ウマ娘プリティーダービー Instinct of humanoid   作:ポンドアップル

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絶対的な自信は、新たな獣を引き付ける最高のトッピングだ。


第2R 輝かしき舞台

―― 第2R 輝かしき舞台 ――

あの後......淳仁はあまりのショックで、芝生の上にうつ伏せになったまま動かなくなってしまった。

「うわぁぁぁぁ......私もう無理だぁ、研究もできないなんて最悪......どうしてこうもツイてないの!?」

延々とそんな事を繰り返しぼやく彼女を後目に、和生は黙々と周りに散らばった機械を調べている。

すると彼はある機械を手に取る。一辺40センチくらいの立方体型で、前面に扉とタッチパネルが付いているみたいだ。彼はそれを淳仁に見せてこう聞いた。

「淳仁、これは何だ?」

「どうせまた変なのでしょ、AI搭載トースターだとか超電導砂鉄お絵描きボードだとか......ん?」

その言葉を聞き流しかけるが、手に持っていたそれを見ると、彼女はむくりと起き上がる。

舐めるようにそれを全方位から眺めて、はっとしたと思うと下の面からテープでくっついていた説明書を取り出した。

「『量子もつれ転送機』......うぉう、おお! これって......和生さん、すごいですよ! これ! 見てください!」

何やら興奮している淳仁に、彼は「何がだ?」と真顔で言う。

「あの......まぁ、はい。多分これを使えば、あっちの世界から物を取り寄せられるんだと......思います」

恥ずかしがりながら、彼女はそう言っていた。

「ならば早速やってみるとしよう」

「コンセントからの給電が必要みたいなので、近くに使えるのがないかどうか探しましょう」

散乱した機械を拾い集め、彼らはその場から立ち去った。

――――――

歩いて自然公園を出ると、外はビルやらが乱立している大都会。

懐かしい光景に、淳仁は辺りを見渡しては驚いていた。

「色々なお店がありますね~、人通りも多いですし」

「ああ。しかし......あまり変わらないものだな」

同じ街並みでも、二人で感じる事は違ったようだった。

散策すること数十分。二人はあるファミリーレストランの前で足を止める。

「ここなら使えそうですよ」

和生が頷くと、自動ドアをくぐって彼らは店に入った。

そうして席に座ると機械からコードを伸ばして、カウンターにあるソケットに差し込む。するとパネルが点灯してあのオシャレなロゴが表示された。

説明書をめくりながら、淳仁は設定を進めていく。

「っと。初期設定はできたので、後はチャンネルを合わせるだけと書いてありますが......本当?」

半信半疑でツマミを回し、スイッチを入れる。

すると装置の内部で光が渦巻き始め、どこか別の場所へと繋がった。

渦の向こうから博士の声が聞こえる。

「これは量子もつれ転送機じゃないか! まさか持っていたとは、本当に運がいいねぇ」

特に悪びれる様子もない彼女に、淳仁は呆れながらも聞く。

「確かこれを使えば何か物を送れるんですよね? 何かこう......役に立ちそうなものありませんか?」

そう聞いてすぐに、向こう側から何かを漁る音が聞こえ始める。

「もちろん、生命体以外の物体であれば装置のサイズ以内で転送が可能だよ。まずはお試しに......」

次の瞬間。転送機のランプが届け物がある事を彼らに知らせた。扉を開けてみると......にんじんが5本、送られてきたようだ。

クアンタムに転送されてきた、オーガニックで有機なそのにんじんを見て、和生は大口を開けて驚いた。

「本当に時空を超えて転送できるのだな。如何にして動いているのか、不思議なものだ」

「そうしたいのは山々だが......もっと欲しい物が別にあるのではないかい?」

博士の言葉に、和生は少し考える......そして何かに気づき顔を上げると、淳仁に言った。

「あの『赤い液体』......あれが必要だ」

「BCN液の事?」

恐らくそうだと和生が反応する。しかし、淳仁は一つ、彼に聞く。

「でも......何に使うの?」

考える間もなく、彼は席から立ち大声で言い放った。

「私はウマ娘を超える! 超えなくてはならないのだ! そしてその為に、中央で走る事を決意したッ!」

「え゛ぇ!?」

淳仁は大驚きし、机を叩いて立ち上がる。

そして目をかっぴらいたまま和生を説得しようとした。

「いや、あのね! そもそも和生さんはウマ娘じゃない......あと、豪脚は確かにウマ娘並まで走れるけど......相手は中央ですよ? 相手が誰でも勝てるどころか、追い越す事すら......」

