あの日から、傑は変わってしまった。
俺の知らないところで。
あの日、傑はやたらと顔色が悪くて気持ち悪そうだった。
どうしてそうだったのか、傑は今も話してくれてない。
「君は、私が呪霊操術の持ち主だからよくしてくれるのかい?」
「はぁ? ……なんか吹き込まれたのか?」
意味がわからなかった。ただ、誰かが俺と傑の仲を壊そうとしてるなら許せなかった。傑は慌てて弁解した。
「いや。違うんだ。六眼の果たしてきた役割を聞いてね。私のことも気にしてくれてたのかなって」
「なんだよそれ、役割ってなんだよ」
帰ってきたのは、さっぱりわからない言葉。六眼に役割なんてあったか?
当人たる俺が聞いてねーぞ。それで、なんで傑を気にするんだよ。気にしてるけど。
「天元様の同化の遂行……?」
誰だよ。怪訝な顔をすると、傑はマジかって顔をした。
違ったのかというよりも、なんで知らないんだって目だ。
いつもはこういう時、張り切って説明してくれんだけど。
「ええ? いいよ、悟のその反応で出鱈目だってわかったから。怒らせついでに聞いていい?」
傑の質問は、さらに飛んだ。
「術師殺し、フィジカルギフテッド、禪院甚爾。知ってる?」
知らない。何なんだよそいつ。傑になんかしたのか?
そいつが接触してきたのか?
「いや。そういうわけじゃないけど」
「調べとく。っていうか気を使うってなんだよ」
「いや、おとぎ話で、天元様と呪霊操術の持ち主を狙う悪の組織をやっつけた六眼の話を聞いたんだよ」
「悪の組織がなんだよ」
「御伽話にそれ、気にする?」
「あー。それも含めて調べておく」
「出来ればこっそりだとありがたいかな。その御伽話、外部に出しちゃダメなやつらしくてさ」
悪の組織をやっつけた六眼ねぇ。呪霊操術の持ち主と共に、じゃなくてか。
呪霊操術の持ち主……狙われる要素とかあったか? 傑のイメージから、強いイメージはあるけど、狙われるイメージはない。
調べてみた結果、天元様と星漿体を護衛した記録はあったが、それだけで悪の組織だのその目的だのは載ってなかった。記録されなかったのだろう。
だが、じゃあそれを書かれた御伽話はどっから出てきたんだよって話になる。
しかも、極秘事項。500年も前のことで、極秘事項。
……まさか、悪の組織滅んでねぇの? ご先祖様がヘマした?
禪院甚爾については、すぐわかると思ったけど、すげー警戒された。
なんか、絶縁した相手らしい事がかろうじてわかった。実在の人物。
なんかきな臭い。傑のことだ。用心してしすぎることはないと思う。
俺は傑を死なせたくない。
傑の部屋に来て、ゲームをしつつ残穢を丁寧に見る。
こういうのって当たり前と思って放置してたけど、今は困る。
俺は盗聴器を見つけて破壊して、念を入れて適当な映画を流した。
これで後は布団の中で会話すれば、漏れる確率はグッと減るだろう。
傑は普通にもう眠そうだ。
俺は傑に話しかける。
「なぁ。お前、狙われてんの?」
「え? 私、狙われているのかい?」
お前が言ったんだろ。
「お前が言ったんだろ。天元様と呪霊操術の持ち主を狙う悪の組織って。先代の六眼の任務に天元様の同化の協力があったんだよ」
「それ、代々の六眼のお仕事らしいよ? 裏取りはできてないけど……禪院甚爾が同化阻止を企む団体に雇われたから気をつけろって。後、君は懸賞金とか掛けられて狙われてるからって」
懸賞金の話は知っている。それ出してるの、悪の組織だったってわけ?
探り入れてきたり盗聴器仕掛けたりしてきてるのも? マジで?
