あまねく奇跡の召喚録 作:熱核戦争先生
千葉県習志野市 国防省庁舎C棟
北海道の五稜郭と同等の面積を誇る国防省敷地内のC棟は国防装備庁が入庁している庁舎である。
国防装備庁は、国防装備の開発・調達をはじめ、アメリカなどの旧世界国家の国防装備の調達や共同開発、他国への国防装備の輸出を所管している。
天守建築が融合した12階建てビル内部のある会議室にて、国防装備庁の長である土井洲長官をはじめ幹部自衛官や日本の国防産業を支える企業の常駐社員が一堂に介していた。
「さて、今回諸君が集まったのは他でも無い。キヴォトスへの国防装備の輸出に関しての会議だからな」
遡る事2週間前...
東京都千代田区 首相官邸閣議室
「キヴォトスからの武器輸出要請?」
「はい、在キヴォトス大使館にて浅瀧外交室長から直接要請されました」
「遂に来たか」
岸川外交大臣の答えに村角はようやく来たのかと言う反応をする。
日本とキヴォトスが接触した事により、キヴォトスの情勢は日本国内にもたらされた。
中でもキヴォトスの生徒が銃をスマホを1人1台持つ感覚で、一般生活に溶け込んでいる姿は日本国民に強烈な印象を与えた事だろう。
【この世界みたく我々の常識は通じない】
【未成年でキヴォトスを回せたからすごいのでは?】
【年齢なんて所詮我々人間が付けた概念にすぎない】
【未成年だからと侮らず対等に接すべき】
キヴォトスに対しての好意的な印象、キヴォトスの状況を関心したり、動向を注視したいなどの世論の大半が占めていた。
【キヴォトスと戦争になったら脅威である】
【銃を当たり前に持つような文化を形成させたキヴォトスの大人を許すな】
キヴォトスに対して危険視していたり、逆にキヴォトスの状況を可哀想な目で哀れんでいたりなどの反応も少なからず存在するのも事実だ。
「武器を売るとなると国内の人権団体が黙って無いのでは?」
人権団体は、キヴォトスの未成年銃火器所持を良しと見てなかった。
キヴォトスの治安や未成年への悪影響があるとし、銃火器の所持を規制させるように日本政府がキヴォトスに対して働きかけるべきと主張している。
「人権団体の言い分なんか、キヴォトスからしたら知らんがな、ですよ」
「連中の言ってる事を馬鹿正直に実行したら内政干渉に過ぎん。日本とキヴォトスは互いに対等であるべきと言うスタンスから逸れてる」
人権団体の主張に対する世論の答えは大臣2人と同じ物だった。
「話を戻しましょう。こちらがそのリストです」
岸川は村角らにリスト表が書かれた紙を配る。
「なるほどね。キヴォトス程の文明力なら自衛隊と同等の装備を輸出しても問題ないのんでは無いか?」
「総理もですか。私も問題ありませんね」
2週間後に開かれた国会でキヴォトスに対して国防装備輸出が承認。
日本とキヴォトスとの間で日キ武器輸出協定が結ばれた。
そして今に至るのだ。
「まずは銃火器だな。決まってるか?」
「はい、既に決まっています。リストに載ってある物全部が以上になります」
土井洲はホッチキスでとめられた紙の束を捲る。
64式小銃、89式小銃、20式小銃、21式拳銃、 MINIMI、20式軽機関銃、24式短機関銃、19式多銃身機関銃、9mm機関拳銃など狙撃銃やショットガンも合わせると数十機種が輸出可能対象となっている。
「89式や64式他は倉庫から引っ張ってくる感じか?」
「はい、64式は他国へ輸出したので在庫は少ないですが、89式はまだ十分あります」
64式小銃や89式小銃は20式小銃制式化により順次退役し、異世界国家への輸出若しくは各駐屯地の予備倉庫に眠っている。
「9mm機関拳銃も輸出するのか?あれは使うのに癖が強い銃だが」
9mm機関拳銃は24式短機関銃が制式化する前に自衛隊に配備されていた短機関銃だ。
発射速度は約1200発の連射性を誇るが、照準を安定させ発砲時の反動を抑える銃床が無いため、両腕のみで支える必要があり連射時の命中精度が低い。
使うにはそれなりの体格と体力が必要な故、使うには癖が強いと言われている。
「キヴォトス人の身体能力的に大丈夫じゃないんですかね?恐らく、そんな癖の強い武器を使うのは、一部の物好きか被虐嗜好の強い人でしょうけど」
小柄な体型で対戦車狙撃銃やミニガンを軽々と持つキヴォトスの生徒なら、癖が強い9mm機関拳銃ぐらい余裕で持てるだろう。
「MINIMIとM2はどこ製か?」
「両者共、角友製ですが…」
この答えに同席していた角友重機械工業の社員の背中に変な汗が滴る。
角友重機械工業は日本の重工メーカーの一つで、素材加工、加速器・極低温技術に強く半導体製造装置の国内トップクラスのシェアを誇る企業だ。
角友は日本の国防産業を支える企業であり、主に自衛隊機のジェットエンジンブレードやガスタービン動力護衛艦のタービンブレードの製造を担っている。
機関銃事業も展開していたが、74式車載機関銃、MINIMI軽機関銃、M2重機関銃合わせて約20000丁の試験データを改竄する不祥事を起こした事により国防省から指名停止を喰らう過去を持つ。