しかし、彼の目つきは変わらなかった。まるで生まれた時からそうであったように。

「疑うのか......! 私の意思はその程度では砕けん、砕けんぞォ! それにあの時、貴様は私をサポートすると言ったはずだッ!」

そう言われた瞬間、淳仁ははっとした。

(そうだ! 面接の時気迫に負けて『あなたの......あ、ええと......その夢を叶える為に我々は全身全霊で......その、サポートします』って言っちゃってた......)

「約束だろう! 言い逃れはさせんぞ、淳仁!」

和生は鋭い目つきで淳仁を睨む。彼女も押しに負けて、だんだん声が小さくなっていった。

「あ、ああ......すいません、その......うぅ......分かりました」

遂には根負けし、博士にそれを転送するよう言ってしまった。

向こう側から液体が容器の中で揺れる音と共に、どこか楽しそうな彼女の声が聞こえてくる。

「全く、君もワガママだねぇ」

「熟知している......だが何としても、やらねばならぬ事があるのだ」

送られてくる沢山のタンクを鞄に詰める和生の後ろで、淳仁は考え詰めていた。

(ああ、どうしよう......中央に入るって言ったってどうすれば......)

悩む彼女を後目に、彼は鞄を持って店から飛び出して行ってしまった。

チリンチリンと鳴るドアベルの音が、いつもより気になって仕方がない。

「信じられないよ......ああ」

そんな事を言い残して、淳仁は和生を追いかけた。

――――――

全速力で追い続け、やっとの事で淳仁が彼を見つけたのはトレセン学園の校門前。

和生は何やら緑色の服を着た女性と話していた。

「ええっと......もう一度言ってもらえますか?」

困惑する彼女に、和生は真剣な表情で懇願している。

「入学できなくてもいい。中央を走らせてくれないか」

「え、ええ......どうして、ですか?」

「......ここには『最強のウマ娘』がいるのだろう? ならば私はそれを超える、超えて勝利を掴み取るッ!!」

その恐ろしいほどの執念は、彼女に十分すぎる程伝わっていたようだった。

淳仁はその様子を陰から見ている。彼女の足は震え、脳内ではこれから起こりうるあらゆるハプニングが再生されていた。

(あわわ......もうダメだ、いい結末が見えない)

激しい不信を抱く彼女をよそに、彼らは学園の校舎内へと案内されていった。

――――――

その後、彼らは理事長室へと通された。

もはや話がつけられないのだろう。一体何がそこまで彼をウマ娘に駆り立てるのだろうと、ドアの向こうで盗み聞きしながら淳仁は訝しんでいた。

部屋の中には、何とも言えない神妙な空気感が三人を包んでいる。

『理事長 秋川やよい』

そう書かれたネームプレートが乗った大きな机に座っていた少女は彼に気づくと、頭に乗せていた子猫を地面にそっと置いて彼に聞いた。

「質問ッ......君は一体何者なのだ?」

「あまり乗りたくはない質問だが......あえて言っておこう、私は『下の存在』だと」

和生は直立したまま、鋭い目つきでそう返した。

すると彼女は席を立つ。

「ここはウマ娘の為の学園......人間が入学するなど認められない」

彼以上に断固とした態度で少女は強く突き放す。彼女にも何か、強い理由があるようだった。

「いつもそうだ、『人間はウマ娘とは違う』そう言って貴様らは私たちを置き去りにしてきた!......今日こそ、私は立ってみせる......『同じ舞台』へ......ッ!!」

お互い自分の信念を貫き通し、一歩も譲らない......激しい意見のすれ違いが、二人の間で生じていた。

「ならば......君はウマ娘を超えられるというのか?」

「超える......超えて見せる!」

彼は豪脚を一瞬見ると、少女を強く睨む。

「疑義ッ! ......本当にそのような事が出来るというのか? ヒトが、ウマ娘を超えるなどと......?」

和生は何も言わなかった。敢えて言わなかった。

私は言ったはずだ、何度も言わせるなと......まるでそう言っているかのような表情をしている。

(和生......もうやめて!)

