「なんかこう……せっかく王都に来たのに感動ってものがないよね?」
「まぁまぁ後で外に出た時にたっぷり感動して頂戴」
豪華な調度品が並べられた一室。
高級そうなソファに体を沈めつつ呟いた俺の言葉に、横に座ったアキラさんが頭をぽんぽんとしながらそう声を掛けてくる。なんか、子ども扱い……
『旅行に来て早く遊びに行きたい子供扱いで草』
『カズサちゃんもおめかししたお出掛け衣装だしね! 早く遊びに行きたいよね!』
『アキラママァ……』
いや遊びに行きたいとかそういうわけじゃないんだけどさぁ……パストラに着いたときもリンヴルムに着いたときも普通に馬車とかで移動しながら巨大な街が(リンヴルムはまず城壁だったけど)だんだん見えてくるのを見て俺もコメント欄も「おー、すげ~」みたいな感じになってたんだけど、今回はパストラの庁舎から王都の王城内に一発テレポートだからさ……部屋to部屋で移動した感がまるでないのよ。楽なのはいいんだけど……
そう、俺達は今王都にやってきている。勿論理由はアイリーン様の呼び出しである。あの連絡から3日後、アキラさんやグウェンさんが用件が片付いたので俺達は<<ポイントテレポート>>の術士の力を借りてアストラ王国の王都アストリアの王城へやってきているわけである。今はアイリーン様待ちで多分応接室らしきところで待機中だ。
こういった応接室はリンヴルムでも何度か入ったけど、さすがに王城の物とものなると煌びやかさが違う。そもそもリンヴルムは城というより砦というか、その中の庁舎みたいな感じだったしね。高そうな調度品はあったけど、武骨な感が強かった。それに対してこっちはまさにお城! って感じだ。いや本当のお城なんて入った事ないけども。
ちなみに勿論俺達だけじゃなくて、今回も部屋の中にはメイドさんが2人控えている。
……しかし、あくまで一般人の俺達を通すにしては部屋が豪勢過ぎない? これもっと重要な使節の人とか通す部屋じゃない? アイリーン様のお客だからといえ、もっとランクの低い部屋でいいのよ? リンヴルムの時はまだ「いいへやだなー」とか「あれって高そうだなー」とかくらいの感想を抱けたけど、ここまでくるともう落ち着かなくてそんな感想もあんまり抱けないのよ。庶民的な格好も浮きまくってるし……
今回、一応アイリーン様以外の王族にも会う事になっているんだけど、いやそれも元の世界の頃を考えるとなんでそうなったんだ的な話ではあるんだけどそれは今更過ぎるのでそれは置いておいて。
普通王族に会うっていうと騎士とか大臣とかが並んだだだっぴろい謁見の真を思い浮かべると思うけど、今回は公的な謁見ではないのでこの部屋ではないけど個別の一室での謁見となるそうだ。……当然といえば当然王様とか一部の王族、首脳部には俺の能力は伝わっているそうなので(一部の部隊長クラスにも伝わってるのに、そのレベルの人に伝わっていないわけもなく……)逆にあまり一目を集めない形での表彰となるわけだ。まぁ主目的は表彰じゃないだろうけども……
メイドさん達はさすがに俺の能力は知らないだろうし(変身能力はともかく、それ以外の能力に関しては必要最小限にしか伝わってないハズだし。いや、多分メイドさんとかそこらの騎士だと変身能力も伝わってないと思うけど)あまりコメント欄を相手してやるわけにもいかず、アキラさん達と当たり障りない会話をしながら時間を過ごしていると、扉の外から声が聞こえ扉が開いた。
「すまない、待たせた」
「アイリーン様」
姿を現したのはドレス姿のアイリーン様だ。
ドレス姿はリンヴルムでも見たけど、リンヴルムの時は素材は高そうだけど割とシンプルな作りのだったのに対し今回はぱっと見でも細々とした装飾の多い豪奢なドレスを身に纏っている。まぁリンヴルムはある意味前線みたいな場所だったから出来るだけシンプルな奴で、これが本来の王女様が着るドレスなんだろーなー。
ちなみにコメント欄は大盛り上がりです。さもありなん。
席を立ち頭を下げる俺達に即彼女は顔を上げるように伝え、そのまま続けて言葉を告げた。
「父が待っている。案内しよう」
……お姫様じきじきの案内なんですか。まぁお姫様とはいえ一緒に行動した時間もそれなりにあるので、別の人より安心できるのは確かなんだけど。
『いよいよ王様と謁見かー』
『カズサちゃんがんばってねー』
「がんばりゅ……」
やべ噛んだ。
『あざとい』
あざとくねーよ!