「マジでか。え、その組織が六眼を狙ってて懸賞金が掛けられてたわけ?」
「みたいだよ。……ねぇ、君が同化遂行依頼を受ける時、私も手伝わせてもらえないかな。君の力になりたいんだ。その組織、私も狙ってるんだって。肉体ごと術式を奪える術式があるからって。嘘とも思えないんだよね」
術式はすごいけど、デメリットもあるし、どっちかというと悪用の方が思い浮かぶ術式なんだよな。どうして欲しいんだろう。あ、悪の組織だから悪用路線なのか。
「情報源寄越せ」
「その子、事情があって秘匿死刑になっちゃう術式らしいから会わせられないよ。私の術式も本来はそうなんだろうね。悪用されるより前に処分していた方がいい人間」
「させねー」
そいつも傑も、俺が守る。ちゃんと信じてくれよ。
「……頼りにしてるよ」
そのまま、傑は寝てしまった。
俺も傑の寝顔を見てから寝た。
朝、傑はあそこまで全部話すつもりはなかったらしく、後悔していた。
傑が眠い時に話したのはあれはあれで良かったのかな。
とにかく、俺達は訓練に身を入れるようにした。
傑はこそこそ出かけるようになった。
「あの子」に会いにいくんだろう。俺よりもそいつを頼りにしているようだから。
あー。嫉妬だ。かっこわる。
傑の親友は、俺だけでいたいのに。
ただ気になるのは、出かけて戻ってくると顔色が悪いんだよな。
それとなく聞いたけど、大丈夫だって。
「あの子」とやらが傑にもし酷いことしてたら殺そう。そう思って調べたこともあったけど、呪霊玉を受け取ってるだけだった。
俺が思うよりずっと負担が掛かる術式なのかもしれない。
いつも一個から多くて5個ぐらいだもんな、飲むの。
あれは箱詰めで30個ぐらいから飲んでるし、きついのかもしれない。
どうやって呪霊を手に入れてるのかもわかんないし、傑は話してくれない。
それは寂しい。
「任務は天内理子の護衛と抹消!」
「やっぱ来たな、準備時間とか寄越せって話だけど」
事前に連絡を入れろ連絡を。六眼のお役目ならな!
「食事に出た後でいいかな?」
傑、そろそろこっそり出る時期だもんな。
「早く行け! 寄り道はするな」
追われるように、俺達は依頼に出かけた。
「悟。君に大事な話があるんだ。走りながら聞いてくれ」
「何?」
「天元様が進化すると、人間じゃなくなる」
「おお」
その説明はさっき聞いた。
「そうなると、私の術式対象になるんだ。時間は掛かるようだけど」
「へ?」
思考が止まる。大事じゃないか?
「つまり、天元様を同化させないと、私は1000年前からあるような組織にずっと術式を狙われてしまうんだ。体ごとね」
「はぁ!?」
「そんなわけで、今回の同化は是が非にでも成功させたいんだよ。……軽蔑するかい?」
そんな軽蔑なんてするわけがない。ただ、傑が心配になるだけだ。
身の安全も、その心も。
それと同時に、だから呪霊操術が狙われていたのかと納得した。
「これでも悩んだんだ。けどね。私だけなら自分の身は自分で守れるって言えるけど、次の呪霊操術の使い手が困るからね。悪の組織は日本人を一つの呪霊にって頭のおかしい教義を持っているっていうし、今回の、いや、同化は毎回必ず果たさないとダメだと思うんだよ。悪の組織を倒すにも時間がないしね」
いやいやいやいや、大事だろ。
走りながら話すことじゃねーだろ。なんだ、日本人を一つの呪霊にって。
「それが本当なら、大人に相談すべきじゃねーのか?」
「そう、私達はまだ子供なんだ。でも、1000年も前からある悪の組織は、総監部にもしっかり根を張っているらしくてね。私達や周囲の人間の身の安全や等級違いの依頼に注意しろと言われたよ。それに、呪霊操術で天元様が操れることがバレると、私は秘匿死刑になりかねないからね。今回の同化さえ成功すれば、敵は500年後に行動を移す可能性が高くなるんだ。私たちの身の回りもグッと安全になる」