そう心の中で祈っている彼女の背中を、誰かがそっと叩いた。

次の瞬間。締め切った理事長室の扉が開き、清らかな空気が流れ込む。

揺れたカーテンを縫って差し込む夕焼けが、その威厳のある耳を照らした。

「ウマ娘......!」

「シンボリルドルフ生徒会長ッ!?」

理事長と和生の声が同時に響く。

そこには、まさに学園の頂点に立つ存在・生徒会長の姿があった。

――――――

「ふむ......」

(ウソ......嘘でしょ)

淳仁は冷や汗をかいて事の成り行きを見守っている。

「和生と言ったか......君は中央を走りたいと言っていたな」

彼はまた強く頷いて、その意思を伝えた。

ルドルフは深く考えた......思考を巡らせ、最後に彼女はこう答える。

「......君のその目。只の気まぐれ、一瞬の過ちでここに来た訳ではない......ずっと待っていたのだろう」

「待ちかねていた......あの時から、私はそうだった」

握りしめた左手を見て、再び彼女に向き直る。

「君のような高い存在に、私たちはいつも心惹かれては憧れる......それは『本能』だ。私はそう断言する」

ルドルフは彼の足を見る。そこにあった『脚』に、彼女は何かを感じた。再び彼の目に視線を向ける......その覚悟に満ちた眼差しを、彼女は見逃せなかった。

すると彼女は和生を指差し、意を決したように言い放つ。

「今度開催されるデビュー戦......そこで君の強さを証明して見せろ。結果次第では入学も検討する」

「......」

彼はその言葉を聞いて、静かにコクリと頷く。喜ぶ様子もなかったが......その先を見ているようだった。

「それまで施設の貸し出しも行おう。ただし......負けたのなら、潔く認めろ」

「熟知している。そう言わなければ諦めそうにないとでも言いたいのか」

ルドルフは少し口角を上げた。間違いなくそうだろうとでも言いたげな様子で。

確かに警戒している......だが、心のどこかで何か喜んでいるようでもあった。

そして和生も、彼女の反応にほんのり笑みを浮かべる。

「た、たづなッ......これは一体?」

置いてけぼりになっていた理事長は困惑していた。

「大丈夫ですよ理事長。会長があのように言うんですから」

理事長を諭すように、たづなが微笑んで話す。

「しかし......ウマ娘たちの中に彼は......そもそも君は男なのか!?」

その問いかけに彼は少し眉をひそめたが、意を決して答えた。

「......『どちらでもない』私からはそれだけだ」

その直後に体ごとルドルフに向き直って、深くお辞儀をして言う。

「無理な頼みであったが、受け入れてくれた事に感謝する。シンボリルドルフ生徒会長」

そう言って顔を上げ再びルドルフを見ると、一瞬彼女を睨んだ。

それに呼応するように、ルドルフも僅かに微笑んだ後再び彼に鋭い視線を浴びせる。

「......期待しているぞ」

少し小さくそう言った後、彼にすぐ帰るよう言った。

「失礼した」

理事長室を出て行く和生の背中を、淳仁は心配そうに見つめていた。

「付いていく気だろう」

流し目でそう言った後、再びとつとつと歩く。スケルトンの駆動音が彼女を呼ぶように響いた。

(......仕方ない)

そう頭の中で思い、彼女は立ち上がって彼の背中を追う。

(これが始まりではないさ......しかし、面白い。面白いぞ、ウマ娘)

右手を握りしめて彼は微笑する。彼が初めて見せた喜びの感情であった。

しかしそれは彼女には見えていない。背後からでは、彼の心は見えない。

(私は......本当にこの人を信じられるのだろうか)

淳仁はそう怪しんだ。




本作品はpixivにも投稿されています。ご了承ください。

前回からかなり間が空いてしまい申し訳ありません。
なかなか満足のいく展開が書けず難儀していましたが、なんとか再点火に成功しました。次話も早速執筆する予定ですが、また時間が掛かってしまうかもしれません。
待ってくれている人には大変申し訳ありませんが、どうかお待ちください。

感想や良点悪点などございましたら、ぜひコメントお願いします。
参考にさせて頂き、本作品の改善に努めて参ります。

私の小説が、あなたの日常に少しでも彩を加えられたのなら幸いです。
ここまで読んでくれたあなたに幸のあらんことを。
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