普通に成人してますよね。子供たちはともかく大人相手に教えるのは初めてなんですが。

 院長先生いわく『参加する自由戦士は”教会公認決闘者(デュエリスト)”の称号が欲しいから、真面目に学ぶだろう』とのことですが、私の教え子となる人たちが決闘者(デュエリスト)のスタンダードになるなら責任重大ですね。

 いいでしょう! 最終的には『時』と『場合』や『任意』と『強制』の違いから『対象に取る効果』と『対象に取らない効果・選ぶ効果』の違いまで叩き込んであげましょうとも! 

 気分は決闘塾(デュエル・スクール)の一流教師デスーノ! ふふふ。

 

 

 

 

 

 

 最近、街中で何もない空間に突然黒い穴が現れる現象が相次いでいます。

 この穴、通称『奈落の穴』と呼ばれていて、”澱んだ魔力”が急激に動くと現れることもある……くらいの珍しい現象のはずなのですが、最近はあちこちで見られます。

 これって明らかに新しく作ったカードで決闘(デュエル)してるからですよね……

 穴は邪神・悪神が封じられた遥か地の底の冥界まで続いていると言われ、落ちたものは二度と戻ってこないと言われています。

 まあ、生き物は通れないし手のひらくらいの大きさなので、何か穴に落としたら諦めてね、くらいの話なのですが。

 穴自体も同じところには長時間開いていないので、子供が見つけた穴に石や砂を流し込んで遊んでいるのも見かけます。

 

 ある日、私室の隅に開いた奈落の穴を見て、私はビビっときました。

 今まで、カードパワー的に明らかに現在では発表・流通できないカードは作らない様にしていました。

 眺めて懐かしんだ後で焚き付けとかに使って消滅させようにも、カードを作った時点でどこからか嗅ぎつけてくる決闘者(デュエリスト)たちをごまかしきれないと思ったからです。

 しかし……この穴に入れてしまえば完全に証拠隠滅できてしまうのでは? 

 天啓を受けた悪魔的発想に身を委ねた私は、思いつくままにカードを生成し、存分に懐かしんだ後で束ねてから穴へシュートしました。

 部屋から出た途端に『新しいカード作らなかった?』と聞いてくる勘のいい同僚(決闘者(デュエリスト))に私は素知らぬ顔で『いいえ?』と答えて共に夕食へ向かうのでした。

 

 

 

 

 

 

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 冥界。天界と並んで語られる世界から切り離された領域。

 冥界の管理者たる冥王の下で並み居る邪神・悪神たちが封じられ、永きに渡り世界の平穏を守っていると言われている。

 ……実際は、邪神・悪神も母なる女神にとっては愛する子供たちであり、神々の尺度的には『おイタをした子を反省するまで蔵に閉じ込めておく』のとそう変わらないのだが。

 

 ある日、冥王の下へ天界から連絡が届いた。

『全知の書から記述が削除されたものがある。冥界へ落ちたものと思われるため、情報求む』と。

 冥界は天界よりも厳重に世界から切り離された場所だ。存在やそれがあった事実に接続して世界のすべてを記す全知の書とて、冥界に来たものは範囲の外。

 しかし、天界の神々が連絡を寄こすようなものが冥界に来るだろうか? 

 邪神・悪神の残した呪いが地上界に冥界へ繋がる穴を開けることがあるとは聞くが、開いたところでその穴は小さく、命を持つ者が冥界に来ることはできない。

『捜索はしてみるが、さしたる影響はないと考える』と返信をして、冥王は配下に探し出すように命じた。

 

 はたして、見つかったのは幾つもの束に分けられた紙切れだった。

 こんなものの為に天界の神々がわざわざ連絡を……? 

 訝しんだ冥王は、冥界の秘宝たる『理解の片眼鏡(モノクル)』を取り出した。

 掛けた者に目に映るものの情報を引き出し見せる秘宝、全知の書を見ることができない冥界に母なる女神が用意した唯一無二の宝具である。

 そして、冥王の頭の中に広がる圧倒的情報の奔流。

 一束たかだか数十枚の紙きれにこれほどの情報が秘められているとは流石の冥王も想像していなかった。

 カードゲーム、デュエルモンスターズ、ルール、戦法、デッキの動かし方から妨害への対処法まで。

 カードに、紙束……いや、”デッキ”になったものが持つ情報を精査した冥王が感じたのは、『実践してみたい』というある人種における本能のようなもの。

 デッキによって、勝つための理想的な過程……『ルート』は存在するが、手札とドローという不確実性が使用者に技量を求める。

 さらには相手のデッキ内容や妨害なども考慮すれば、そのルートに至るまでの道はもはや無数。

 とりあえず天界への連絡は一旦保留することにして、冥王は決闘(デュエル)の相手を見繕う事から始めることにした。

 

 

 ……そして現在。

 

「それではチーム対抗冥界決闘(デュエル)トーナメント決勝戦、冥王チームVS悪邪神チームを行います!」

「先鋒、冥界官吏長【烙印エルドリッチ】VS悪蛇神【LL鉄獣戦線】!」

「次鋒、冥界侍従長【竜輝巧(ドライトロン)宣告者(デクレアラー)】VS邪蟲神【スプライト】!」

「中堅、冥王近衛隊長【壊獣カグヤ】VS悪影神【EM竜剣士】!」

「副将、冥将軍【冥界逆転ティアラメンツ】VS邪触神【ふわんだりぃず】!」

「大将、冥王様【神碑(ルーン)】VS悪巨神【ラビュリンス】!」

 

 飛び交う手札誘発、緩い条件で現れる強力モンスター、鬼のような妨害に忘れた頃に戦場を更地にする巨大隕石。

 冥界は今日も平和であるが、最近しっかりと地獄である。

 

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