過労スタッフとサーヴァント(病み)の日常 作:かゆ、うま2世
「……あ、どうも」
「……貴方、またなの?」
目覚めた時に目の前にあったのは、セイバーのメドゥーサの顔だった。顔がいい、好き
俺が突っ伏して寝ていた机には、これでもかという量の書類が山積みになってる。うん、まあいつも通り。今度コヤンに増殖できないか聞こう
「俺は悪くない。仕事が悪いんだ」
「自己管理……できる量じゃないか。体壊さないでね?」
「おうよ、気をつける」
そういって立ち上がろうとすると、急にめまいが襲ってきた。あれ?なんか視界がぼやけるし、頭がガンガンするぞ?
「仕事……」
「……こっち。今日は休んで」
「休むわけには……」
「そんなふらついてて何言ってんの!ほら!」
無理やり引っ張られベッドに投げられる。痛くはないけど、ちょっと乱暴だなぁ
……待て、何かがおかしい。セイバーのメドゥーサにしては態度が優しい。いつもの彼女だともうちょっと言動に棘がある筈だが、今の彼女はなんか違う
「こんなのメドゥーサじゃなーい!」
「──っ!?うるさっ!?」
思わず叫ぶと、メドゥーサは目を丸くしていた。うん、可愛い。しかしこれはどういう事だろう。何かが起きている。確実に何かが起きている
「何!?何か変なものでも食べたの!?」
「……いきなり何。食べてないし私は私だけど」
「だって君、いつもならもっとこうツンケンした感じじゃん。仕事が悪いって言った時に馬鹿なのって返してくるような人じゃん!」
「……あー、それは、その、なんというか」
メドゥーサは視線を逸らすと頬を掻いていた。なんだこの反応。初めて見たんだけど
「えっとね、実は私も最近気づいたっていうか、自覚したばっかなんだけど……」
少しだけ間を置いてから、意を決したように口を開いた。そして彼女の口から放たれた言葉を聞いた時、俺は膝から崩れ落ちた
「私、貴方の事が好きみたい。だから……あんまりそういう言葉遣いは良くないかなって」
メドゥーサは恥ずかしそうにしながら、それでも真っ直ぐにこちらを見つめていた。対する俺は、あまりの衝撃に完全にフリーズしている
「お前もかー!」
「私もって何!?他に誰かいるの!?」
「いるよ!何で知らないんだよ訳わかんない!お前は最後の砦だと思ってたのに!」
「はぁ!?」
最近セイバーのメドゥーサがやって来て、他のサーヴァントとは違う友達みたいな関わり方ができて嬉しいなぁとか思ってたらこれである。対等な関係で軽口言い合うの楽しかったのに!
「あーあ。こんなの解釈違いです。無理無理」
「……ウザ」
「それだよそれ!それを求めてるの俺は!」
「……はぁ」
「それも完璧ー!」
メドゥーサは心底呆れましたといった表情を浮かべている。完璧だ。解釈一致だ。俺の大好きないつものメドゥーサだ。これでこそ安心して話せるというもの
「……で、その、返事は?」
「ん?あぁ、うん。ごめんなさい」
「うわ即答。理由聞いてもいいかな」
「世界が滅んでもいいなら付き合ってもいいよ」
「…………」
メドゥーサは無言のまま、しばらく考え込むと小さくため息をついた。いやー本当にいい女だなぁ
「まあいいか。振られた理由はよく分かったし」
「……意外。結構あっさりだね。てっきりもっと粘ってくるのかと思った」
「?貴方、私の事好きなんでしょ?」
「ん?」
「え?」
お互い首を傾げながら見つめあうこと数秒。どうやら俺が彼女に惚れているという前提があるらしい
何故、と思ったけどよくよく考えてみればそうかもしれない。振った理由は世界が滅びかねないから。好きなのか好きじゃないのかはハッキリさせていなかった
「……何、嫌いなの?」
「別に嫌いではないけど……」
「なら好きなの?」
「うーん……」
正直自分でもよく分からない。ただ一緒にいて楽しいなとは思う。だからと言って恋愛感情があるかどうかと言われたら多分違う気がする。少なくとも今まで異性として意識したことはなかった
「一緒に居て楽しい……けど、これが恋愛感情なのかと言われれば……」
「……一緒に居て楽しいって、そういう事じゃないの?」
「そうかな……?そうかも……?」
どうにもはっきりしない。でも、確かに彼女といる時間は心地よいと思う。それが好きという気持ちに近いのだろうか
わ、わからん。好きなやつに好きって言うだけで生涯の伴侶手に入るような状況なのに!恋愛がわからん!
「……わからない?」
「わかんない……ごめん……」
「謝らないでよ。じゃあさ、試してみようか」
そう言ってメドゥーサはこちらに近づいてくる。えっ待って。近すぎませんかね。あと顔が近い。メドゥーサの吐息がかかりそうな距離まで近づくと、彼女は妖艶な笑みを浮かべる
「試すって何…?」
「そのままの意味。試しに付き合ってみよ?好きかどうかわかるまで。それから判断すれば良いんじゃないかな」
「い、いやでも」
「……私じゃ嫌?」
「……嫌じゃない」
「なら決まり。終わっちゃわないように、二人だけの秘密。守れるよね?」
「はい……」
なんか有無を言わさない迫力があったので思わず肯定してしまった。まあ秘密にするなら問題ないだろう、多分。それにメドゥーサが相手だしな。変なことにはならないだろう、多分
「……電話なってるよ?」
「お、マジだ」
携帯の画面を見ると、そこにはカレンの文字があった
「誰から?」
「娘」
「は?」
「あ」