その結果、以後の機関銃製造は南部工業が指名され、更にデータが改竄された機関銃全てを正規データの物と交換する為8年と言う時間を要しながら交換する羽目になった。
「君達、キヴォトスをゴミ溜めだと勘違いしてないか?」
「いえ、決してそのような事は思ってもいません」
担当していた担当官は目を横に逸らした。
「おいこら、今目を逸らしただろ」
「あーあー何も聞こえない見えないよー」
担当官は耳を手で塞ぎ目を閉じていた。
我慢できなかったのか角友の社員が血反吐を吐きながら机に突っ伏した。
「え?」
「あー、気にしないでください。しばらくしたら戻ると思うので会議を続けましょう」
別の角友の社員が会議を続けるよう土井洲に促す。
「本当に大丈夫なのか?」と頭の中で思いながら土井洲は会議を続けることにした。
「とりあえず、角友製の奴はリストから外せ。そんなもん渡して何かあったら「日本は不良品を送り付けやがった」と言われて信用を失いかねないからな」
「なんで角友製の在庫があるんだ...完全に廃棄したと思っていたが」
「次は戦車などの大型兵器です」
「確か、キヴォトスが一番欲しがってたな」
銃火器のリストが載ったページを捲る。
「44/55口径120mm滑腔砲?単体か?」
「はい、キヴォトスは特に120mm滑腔砲を強く要望しています」
キヴォトス三大学園をはじめそれなりの規模の学園や企業では第3〜3.5世代相当の主力戦車の開発が活発化している。
古の魔法帝国復活までに配備を終わらせたいが、120mm滑腔砲の開発がそれまでには間に合わないので、トリニティやカイザーインダストリーを除く各学園・企業は日本から120mm滑腔砲の輸出を同意している。
「次のページに各学園と企業が開発中の戦車の要求スペックと完成予想図が載っています。目を通してください」
次のページを捲る。
そこには各学園と企業が開発中の新型戦車の要求スペックや完成予想図がズラリと並べてあった。
「ゲヘナは万魔傅と風紀委員会が別々で開発するのか。まるで旧帝国軍を見てるようだ」
「パンデモニウムはフランスのルクレール、風紀委員会はドイツのレオパルド2A6に似てますね」
「ミレニアムは現行のMS−01の主砲を120mm滑腔砲に換装する感じか」
「このネクゾン重工は韓国陸軍のK2戦車ですね。開発能力がない学園向けの戦車のようで各学園によって仕様変更が可能との事です」
「山海経は解放軍の99式戦車か…いや125mm滑腔砲なんかねぇよ」
「それ言ったらレッドウィンターもだ。こっちなんかオムスクのブラックバードだぜ」
「ヴァルキューレは初の戦車のようです。これなんてイスラエルのメルカヴァMk.4ですよ」
その他にもアリエテ、アージュン、ゾルファガール、M1A2エイブラムスなど地球国家の戦車と似ているキヴォトスの新型戦車が続々と出てくる。
「百鬼夜行に至っては10式そのまんまだぞ。10式を直接輸入した方が良いんじゃないか?」
「そうですね、ここまで似てると輸出しちゃっても良い気がします。光菱重工さん的にどう思いますか?」
光菱重工業は日本の重工メーカーの一つで光菱グループの中核を成す“光菱グループ御三家”の一社である。
“光菱は国家なり”とし国家との結びつきが強く、国防装備は陸海空宇宙全てを網羅しており、国防省への装備納入実績は1位と日本の国防産業の中核を成している。
「神戸製作所の量産ラインはパーパルディア皇国へ輸出予定の19式戦車を生産しているぐらいなので問題ないです」
光菱重工業の社員が答える。
光菱が保有する制作しで戦車の量産ラインがあるのは、北海道の旭川製作所、神奈川県の相模原製作所、兵庫県の神戸製作所、福岡県の北九州製作所の4拠点である。
神戸製作所は輸出向け戦車を製造するラインがあり、東南アジア向けの74式戦車D1型や90式戦車A3型をはじめ、異世界国家向けに新設計された19式戦車を生産している。
「でも10式を生産するなら神戸以外でも問題ないのでは?」
「神戸以外の3拠点は国内向けです。それに製作所は戦車だけ生産してる訳ではありませんよ。16式機動戦闘車や99式自走砲などの生産ラインもこの製作所で生産してるのですから」
「仮に3拠点で百鬼夜行向けの10式戦車を生産するにしても優先度が低下します」
神戸以外の3拠点は絶賛稼働中である。
新規の10式戦車B型をはじめ、最新型の90式戦車A5型や10式戦車B型に移行する為現行車両の改造でラインが埋まっているからだ。
「となれば、百鬼夜行向けへの輸出は10式戦車A型になりますね」
10式戦車A型は44口径120mm滑腔砲を搭載しているB型が登場するまでに配備されていたタイプだ。
現在最新型に移行が進められている10式戦車B型は44口径130mm滑腔砲を搭載している。
「あとは百鬼夜行に提案するだけですね」
その後、各学園が興味を示した01式野外炊具車、高機動車をベースにした軽装甲機動車、エイギルが興味を持ったP−1哨戒機などの国防装備が選定されていた。
ちなみに日本の強みである護衛艦などの戦闘艦艇は、まったく無くジャパンオーシャンユナイテッドや三瑞造船の社員は終始しょんぼり気味だったとか
To Be Continued......