異世界で広まる遊戯王   作:決闘者

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俺達の絆パワーで、必ず倒してみせる!

 一流の決闘(デュエル)エリートを育成するこの決闘塾(デュエル・スクール)では、毎日嫌になるほど決闘(デュエル)が行われている……はずですが、決闘者(デュエリスト)という人種のサガのせいか、野良決闘(デュエル)も絶えません。

 新しく組み直したデッキの試運転、まだ戦ったことが無い相手との決闘(デュエル)、そんなのはマシな方で、私が懐かしくなって作った新鮮なマヨネーズを使った購買のタマゴパンを巡った争いなど下らないことも決闘(デュエル)で解決しています。

 孤児院の子供たちもそうですけど、着実に決闘(デュエル)脳の汚染が広まってませんか? まあ決闘(デュエル)を学ぶ場ですから、その機会が多いに越したことはないので止めませんが……

 さすがに今のデュエルモンスターズには『決闘(デュエル)で相手を拘束する』機能とかは無いので、大丈夫、のはずです。

 ……今後開発されたりしませんよね? いや本当に。

 

 決闘塾(デュエル・スクール)は基本的に入塾した生徒たちに授業をするスタイルですが、一部の授業は一般聴講者などが参加できるものもあります。

 イエロークラスの孤児院の子供たちとの模擬デュエルなんかがいい例ですね。

 この一般聴講枠がなかなか人気らしく、七星祭に参加したE・HERO使いの商人さんやシンクロ使いの隊長さん、以前の決闘(デュエル)大会で優勝した【帝】使いの”気高い紳士”さんなどが参加しに来ることもあります。

 珍しいところだと、遠く砂漠の国からわざわざやってきた墓守使いさんなんかも居ましたが、そんなところまでもうデュエルモンスターズが広まっているのでしょうか。

 独りで事務仕事をしてたところに異国特有のスパイスが効いたお茶の差し入れをくれて、めちゃくちゃ質問攻めにされたのでよく記憶に残っています。

 かなり突っ込んだ質問をされたのでぼかすところはぼかして伝えましたが……【墓守】は確かに砂漠の国の雰囲気とマッチしてますし、気に入るのも分かりますよ! 

 

 

 

 

 

 

 コピーカード。それはカードゲームであれば必ず存在するものでしょう。

 営利を目的にカードを生産しているのであれば当然駆逐されるべき存在なのでしょうが、需要を満たすためにひーこらしている私としてはどんどんやってほしいくらいです。

 ですが、異能が強くなってから生み出されるカードに付与された力に目を付けている教会としては、普及の役には立っても肝心の神事としての効果が無いのがコピーカード。

 よって妥協点として、公式・公認の試合や大会以外では普段使いのカードとしては認める……いわゆるプロキシカードとして扱われることになりました。

 大会では使用できない代わりに、野良決闘(デュエル)では使ってヨシ! という裁定です。コピー機のような魔法道具もあるにはあるのですが維持費が結構高くつくらしいですし、絵師さんもこのサイズで絵を描くのは嫌がるので、やっぱり私はひーこらいうのですけど……

 むしろ細かく描写をするのであれば、費用は高くなりますが彫刻家とかの方が再現率が高いです。まあこれだとカードじゃなく石板みたいになりますが。

 石板使って決闘(デュエル)してたらまんま決闘(ディアハ)ですよね……

 

 孤児院の同僚たちもそうですけど、街の人たちも私がデュエルモンスターズに関わった仕事をするのを積極的に推奨するんですよ。

 私としては副業くらいでやりたいんですが……どうやら『女神様が使徒として使命を与えたのだから、使命を果たせるようにしてあげた方がいい』という心理のようです。

 使徒として有名な歴史上の人物が、魔物の多かった時代に亡くなる前日まで魔物狩りをやめなかったバーサーカーみたいな人なので、そういう思考になっちゃうみたいなんですよね。

 私はそんな『一狩り行こうぜ!』みたいなノリで毎日していたいわけじゃないんですけど……

 幸い、信仰心が篤いようで信仰心が篤くない、でもちょっと篤い院長先生が完全休日を定期的に下さるので、ストレスというほどではありません。

 理解のある上司がいるというのは助かりますね。

 

 

 

 

 

 