◆◇
大体1時間後。
『きょっ、きょうえいでございまちゅっ!』
『ちゅっ❤』
『きょうえいとはいったい……』
『いやぁ、実に良いものを見せてもらいました』
『宰相さんがほほえましい目で見てたのが良かった。あれ幼い孫とか見る目だったよね』
俺はコメント欄から精神攻撃を受けていた。
というのもさっき、アイリーン様の父親でもあるこの国の王様と城の中の一室(最初の部屋ほど煌びやかではなかったので、実務向けの部屋だったんだと思う)で謁見をしたんだけど……最初の頃緊張しまくって噛みまくったんだよね。ついでにいうと見ただけでも緊張でガチガチだったらしい。
それを謁見が終わった直後からさんざんいじられているわけである。
「そりゃ相手は王様なんだから緊張位するだろー。他にもいっぱい人がいたし」
公的な謁見ではないということでもしかして相手は王様とアイリーン様だけなのかなーと当然そんなことはなく、国王、王妃両陛下、王太子様とその妃様、宰相さんと騎士団長さんと魔術研究のトップの人、それにアイリーン様とわりかし大勢だった。まぁ正規の謁見だともっとぞろぞろいるんだろうからそれは助かったケド。
たださー、アイリーン様は11人もいる現王の子の中で一番の末っ子で。そのアイリーン様を除けばそこにいるのはこっちより一回り二回り年上。アイリーン様の次に若い王太子妃様ですら30歳半ばくらい……年齢がずっと年上の上に広大な王国のトップに立つ人たちである。現代社会で言えば総理大臣とか大臣、或いは他所の国の王族に囲まれている状態である。王様だけだったらともかく、これは普通の人間なら絶対無理だろう。
だいたいだな、
「……お前らだって、直接顔を合せているわけではないのに、がっちがちの硬いコメント返してただろー」
コメント欄とカメラをジト目でみつつ、そういって反撃してみる。
『いやさすがにオーラが強くて』
『騎士団長とか俺目の前に立たれたらちびっちゃう自信があるわ』
『宰相様、イケオジすぎてきゅんきゅんしちゃって』
『むしろあの時コメント打ててたのはエリートリスナーでは?』
なんだよエリートリスナーって。あと絶対俺よりお前らの方が情けないだろ。
「というか、だ」
あっ、いい匂い……
ではなく。
気が付くと、アイリーン様がすぐ横に来てコメント欄を覗き込んでいた。アイリーン様、こっちでは香水をつけているっぽくてなんかすっごくいい匂いがするんだよね……
そのアイリーン様はカメラの方を目を細めてみて、
「私の時はあまり緊張した様子はなかったが……私も一応王族なのだがな?」
『アイリーン様の時はまぁ事前に何回か見てたし……』
『可愛いの方が先に来ちゃうから……別の意味では緊張したけど』
……アイリーン様は出会い方が緊張とかそれどころじゃない状況に近い状態だったし、あと年齢が近いからなぁ。勿論全く緊張はしなかったわけじゃないけど、さっきの謁見程ではなかった。カシュナート様の時もさっき程は緊張しなかったから年齢の要素は大きいかも。あと圧の強い人の数。