「つまり、どちらにしろ同化はぜーったいってこと!?」
「ぜーったい!! 理子ちゃんには申し訳ないけどね」
ようは傑は、身を守って縮こまって身を守ろうって言ってる。
大人になるまで。身を守れるようになるまで。
ただ、あの魔窟が相手となると、それもいつまで?って話になるわけで。気が遠くなりそう。
一応、最終目的がそれなら、総監部も言いなりになったりはしないと思うけど。
ただ、黒幕には気づかれるし、めちゃくちゃ面倒な立ち回りが必要になりそうではある。本当に大変な事になったな。
「理子ちゃん。私は私の身の安全の為に、君に同化してほしい」
「わ、わかった。妾も友達を守る為、存分に力を尽くそうぞ!」
傑はストレートに天内にお願いした。そして天内もそれを受け取った。
傑は呪霊玉を取りに行き、そこから傑の独壇場が始まった。
天内理子に護衛の呪霊を貼り付ける。
傑が俺に囁く。呪霊達の能力を。
なんだそれ。チートばりに便利なのばっかりじゃねーか。
その後沖縄に行った。
そこで、皆で呪霊で遊んだ。
そう、呪霊で遊んだんだ。
傑の呪霊操術の幅はめちゃくちゃ広くなっていた。
黒井さん達と、男女逆転して砂浜で遊んだ時はめちゃくちゃ笑った。
なんだケモみみシリーズって。呪霊じゃないだろそれ絶対。
傑の胸はめちゃくちゃ大きくて、俺の青少年としての心はぐっちゃぐちゃに踏み荒らされた。狐さんのケモ耳尻尾もいいがなぁ! しっぽのおかげで尻が半分見えてんだよ、ありがとうございます!
女同士で本当に良かった。おかげで傑の胸も自然に揉めた。
くっそありがとうございます!
散々遊びまわり、長距離転移呪霊でまず傑が、ついで俺達が高専に緊急帰還。
相手の意表をつけたと思う。
傑に言われてしっかり交代で休んでたから、体調も万全。
そのまま天元様のところに走ると、甚爾が追ってきた。
だが、傑がトラップは張らせてもらっている。
呪霊の物量で飽和攻撃!
「わー!!!!」
「どうした傑!」
「最近、呪霊をよりすぐってたから捨石用の呪霊が少ないっああ、あいつ便利なのに祓われちゃった……」
「はあ、今を生き延びてだろ!」
「それはそうだね」
そうだ、今を生き延びての話だ。
禪院甚爾は本当に強い。
傑の全部の呪霊を祓われる勢いだ。でも作戦は用意していた。
「悟、頼む! 理子ちゃん、黒井さん、離れないで!」
傑が呪霊を使って酸の雨を降らせる。俺がみんなを守る。
恐ろしい呪霊の攻撃だった。こんなのどうにかできるの、俺くらいじゃねーの?
酸の雨と、呪霊の攻撃。
相手の呪具もあるけど、俺は基本、守っているだけで良かった。
傑は、呪霊便を得て強くなった。人間的にも、呪術師としても。
俺を置いて強くなっちゃったんだ。
それが俺はとても寂しかった。
傑は、呪霊をどんどん入荷して、力を試すのが楽しいみたいだった。
俺は、笑えているだろうか。
俺は、傑の隣にいていいんだろうか。
傑は、一人で最強になろうとしてる。俺を置いて。
シリアスバージョンでも悩殺はされる。
そろそろ感想かコメが欲しいです……。
マシュマロ
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今度からマシュマロ返信していくことにしたので、よろしくお願いします!
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お題箱
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