 ある日のなんでもない休日。

 贔屓のパン屋で焼きたてくるみパンを買って街をぶらついていると、広場で何やら人だかりができているのが見えました。

 またぞろ誰かが公共決闘机(デュエルデスク)で辻デュエルでもしているのかと思ったのですが、どうやら違うようです。

 なんでも吟遊詩人が決闘(デュエル)しながら即興でそれを歌にするパフォーマンスなのだとか。いろいろ考えるものですねぇ。

 吟遊詩人は凡骨の意地を使った通常(バニラ)モンスターによるビートダウン、いわゆる【凡骨ビート】……かと思ったらいきなり『覚醒戦士 クーフーリン』というなかなかレアなモンスターが現れました。

 攻撃力わずか500、相手の決闘者(デュエリスト)が拍子抜けな顔をしましたが、墓地が肥えた状態でこれが出るとちょっと厄介です。

 吟遊詩人が墓地に眠る魂が光の戦士の力を覚醒させる旨を歌い上げ、墓地の『エビルナイト・ドラゴン』が除外されると……って待ちなさい、それ邪悪なドラゴンじゃないですか! なんてもので覚醒してるんですか! 

 お相手の決闘者(デュエリスト)も粘りましたが、何とか倒したクーフーリンが『契約の履行』で戻ってきて『リチュアル・ウェポン』まで装備した結果、押し負けてしまいました。

 終始クーフーリンが光の聖戦士みたいな歌でしたけど、その人、山場で邪竜の魂で覚醒しましたよね……? 

 面白いといえば面白いパフォーマンスだったのですが、なんかモヤモヤした気持ちを抱えて帰ることになりました。

 

 

 

 

 

 

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 魔族。創造の女神の末息子たる魔神が、母たる女神の権能を真似て創り出した人ならざる者たちとその末裔。

 その姿は様々で、獣耳を有するもの、腕が4本あるもの、角があるもの、鱗があるもの、下半身が蛇になっているもの、それらすべての特徴を持つものなど、既存の生物の理に囚われていない。ちなみに現在冥界在住の魔神の愛用デッキは【グッドスタッフ】*1である。

 彼らは邪神・悪神の全盛期は魔物と共に人類の天敵といわれ恐れられていたが、母なる女神の使徒の尽力によってその勢力を減らし、最終的に魔神の冥界への封印を最後に敵対を止めた。

 かつて魔神の加護を受けた大神官でもあった最後の魔王が自らの命と引き換えに配下の助命を乞うたために族滅は避けられ、時が流れた現在では独自の文化を持つ民として各地に集落を築いている。

 彼らの間でステータスとなりつつあるのが、自分と同じ特徴を持つモンスターの絵札を集めることだ。

 最初は集落に行商人が持ち込んだ数枚のカードが発端だった。

 行商人としては己のデッキに入れるにしては相性が悪いし、前の集落で戦士や魔導師、カッコいい系やかわいい系のカードが売れた後の残りであったが、魔族には刺さった。

 特に集落の長である青肌にヤギの角を持つ長老は『ダーク・グレイ』*2を非常に気に入り、周囲に自慢しまくった。

 結果、集落の魔族たちは『このモンスターのたてがみが……』『いやいや、この爪を見てくれ。命を刈り取る形をしているだろう』『この鱗の良さがわからんとは……』と、自分の特徴を持つモンスターの絵札を持って語り合うのが大流行り。

 行商人としても、仕入れる絵札の絵柄に指定を入れられるのは面倒だが、絵札の能力を問わず買い求めてくれるので助かる面がある。

 デュエルモンスターズは、各集落で『カードゲーム』としてではなく『コレクターアイテム』として広まりつつあった。

 ……それに魔族は闘争心旺盛なので、決闘机(デュエルデスク)を持ち込んだらリアルファイトが始まりそうだと賢明な商人は推察する。

 実際、立体幻影を交えた決闘(デュエル)をしたら、魔族たちはそのうち幻影の直接攻撃(ダイレクトアタック)に合わせて魔法の衝撃波を使って相手を吹き飛ばすとか平気でやりかねないので、英断である。

 魔族が人間よりはるかに頑丈だからこそできることである、常人はマネしてはいけない。ルールを守って楽しく決闘(デュエル)

*1
全体のシナジーではなく、少数で完結したパワーカードを多数搭載する『強いカードを並べれば強い』を地でいくデッキ。ぜんぶのせ欲張りセット。

*2
灰色のけものと説明されているヤギのモンスターだが、ギリギリ譲っても青灰色。『深き森の長老』とは色違い。

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